4.0
唯一無比の勢い
冷静に見れば、いくらホラー漫画とは言え滅茶苦茶で、突っ込みどころだらけなのだけれど、こちらが突っ込む余地を残さないほどの強烈な勢いでもって押し切られる。
そして、冷静に見る、なんてことを考えたこちらが間違っていたのだ、というような気分にさせられる。
楳図かずおというのはそういう無類のパワーを持った作家であって、ここまで来るともう、一種のスタンド使いみたいなものだと思う。
私としてはもう、「参りました」と言う以外にない。
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冷静に見れば、いくらホラー漫画とは言え滅茶苦茶で、突っ込みどころだらけなのだけれど、こちらが突っ込む余地を残さないほどの強烈な勢いでもって押し切られる。
そして、冷静に見る、なんてことを考えたこちらが間違っていたのだ、というような気分にさせられる。
楳図かずおというのはそういう無類のパワーを持った作家であって、ここまで来るともう、一種のスタンド使いみたいなものだと思う。
私としてはもう、「参りました」と言う以外にない。
同性愛の問題はいったん置くにしても、ある種の時代においては、誰かを失うということが、文字どおり、世界の終わりになり得る。
それはしばしば、大人になってから振り返れば「何であんなことで傷ついていたんだろう」と首を傾げるような類の傷であったりするのだが、これはもう、完全に大人が間違っている。
痛みや不幸なんて、その瞬間には絶対的なものだ。
「何であんなことで」というその些細な傷こそが、その時代には、全てだったのだ。
本作は、その部分をなかなかリアルに、またクリアに描いていて、そういう意味では、普遍的なものを表現し得ている作品だとは思った。
ただ、ここは本当に難しいところなのだけれど、私は、ちょっと「悲劇の顕示」みたいなものを感じてしまって、それが鼻についたというか、イマイチ入り込めなかった。
わかりやすく言えば、「ほら、こういうのって悲惨だよね、汚れた大人になってしまう前ならではの時代の悲劇だよね」というようなうるささを、どこかに感じてしまったのだ。
この点は、正直どうにも作品に非があるようには感じられず、ただただ、申し訳なかった。
作品と読者の相性というのは、とても微妙で、難しい。
申し訳ないが、はっきり言って、面白くはなかった。
登場人物たちの行動が不自然に過ぎて、「嗚呼、これは恋愛に疎い人が描いてるな」という性格の悪い感想が浮かんだ。
だいたい、浮気の模様をSNSの裏アカウントに綴る既婚の男なんているか?
まあ、そういう人間がこの世にいてはならないとは言わないが、私はこの時点でいっきに冷めた。
星をひとつ足したのは、作者の意図とは全く別のところで、妙に笑えたからである。
ところどころに、何か「ジョジョ」とか「HUNTER×HUNTER」とかの心理戦のシーンみたいな演出が入る。
読んだ人は、ちょっと読み返してみてほしい。
例えば、主人公が夫の浮気相手を突然に悟る場面。
「私の女の勘が言っている」
このシーンは、「HUNTER×HUNTER」でスクワラというキャラが散るシーンを彷彿とさせる。
実際、この気づきは唐突極まりなく、主人公が念能力でも使っているとしか思えない。
あるいは例えば、主人公が急に誘惑されるシーン。
主人公の夫の浮気相手の夫が、
「あなたを抱くというメリットがね」などと言っていきなり駆け引きを始めるわけだが、このあたり、背景に「ゴゴゴゴゴ…」という文字を入れたくならないだろうか。
私はこれが面白くて、「この男ッ!妻の不倫相手の妻に関係を迫るタイプのスタンド使いッ!」とか妄想して遊んだ。
それくらいしかすることがなかった。
うーん、恋愛漫画のふりをした、バトル漫画のパロディ風ギャグ漫画にすればよかったんじゃあないか?
