rokaさんの投稿一覧

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21 - 30件目/全506件
  1. 評価:5.000 5.0

    闘う君の唄を

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    死_刑囚となった連続殺_人犯の両親のもとに生まれた三人の姉弟のストーリー。

    まず、主人公たちの造形が素晴らしい。
    両親に殺_人の片棒を担がされた過去を持ち、普通の人生を送ることを諦めている長女。
    彼女が秘める静かな悲しみと強さは、可愛らしいけれどどこか悲しげに見える作画と相まって、切々と胸に迫る。
    一方、長女に守られながら育った次女は、両親の呪縛から逃れ、恋人と新しい家族を築きたいと夢見る。
    次女の明るさは長女と好対照だが、彼女もまた苦しみながら、自らの人生を生きようと必死でもがいている。
    両親の記憶がない長男は、二人の姉との間に自分が立ち入れない領域があることに不満を抱えつつ、俺の人生どうなっちゃうのかな、的に浮遊しているような位置づけだが、この少年のリアリティーも見事だと思う。

    そして、この三人が三人とも、絶対的に互いを愛している。
    自分たちが背負った十字架を確定的なものとして生きる長女は、結果的に二人を縛ってしまってもいるのだが、妹も弟も、「自分の人生」を切望しながら、結局「三人の人生」を捨てずに生きることを決めている。
    それが余計に切ない。

    長女につきまとう記者、あまりに人が出来すぎていて逆に怪しい次女の恋人、SNSで身分を偽って長男に接触する謎の人物など、作品を不穏に盛り上げるアイテムも実によく練られていて、作品の根幹はヘビーだが、サスペンスとしても非常に楽しめるものに仕上がっている点も見逃せない。

    罪という問題に関して、国と文化によっては、宗教が祈りと赦しのシステムとして機能するのだろうが、よくも悪くも、この国にそれはない。
    神なき国における親の犯罪と子が背負う十字架、加害者家族を巡るメディアの報道など、社会派的な一面も作品にはあるのだが、そういう難しい問題は抜きにしても、私はただただ、三人に幸せになってほしい、と願った。
    呪わしい運命を背負って懸命に生きる彼らの人生を、心の底から応援したいと思った。
    中島みゆきの「ファイト!」でも歌ってやりたいと思った。
    ていうか読みながら歌っていた。
    闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう。
    冷たい水の中をふるえながらのぼってゆく三人を待つものが温かな祝福であることを、切に祈る。

    • 33
  2. 評価:4.000 4.0

    ナウでお洒落な推理ギャグ

    真っ当な推理漫画であり、真っ当なギャグ漫画である。
    これは、新しい。

    例えば「金田一少年」にだってギャグ的な部分はあるが、それはあくまでシリアスなミステリという本筋の緊張緩和の役割を果たしているだけ(ときにはそこに伏線があったりもするが)であって、基本、ギャグとしては寒い。
    「コナン君で爆笑した」とかないし、そんなの誰も求めていない。
    本作のように、推理とギャグをきちんと両立させた漫画というのは、稀有な例ではなかろうか。

    ギャグ漫画としての本作の基本線はシンプルで、典型的なボケとツッコミ、漫画内におけるある種の漫才なのだが、絶妙なリズムとテンポによって支えられており、真似できないセンスを感じさせる。
    美麗な作画も相まって、現代的で洒落た推理ギャグに仕上がっていると思う。

    星をひとつ引いたのは、話が進んでからの「VS巨悪」みたいな文脈があまり嗜好に合わなかったためだが、そんなのは些事の範疇に過ぎない。

    • 3
  3. 評価:4.000 4.0

    醜い大人、美しい覚悟

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    漫画として好きになれたわけではなかった。
    だが、いじめを題材にした中で、これほど誠実な作品には出会ったことがなかった。

    いじめが漫画の中で扱われる場合、誤解を恐れずに言えば、それは基本的にエンタメの道具である。
    過酷ないじめからの苛烈な復讐からのカタルシス。
    まあ、それはそれでいい。
    いじめをエンタメだなんて、不謹慎な!というポリコレ派の怒号が聞こえてきそうだが、そんなこと言ったら、ほとんどのミステリは殺_人エンタメだっつーの。

    この漫画は、そういう作品群とは決定的に袂を分かつ。
    本作は作品の中でほとんど何も解決しないし、いじめの被害者と加害者、どちらの味方もしない。
    「いじめられる側の味方」にならなければ、エンタメとしてのいじめ作品は描けない。

