4.0
ゾンビmeetsウシジマくん
掃いて捨てるほどあるゾンビパニック系の作品だが、パリッとオリジナリティーがあって、面白かった。
まず、時代性に乗っかったフットワークの軽さがいい。
本作のゾンビウィルスは「噛まれなければ感染しない」というゾンビ界隈の伝統をあっさり破り、飛沫感染あり、とコロナウィルスの影響をもろに打ち出している。
爆発的な感染によって起こる都市部のパニックもコロナのそれと重なるような作りになっていて、総理や都知事の造形なんかは「よくクレーム来なかったな」というレベルで現実に寄せている。
ゾンビもので籠城と言えばスーパーマーケット、と相場が決まっているのだが、本作がラブホテルでの籠城、という舞台を選んでいるのも、何かこう、象徴的である。
この舞台装置がまたなかなか上手く機能しており、キャラクターたちの背景とも相まって、独特の緊迫感を生んでいる。
あくまで「今」の社会を描くんだ、という気合いは半端ではなく、本作にあっては、ゾンビはほとんどコロナのメタファーみたいな印象すら受けた。
もうひとつ特筆すべきは、過剰なほどに殺伐とした作品の空気感である。
「闇金ウシジマくん」の世界観にゾンビを持ち込んだ、と言えば、かなり作品の雰囲気が伝わるかと思う。
これが実に魅力的で、こけおどしのグロ描写だけに依存するのとは全く別種の、「大人のゾンビ漫画」、と呼ぶに相応しい。
いささか作り過ぎの感はあるにせよ、誰も彼も一筋縄ではいかないダークサイドを抱えて生きていて、特に病んだ地下アイドルの造形なんかは素晴らしいと思った。
登場人物たちのバックグラウンドがきちんと描き込まれているだけに、彼らの激情が炸裂するシーンはほとんど感動的ですらあり、前述の地下アイドルの戦闘シーンなんかは「SLAM DUNKの山王戦かいな」と見まがうほどのドラマチックな緊張感とスピード感があって、マジでしびれてしまった。
ゾンビ漫画の伝統を適度に打ち破りながら、このジャンルの歴史に新たな楔を打ち込んだ、新時代のゾンビ漫画。
- 39
不死と罰