独占有名人インタビュー:土田晃之 「漫画は漫画でいい」
更新日:2017/07/28 10:00
冷静で的確なツッコミと話力の高さから、バラエティ番組に引っ張りだこの土田晃之さん。サッカーや漫画・アニメなど、色んなジャンルに造詣が深い土田さんならではの切り口で、漫画について語っていただきました!
土田晃之
「ドラえもん」「キン肉マン」「キャプ翼」からの「ガラスの仮面」
――土田さんは少年時代にどんな漫画を読んでいましたか?
生まれて初めて買った単行本は、「ドラえもん」(藤子・F・不二雄/小学館)でした。小学校1年生の時で、4巻と16巻だったかな? たしか本屋にそれしか置いてなかったんです。小1だから字もあまり読めなかったし、「ドラえもん」は大体1話完結だったから、漫画というものが1巻から順に読んでいくこともよく分かっていなかったんです。それから小学校2年生のとき、朝の登校メンバーの上級生から 「キン肉マン」 (ゆでたまご/集英社) を貸してもらって、漫画ってどんどん続いていくものなんだって知りました。
土田晃之
――当時、他にはどんな漫画にハマっていましたか?
あの頃、学校の休み時間はみんなサッカーをやっているくらいサッカーが流行っていて、そんなときにクラスメイトから「キャプテン翼」 (高橋陽一/集英社) のことを聞きました。これがもう読んだらすっかりハマっちゃって、自分もサッカーをするようになりました。
「キャプ翼」が連載されていた頃の「週刊少年ジャンプ」(集英社)は、「北斗の拳」(武論尊・原哲夫/ノース・スターズ・ピクチャーズ)があったり、「CAT’S EYE」(北条司/ノース・スターズ・ピクチャーズ)から「シティーハンター」(北条司/ノース・スターズ・ピクチャーズ)へ、「Dr.スランプ」(鳥山明/集英社)から「DRAGON BALL」 (バードスタジオ/集英社) になったり、ちょうどそんな移り変わりがあるときで、いい時代だったなって思いますね。
――やっぱり少年漫画を読むことが多かったのでしょうか。
そっち系以外も読んでましたよ。中学校1年生の頃だったか、親戚の家に遊びに行って従妹から「ガラスの仮面」 (美内すずえ/白泉社) を薦められたんです。親戚の家に居るときは結構退屈だったから、読みふけってましたね。そこからすっかりハマっちゃって、学校でも「ガラスの仮面」 (美内すずえ/白泉社) が面白いって話をしたら、クラスの女子が続きの巻を貸してくれたんです。
それを国語の授業中に読んでたら、主人公・北島マヤの母親が死ぬシーンでもう号泣ですよ。先生にそれを目撃されて、「土田くん、どうしたの?」って聞かれたから、「マヤのお母さんが……」と答えたら、「そんなことよりも教科書を…」って(笑)。
こわい先輩の本気“壁ドン”
――少年漫画も少女漫画も、面白いものはジャンル問わず読んでいたんですね。
そうですね。中学生になってくると、ヤング系に移っていきました。「BE-BOP-HIGHSCHOOL」 (きうちかずひろ/講談社) や「湘南爆走族」(吉田聡/少年画報社)とか、ヤンキー漫画が盛り上がっていた時期だったので、読み漁ってましたね。それでヤンキーファッションにすごく憧れて、友達と「かっこいいね」「でもこんな格好したら3年生に目をつけられるね…」って話してたんですけど、「まずは定番の裏ボタンから」って気付かれないように少しずつ改造していったんです。でも、すぐ先輩から「お前これ標準じゃねぇな」って因縁をつけられてボコられました。あのとき先輩にされた本当の壁ドン、怖かったですね…全然キラキラしてないやつ。
土田晃之
――服装だけヤンキーを取り入れていたんですね。
僕や周りの友達は全然不良とかではなくて、ただただ外見がヤンキーなだけ。ヤンキー漫画によく出てくる特殊警棒みたいなやつを買ってる友達もいたんですけど、人を殴ったりはせず、警棒をシャキーンって出した後、すぐしまうっていう(笑)。当時の不良文化って、武器を使ったり、大人数VS一人みたいなケンカはカッコ悪かったんですよ。まあ、実際ケンカすることもなかったけど(笑)。
――他にもお気に入りのヤンキー漫画はありますか?
