独占有名人インタビュー:品川祐 「僕が漫画を語るうえで外せない作品」
更新日:2017/03/31 10:00
お笑い芸人だけではなく、作家や映画監督としても多彩な才能を発揮している品川祐さん。少年時代から今にいたるまで、ずっと漫画を読み続けている品川さんが、愛してやまない作品について、存分におしゃべりしてもらいました!
品川 祐
蔵書数3000冊を誇る、無類の漫画好き
――漫画好きとして知られる品川さんは、大体どれくらい読んできたのでしょうか。
僕は4人きょうだいの中で育って、みんな漫画好きだったので、それぞれが集めていた漫画を読み合いっこしていました。漫画雑誌でいうと僕はジャンプ、マガジン、サンデー、チャンピオン……、兄貴はヤンマガ、ヤンジャン、ヤンサン、モーニング、スピリッツ……みたいな感じで、少年誌と青年誌はきょうだいでほとんど網羅していたと思います。
芸人駆け出しの頃は、一日15時間も漫画喫茶に入るくらい漫画が好きで、自分でコミックスを揃えたいという思いはずっと持ってました。食べていけるようになってからは、中野ブロードウェイ(東京都中野区にある複合ビル。「サブカルの聖地」と呼ばれている)で、毎回漫画でパンパンになった袋を両手にかかえるくらいセット買いしてましたね。今は、家に2、3000冊くらいはあると思います。
――すごい蔵書数ですね。
娘が成長にしていくにつれて、どんどん漫画の置き場所がなくなってきているので、一時期は断捨離で段ボール10箱分くらい処分したり、最近ではほとんど電子です。
移動中とか出番待ちのときはそうだし、家でも大体電子で読んでますね。愛蔵版とかの漫画本はできるだけ残すようにはしています。
品川 祐
――品川さんにとって“漫画”とは、どんなものですか?
今でこそ漫画は市民権を得ているけど、一昔前はいい大人が漫画を読むことはみっともないっていう風潮がありましたよね。当時、たまたまテレビに出ていた評論家のおじさんが「小説は、文章から場面を思い描くから想像力を掻き立てる。でも、最初から絵が描いてある漫画だと、想像力が育たない」と言っていて、それに反発した僕は「もう意地でも漫画しか読まねえ!」と決めて、28歳あたりまで小説は一冊も読まずに漫画ばかり読んでいました。
僕としては、漫画は絵があってセリフもあるからこそ、その先のもっと深いところで、さらなる想像力が磨かれると思っていたんですよ。
そしたら、その数年後「色んな娯楽の中で、漫画がボケ防止に一番効く」という見解が出ていて、「ほら見ろ!」って。絵を見るのは右脳、字を読むのは左脳で、漫画は右脳と左脳を同時に使うから良いんだそうです。
「寄生獣」の展開の秀逸さたるや
――数ある漫画の中で、特に品川さんがイチオシの作品はなんですか?
「寄生獣」 (岩明均/講談社) ですね。連載当時は、兄貴が買っていた「月刊アフタヌーン」(講談社)で読んでいました。面白い漫画ってたくさんあるけど、長期連載になってくると良い意味でも悪い意味でも、展開に波があったりしますよね。でも「寄生獣」にはそれがなくて、10巻で終わるっていう歯切れの良さが秀逸でした。このテーマで描きたいことは全部描き切った!とでも言わんばかりに、すっぱり終わるのがいいですよね。
――長期になると、どうしても中だるみしてしまうものもありますからね。
中だるみしても、そこから頑張ってもう一段階面白くなることもありますよね。「寄生獣」は、中だるみやインフレすることもなく、あくまで最初に思い描いたアイデアを無駄なく形にしたところが、この漫画が一つ飛び抜けている理由なのかなって思います。
- 青年漫画 寄生獣
- 4.5 (718件)
少年漫画の礎を築いた名作漫画
――子供の頃からたくさん漫画を読んでいる品川さんですが、少年漫画ではどんな作品が好きですか?
“少年が戦いながら大人に成長していく”という少年漫画の王道として、大きな流れをつくったのが、「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) と「DRAGON BALL」 (バードスタジオ/集英社) だと思っています。
――「うしおととら」のお気に入りシーンはありますか?
挙げればきりがないくらいグッとくるシーンが多いんですよね。長い間、主人公の蒼月潮(あおつき うしお)を取って食おうとしていた妖怪・とらが、物語の最後の最後で潮に言ったセリフがもうたまらないです。
それと、これも終盤なんですけど、はじめは敵として潮たちの前に現れた凶羅(きょうら)が、皆のために人知れず戦っていたシーン。屍の山の上で「いつも、オレは… バカどものしりぬぐいだぜ。」と呟くところはかなりシビれましたね。
あとは、秋葉流(あきば ながれ)も好きです。潮の仲間だったのに、潮のことが眩しすぎて自分自身を見失いそうなったから裏切るって…。子供の頃はあまり意味が分からなかったけど、大人になってから読むとより感情移入しちゃいますね。すげえセンスだなって。
――主人公よりライバルや悪役に惹かれることが多いんでしょうか?
