「漫画はオフを作り出すツール」 FC東京クラブコミュニケーター・石川直宏×MF三田啓貴 漫画と歩んだサッカー人生<後編>

「漫画はオフを作り出すツール」 FC東京クラブコミュニケーター・石川直宏×MF三田啓貴 漫画と歩んだサッカー人生<後編>

更新日:2020/03/13 10:00

FC東京で選手時代はクラブからもサポーターからも愛され、現在はクラブコミュニケーターを務める、元サッカー日本代表の石川直宏さん(38)。そして現在FC東京でMFとして活躍し続ける三田啓貴選手(29)――2012年から2015年まで一緒にプレーもしていた2人は、世代は違えども少年時代から漫画がそばにあるサッカー人生を送ってきました。「翼くんは憧れだった」という石川さんと、「今も『週刊少年ジャンプ』を読んでいる」という三田選手、2人の漫画観とは?

マリーシア、処刑場跡地で入団テスト……少年時代のサッカー漫画

――インタビュー前編では石川さんに熱い「キャプテン翼」 愛を語ってもらいましたが、三田選手は好きなサッカー漫画はありますか?

三田:あまりサッカー漫画は読んだことがないのですが、中学生の頃は「ホイッスル!」 (樋口大輔/集英社) が好きでした。中学生になっても身長が伸びず不遇のサッカー生活を送っている風祭将(かざまつりしょう)が、小さいなりに努力と工夫を重ねて成長していく作品です。

好きだったサッカー漫画もジャンプ作品という三田選手

好きだったサッカー漫画もジャンプ作品という三田選手


石川:懐かしい、僕も読んでいました。

三田:特にシゲこと佐藤成樹(さとうしげき)は好きでしたね。見えないところでわざとハンドをしたりとマリーシア(ずる賢いプレー)をする、熱血系とは違った頭脳を使うサッカーの面白さがありました。戦術的なプレーも多く描かれていましたね。

審判にバレないようハンドをするシゲ

審判にバレないようハンドをするシゲ

ホイッスル!
(c) 樋口大輔/集英社

――石川さんは「キャプテン翼」 以外で好きなサッカー漫画はありますか?

石川:これも小学校の頃になりますが、「イレブン」(七三太朗・高橋広/集英社)です。高校でサッカーを始めた主人公・青葉茂(あおばしげる)が、不器用ながらもすさまじい努力でステージアップしていく物語。30年くらい前の作品なのに「ブレ球(無回転シュート)」が登場するなど、今思うと時代を先取りしていましたね。


――印象に残っているシーンは。

石川:茂が高校の途中で、ブラジルのプロ養成機関へ留学するんです。当時はカズさん(※三浦知良選手/横浜FC)がサッカー留学してブラジルでプロになったのが話題になりましたが、海外のクラブチームに日本人が入るにはまだまだ向かい風の時代で。「イレブン」でも高校生が海外に挑戦していく姿にエネルギーをもらっていましたね。あとは、そのプロ養成機関への入団テストの内容がものすごくて(笑)

さまざまなサッカー漫画からエネルギーをもらっていた石川さん

さまざまなサッカー漫画からエネルギーをもらっていた石川さん


――すごいというと……。

石川:なぜか死刑囚の処刑場跡地でテストをやるんです。凸凹だらけの高い塀の上を、ボールを落とさずに走り回されてドリブルの能力を見る、とか……。

三田:めちゃくちゃですね(笑)

石川:でも当時は「海外のチームに入るにはこんな厳しい訓練をしないといけないの!?」と子供心に驚いていましたね(笑)


選手生活において「オフ」を作り出すツール

――最近はさまざまなサッカー漫画が生まれていますが、プロから見て感銘を受けるような作品はありますか? それこそプレーに影響を受けるような。

三田:気になる作品はあるんですが全然読めていないんです。正直、漫画までサッカー漬けになりたくない気持ちもあって(笑) 僕の場合、漫画は完全にオフの時間として楽しんでいます。

