rokaさんの投稿一覧

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161 - 170件目/全506件
  1. 評価:4.000 4.0

    半ば狂人

    作者が、私の好きな押切蓮介の盟友である、ということで読むに至った。

    この清野とおるという人は、半ば狂人ではないかと思う。

    作者の実体験に基づく漫画だが、感性と行動力がぶっ飛んでいる。
    幽霊の存在を確かめたくて心霊スポット的な場所に行く、まではよしとしよう。
    そこでなぜか一人で酒を飲む、というのも、一般の理解からは遠いところにあるが、まあ、ギリギリよしとしよう。
    それによって得られる奇妙な昂揚感が病みつきになるというのも、ついでだから、セーフにしてしまおう。
    しかし、この男は、例えば幽霊が現れるという話を聞いたマンションの一室の前に、何も知らない自分の知人を、次々と連れて行く。
    彼らが何か霊的なものを感じるかもしれない、ということを期待して。
    ここだ、問題は。
    これだけは、まともな人間には絶対に出来ない。
    幽霊の噂がある場所だ、ということを後で明かして、「実はここってさー」などと怖がらせるためではないのだ。
    作者はあくまで純粋なデータ収集というか、心霊の裏づけ欲しさにこれをやっている。
    そんなことに人を巻き込むか、普通。

    変人を気取ったりライトな狂気を演じたりしながら、自分自身では「装っている」ことに気づいてすらいない、という人間は世の中に多くいる。
    「俺ってちょっと変わってるから~」とか言うアレである。
    まあ、それはいい。
    それはいいのだが、清野とおるは、全く違う。
    完全に自然体で狂気をまとっていて、マジで恐ろしい。

    別にこういう人が世の中にいてはならないとは思わないが、私は多分、友達にはなれない。
    この人の漫画を読むぶんには楽しい。
    だが、誰かが言ったように、遠くから悪魔に手を振るのと、悪魔と手を繋ぐのは全く別の話だ。

    そういうわけで、結局、押切蓮介も尋常ならざる人間かと思われる。

    • 9
  2. 評価:3.000 3.0

    アイムソーリー、ラブコメ

    学校を舞台にしたオカルト空間の描写はなかなか秀逸で、ときにハッとするような美しさがあった。
    ただ、そんなことがどうでもよくなるくらい、不思議なことがある。
    私はかなりのオカルト好きだし病的な妖怪好きであるが、びっくりするくらいハマれなかった。
    おかしい、これはどういうことなのだろう。

    本作、題材はオカルトだが、ジャンルはまあコメディと言ってよいのかと思う。
    それは別に全然構わない。
    私は「妖怪の飼育員さん」という妖怪ギャグ漫画が大好きで、満点をつけた。
    しかし本作をコメディとして評価しようと思うなら、申し訳ないが、私はクスリとも笑えなかった。

    まあ、本作、コメディはコメディでも、一種のラブコメだ。
    怪異という名の衣をまとったラブコメ。
    「ラブコメなんかじゃない!」と主張したい方、まあ、待って下さい。
    じゃあ聞きますが、これ、主人公が女の子、「花子さん」でも成立します?
    そういうことだ。

    ミもフタもない言い方をするが、私はこの「ラブコメ」というのが決定的に苦手である。
    というか、苦手である、ということに、今気づいた。
    別に漫画に限らず、世の中には、「私は興味ないけど、それを楽しいと感じる人がいるのはわかる」という物事がたくさんある。
    キャンプもサーフィンも私にとってはそうである。
    ただ、この「ラブコメ」なるものは、マジでわからない。
    ラブコメ好きの皆さん、ごめんなさい、でも、マジでわからない。
    これはレビューなんかで絶対に書いてはいけない一言かもしれないが、「何が面白いんですか?」