大好きなのは、「クローズ」 (C)高橋ヒロシ(月刊少年チャンピオン・秋田書店)や「WORST」 (C)高橋ヒロシ(月刊少年チャンピオン・秋田書店)。大人に近くなってから読んで、ほんとカッコイイなって。女性キャラがほとんど出てこなくて、ストレートに硬派な漫画ですよね。
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――「クローズ」は実写化もされましたね。漫画原作の実写化は賛否両論あるものですが、土田さんとしてはどう見ていますか?
土田晃之
漫画原作の実写化は、心底面白いと言える作品が少ないように思います。これは今に始まったことじゃないですけどね。古くは目黒祐樹さんの「ルパン三世」(1974年の実写映画)や「ドカベン」(1977年の実写映画)とか、かなりヤバかった(笑)ハリウッド映画の「DRAGON BALL」も僕的にはね……。
当時、僕のところに出演依頼が来たんですけど、「来週の日曜にメキシコで撮影」という無茶苦茶なスケジュールだったのでお断りしました。
「アメトーーク!」(テレビ朝日系)の「DRAGON BALL芸人」の回を向こうのキャスティング担当者が見たようで、そのときいかにも詳しそうに語っていた僕に白羽の矢が立ったのかな。
――土田さんは「アメトーーク!」の「キングダム芸人」の回で、プレゼンされる側として出演されていましたね。
「土田さんはガンダム好きだから、歴史も好きなはず」ってよく言われるんですけど、僕は歴史が全っ然ダメで、日本の歴史もわからないのに、ましてや外国の歴史なんてさらに知らねーよって。
でも、「キングダム」 (原泰久/集英社) は「アメトーーク!」で話を聞いて、結構興味を持ちました。番組で内容はざっくりと聞いていたので、とりあえず3巻くらいまでは金出して読んでみるかくらいの軽いノリだったけど、だんだん本格的に面白くなってきちゃって、「ああ、『アメトーーク!』で得た情報を頭から消したい」ってなりましたね。
だって、王騎(おうき)が死ぬことを知っていながら読むんですよ? みんながアツくなる展開なのに、僕は「このあたりで死ぬのかな。あ、まだか」みたいな感じで、ちょっと虚しいというか。でも、番組で触れられていない、ネタバレしていないところからはすごく純粋に楽しんで読みました。
- 青年漫画 キングダム
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「スカイラブ・ハリケーン」はどんどんやるべき
――面白い漫画との出会いは、番組や誰かからのオススメによることが多いですか?
僕もおっさんになって、昔よりも率先して漫画を読まなくなりましたからね。以前よりもアンテナを張れていないかな。品川庄司の品川が「この漫画、面白いっすよ」って薦めてきて、一応メモしておくんだけど、たいがい読まないです。
――品川さんも同インタビュー企画で、好きな漫画について色々とお話してもらいました(→品川祐さんインタビュー)。お二人の間でも漫画の話をするんですね。
まあ、あの人の話は基本的にあまり聞きたくないです。品川自身はしゃべっているとき楽しそうなんですけど、聞いているこっちは結構苦痛ですからね(笑)。そのあたりは本人にも言ってあるので大丈夫ですよ。
土田晃之
あとは、「GIANT KILLING」 (ツジトモ・原案:網本将也/講談社) は超好きです。漫画のランキングでいつも上位に入っていて、気になってはいたんですけど、僕の中でサッカー漫画といえばやはり「キャプテン翼」 (高橋陽一/集英社) なので、なかなか手を出せなくて。でも、じわじわと読んでみたら堪らなく面白くて、「キャプ翼」を超えたんじゃないかと思いました。
――「キャプテン翼」はサッカー漫画の伝説的な作品ですが、「GIANT KILLING」は同じサッカーという題材でも内容は別物ですよね。
「GIANT KILLING」 (ツジトモ・原案:網本将也/講談社) は、監督・選手・サポーター・経営者・メディアとか、試合戦術もそうだけど、色んなところに焦点があてられていて、すごく深く読み込める漫画だと思います。大体、巻ごとに一つ二つは熱くなるシーンがあって、特に、主人公・達海猛(たつみ たけし)の現役復帰を匂わせおいて、選手と一緒にミニゲームをする場面はグッときましたね。
試合中、足がもたなくなってピッチに倒れ込んでしまう達海。古典的な漫画だったら、主人公がどんなケガや逆境にあっても、やっぱり勝つじゃないですか。この漫画に登場するキャラは、物凄い天才でもスーパーマンでもなくて、“本当にいる”感じがする。良いところも悪いところも皆リアルに描かれていて、やっぱり人間ってそうだよなって。
- 青年漫画 GIANT KILLING
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本当にいい監督はゲームを面白くしてくれる! 達海猛(たつみ・たけし)、35歳、イングランド帰り...