漫画はプライベートの時間として切り離している、という三田選手

漫画はプライベートの時間として切り離している、という三田選手


石川:僕も同じですね。選手のオンとオフの切り替え方は人それぞれですが、僕は自然とリラックスできる状況を作り出すツールとして漫画を読んでいるかもしれません。タマ(※三田選手の愛称)なんかは特にそうなんじゃないかな。

三田:なので漫画から直接的にサッカーについて学んでいることは少ないかもしれません。ただ「ONE PIECE」 を読んでいるときに団結力の大事さを再確認する、みたいに間接的に感じているところはありますね。最近だと「約束のネバーランド」 (白井カイウ・出水ぽすか/集英社) という作品があるんですけど……。

石川:読んでるねぇ(笑)

三田:優しいママのいる孤児院で子どもたちが幸せに暮らしていたかと思ったら、実は子どもたちは鬼のための食用人間として育てられていたことが発覚して、命がけで脱獄を図る物語です。その子どもたちが脱出のために頭の中でいろんな戦術を張り巡らせるのは、かなりサッカーに通じるなと。

物語冒頭で、平和な世界がガラリと反転する

物語冒頭で、平和な世界がガラリと反転する

約束のネバーランド
(c) 白井カイウ・出水ぽすか/集英社

――特にどのあたりでしょう。

三田:孤児院を囲んだ外の壁まで何秒で到達できるのかを計って、みんなで逃げるためにはどの子がどんな役割を分担するべきか、徹底して考えるんです。サッカーも、技術に性格、身長など特徴の異なる選手たちが、勝利をつかむためにそれぞれ自分の役割を全うし、チーム一つにならなくてはいけないスポーツ。タイプの違う人間が協力して相手を倒す、というのは似ている気がしますね。

逃げるには戦略が必要だと覚悟を決めるエマ

逃げるには戦略が必要だと覚悟を決めるエマ

約束のネバーランド
(c) 白井カイウ・出水ぽすか/集英社

――石川さんはサッカー漫画以外で影響を受けた作品はありますか?

石川:小学校高学年から中学生の頃に読んだ作品になりますが、「お~い!竜馬」 (武田鉄矢・小山ゆう/小学館) です。坂本竜馬の生涯を描いた作品で、対立する薩摩藩と長州藩の間に入って同盟をもたらしたりと、歴史をも動かす存在感の大きさに憧れを感じました。

対立していた薩摩藩と長州藩を、竜馬の人柄が動かす

対立していた薩摩藩と長州藩を、竜馬の人柄が動かす

お~い!竜馬
(c) 武田鉄矢・小山ゆう/小学館

石川:あとは周りが草履を履いて刀を携えている中、竜馬は靴を履いてピストルを持ってと、時代の先端を取り入れます。そこで変わり者と言われようが、大局を見て我が道を行く姿は好きでした。もともと自分がそういうタイプだったのか、竜馬から影響を受けてそうなったのかどっちが先かはわかりませんが、Jリーガーを志した自分と重なりますね。


漫画の世界をさらに超えていくのがプロ

石川:とはいえ、最近のサッカー漫画も読みたい作品は多いよね。

三田:アオアシ」 (小林有吾/小学館) は選手の間でも話題ですよね。クラブユースが舞台になっているなんて珍しいので、さすがに気になっています。


――お二人ともJリーグの下部組織出身ですもんね(※三田選手はFC東京U-18、石川さんは横浜F・マリノスの下部組織出身)

石川:この間Jリーグの施設へ行ったとき、なぜか担当者が「アオアシ」 の単行本を抱えていたんです。理由を尋ねたところ「やっぱサッカー関係者として読まなきゃなと思って」「絶対読んだ方がいいよ」とかなり勧められました。サポーターの間でも人気だと聞きますし、今回の企画をきっかけに読んでみようかなぁ。