    嗚呼、今まで書いてきたレビューの中で、一番ひんしゅくを買いそうだ。
    消されるかもしれん。

    いや、ちょっと待てよ、じゃあ私は今まで読んだラブコメ漫画をどう評価してきたんだ、と思って、500以上のレビューをざっと見てみたが、信じられないことに、正統なラブコメと呼べそうな漫画はひとつもなかった。
    この数年というもの、私は無意識にラブコメの地雷を回避しながら漫画生活を続けてきたことになる。
    何だよその危機管理能力。

    ジャンル自体の否定のようなレビューになって、申し訳ない。
    ラブコメに責任はない。
    悪いのは私だ。
    ただまあ、ひとつ言わせてもらうと、私はオカルトが大好きだから、心のどこかでは、思ったのだろう。
    オカルトを、ラブコメの飾りにすんなや、と。

    • 6
  3. 評価:4.000 4.0

    限りなく等身大

    私の好きな押切蓮介の漫画家生活を描いたエッセイ風の漫画。

    私が初めて読んだ押切蓮介の漫画は「ミスミソウ」だった。
    今まで読んできた全ての漫画を思い返してみても、あれほど深く感情を抉られた作品というのは他にほとんどない。
    一体どんな人があんなものを描くのだろう、という興味はずっとあって、本作を知り、手に取った。

    本作を読んでしみじみ感じたのは、どんなに強烈な作品を世に送り出す漫画家でも、やはり人間なのだ、ということだ。
    それは当たり前の事実なのだけれど、私たちは基本的に、知らない。
    あのホラー漫画やあのギャグ漫画を描いている人々が、どんな日常の中で、何を思い、どんな地獄を抱えながら、ネームを提出しているのかを、知らない。

    だからといって、別に、本作で押切蓮介がわかったと言う気もない。
    作者、というものをナメてはいけない。
    エッセイだろうが日記だろうが、作品は作品であり、作者は作者であって、現実の人間ではない。
    ただ、この漫画で描かれた押切蓮介の姿は、限りなく赤裸々で、等身大に近いように思えたし、おどけながらも自分の血肉を紙面に塗りたくるような飾らない姿勢には、好感を持った。

    こういう生活の中から「ミスミソウ」が生まれたのかと思うと、何だかちょっと、胸が熱くなった。
    「ミスミソウ」は、あまりに心にかかる負荷が大きく、一度読んだきり、読み返す決心がつかないでいる唯一の漫画なのだけれど、本作の押切蓮介に敬意を表して、もう一度読んでみようかな、という気になった。

    • 5
  4. 評価:2.000 2.0

    短編という無茶な形式

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    最初に断っておくが、私は短編という形式が、漫画も小説も好きである。
    その前提で書くが、本作が「短編である」ということそれ自体に、いくら何でも無理がある。

    超能力者みたいなのが生まれる村。
    能力を持たずに生まれた子は生け贄みたいな存在として葬られる村。
    そこで生まれた双子の兄弟。
    弟は将来を嘱望される天才的な能力者であり、一方の兄は能力を持たない。
    「双子だからいずれ能力が目覚めるはず」という理由で生を奪われなかった兄は、弟に対して劣等感やコンプレックスを持ちながら育つのだが…。

    どうですか?
    壮大なスペクタクル巨編が始まる予感がしませんか?
    だが、繰り返す、5話完結である。
    そんな無茶な。

    もちろん、長くしようが短くしようが、制作者サイドの自由なのだが、物語のフォーマットによっては、どうしても語るのに最低限必要な「尺」というものがある。
    およそ思いつく限りで、これほど短編に相応しくないタイプの話もないのではなかろうか。
    どういう事情で成立した作品なのか知らないが、ちょっと無茶苦茶だと思う。

    • 2
  5. 評価:3.000 3.0

    ダイナミック

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    最初は、絵柄(特に登場人物の)がホラー漫画にあまり向いていないような気がしたのだが、恐怖表現の描写にはなかなか迫力があって、「おー」と思った。

