4.0
半ば狂人
作者が、私の好きな押切蓮介の盟友である、ということで読むに至った。
この清野とおるという人は、半ば狂人ではないかと思う。
作者の実体験に基づく漫画だが、感性と行動力がぶっ飛んでいる。
幽霊の存在を確かめたくて心霊スポット的な場所に行く、まではよしとしよう。
そこでなぜか一人で酒を飲む、というのも、一般の理解からは遠いところにあるが、まあ、ギリギリよしとしよう。
それによって得られる奇妙な昂揚感が病みつきになるというのも、ついでだから、セーフにしてしまおう。
しかし、この男は、例えば幽霊が現れるという話を聞いたマンションの一室の前に、何も知らない自分の知人を、次々と連れて行く。
彼らが何か霊的なものを感じるかもしれない、ということを期待して。
ここだ、問題は。
これだけは、まともな人間には絶対に出来ない。
幽霊の噂がある場所だ、ということを後で明かして、「実はここってさー」などと怖がらせるためではないのだ。
作者はあくまで純粋なデータ収集というか、心霊の裏づけ欲しさにこれをやっている。
そんなことに人を巻き込むか、普通。
変人を気取ったりライトな狂気を演じたりしながら、自分自身では「装っている」ことに気づいてすらいない、という人間は世の中に多くいる。
「俺ってちょっと変わってるから~」とか言うアレである。
まあ、それはいい。
それはいいのだが、清野とおるは、全く違う。
完全に自然体で狂気をまとっていて、マジで恐ろしい。
別にこういう人が世の中にいてはならないとは思わないが、私は多分、友達にはなれない。
この人の漫画を読むぶんには楽しい。
だが、誰かが言ったように、遠くから悪魔に手を振るのと、悪魔と手を繋ぐのは全く別の話だ。
そういうわけで、結局、押切蓮介も尋常ならざる人間かと思われる。
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東京怪奇酒