流は、ライバルが主人公と同等もしくはそれ以上にカッコイイという良い例ですよね。凶羅もそうだし、鏢(ひょう)やかまいたちの兄妹とか、脇を固めるキャラがめちゃくちゃ立っているんですよ。
…ただ、こういう話を芸人仲間とかに熱く語っても、大体が「子供の頃に読みましたね~」くらいで、軽く流されちゃう。「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) は漫画史を変えるくらいの名作なのに。
- 少年漫画 うしおととら
- 4.5 (497件)
伝説の「獣の槍」を操る少年・うしおと、五百年ぶりに解放された妖怪・とら。この不思議なコンビが贈...
ご飯も食べられないくらいワクワクした『DRAGON BALL』サイヤ人編
―― 一方の「DRAGON BALL」、こちらも言わずと知れた大ヒット作ですね。
一番好きなのは「サイヤ人編」です。超強力なサイヤ人、ベジータとナッパが地球にやって来て、孫悟空(そん ごくう)が帰って来るまで、孫悟飯(そん ごはん)やクリリン、ピッコロたちだけで戦うところ。餃子(チャオズ)の「さようなら天さん……」は代表的なシーンですよね。
「サイヤ人編」は何回読んでもワクワクできて、一度読み始めたらご飯も食べられないくらい没頭しちゃいます。
強者揃いの中、唯一の地球人クリリンが気円斬(きえんざん)を放って、ナッパとベジータをヒヤッとさせるシーン。クリリンのような凡人でも(地球人の中ではかなり強いけど)、努力していれば天才たちとも渡り合えるんだって、自分を投影して勇気をもらいました。
あと、「地球を… なめるなよ……!!」って、地球人じゃないピッコロが言うっていう(笑)。このシーンも良いですよね。「サイヤ人編」は僕的に名シーン、名セリフがたくさんあるんですよ。
――「サイヤ人編」以外だと、どのあたりが好きですか?
その次の「ナメック星編」も良いなあ。フリーザが、第二形態、第三形態と、どんどん強そうに変身していったのに、最終形態はツルンとちっちゃい感じになって。初見の時は衝撃でしたね。「こんな裏切り方、ありか・・・」って、鳥山明(とりやま あきら)先生の発想力に震え上がりました。
品川 祐
――「うしおととら」と「DRAGON BALL」、どちらも少年漫画の金字塔的作品ですが、それぞれ違った魅力がありますよね。
「DRAGON BALL」 (バードスタジオ/集英社) の鳥山明先生は、瞬発的に考えたアイデアを全て形にできる人なんだと思います。聞いた話なんですけど、鳥山先生は細かい設定を忘れがちで、例えば、担当編集者が「悟空は山でおじいちゃんに拾われた」「その幼少期に、崖から落ちて頭を打ったんですよね」と言ったら、「そうだったね」ってな感じで、そこから宇宙人(サイヤ人)の話につなげていったり、誰かに突っ込まれたら、じゃあこうしちゃえ!みたいなノリで、また新しいストーリーを作っていたそうなんです。ものすごく高質で、天才的なアドリブというか。ちゃんと計算してやっている部分も、もちろんあると思いますけどね。
品川 祐
一方、「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) の藤田和日郎(ふじた かずひろ)先生は、緻密に伏線を張り巡らしていて、それが終盤へかけてすごい盛り上がりとともに、一気に紐解かれていく。最初は、妖怪をやっつける話なんだなって読んでいたら、「獣の槍」を持って戦う者の宿命や、とらの正体とか、全話に渡って壮大な仕掛けがあって、「藤田先生の頭の中、どうなってんだよ!」って思います。
「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) と「DRAGON BALL」 (バードスタジオ/集英社) 、ストーリー、キャラ、演出のどれをとっても素晴らしくて、今も色んな面白い漫画があるけど、やっぱりその礎を築いた先駆者たちは偉大ですね。この2作品は僕が漫画を語るうえで、絶対外せないです。
- 少年漫画 DRAGON BALL
- 4.7 (2703件)
山奥に住む怪力で、メチャクチャ元気な孫悟空。ある日悟空は、七つ揃うとどんな願いも叶うという、ド...
10年後は今よりもっと楽しみなことが
――めちゃコミック10周年ということで、品川さんの10年後はどんなものにしたいと思っていますか?
今も十分楽しいけど、10年後の方がもっと楽しそうだなって思います。可愛い6歳の娘も、10年後には16歳になっているので、ちょっと大人の会話もできるのかなって。そのとき、娘が将来どんなことをやりたいとか、夢を話してくれたら嬉しいですね。反抗期の真っ只中で、全然話してもらえないかもしれないですけど(笑)。
――娘さんの成長は楽しみですね。ではご自身のお仕事としてはどうでしょうか。
昔みたいに、ただ売れたい、テレビに出たいってガムシャラだった頃よりも、今は余裕を持って、好きな番組に出たり、原稿を書いたり、映画を撮ったり、自分の好きなことができるようになりました。だから、10年後はもっともっと自分の好きなことをやれているといいなって思います。
品川 祐
目をキラキラさせて好きな漫画について語る品川さんは、まるで少年のようでした。漫画で培った発想力を活かして、今後も色んな形で私たちを楽しませてくれそうですね!
写真:下山展弘
プロフィール
品川祐
お笑いコンビ・品川庄司のボケ担当。芸人として活躍する他、作家や映画監督としても活動。2006年の自著『ドロップ』は、自身の手で監督・脚本をつとめた映画も公開され、一躍話題となった。作家や映画監督として活動する際には、「品川ヒロシ」の名義を使用している。
◆品川 祐さん公式Twitter
https://twitter.com/shinahiro426?lang=ja
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