    加害者の親、被害者の親、どちらもムカつく、という非難はよくわかる。
    加害者の母親は自身がいじめられた過去から娘への嫌悪感を抑えられず、娘と向き合えない。
    被害者の母親は娘が不登校になったことから加害者への恨みを募らせ、歪んだ復讐心から暴走していく。
    父親たちはどちらも役に立たない。
    教師はもっと役に立たない。
    おいおい大人たち、しっかりしろや、と。
    それは、そうなんだけど。
    いじめを外から眺めている限りにおいて立派なことが言える大人たちも、自分の子どもが被害者に、あるいは加害者になったとき、それほど立派ではいられないのではなかろうか?
    本作が示したかったのは、いじめに直面したときに多くの大人たちが持ち得る弱さであり、醜さなのだと思う。
    その中で、被害者の母親が最後に辿り着く「自分の子どもが絶対に加害者にならないと言い切れるのか?」という気づきは、とても残酷で、でも、素晴らしい。

    犯罪を巡る論議になる度に、必ず見る意見がある。
    「自分の家族が被害者になっても、同じことが言えるのか!」というやつである。
    これ以上ない正論だが、私はその意見が嫌いだ。
    わかりやすいし、破壊力があるが、想像力を停止して反論を封じるだけのずるい意見だと思うからだ。

    悲観的な物言いになるが、いじめがなくなることは多分ない。
    悲しいことに、解決策もないのかもしれない。
    だだ少なくとも、被害者を、そして加害者を、真摯に見つめることによってしか何かが始まることはないのだと、本作から感じたのはそんな覚悟だったし、その覚悟を、私はとても美しいと思った。

    • 6
  4. 評価:1.000 1.0

    この罰当たりが!

    漫画に限らず、創作において現実の事件や風習を(それと明言せずに)下敷きにするのはよくあることで、それ自体はまあ、別に問題ないんじゃないか、と私は思っている。

    しかし、いくら何でもこれはまずいだろ。
    本作の奇祭「ボド祭り」の造形は、明らかに、というかあからさまに、宮古島の祭り「パーントゥ」をパクっている。
    姿形ばかりではない、「泥を塗る」という祭りの内容までパクった上で、幼稚なホラー設定を勝手に付与している。
    いいのかこれ?
    いやいやいやいや、いいわけない。
    祭りというその土地の神聖なものに対して、よりにもよってホラー漫画の低レベルな悪役みたいに描いて泥を塗る(まさにね)など、あっていいはずがない。
    ていうか自分の漫画に出てくる祭りの内容くらい少しは自分で考えろ、阿呆か。
    これがイスラム教だったら冗談抜きで制作者サイドの人間は暗殺されているし、日本だって訴訟起こされたら負けるぞ。
    宮古島の関係者、誰か訴訟やってくれ。

    私は特に、というか全く信心深い人間ではないが、宮古島の人々が本作を知ったときの心中を察すると、怒りを禁じ得ない。
    本当にね、こんなことやってると、罰が当たると思うよ。
    頑張れパーントゥ、この作品の制作者全員に罰を与えてくれ。

    • 19
  5. 評価:3.000 3.0

    本質的に再現不可能

    私は以前から雨穴さんのYouTubeが好きで、結構見ていた。
    テレビとも映画とも違う、新しい時代の映像表現として、感嘆と敬意を持って視聴していた。
    YouTubeという媒体にはネガティブな側面もあるが、こういう才能が出てくるのも、時代だな、と。

    ただそれは、やはり「ああいう表現方法」であるからこその魅力であって、話を単体でそのまま漫画のフォーマットに落とし込んでも、あの独特の吸引力を再現することは到底出来ない。
    もちろん、そんなことはわかっていて読んだわけだ。
    だから、本質的に再現不可能な映像表現に、漫画という媒体でどう挑み、どう勝負するのか。
    漫画は漫画として、漫画にしか出来ない「何か」が絶対にあるから。
    それが、私の焦点だった。

    本作に漫画としての大きな瑕疵があるわけではない。
    丁寧なタッチには好感も持った。
    だが、残念ながら想定を超えるような何かは何もなかったし、これだったら雨穴さんのYouTubeを見ていれば十分だろ、という以上の感想は沸かなかった。