――他に気になる作品は。

石川:GIANT KILLING」 (綱本将也、ツジトモ/講談社) も、サッカーの監督を主人公にしただけでなく、クラブ経営にも深く切り込んだ作品だと聞いています。あと、あるサポーターの方から僕が「GIANT KILLING」 の登場人物と重なると言われたことがあったので、やはり気になっていますね。


――それは答え合わせしたくなる一言ですね。サッカー漫画はホペイロ(用具係)を主人公にした作品までも登場しているのですが、サッカーのさまざまな世界を描く作品が出ている状況はいかがですか。

三田:ホペイロ漫画なんてあるんですか(笑) でも、そうした漫画をきっかけにホペイロを目指す人が現れるのであればすごくいいと思います。サッカーにもまだまだ知られざる世界はいっぱいあるわけで、漫画の題材になることで少しでもサッカーへの間口が広がるのはうれしいですね。

漫画を通じてサッカーに興味を持つ人が増えるのは、いいこと

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石川:そうですね、それだけサッカーへの関心が高まっているというのは喜ばしいです。ただ、例えば漫画の世界でサッカーの斬新なアイデアが生まれたとしても、実際に試合でやるかどうか判断するのは選手じゃないですか。逆に選手は、その想像を覆すようなプレーを見せて観客をあっと言わせたい。いつもそういう姿勢でピッチに立っていると思います。

プロのサッカー選手は漫画の世界をプレーで覆していける、と石川さん

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三田:サッカー選手は誰もがそう思っているはずですよね。自分よりうまい選手がいっぱいいても、それが漫画の世界の話でも、結局はみんな自分が一番でありたいはずです。


――わくわくする言葉をありがとうございます……! 最後に、もしサッカー業界で漫画にしたら面白そうな題材はありますか?

三田:……FC東京をモデルにした作品をお願いします!(笑)



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サッカー漫画からイメージやモチベーションをもらいながらも、サッカー選手はその想像を超えていくものだ、とよどみなく言い切る姿に大きなプロフェッショナル精神を感じました。漫画でサッカーの知られざる世界に触れ、それ以上の興奮を味わいにスタジアムへ足を運びたい!



編集:有限会社ノオト
撮影:小野奈那子

プロフィール

石川直宏(いしかわ・なおひろ)

1981年生まれ、神奈川県横須賀市出身。育成組織から横浜F・マリノスに在籍し、2000年にトップチーム昇格、02年4月にFC東京に加入。03年J リーグ優秀選手賞、フェアプレー個人賞受賞、09年にはJリーグベストイレブンを受賞。U-23日本代表としてアテネオリンピックに出場し、日本代表でも6試合に出場。17年に現役を引退し、翌18 年よりFC東京クラブコミュニケーターを務めている。

三田啓貴(みた・ひろたか)

1990年生まれ、東京都世田谷区出身。2003年よりFC東京の下部組織に加入。2008年の日本クラブユース選手権 (U-18)大会では、準々決勝、準決勝、決勝で3試合連続得点を記録し、チームの優勝に貢献した。明治大学に進学後、12年7月にFC東京の特別指定選手として登録。16年にベガルタ仙台に期限付き移籍、18年にヴィッセル神戸に加入した後、19年7月にFC東京への3年ぶりの復帰が発表された。

◆FC東京 オフィシャルホームページ
https://www.fctokyo.co.jp/

◆TOKYOism(三田選手インタビュー)
https://www.fctokyo.co.jp/tokyoism/column/6

◆FC東京 公式Twitter
@fctokyoofficial

◆FC東京 公式Instagram
@fctokyoofficial

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作者

黒木貴啓

黒木貴啓

有限会社ノオト所属のライター・編集者。漫画を介したコミュニティユニット「マンガナイト」で執筆や選書、イベント企画などを手掛けている。
【Twitter】@abbey_road9696

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