    特に、最初の探偵のエピソードは、探偵が主人公なのか何なのか微妙な位置で始まるので、それがあっさり噛ませ犬として退場した展開には、よしよし、と思った。

    ただ、いかんせん、心霊現象がダイナミックに過ぎる。
    もちろん、私は「本物の」心霊現象がこういうものだ、ということを実感を持って知っているわけではないけれども、ここまでくるとさすがにファンタジーの域である。
    それがホラー漫画にあってはならないわけではないものの、作品にはやはり「枠組み」みたいなものがあって、本作のホラー描写は、いささかそれを逸脱しているように感じられ、あまり入り込めなかった。

    • 4
  6. 評価:4.000 4.0

    振り回されるだけのミステリ

    ネタバレ レビューを表示する

    はっきり言って、この設定はずるいと思う。
    遺書が深読みやら裏読みやらいくらでも出来てしまうものである以上、後づけでいくらでも話が作れてしまうからである。
    その上、遺書は活字で書かれているわけで、偽造・捏造可能となると、そもそも遺書が本人によって書かれたものではないかもしれないとか、自殺ですらないかもしれないとか、そういうレベルのことまで何でもありになってくる。
    おそらく、連載開始時点ではそれほど今後の展開が緻密に練られていたわけではないだろう、という気がする。
    別にそれ自体を非難する気もないのだが、ここまで何でもありだと、読者に「推理」の余地というものがほとんどない。
    つまり本作は、「考えるだけ無駄」なミステリなのであり、それはもう、ミステリ漫画としては致命的だと思う。

    ただ、こんなこと言っておいて何だけれど、面白かった。
    プロットとしては変化がなく、三十人くらいの生徒たちがただただ自らに宛てられた遺書を公開していく、というだけの内容、ほとんど「何も起きていない」といっていい話であるにも関わらず、私は読むのを止められなかった。
    「彼女に何が起こったのか」という謎の一点でここまで引っ張れるのは、それなりに作品に力があるということなのだろう。
    また、「こういう系」の作品は、往々にして人が死にまくったり、人間離れしたサイコ学生が出てきたり、何かと「起こりすぎる」ことで興が削がれるが、そういうことがなかったのも、ポイントが高かったのかもしれない。
    要するに、「何も起きない」ということが、奏功したのかとも思われる。
    そう考えてみると、この「やったもん勝ち」のずるい設定を考案した時点で、本作はある部分、既に成功していたのかもしれない。

    読者の推理に対して排他的である、というミステリとしての致命傷を負っている作品ではあるが、「推理を楽しむ」ミステリではなく、「ただ振り回されるだけのミステリ」として、私はそれなりに楽しんだ。
    それを邪道と呼ぶかどうかは、微妙なところなのだけれど。

    • 25
  7. 評価:3.000 3.0

    古きよき、だが

    古きよきホラー漫画時代を思い出す短編集。
    表題作は「怖い昔話」風の一編。

    これは今まで色んなホラー漫画のレビューに書いてきたのだが、幼い頃、従姉の家に行くと必ずホラー漫画雑誌が置いてあって、それを読むのが楽しみだった。
    もちろん、あの頃のドキドキみたいなものは永遠に戻らないのだが、私にとってはひとつの原体験みたいなものだったと言ってよいかと思う。

    そういうわけで、この種の漫画を読むときは、いつも一種の懐かしさと慕わしさを覚える。
    それだけで十分と言えばまあ、そうなのだが、大人になった今でも楽しめた、と言うには、本作はちょっとパワー不足のような気もした。

    • 3
  8. 評価:5.000 5.0

    こっちの台詞

    「女の園の星」が面白すぎて、こっちに飛んできた。

    あまりに素晴らしい才能というのは、もう、私なんかがいちいち言葉にするのも馬鹿らしくなってくるのだが、本作もまさにそういうことで、とにかく黙って「うしろの二階堂」だけでも読んで下さい。
    よろしくお願いします。

