rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
31 - 40件目/全511件
  1. 評価:3.000 3.0

    醜いものを醜く

    就活に失敗した、いたってノーマルな(まあ結果的にはノーマルじゃなかった、という話なんだろうけど)青年が、裏社会と繋がりのある会社に入社したことで、徐々に悪の道に手を染めていく、みたいな話。

    話の進みはテンポよく、それなりに楽しくは読んだ。
    しかし、根本のところで、私は説得力もリアリティーも感じられなかった。

    ひとつは、主人公の変貌について。
    本作は、「普通の人間が裏社会の闇に触れて堕ちていく」という文脈で主人公の変化を描いているのではなくて、「主人公にはもともとそういう資質があった」という描き方をしている。
    それは「転落」というより「覚醒」に近い。
    それ自体は別にいいのだが、こいつにその「資質」がある、ということを、私はどうしても信じられなかった。
    「普通の人間」が根元的なレベルの価値観を変動させてゆく様を描くのは、とても難しい。
    だからこそ、そこがこういう作品の勝負どころだと思うのだが、「いや、こいつもともと悪の素質あってん」というのは、都合のいい逃げのように見えてしまった。

    また、裏社会のディテールについても、何かと浅い気がして仕方がなかった。
    もちろん、私を含めた読者の多くは、裏社会のことなんか実際には知らない。
    漫画だから脚色も必要だろう。
    しかし、少なくとも「こういうこと実際にあるんだろうな、知らんけど」と思わせるだけのリアリティーは欲しいし、それが満たされているとは思えなかった。

    個人的には、一番決定的に入り込めなかったのは、「醜いものをちゃんと醜く描いていない」と感じたことだった。
    これは単なるの印象の問題だし、上手く言えない。
    ただ、作品の中で醜いものをちゃんと描くというのは、結構勇気の要ることだと私は思っていて、本作はそこから逃げているように感じた次第である。
    まあそのぶん、エネルギーを使わずに気楽に読める、というのはある。
    それをこの種の作品の美点として数えられるかは、何とも言えないのだけれど。

    • 6
  2. 評価:2.000 2.0

    これはしょうがない

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    主人公は牧師で、連続殺_人犯に息子を殺されて信仰を捨てる。
    色々あってその犯人の娘を養子に迎えることになるのだが、娘は「父親は犯人ではない」と訴える…というようなストーリー。

    牧師の主人公が聖人君子ではなく、生前の息子への接し方など、あくまで弱さや不完全さを持ち、後悔を抱えて生きている、という点はリアルでよかった。
    が、他はマジで何もない。

    重いタイトルが示すような、信仰を巡る葛藤というテーマは全く掘り下げられることなく、ミステリ的な部分はグダグダ、いやもうこれ、相当酷い。
    設定以外のストーリーが何も決まっていない状態で連載が始まってしまったのではないかとすら思った。
    もしかして本当にそうなのか?
    そんなことあんの?

    まず間違いなく打ち切りエンドだけど、これは正直、しょうがないな。
    まあ、ある意味、好きな作品が打ち切られるより、納得の打ち切りの方がずっとマシだ、とも言える。

    • 6
  3. 評価:2.000 2.0

    透けて見える大人の事情?

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    霊能力を見込まれて、「死者が通う学校」で教師(でありながら死者たちを成仏させる役割も担う)を務めることになった主人公の話。

    最初に、根拠も何もない陰謀論みたいなものを書いて申し訳ないが、評価が高すぎて、怪しい。
    あまり露骨なことを言うとレビューが消されるような気がするのでやめておくが、【完全独占配信】の謳い文句があって、何か、そういうことなんじゃないの?と勘ぐってしまうくらい、正直、酷かった。

    設定としては悪くないが、展開としては凡庸の一言に尽きる。
    そして、とにかく主人公のキャラが、もう訳がわからない。
    基本線は、愚直なまでに真摯に生徒に向き合う、というキャラなのだろうけれど、いきなり「死者の通う学校」に放り込まれて、校長の「あなたならできる」「あなたの真面目さがいい」とちょっとおだてられただけであっさりその気になっちゃう。
    大丈夫かこいつ。
    変な壺とか買わされるタイプなんじゃないの?と不安になる。
    まあ、百歩譲って順応性の高すぎる善良すぎる人物なのだろう、と思いきや、いじめの果てに殺された生徒の霊と話す中で、突然、復讐の鬼のような形相に変わり、「その恨みを晴らしましょうか。私たちで」などと言い出す。
    あれ?私は何の漫画を読んでたんだっけ?とマジでわからなくなった。
    続いて、誰に教わったわけでもないのに「死導」「狂育的指導」などというパワーワードを振りかざす。
    何なんだお前は。
    しまいには、いじめた生徒たちへの罰として、「生涯、霊の玩具になる」という終わらない悪夢を科す。
    ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムかお前は。