いわゆる「スクールカースト」をテーマにした群像劇。
女子高の人間模様が、それぞれの生徒の立場から描かれる。
オムニバスで、テンポよく読んでいける。
形式としては、好きな部類である。
私は男子高だったから、これが現実の女子高の姿にどれほど近いのかは全くわからない。
それに関する意見は、女性の皆さんに任せる。
ただ、さもありなん、とは思ったし、個々の登場人物の描き分けは、それぞれに個性があって、パリッとキャラが立っていた。
どのキャラクターの視線にも、光があり、影があった。
群像劇として、単純に、よく出来ていると思って感心した。
スクールカースト、という概念は厳然とあるとしても、その上位がハッピーで、下位が惨めだ、というほど、学校という社会は、というか、生きてゆくということは、単純ではない。
私の好きな小説の中に、「何かを持っている人間はいつそれを失うかと怯えているし、何も持たない人間は一生何も持てないままなんじゃないかと怯えている、みんな同じさ」という意味のくだりがる。
スクールカーストの最上位で肩で風を切って歩いているあの子も、何とか彼女にしがみついて生き抜こうとしているあの子も、下位でひっそりとうつむいているあの子も、実のところ、皆それぞれの痛みを抱えて生きている。
どこに属してどう生きたところで、イージーモードの人生というのは、多分、ないのだろう。
本作のスタンスというのは、そういった全てを、大人の興味本位の目線から笑うのではなく、少しずつでも彼女たちに寄り添おうとしたものであるように思えて、私は嫌いではなかった。
「先生の白い嘘」から飛んできた。
「これはちょっと言葉にならないよな」という、感情だったり、あるいは感情未満の感覚みたいなものだったり、自分でもそれが何なのかわからないような、ときにはそれが自分の中に存在していることにも気づけないような、あるいは認めたくないような、ぐちゃぐちゃの有象無象を抱えて、私たちは日々、生きている。
それは別に、言葉にならなくていいものなのかもしれない。
形にならなくていいものなのかもしれない。
それは、そうなのだけれど。
そんな、何とも表現されないままに、自分の中にたまっていったり、通り過ぎていったりする「何か」に、漫画という手段でもって形を与えたのがこの作品なのではないかと思ったし、私たちの言葉にならない言葉を翻訳するような感性と技術には、もう、感心するしかなかった。
話としてはそこまで凝ったミステリ的な深みはないが、それでかえって、漫画としての勢いで読ませる、コンパクトでスリリングな作品に仕上がっている。
ストーリーはシンプルな反面、道中で様々な小道具を駆使して盛り上げるのも、まさに匠の技である。
心理描写の雰囲気なんかは完全に「カイジ」のそれで、「絵」なしで作者のカラーを感じさせるというだけでも、福本伸行の色の濃さは大したものだと思う。
ただ、これで「絵」が福本伸行だったら…と考えると、正直、これほど緊張感のあるサスペンスになったかは疑問符がつく。
そういう意味でも、本作のタッグは理想的だった気がする。
話の尺も、絶妙なところ。
これはもう、一気読みするしかないだろう。
壮絶ないじめを受け、挙句の果てには屋上から落とされた主人公が、落下地点で教師と激突し、その教師と精神が入れ替わる、というところから始まる復讐の物語。
うんざりするほど量産されてきた典型的な「いじめ→復讐」系の漫画ではあるのだが、烏合の衆とはレベルが違い、これがもう、滅法面白い。
完全にハマってしまい、最新話まで一気読みした。
細かい点を見れば、教師の肉体で女子生徒と関係を持ってしまう主人公の行動原理だとか、無能すぎる警察だとか、特に後半では「精神の入れ替わり」を周りの人間があっさり信じてしまうとか、突っ込みどころは豊富にあるのだが、そんなものは些事に過ぎないと断言したくなるほど、本筋がマジで面白すぎる。
本作の突出した魅力は、その「展開力」だと思う。
緻密な構成力、というのではなく、どちらかと言うと荒っぽいのだが、とにかく話を勢いよく転がしていくのが、上手い。
その展開力、ストーリーの推進力を支えているのは、キャラクターのドラスティックな変貌ぶりで、メインの登場人物の多くが、作品開始時とはまるで違う印象になる。
半端な変化ではなく、熱血漢の教師が極悪人のサイコ野郎になり、いじめに加担していたクズ女がヒロインになり、役立たずの端役が女神になる、という具合である。
しかも、それらに決定的な違和感がない。
いやー、久しぶりに漫画で少年時代のワクワクを思い出した。
これほどまでに手垢にまみれたジャンルで、今更これほど胸が高鳴ろうとは、驚きであると言う他にない。
ありがとうございました。
第一話の冒頭は、ある男子生徒が女子生徒に、読者が目を背けたくなるほど悪質ないじめを行っている描写に始まる。
よくあるいじめ→復讐系の漫画かと思いきや、これがまるっきりのミスリードで、途中から(というか序盤から)完全なギャグ漫画に変貌する。
実は、いじめていた男の子(主人公)の方が、女の子(ヒロイン)に、いじめることを強要されており、いじめが生ぬるいと、後でヒロインから苛烈を極める暴力でもってお仕置きされる、という設定である。
