rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
31 - 40件目/全506件
  1. 評価:4.000 4.0

    ゾンビmeetsウシジマくん

    掃いて捨てるほどあるゾンビパニック系の作品だが、パリッとオリジナリティーがあって、面白かった。

    まず、時代性に乗っかったフットワークの軽さがいい。
    本作のゾンビウィルスは「噛まれなければ感染しない」というゾンビ界隈の伝統をあっさり破り、飛沫感染あり、とコロナウィルスの影響をもろに打ち出している。
    爆発的な感染によって起こる都市部のパニックもコロナのそれと重なるような作りになっていて、総理や都知事の造形なんかは「よくクレーム来なかったな」というレベルで現実に寄せている。
    ゾンビもので籠城と言えばスーパーマーケット、と相場が決まっているのだが、本作がラブホテルでの籠城、という舞台を選んでいるのも、何かこう、象徴的である。
    この舞台装置がまたなかなか上手く機能しており、キャラクターたちの背景とも相まって、独特の緊迫感を生んでいる。
    あくまで「今」の社会を描くんだ、という気合いは半端ではなく、本作にあっては、ゾンビはほとんどコロナのメタファーみたいな印象すら受けた。

    もうひとつ特筆すべきは、過剰なほどに殺伐とした作品の空気感である。
    「闇金ウシジマくん」の世界観にゾンビを持ち込んだ、と言えば、かなり作品の雰囲気が伝わるかと思う。
    これが実に魅力的で、こけおどしのグロ描写だけに依存するのとは全く別種の、「大人のゾンビ漫画」、と呼ぶに相応しい。
    いささか作り過ぎの感はあるにせよ、誰も彼も一筋縄ではいかないダークサイドを抱えて生きていて、特に病んだ地下アイドルの造形なんかは素晴らしいと思った。
    登場人物たちのバックグラウンドがきちんと描き込まれているだけに、彼らの激情が炸裂するシーンはほとんど感動的ですらあり、前述の地下アイドルの戦闘シーンなんかは「SLAM DUNKの山王戦かいな」と見まがうほどのドラマチックな緊張感とスピード感があって、マジでしびれてしまった。

    ゾンビ漫画の伝統を適度に打ち破りながら、このジャンルの歴史に新たな楔を打ち込んだ、新時代のゾンビ漫画。

    • 39
  2. 評価:2.000 2.0

    支離滅裂

    こういう言い方は何だけど、ホラー作品というものに対して、通常の意味合いにおけるリアリティーとか整合性とか、それほど求めているわけではない。
    しかし、いくら何でもちょっと滅茶苦茶すぎやしないだろうか。
    作者には脈絡とか必然性とかいう概念がないのではないかと思うくらい、支離滅裂である。
    子どもの頃なら強引に楽しませられたと思うが、大人になってこれについてこいと言われると、正直、ちょっとしんどい。

    • 4
  3. 評価:4.000 4.0

    流石

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    私はこの作者を結構支持していて、現代における犬木加奈子の再来なんじゃないかと思っている。
    長編でも連作でもない、まるっきりの短編を読んだのは初めてだったのではないかと思うが、流石であった。

    ホラーにおいて、人間、特に子どもの「入れ替わり系」というのはひとつの話のパターンとしてあるのだが、それを綺麗にひっくり返して、狂気の所在を落としどころにもってくるその様は、シンプルながらもパリッとしていて、「これぞホラーの短編」という趣があり、満足であった。

    • 17
  4. 評価:4.000 4.0

    コンセプトアルバムとしての漫画

    個々のストーリーはちょっと小粒な印象を受けるものの、まるで一枚のコンセプトアルバムのような世界観、ポップでキュートな独特のホラーテイストは、なかなか魅力的だった。
    現代的なセンスに溢れる作品だが、センスだけで適当に転がしたような無機質さはなく、この作品世界がきちんと愛情をもって構築されているが感じられて、好感度は高かった。
    アルバムで言ったらボーナストラックでありリードトラックでもある、というような位置づけの「リビングデッド・ベイビー」はやはり頭ひとつ抜きん出ていて、素晴らしい。