    • 2
  6. 評価:3.000 3.0

    醜いものを醜く

    就活に失敗した、いたってノーマルな(まあ結果的にはノーマルじゃなかった、という話なんだろうけど)青年が、裏社会と繋がりのある会社に入社したことで、徐々に悪の道に手を染めていく、みたいな話。

    話の進みはテンポよく、それなりに楽しくは読んだ。
    しかし、根本のところで、私は説得力もリアリティーも感じられなかった。

    ひとつは、主人公の変貌について。
    本作は、「普通の人間が裏社会の闇に触れて堕ちていく」という文脈で主人公の変化を描いているのではなくて、「主人公にはもともとそういう資質があった」という描き方をしている。
    それは「転落」というより「覚醒」に近い。
    それ自体は別にいいのだが、こいつにその「資質」がある、ということを、私はどうしても信じられなかった。
    「普通の人間」が根元的なレベルの価値観を変動させてゆく様を描くのは、とても難しい。
    だからこそ、そこがこういう作品の勝負どころだと思うのだが、「いや、こいつもともと悪の素質あってん」というのは、都合のいい逃げのように見えてしまった。

    また、裏社会のディテールについても、何かと浅い気がして仕方がなかった。
    もちろん、私を含めた読者の多くは、裏社会のことなんか実際には知らない。
    漫画だから脚色も必要だろう。
    しかし、少なくとも「こういうこと実際にあるんだろうな、知らんけど」と思わせるだけのリアリティーは欲しいし、それが満たされているとは思えなかった。

    個人的には、一番決定的に入り込めなかったのは、「醜いものをちゃんと醜く描いていない」と感じたことだった。
    これは単なるの印象の問題だし、上手く言えない。
    ただ、作品の中で醜いものをちゃんと描くというのは、結構勇気の要ることだと私は思っていて、本作はそこから逃げているように感じた次第である。
    まあそのぶん、エネルギーを使わずに気楽に読める、というのはある。
    それをこの種の作品の美点として数えられるかは、何とも言えないのだけれど。

    • 4
  7. 評価:2.000 2.0

    これはしょうがない

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    主人公は牧師で、連続殺_人犯に息子を殺されて信仰を捨てる。
    色々あってその犯人の娘を養子に迎えることになるのだが、娘は「父親は犯人ではない」と訴える…というようなストーリー。

    牧師の主人公が聖人君子ではなく、生前の息子への接し方など、あくまで弱さや不完全さを持ち、後悔を抱えて生きている、という点はリアルでよかった。
    が、他はマジで何もない。

    重いタイトルが示すような、信仰を巡る葛藤というテーマは全く掘り下げられることなく、ミステリ的な部分はグダグダ、いやもうこれ、相当酷い。
    設定以外のストーリーが何も決まっていない状態で連載が始まってしまったのではないかとすら思った。
    もしかして本当にそうなのか?
    そんなことあんの?

    まず間違いなく打ち切りエンドだけど、これは正直、しょうがないな。
    まあ、ある意味、好きな作品が打ち切られるより、納得の打ち切りの方がずっとマシだ、とも言える。

    • 5
  8. 評価:2.000 2.0

    透けて見える大人の事情?

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    霊能力を見込まれて、「死者が通う学校」で教師(でありながら死者たちを成仏させる役割も担う)を務めることになった主人公の話。

    最初に、根拠も何もない陰謀論みたいなものを書いて申し訳ないが、評価が高すぎて、怪しい。
    あまり露骨なことを言うとレビューが消されるような気がするのでやめておくが、【完全独占配信】の謳い文句があって、何か、そういうことなんじゃないの?と勘ぐってしまうくらい、正直、酷かった。

    設定としては悪くないが、展開としては凡庸の一言に尽きる。
    そして、とにかく主人公のキャラが、もう訳がわからない。
    基本線は、愚直なまでに真摯に生徒に向き合う、というキャラなのだろうけれど、いきなり「死者の通う学校」に放り込まれて、校長の「あなたならできる」「あなたの真面目さがいい」とちょっとおだてられただけであっさりその気になっちゃう。
    大丈夫かこいつ。
    変な壺とか買わされるタイプなんじゃないの?と不安になる。
    まあ、百歩譲って順応性の高すぎる善良すぎる人物なのだろう、と思いきや、いじめの果てに殺された生徒の霊と話す中で、突然、復讐の鬼のような形相に変わり、「その恨みを晴らしましょうか。私たちで」などと言い出す。
    あれ?私は何の漫画を読んでたんだっけ?とマジでわからなくなった。
    続いて、誰に教わったわけでもないのに「死導」「狂育的指導」などというパワーワードを振りかざす。
    何なんだお前は。
    しまいには、いじめた生徒たちへの罰として、「生涯、霊の玩具になる」という終わらない悪夢を科す。
    ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムかお前は。