    私の評価と世間の評価が割れることなんかまあ、多々あるし、何の世界でも作品に対する評価というのはそういうものだということは重々承知しているが、いくら何でも、これはおかしい。
    うーん、やっぱり消されるか?このレビュー。

    • 43
  4. 評価:3.000 3.0

    並んで、向き合って

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    あまりに頻繁に広告が流れてきて、「ねえ、何で妻は口をきいてくれないのかな!?何でかな!?」と夫に泣きつかれているような気分になり、「うるせえなあ、読んでやるよ」と読み始めた。
    そして一度読み始めると、さすがに謎、というか疑問が解けるまでは読んじゃうじゃんか。
    似たような読者は多かろう。
    とにかく読ませれば勝ち、という商売と考えるならば、まあ、成功なんじゃないの。
    読んだ私の負けである。

    話の前半(というか大半)は夫の視点で進むので、「なぜ妻が」の疑問とそれに対するストレスを読者は夫と共有することになるのだが、正直「いや、お前が気づいてないだけで妻の側にはずっと不満があって、何かのきっかけで糸が切れたんだろ、どうせ」という予想とも呼べない考えはずっとあり、実際そのとおりの内容なので、話としては別に面白くも何ともない。
    まあ、現実的にはこんなもんだろう。

    ちょっと評価したのは、夫と妻の視点、双方を描くことで、「気づかない」夫の愚かさがわかりやすく描かれている点。
    夫の見ている世界と妻の見ている世界は違うのよ、と。
    こういうケースの典型だが、男って本当にね、馬鹿よね。
    (ちなみに私は男性である。)

    あと、これは本質的には作品に対する評価とは無関係だが、私はこの漫画の夫も妻も嫌いである。
    夫については言うまでもない、シチュエーションだけ見れば同情したくなるが、馬鹿すぎる。
    妻については、何であれ、無視はいけないと私は思う。
    それをやるなら別れなきゃ駄目だ。
    別れないなら向き合うべきだ。
    別れるか、向き合うかだ。

    私は私なりに、何年か夫という立場をやってみて、今つくづく思うのだが、夫婦は、本質的には「向き合う」相手ではないと思う。
    横に並んで、歩んでいく、抽象的な言い方になるが、お互いを見るのではなく、二人で並んで、何かを見る。
    二人で見るその景色が、世界が、あまりずれていないならば、多分、わりに上手くいっている夫婦なのだろう。
    (この漫画の夫婦はそれがずれまくっている。)
    ただ、向き合わないといけない瞬間というのは、どこかで来る。
    そういうときに、逃げちゃいけないんじゃないかな。
    少なくとも、一度は愛した相手ならばね。

    • 32
  5. 評価:4.000 4.0

    気軽に読める京極堂

    京極堂が「京極堂」になる以前、教師をしていた頃の話。
    本家のようなヘビーなテイストではなく、もう少し平和な類の謎を、中禅寺先生が解き明かす筋立て。

    この作者が漫画化した京極夏彦の作品はいくつか読んだのだが、ストーリーといい作品の雰囲気といい、原作の再現度が素晴らしく、「鉄鼠の檻」のレビューでは、原作小説にとってこれほど幸福な漫画化はそうないと思う、ということを私は書いた。
    本作は原作者に京極夏彦の名前はあるけれど、どうやら小説の漫画化ではなく、漫画オリジナルの話らしい。
    それにどこまで京極夏彦が関わっているのかはわからないが、こんなものを出すあたり、京極夏彦自身、この漫画家をよほど評価しているのだろうと想像される。

    京極夏彦の小説の難点として(まあそれは魅力と表裏なのだが)、どうしても「気軽には読めない」ということはあると思う。
    よくも悪くも、それが京極夏彦という人間の作家性であるし、京極堂シリーズの特性でもある。
    一見さんお断り、みたいなノリであり、それはまんま、京都のノリでもある。
    その点、本作は随分とハードルが低く、気軽に、手軽に読める京極堂、という作風を実現している。
    当然、それによって損なわれている部分もあるにはあるが、「ライトな京極堂」というのが本作のコンセプトなんじゃないかと思うし、それは成功していると言ってよいかと思う。