    • 3
  5. 評価:4.000 4.0

    キュートでドライで潔い

    私の苦手な女性の殺し屋設定(そんなのいるわけねえじゃん、と思っちゃう)の漫画だが、なかなかどうして、面白かった。

    リアリティー、ない。
    作品の奥行きだとか、深みだとか、そういうことを言いだせば、まあ、正直、ない。
    にも関わらず、スピード感に溢れる美しいアクションと、キュートでドライな殺し屋少女の造形は、実に爽快感と清涼感に溢れていて、いやー、空っぽだけど、とても楽しい時間だった。
    印象としては、何も考えずに見られるスタイリッシュなアクション映画のそれで、「何もないこと」をストレートに楽しめる作品も、やはりいいな、と。
    そういうタイプの作品は、小手先のごまかしがきかない分、絶対的な力量・技量が、如実に作品に表れる。
    その点、お見事である。

    だいたい、タイトルが潔くていいじゃんか。
    大して深いものなんか何もないのに、「何かありそう」なことを標榜する作品が巷に溢れる中、「いや、バイオレンスとアクションしかないっすよ」という堂々たる提示は、賞賛に値する。

    • 9
  6. 評価:3.000 3.0

    不運

    気づいたら身体にガチャがついていた、という主人公のバトルギャグ漫画。

    丁寧だし、新しいし、ある部分「ガチャの時代」である現代にマッチしているし、いい完成度のギャグ漫画だとは思うのだけれど、何故だか全く入り込めなかった。
    変な言い方だが、面白いはずなのに、笑えなかった。
    こういうのはもう、我々の出会いが不運だったと言う以外にない。
    特にギャグ漫画はたまにこういうことがあるからマジで困る。

    仮に私がギャグ漫画の作者だったとしたら、「いい漫画だけどイマイチ笑えない」と言われるより、「マジで下らないけど笑える」と言われる方が、百倍嬉しいだろうな、というような不毛なことだけを、私は考えていた。

    私と作品の出会いというガチャは、外れたのだ。
    うーん、あんまり上手いこと言えてねえな、今の。

    • 4
  7. 評価:3.000 3.0

    スプラッターというアイデンティティー

    昔懐かしのホラー漫画。
    表題作の「白い病気」を読んだが、心理的な恐怖ではなく、思わず目を背けたくなるような生理的な恐怖描写、要するにスプラッター的な表現にはなかなか見るべきところがあって、感心した。
    これがこの作家のアイデンティティーかと思う。
    こんなのが少年少女の読むホラー漫画雑誌に普通に載っていたのだから、長閑な時代だったのだろう。

    しかし、ホラーとして見た場合はグダグダというか滅茶苦茶で、私は関東の人間だが、思わず「何でやねん」と呟いた。
    完全にギャグだろ、こんなもん。
    まあ、それを含めてホラー漫画という文化なのだとも思うのだけれど。

    • 2
  8. 評価:4.000 4.0

    錦のように、鳥のように

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    ざっくり言うと、感情と日常生活に関する知識が欠落した超能力少女が、殺し屋をさせられている、という話。
    主人公の少女は自らの左目(普段は眼帯で隠している)を見た相手を精神世界みたいなところに引きずり込む能力を持ち、その世界において無敵である(映画「エルム街の悪夢」とか、ジョジョ第3部の「デス13」みたいな感じをイメージしてもらえるといいかと思う)。

    舞台は1970年代で、話は毎回、主人公が他の子どもたちと昭和の遊びに興じる前半と、精神世界において残酷にターゲットを葬る後半に分かれている(殺し方には、主人公が前半で学んだ遊びの方法が反映されている)。
    正直、読み始めたときはいささか退屈だった。
    ほのぼのとした前半と、シュールで悪夢的な後半のギャップが魅力のひとつなのだが、「それだけでしょ」と思ったのだった。