なぜ少女がそのような奇行に走るのか、明らかにならないままストーリーは進むのだが(一応、過去にいじめで友達を亡くしていて、それを救えなかった自分を罰しているのでは、と感じさせるような伏線は出てくるが、読んだところまででは何とも言えない。私は「文化祭編」まで読んだ)、その本筋はいったん置くにしても、実にいい拾い物をした、と思える漫画であった。
いじめというセンシティブな題材を扱っているだけに、これをギャグにもっていくのは不謹慎と言えばまあそうなのだが、はっきり言って私は楽しくてしょうがなかった。
肝心のギャグ部分が、単純にとても面白かったからだ。
本作は様々な少年バトル漫画、スポーツ漫画、推理漫画、ホラー漫画、などのパロディに満ちていて、私が元ネタをわかったのはごく一部だと思うが、「少年漫画あるある」を逆手にとったその懐の深さと造形の深さ、センスの良さ、そして、少年漫画への愛情みたいなものには、ほとんど感動すら覚えた。
何とかいじめをやめて平穏な学園生活に戻りたい主人公、主人公が自分以外をいじめることも主人公以外が自分をいじめることも許さない奇怪なヒロインを始め、新選組に憧れるまるで頼りにならない正義漢、黒板を片手で振り回す本物のいじめっ子、主人公を溺愛する万能サイコ美少女、タフな肉体を持つミュンヒハウゼン症候群少女、と脇を固めるキャラクターたちも可愛くて楽しい。
そんなわけで、第一話だけ読んでやめない方がいい、と声を大にして言いたい漫画なのだが、最初だけ読んで離脱する読者がないよう、第一話からきっちりネタばらしをしてくる点は実に巧妙で、その大胆さには舌を巻く。
第一話のサプライズの大きさ、という点では、私が読んだ漫画の中で歴代一位かもしれない。
星五つはあげすぎな気もするが、これだけ見事に騙されると、もう、私の負けである。
土着系、民族系のホラーで、小説が原作(未読)。
個人的には好きなジャンルで、軽度な(よく言えばポップな)民俗学のバックグラウンドで味をつけた「ぼぎわん」の存在感はなかなか面白かった。
題材は目新しいものではないが、本作の見せ場は構成の妙で、原作がホラー大賞を受賞したのも、おそらくこの構成力が評価されたのが一因かと思われる。
三部構成で、第一部が夫、第二部が妻、第三部が事件を追う記者の視点から、それぞれ綴られる。
私は、第一部から第二部への切り替えの見事さに感心した。
第一部を読むと、語り手の夫は普通のサラリーマンで、妻と子どもを守るために怪異に立ち向かうオーソドックスな主人公として映るのだが、まずこの夫が、第一部のラストで死ぬ。
そして第二部では、その夫が、妻から見れば、実は半ば死んでほしいくらいに疎ましい男だったことが明らかになる。
この描写が、凄い。
何が凄いって、夫が実は不倫をしていたとか、とんでもない過去の秘密があったとか、そういうことは一切なく、ただ単に、夫が見ている世界と妻が見ている世界が全く違った、という描き方をしている点である。
現実とは多くの場合、こうなのだろう。
主観と客観のズレ、というか、誰かの主観と誰かの主観のズレ。
「寄生獣」の中で、ミギーが「仮に魂を入れ替えることが出来たなら、全く違う世界が見えるはずだ」という意味のことを言っていたが、私たちはそういうズレの中に生きており、そのズレが許容量を超えて乖離したとき、例えば夫婦関係が破綻したりする。
それに気づかないのはだいたい男の方で、本作も然りである。
本作はいわゆる「人怖」のホラーではないが、「ぼぎわん」という怪異の恐怖と、人間関係にまつわる人の愚かさという一種の恐怖が二重奏となって、とても興味深かった。
ところが、問題は第三部である。
「ぼぎわん」という正体不明の怪異を描く第一部。
オカルトの恐怖に人間関係の恐怖を重ねつつ、謎解きが進む第二部。
そして第三部は、雑に言うと、霊能バトル漫画に近い、イメージ的には。
どうしてこうなったんだろう、と私は首を捻ったが、もしかしたら作者が本当にやりたかったのはこれなのかもしれない。
だとしたらしょうがない。
しかし、私はこのジャンル変更みたいな展開にどうにも乗っかれず、第二部までが楽しかっただけに、ちょっと残念だった。
この漫画というか企画に、古田本人がOKを出したことに驚く(さすがに無許可じゃないだろうから)し、その企画力はまあ、買おう。
ただ、尺の都合上しょうがないのかもしれないが、内容は非常に薄い。
キャッチャーのスローイングやキャッチング、リード面などについて、多少の「古田的な」言及はあるものの、はっきり言って、ネットでちょっと調べただけでも書けるレベルの情報しかないし、古田である必要性も「高校までは無名だった」「メガネのキャッチャー」くらいしか感じない。
私はヤクルトファンでも古田ファンでもないが、仮にファンだったならムカついたと思う。
結局、安っぽい精神論みたいなところに帰着していく後半も本当に寒い。
あと、古田が似ていない。
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