    私の評価と世間の評価が割れることなんかまあ、多々あるし、何の世界でも作品に対する評価というのはそういうものだということは重々承知しているが、いくら何でも、これはおかしい。
    うーん、やっぱり消されるか?このレビュー。

    • 41
  9. 評価:3.000 3.0

    並んで、向き合って

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    あまりに頻繁に広告が流れてきて、「ねえ、何で妻は口をきいてくれないのかな!?何でかな!?」と夫に泣きつかれているような気分になり、「うるせえなあ、読んでやるよ」と読み始めた。
    そして一度読み始めると、さすがに謎、というか疑問が解けるまでは読んじゃうじゃんか。
    似たような読者は多かろう。
    とにかく読ませれば勝ち、という商売と考えるならば、まあ、成功なんじゃないの。
    読んだ私の負けである。

    話の前半(というか大半)は夫の視点で進むので、「なぜ妻が」の疑問とそれに対するストレスを読者は夫と共有することになるのだが、正直「いや、お前が気づいてないだけで妻の側にはずっと不満があって、何かのきっかけで糸が切れたんだろ、どうせ」という予想とも呼べない考えはずっとあり、実際そのとおりの内容なので、話としては別に面白くも何ともない。
    まあ、現実的にはこんなもんだろう。

    ちょっと評価したのは、夫と妻の視点、双方を描くことで、「気づかない」夫の愚かさがわかりやすく描かれている点。
    夫の見ている世界と妻の見ている世界は違うのよ、と。
    こういうケースの典型だが、男って本当にね、馬鹿よね。
    (ちなみに私は男性である。)

    あと、これは本質的には作品に対する評価とは無関係だが、私はこの漫画の夫も妻も嫌いである。
    夫については言うまでもない、シチュエーションだけ見れば同情したくなるが、馬鹿すぎる。
    妻については、何であれ、無視はいけないと私は思う。
    それをやるなら別れなきゃ駄目だ。
    別れないなら向き合うべきだ。
    別れるか、向き合うかだ。

    私は私なりに、何年か夫という立場をやってみて、今つくづく思うのだが、夫婦は、本質的には「向き合う」相手ではないと思う。
    横に並んで、歩んでいく、抽象的な言い方になるが、お互いを見るのではなく、二人で並んで、何かを見る。
    二人で見るその景色が、世界が、あまりずれていないならば、多分、わりに上手くいっている夫婦なのだろう。
    (この漫画の夫婦はそれがずれまくっている。)
    ただ、向き合わないといけない瞬間というのは、どこかで来る。
    そういうときに、逃げちゃいけないんじゃないかな。
    少なくとも、一度は愛した相手ならばね。

    • 28
  10. 評価:4.000 4.0

    気軽に読める京極堂

    京極堂が「京極堂」になる以前、教師をしていた頃の話。
    本家のようなヘビーなテイストではなく、もう少し平和な類の謎を、中禅寺先生が解き明かす筋立て。

    この作者が漫画化した京極夏彦の作品はいくつか読んだのだが、ストーリーといい作品の雰囲気といい、原作の再現度が素晴らしく、「鉄鼠の檻」のレビューでは、原作小説にとってこれほど幸福な漫画化はそうないと思う、ということを私は書いた。
    本作は原作者に京極夏彦の名前はあるけれど、どうやら小説の漫画化ではなく、漫画オリジナルの話らしい。
    それにどこまで京極夏彦が関わっているのかはわからないが、こんなものを出すあたり、京極夏彦自身、この漫画家をよほど評価しているのだろうと想像される。

    京極夏彦の小説の難点として(まあそれは魅力と表裏なのだが)、どうしても「気軽には読めない」ということはあると思う。
    よくも悪くも、それが京極夏彦という人間の作家性であるし、京極堂シリーズの特性でもある。
    一見さんお断り、みたいなノリであり、それはまんま、京都のノリでもある。
    その点、本作は随分とハードルが低く、気軽に、手軽に読める京極堂、という作風を実現している。
    当然、それによって損なわれている部分もあるにはあるが、「ライトな京極堂」というのが本作のコンセプトなんじゃないかと思うし、それは成功していると言ってよいかと思う。

    • 9

設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています