rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
1 - 10件目/全509件
  1. 評価:2.000 2.0

    ペラペラの邪悪

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    復讐モノは、エンタメとして描かれる限り、復讐する側に読者が感情移入できるような作りが基本になる。
    だから、「悪役」の造形は極端になりがちだ。
    「こんな奴、復讐されてもしょうがないよね」と思ってもらう必要があるからだ。
    まあ、それはいい。
    それはいいのだが、ここまで極端な上に薄っぺらいと、本当に冷める。
    主人公の夫や姑のキャラクターは、嫌な奴とか悪い人という枠を超越して、もう、邪悪な何かである。
    何でもかんでも悪く描けばいい、というものではない。
    「現実枠」の物語において、過剰な「いや、そんな奴おらんやろ」は大きな瑕になる。
    また、困ったことに、本作の邪悪にはどこまでも「作り物」の薄っぺらさがつきまとう。
    例えば「ジョジョ」のディオ・ブランドーは邪悪だ。
    プッチ神父も邪悪だ。
    しかし、彼らを誰も「薄っぺらい」とは言わない。
    そういうことである。
    何もディオやプッチ神父を描けと言いたいわけではない。
    ただ、浅いにもほどがあるぞ、と言いたい。

    なお、そこまで極端な悪役たちを配しておいて、主人公に感情移入できるかと言えば、それも非常に厳しい。
    こんな邪悪な人間たちと家族になり、何となく生きていて、挙げ句、かつての憧れの先輩にあっさりときめいて騙される。
    そんな人間に対して「阿呆か」という以上の感情を抱くのは困難であって、私は早々にギブアップした。
    やれやれだぜ。

    • 11
  2. 評価:3.000 3.0

    ぶれる文脈

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    単純に、一人の女性が自立を獲得する話、として私は読んだ。

    こういう話は、往々にして夫を極端な悪者にする傾向にある(読者を主人公に肩入れされるためにはまあそれで正しい)が、本作はちょっと違って、妻も結構な駄目人間である。
    自分の力で生きていく、というものがまるでない。
    ただ、繰り返し、夫に依存して何となく生きてきたそういう女性が自立する、という話なのだから、これもこれで正しいかと思う。

    夫婦の関係性の描き込みはかなり浅いところにとどまっているが、そもそも、夫婦の問題、というのはおそらく本作の本筋ではないであろうから、それもまあ、よしとしよう。

    ただ、どうにも受け入れがたかったのは、自立への道を歩み始めた主人公が、容易にイケメン税理士に「抱き締めて」とか言っちゃう浅薄さと、それに税理士があっさり応じてしまうという都合のよすぎるロマンス的な文脈である。
    こういうのが一定の読者層に効果があるものだというのは理解はするが、私はどうしても許容できない。
    こういう生半可な描写があると、主人公の自立、という大切な文脈がぶれる。
    何がしたかったんだお前は、となる。
    お前、というのは主人公ではない。
    作品そのものだ。

    まるで別の漫画の話になるが、「闇金ウシジマくん」の中で私が最も好きな台詞のひとつに、「孤独を受け入れないと大人になれない」というのがある。
    孤独というのは何も、一人ぼっちで生きることを意味しているのではない。
    一人でも生きていけるという覚悟と能力のある人間になれなければ、結局食い物にされるんだ、とウシジマくんは言っているわけだ。

    本作の主人公の「抱き締めて」は、要するに「一人で生きていく覚悟がないわ」という叫びであって、それは自立からも、そして実のところ愛からも、最も遠いところにある。
    それを本作でやるべきではなかったと私は思う。
    百歩譲って、税理士、突っぱねろや。
    「あなたはまだそんなことを言ってるんですか?」って言えや。
    ウシジマくんばりに迫力出せや。
    まあ、無理か。
    そうだわな。

    • 8
  3. 評価:5.000 5.0

    才覚の極点

    はっきり言って主人公の男はイタい奴だし嫌な奴である。
    現実世界でこういう男に出会ったら、特に女性の皆様は40秒で支度して逃げ出すことを推奨する。
    そういう人間を単に「こういう奴いるよね、最低だよね」と描くことは多くの漫画家なり何なりがやる。
    しかし、この天才漫画家は違う。