    だが、読み進めるうちに、印象が変わった。
    登場人物たちが皆、何かしら痛みを背負っていて、その真摯な描き方に優しさを感じた。
    それは、家庭環境の問題であったり、差別の問題であったりするのだが、ここで重要になってくるのが、時代性である。
    1970年代という時代・社会を生きていた人々の、ともすれば現代の我々からは縁遠い種類の傷が、妙にひりひりと刺さる。
    その時代性、そして普遍性の価値。
    私は昔ブルース・スプリングスティーンが好きで、今でもときどき聴くのだけれど、傷ついた人々に静かに寄り添うこの漫画の立ち位置は、何だかブルース・スプリングスティーンの歌を思い起こさせた。

    ちょっと残念だったのは、おそらく打ち切りで、ラストが駆け足になってしまったことだ。
    ただ、そんな中でも、決して雑にならない終幕と、何よりも、おそらく作者がこの漫画の中で一番描きたかったのであろう台詞、「私の心は私のものよ」という主人公の台詞には、シンプルだけれど、やはりグッときた。

    ぼろは着てても心は錦、なんて言葉がある。
    その言葉の是非はともかく、どれほど困難な世界において、どれほど過酷に生きているのであれ、心だけは、自由であることが出来る。
    だから、心は素晴らしいのだ。
    私はそう思うから、この漫画を全面的に支持する。

    • 4
  9. 評価:4.000 4.0

    カルトを巡るあれこれ

    この世で最も嫌いなもののひとつがカルト宗教である。
    だからもう、主人公がそれに立ち向かうという設定だけで、私は全力で応援してしまう。
    妻をカルト教団から取り戻すなんてもう、感情移入の度合いが激しくなりすぎてヤバい。

    本作の主人公は、一見すると何かイマイチやる気のない感じが、逆にリアリティーがあってよかった。
    たぎるほどの正義感とか、燃え盛る妻への愛とか、そういうものをストレートには描いておらず、かなり抑制した描き方をしながら、その根っこには譲れないものがちゃんとあるのだ、ということが伝わる。
    私はそういう表現というのが好きだし、特に「大人」に向けての作品は、そうであるべきだとつくづく思う。

    カルト教団の造形も、まあ、いくぶん漫画的な誇張というか、「いくら何でもそりゃないだろ」というところはあるにせよ、その薄気味悪さ、躍動的な嫌悪感を撒き散らす様は、なかなか面白かった。

    余談だが、最近「カルト・オブ・ザ・ラム」という「カルト教団の教祖になる」というゲームをやって、これがたいそう面白かった。
    カルト宗教大嫌い、なのに、カルト教団の教祖になるゲームは嬉々として遊べる。
    人間の(私の)こういう柔軟性というかいい加減さというか、実に興味深いし、恐ろしい。
    「自分だけは大丈夫」なんて思わずに、肝に銘じて生きていかないとね。
    いや、マジな話。

    • 60
  10. 評価:2.000 2.0

    死神依存症

    両親に先立たれた主人公の少女か、「100人の魂を天国に送れば両親を生き返らせてやる」という死神みたいな男に出会うのだが…という話。

    設定倒れの典型というか、もう少し広げたり掘り下げたり出来なかったのか、というのが正直な感想であった。

    何よりネックなのが、主人公に肩入れしにくい。
    不幸な生い立ちであることには同情するが、怪しげな男に簡単に心を許し、かと思えば「あんたなんかただの殺_人鬼よ!」と啖呵を切った直後に、今度は男が去って行こうとすると背中から抱きつく。
    どんだけ情緒不安定なんだお前は。

    両親を生き返らせることと、自らの倫理観や罪悪感との葛藤、みたいなものをきちんと描くのではなく、孤独に対する漠然とした恐怖や、死神野郎への依存が主人公の行動原理になっているようにしか思えず、まるで応援する気になれなかった。

    • 6

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