4.0
魅力的な活劇と、その違和感
小気味よく、スピーディーで、絶えずスリリングな展開力、ハイレベルな画力の安定感、そこに、阿片の蔓延する大戦中の満州という舞台装置のいい意味でのいかがわしさが加わって、時代物の活劇としての魅力は抜群である。
ちょっと都合よすぎる部分は散見されるし、そもそも「いや、阿片でそんなふうにラリることはないだろう」という根本的な部分での突っ込みどころもあるが、それらも些事に過ぎないと思わせてしまうくらい、作品に美しさと勢いがあり、とにかく一気に読ませる力にみなぎっている。
いやー、面白かった。
ただ、どうにも違和感としてつきまとうのは、好感度抜群の主人公一味がやっていることは、結局、芥子を栽培しまくって高純度の阿片を取り出して売りさばいてヤク中を増やしまくって富を得る、っていうことなんだよな、と。
ところが、この悪逆非道をやっている当の本人たちは、いたって爽やかなのである。
無邪気、と形容しても構わないくらいに。
たとえて言うなら「ダイの大冒険」の主人公パーティ並の爽やかさだ。
それでいいのか?
正直、ここは、難しい。
どんなに無茶苦茶な所業であれ、それが「主人公サイド」の行為であれば物語として徹底的に肯定する、というのも、ひとつの表現としてはアリだと私は思う。
ただ、やたらダークにしろと言いたいわけではないのだが、この主人公サイドの「軽さ」は、どうにも気になった。
読んでいる最中は基本的に、もう100%主人公たちを応援してワクワクしているのだけれど、ふと我に返って、「でも、こいつらのやってることって…」と考えると、どこか冷めてしまっている自分も感じた。
難しいね。
みんな阿片でラリっていない頭で考えてほしい。
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