    同じ作者の「今夜すきやきじゃないけど」という作品のレビューで、私は、現実世界では離れたくなるような類いの人間を、作品において可愛らしく魅力的に描けてしまうのがこの作者の才覚のひとつだ、という意味のことを書いた。
    本作はその才覚の極点を示す漫画だと思うし、それは漫画に限らず、フィクション全般においてとても大切なことなのではないかと思っている。

    その才覚を根本のところで支えているのは、人間に対する徹底した優しさ、寛容さである。
    駄目人間、とかよく言うが、おそらく全ての人間が、多かれ少なかれ駄目な要素を持っている。
    それをどこからどう見るか、というだけの話で。
    あるいは、それをどれだけ上手く隠して生きているか、というだけの話で。
    ただ、言えることは、どんなふうに生きてみたって、人生はそんなにイージーモードにはならない、ということだ。
    天才も駄目人間も、それぞれ地獄を抱えて生きているのだと思う。

    どれほどの功績を残した人間も、どれほど美しい人間も、何かひとつあれば徹底的に叩かれるような寒々しい時代にあって、私が本作から感じたのは、否定的なタイトルとは裏腹に、「叩ける理由より愛せる理由を探してやろうよ」という温かさであって、それが、私は好きであった。

    • 11
  4. 評価:4.000 4.0

    駄目人間の可愛さ

    続編。
    といっても、ストーリー上に直接の繋がりはなく、本作を単独で読んでも全く問題はない。

    何度も何度でも言うがこの作者はマジで天才で、その才覚のひとつに、「現実世界で出会ったら離れたくなるような人間をとても可愛く魅力的に描く」というものがある。
    前作に比べて、本作はその技量が顕著に発揮されていると感じた。
    「技量」と書いたが、それは、単なる技術的な問題ではなく、人間に対するある種の優しさが根本にないと成立しない。
    素晴らしい。

    星をひとつ引いたのは、前作があまりに完璧に過ぎたためであり、不満はまるでない。

    • 3
  5. 評価:3.000 3.0

    そもそも原作が

    大正時代のホラー(と呼んでいいものか)小説が原作。
    原作は未読だったが、漫画を読んだ後で、青空文庫で一応読んだ。

    原作はともかく漫画としては…という作品は多々あるが、本作の場合、そもそも原作がどうかと思う。
    雑なイメージとしては、宮沢賢治の「注文の多い料理店」みたいな作品の枠組みに、この時代特有のエログロナンセンス的な風味をつけたもの、という印象を持った。
    ホラーというジャンルは洗練という概念に囚われると上手くいかないと私は思っているし、ある種の「訳のわからなさ」というのが原作の魅力であることも一定の理解はできるが、ここまで荒っぽいと、流石に支離滅裂という感想が先に立ってしまい、受け入れ難かった。
    こういう作品を読むと、文学もやはり進歩しているのだということがよくわかる。
    少なくとも本作が「時代が変わっても色褪せない」的な名作であるとは到底思えなかった。

    漫画としては、作品の空気感をなかなか巧みに伝えていたとは思う。
    だが、繰り返し、そもそも原作が、という話である。
    どうでもいいけど、作中、主人公が屋敷を出ていく・いかないのくだりはあまりに冗長で、「いい加減にしろ」と私は叫んだ。

    • 3
  6. 評価:3.000 3.0

    どうしてこんなことに

    ネタバレ レビューを表示する

    あの「ぬ~べ~」の読み切り限定復活、みたいな漫画。
    イメージとしてはほとんどスピンオフに近く、完全にコメディである。

    もともと「ぬ~べ~」は、純然たるホラー漫画というわけではなくて、ホラーの題材を用いた、ギャグありバトルありの少年漫画、という位置づけの作品だと思っているから、コメディであること自体は別に構わない。
    しかし、申し訳ないが、そのコメディがはっきり言って絶望的につまらない。
    昔は楽しく読んだ漫画だし、何かいいことを書きたいが、正直、フォローのしようがない。
    過去のキャラクター総出演的なサービスもあるのに、かつての「ぬ~べ~」ファンであれば読んでみてもいいかもしれない、と発言することすら躊躇われる。

    少年時代の記憶に免じて、星をひとつ足した。

    • 3
  7. 評価:2.000 2.0

    そんなに甘くない

    誤解を恐れずに言えば、私は人間の狂気や異常性といったものに非常に強く惹かれる。
    それは私がヤバイ人間だからではなく、本質的には普通の人間だからだと思う。

    まあ、それはいい。
    それはいいとして、適切な言い方かわからないが、狂気や異常性に対して、ある種のリスペクトみたいなものが感じられない作品、「何かヤバくね?」という適当な作り物の異常っぽさを放り投げたような作品というのが、私は嫌いだ。
    それは結局のところ、人間そのものへの視線が真摯さを欠いているということだと思うし、本作はその典型だと思う。