    フィクションを作る才能にも色々あると思うのだけれど、この人のそれは「構築する」というようなタイプの才能ではなくて、日常を「切り取る」ということに特化した才能ではないかと思う。
    例えば、優れた写真というのは、結局、目の前にあるものをどう切り取るか、ということになるかと思うのだが、そういう種類の感覚がずば抜けている。

    「女の園の星」のレビューでも同じことを書いたけれど、読んだ後で、自分が生きている日々に対する見方が少し、変わるような、日常をもう少し慈しみながら生きてみようかな、と思えるような、本当に素晴らしい漫画である。

    何だよ、「夢中さ、きみに。」って。
    それはこっちの台詞だっつーの。

    • 74
  9. 評価:3.000 3.0

    比較の問題

    素人探偵である主人公の少女が、死んだ兄とコンビを組んで事件を解決してゆく話。

    同じ作者の「名探偵マーニー」という漫画があり、作品の枠組みや雰囲気はかなり類似している。
    大きな相違点としては、死んだ兄が主人公のバディ役である点で、これがもちろん、本作のアイデンティティーである。
    が、私は正直、この設定にイマイチ乗っかれなかった。
    乱暴に言えば、この設定は「要らない」と思った。
    本作がつまらないわけではないものの、比較をすれば、明らかに「名探偵マーニー」に軍配が上がるのではないか。

    作者は短編の名手であると思う。
    以前、「名探偵マーニー」のレビューの中で、「ここまで短編が上手いともう短歌とか俳句の芸の世界」という意味のことを私は書いたが、その本質は「削ぎ落とす」ということに他ならない。
    限られた尺の中で十分にドラマを描くためには、余計なものはことごとく削ぎ落とさなければならない。
    それこそ、肉を落とされた骸骨のように。

    しかし、「死んだ兄が相棒として存在している」というのは、結構重たい「肉づけ」なのだ。
    この存在がある以上、主人公にも、兄にも、見せ場を与えないといけない。
    また、本作は悪事に手を染める人間のバックグラウンドに、人の悪意を具現化したみたいな霊的な存在(イメージは「ホムンクルス」という漫画のそれに近い、本質的には全然違うけど)も描いているので、その描写も必要になる。
    結果、限られた尺の中では許容量オーバー気味になり、詰め込まれた要素は増えているのに、話としては薄くなっている、と感じた。
    また、「名探偵マーニー」で感じられたような「削ぎ落とされた短編の美学」みたいなものも、かなり目減りしてしまっている気がした。

    ただ、仮に「死んだ兄が相棒」の設定をなくすと、これはもう、「名探偵マーニーと同じじゃん」ということになり、何か変化をつけるしかなかったのはわかる。
    が、正直それならもう、「名探偵マーニー2」でよかったんじゃないか、という気がしないでもない。

    まあ、これら全て比較の問題であって、純粋に本作を見た場合、私の評価はちょっと厳しすぎるかもしれない。

    • 2
  10. 評価:3.000 3.0

    実在、はともかく

    アパレルの接客業で働く主人公が、次々と舞い込んでくる心霊関係の依頼を圧倒的な霊能力で解決していく話。

    あくまで漫画単独としての評価であり、主人公のモデルが実在した霊能者であるとか、そういう話はいったん置いておく。

    テンポよくサクサク読めるけれど、心霊漫画として特筆すべき点を私は見出だせなかった。
    いわゆる「実話に基づく」という枕がなければ、大して印象に残らなかったと思う。

    今まで様々なオカルト媒体から得てきた知識を凌駕するようなものも特になく、「やはり本物の霊能者が言うことは違うな」みたいな鮮烈なインパクトも説得力もなかった。

    結構な量のレビューを書いてきて、初めてこの話をするが、私は正直、幽霊の存在は、まあまあ信じている。
    一度だけ、多分、幽霊を見たこともある。
    ただ、「霊能者」の存在には、どうにも胡散臭さを感じてしまう。
    これは、世の中にエセ霊能者が溢れているせいなのだろうが、いずれにしても何かを信じられないというのは、残念という他にない。

    • 3

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