――最後はなんだかんだでヒーローが勝つ!という漫画も楽しいんだけど、リアルに描かれている作品の面白さもありますよね。
土田晃之
でも、僕は“漫画は漫画でいい”と思っています。リアルなものも面白いし好きなんだけど、そればっかりだと夢がなくなっちゃってワクワクしないですよね。おばちゃんが韓国ドラマを好きなのも、少女漫画みたいな甘い夢がつまってるから。だから、漫画は「スカイラブ・ハリケーン」(キャプテン翼の立花兄弟の空中技)をどんどんやるべきなんですよ。
ちなみに、それを防ぐためにあらかじめゴールポストの上に登る描写があったけど、普通に反則ですからね(笑)。
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便利じゃないことを面白いと思えるか
――土田さんは電子で漫画を読みますか?
最初の頃は電子に否定的で、紙の本を並べたい派だったんですけど、一回電子で読んだらガラッと変わりました。とにかく、かさばらないし、地方や海外へ行くにもタブレット一つあれば何冊でも持っていける。今は大好きな「北斗の拳」(武論尊・原哲夫/ノース・スターズ・ピクチャーズ)の全巻をタブレットに入れてます。
――古い作品でも手軽に電子で手に入るのは嬉しいですよね。
「はしれ走」(みやたけし/小学館)っていう古いサッカー漫画あるんですけど、電子で探したらあったので感激して買いました。
あと電子で思うところは、誰かに自分の本棚を見られる心配がないですよね。ということは、やっぱりエロなんですよ。でも、エロ本って恥ずかしい思いをして買うのが醍醐味じゃないですか。友達みんなでなけなしの100円を出して合ってエロ本自販機を目指す――すごくドキドキして楽しかったなあ。自販機だと買う前に中身を確認できないから、買った後に中を見て絶望したり(笑)。
土田晃之
――エロ本自販機、懐かしいですね(笑)。
どんなに遠くだろうと自転車を走らせて、それで全然疲れないからエロの力はすごい。
話が逸れちゃったけど、今は電子でも何でも簡単に手に入るようになったけど、便利じゃないことを楽しむ姿勢は失っちゃいけないと思います。
――めちゃコミック10周年にかけて、土田さんの10年後はどんなものにしたいと思っていますか?
「将来こうなりたい」と常に思っているのは、早く仕事をしないで生活できるようになりたいってことですね(笑)。それが人間の最大の理想なんじゃないかな。あ、10年後ならうちの子どもたちが成人してるな。
――土田さんは、子沢山としてもお馴染みですね。ちなみに、お子さんたちも漫画を読むんでしょうか?
長男はたくさん漫画を持っているみたいだし、次男はよく僕の部屋の本棚から何かしら借りていきます。次男とは「進撃の巨人」 (諫山創/講談社) の話をたまにするんですけど、あいつの方が原作をガンガン読んでいて先を知ってるもんだから、ちょくちょくネタバレしてくるので困ってます。
まあ10年後は、子どもたち各々ちゃんと結婚するなり何なり、良い大人になっていてくれたら良いですね。僕自身も離婚してないように頑張ります。
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土田晃之
漫画に影響された青春時代の話や古き良き時代のあるある話まで、土田さんのルーツに触れられたようなインタビューでした!
写真:原恵美子
シャツ:イッカ(株式会社コックス)
https://www.cox-online.co.jp/brand/ikka/
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プロフィール
土田晃之(つちだてるゆき)
1972年生まれ、埼玉県育ち。1991年にお笑いコンビ「U-turn」を結成、2001年の解散後はピン芸人として活動する。バラエティ番組を彩る“ひな壇芸人”のパイオニアとして、冷静で飄々としたキャラクターと切れ味のいいコメントが持ち味。漫画やアニメをはじめ、サッカーや家電など、幅広いジャンルに精通している。主な出演番組に、ラジオ『日曜のへそ』(ニッポン放送)、『この差って何ですか?』(TBS系)、『欅って、書けない?』(テレビ東京系)など。
◆株式会社 太田プロダクション 土田晃之 公式プロフィール
http://www.ohtapro.co.jp/talent/TsuchidaTeruyuki/
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