    小説や映画や漫画は、どんな人間だって描くことが出来る。
    それ自体は、素晴らしいことだ。
    だからこそ、書く側が「何でもありだ」と雑に臨むことが、私は嫌いだ。
    正常も異常も、きちんとそれを描くことは、そんなに甘くない。

    • 6
  8. 評価:4.000 4.0

    もしもヒーローがいるなら

    壮絶ないじめ、からの苛烈な復讐。
    それは今や、いじめを扱う漫画の完全なテンプレである。
    その全てを否定するつもりもないが、そのようにして作品化され消費されるいじめという題材は、何だかもうただのアイテムに過ぎないような気がする。
    それを嘆くわけではない。
    ただ、何だかなあ、という思いだけがあった。

    本作は、そのような作品とは全く違う。

    「いじめ探偵」の設定は、表面的なリアリティーという意味では破綻している。
    しかし、彼の台詞に私はハッとした。
    「ボクは、いじめを終わらせるために仕事をしたんだ。彼らに"罰"を与えるために仕事したんじゃない」
    「キミが毎日、友達と楽しく過ごす―それが"最大の復讐"になる」
    本作は、作品としての根本のリアリティーを犠牲にしながら、いじめとどう向き合って生きるか、という部分のリアリティーでは、有象無象の作品群を圧倒している。
    「目には目を」の安直なカタルシスに流れるのではなく、あくまで健全な精神で、いじめと、それに立ち向かう子どもと大人を描こうとしている。
    悪に立ち向かうが、俺は悪には落ちない。
    そんな当たり前の立ち位置を保持できる漫画がこの手のジャンルには少なすぎる中、本作の心意気はとても真っ当で、強いと思った。

    いじめを解決するために無償で仕事をする。
    そんな探偵はいない。
    いじめという問題に、たぶんヒーローはいない。
    しかし、もしもフィクションの力を借りてそれを描くなら、これ以上の描き方はないような気がした。

    • 5
  9. 評価:3.000 3.0

    大きすぎる違和感

    類い稀なる絵画の才能を持つが、経済的にはあまり恵まれていない高校生の主人公。
    あるとき、同じ美術部の友人の絵の具を盗んで使ってしまうところを、別の部員に見られてしまい...というストーリー。

    私はコーエン兄弟の映画みたいな転落劇が結構好きで、スタートはワクワクした。
    決して「いい奴」ではない、周囲を見下して生きているような主人公の屈折した造形もよかった。

    しかし、話が進むにつれ、「絵の具をちょっと使ってしまったことをなぜにそこまで」という違和感がどうしてもつきまとってしまい、根本のところで話に入り込めなかった。
    作中では、友人の絵の具を無断で失敬するという行為が、他の全てを犠牲にしても隠蔽せねばならない大罪のように描かれているのだが、これ、どう考えてもおかしい。
    主人公は、自らの行為を目撃した部員に脅されて、どんどん深みにはまっていくが、「いや、そんなことをするくらいなら、『ごめん!どうしても金に困ってて、あのとき、お前の絵の具勝手に使ってもうてん、ホンマごめん!』って言ったらええですがな」という感情があらゆる場面でいちいち湧いてきて、その大きすぎる違和感を払拭してくれる要素は、本作には存在しなかった。

    • 4
  10. 評価:5.000 5.0

    溢れる愛と狂気

    連載開始から、ずっと追ってきた。
    もうすぐ完結しそうなので、この機会に書くが、毎回が最終回なんじゃないかと錯覚させられるような、異様なテンションの作品だった。
    私は待つのが嫌だから、漫画は完結してから読みたい人間だが、週刊連載という形式で読んでいて本当によかった、と思える稀有な漫画だった。

    映画にちょっと詳しい読者なら「どこかで見たことある」アイテムをふんだんに用いながら、それでいて、全く新しいB級ホラーエンターテイメントとして完成されていると思う。

    これほど映画への愛情に溢れた漫画というのを、私は他に知らない。

    かつて私も、映画に対して愛情を持っていた時期があった。
    だから、私がこの漫画に見たのは、自分の失ってしまった愛情の影でもあったのかもしれない。

    • 4

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