5.0
闘う君の唄を
死_刑囚となった連続殺_人犯の両親のもとに生まれた三人の姉弟のストーリー。
まず、主人公たちの造形が素晴らしい。
両親に殺_人の片棒を担がされた過去を持ち、普通の人生を送ることを諦めている長女。
彼女が秘める静かな悲しみと強さは、可愛らしいけれどどこか悲しげに見える作画と相まって、切々と胸に迫る。
一方、長女に守られながら育った次女は、両親の呪縛から逃れ、恋人と新しい家族を築きたいと夢見る。
次女の明るさは長女と好対照だが、彼女もまた苦しみながら、自らの人生を生きようと必死でもがいている。
両親の記憶がない長男は、二人の姉との間に自分が立ち入れない領域があることに不満を抱えつつ、俺の人生どうなっちゃうのかな、的に浮遊しているような位置づけだが、この少年のリアリティーも見事だと思う。
そして、この三人が三人とも、絶対的に互いを愛している。
自分たちが背負った十字架を確定的なものとして生きる長女は、結果的に二人を縛ってしまってもいるのだが、妹も弟も、「自分の人生」を切望しながら、結局「三人の人生」を捨てずに生きることを決めている。
それが余計に切ない。
長女につきまとう記者、あまりに人が出来すぎていて逆に怪しい次女の恋人、SNSで身分を偽って長男に接触する謎の人物など、作品を不穏に盛り上げるアイテムも実によく練られていて、作品の根幹はヘビーだが、サスペンスとしても非常に楽しめるものに仕上がっている点も見逃せない。
罪という問題に関して、国と文化によっては、宗教が祈りと赦しのシステムとして機能するのだろうが、よくも悪くも、この国にそれはない。
神なき国における親の犯罪と子が背負う十字架、加害者家族を巡るメディアの報道など、社会派的な一面も作品にはあるのだが、そういう難しい問題は抜きにしても、私はただただ、三人に幸せになってほしい、と願った。
呪わしい運命を背負って懸命に生きる彼らの人生を、心の底から応援したいと思った。
中島みゆきの「ファイト!」でも歌ってやりたいと思った。
ていうか読みながら歌っていた。
闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう。
冷たい水の中をふるえながらのぼってゆく三人を待つものが温かな祝福であることを、切に祈る。
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祝福されないこどもたち