    • 48
  6. 評価:4.000 4.0

    ゾンビmeetsウシジマくん

    掃いて捨てるほどあるゾンビパニック系の作品だが、パリッとオリジナリティーがあって、面白かった。

    まず、時代性に乗っかったフットワークの軽さがいい。
    本作のゾンビウィルスは「噛まれなければ感染しない」というゾンビ界隈の伝統をあっさり破り、飛沫感染あり、とコロナウィルスの影響をもろに打ち出している。
    爆発的な感染によって起こる都市部のパニックもコロナのそれと重なるような作りになっていて、総理や都知事の造形なんかは「よくクレーム来なかったな」というレベルで現実に寄せている。
    ゾンビもので籠城と言えばスーパーマーケット、と相場が決まっているのだが、本作がラブホテルでの籠城、という舞台を選んでいるのも、何かこう、象徴的である。
    この舞台装置がまたなかなか上手く機能しており、キャラクターたちの背景とも相まって、独特の緊迫感を生んでいる。
    あくまで「今」の社会を描くんだ、という気合いは半端ではなく、本作にあっては、ゾンビはほとんどコロナのメタファーみたいな印象すら受けた。

    もうひとつ特筆すべきは、過剰なほどに殺伐とした作品の空気感である。
    「闇金ウシジマくん」の世界観にゾンビを持ち込んだ、と言えば、かなり作品の雰囲気が伝わるかと思う。
    これが実に魅力的で、こけおどしのグロ描写だけに依存するのとは全く別種の、「大人のゾンビ漫画」、と呼ぶに相応しい。
    いささか作り過ぎの感はあるにせよ、誰も彼も一筋縄ではいかないダークサイドを抱えて生きていて、特に病んだ地下アイドルの造形なんかは素晴らしいと思った。
    登場人物たちのバックグラウンドがきちんと描き込まれているだけに、彼らの激情が炸裂するシーンはほとんど感動的ですらあり、前述の地下アイドルの戦闘シーンなんかは「SLAM DUNKの山王戦かいな」と見まがうほどのドラマチックな緊張感とスピード感があって、マジでしびれてしまった。

    ゾンビ漫画の伝統を適度に打ち破りながら、このジャンルの歴史に新たな楔を打ち込んだ、新時代のゾンビ漫画。

    • 44
  7. 評価:2.000 2.0

    支離滅裂

    こういう言い方は何だけど、ホラー作品というものに対して、通常の意味合いにおけるリアリティーとか整合性とか、それほど求めているわけではない。
    しかし、いくら何でもちょっと滅茶苦茶すぎやしないだろうか。
    作者には脈絡とか必然性とかいう概念がないのではないかと思うくらい、支離滅裂である。
    子どもの頃なら強引に楽しませられたと思うが、大人になってこれについてこいと言われると、正直、ちょっとしんどい。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    流石

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    私はこの作者を結構支持していて、現代における犬木加奈子の再来なんじゃないかと思っている。
    長編でも連作でもない、まるっきりの短編を読んだのは初めてだったのではないかと思うが、流石であった。

    ホラーにおいて、人間、特に子どもの「入れ替わり系」というのはひとつの話のパターンとしてあるのだが、それを綺麗にひっくり返して、狂気の所在を落としどころにもってくるその様は、シンプルながらもパリッとしていて、「これぞホラーの短編」という趣があり、満足であった。

    • 18
  9. 評価:4.000 4.0

    コンセプトアルバムとしての漫画

    個々のストーリーはちょっと小粒な印象を受けるものの、まるで一枚のコンセプトアルバムのような世界観、ポップでキュートな独特のホラーテイストは、なかなか魅力的だった。
    現代的なセンスに溢れる作品だが、センスだけで適当に転がしたような無機質さはなく、この作品世界がきちんと愛情をもって構築されているが感じられて、好感度は高かった。
    アルバムで言ったらボーナストラックでありリードトラックでもある、というような位置づけの「リビングデッド・ベイビー」はやはり頭ひとつ抜きん出ていて、素晴らしい。

    • 3
  10. 評価:4.000 4.0

    キュートでドライで潔い

    私の苦手な女性の殺し屋設定(そんなのいるわけねえじゃん、と思っちゃう)の漫画だが、なかなかどうして、面白かった。

    リアリティー、ない。
    作品の奥行きだとか、深みだとか、そういうことを言いだせば、まあ、正直、ない。
    にも関わらず、スピード感に溢れる美しいアクションと、キュートでドライな殺し屋少女の造形は、実に爽快感と清涼感に溢れていて、いやー、空っぽだけど、とても楽しい時間だった。
    印象としては、何も考えずに見られるスタイリッシュなアクション映画のそれで、「何もないこと」をストレートに楽しめる作品も、やはりいいな、と。
    そういうタイプの作品は、小手先のごまかしがきかない分、絶対的な力量・技量が、如実に作品に表れる。
    その点、お見事である。

    だいたい、タイトルが潔くていいじゃんか。
    大して深いものなんか何もないのに、「何かありそう」なことを標榜する作品が巷に溢れる中、「いや、バイオレンスとアクションしかないっすよ」という堂々たる提示は、賞賛に値する。

    • 10

設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています