3.0
普通のホラー
よくも悪くも、普通。
普通の怪談話。
それ以上の何かを求めて読んだのか、と問われれば答えはノーなのだが、それにしても、普通。
そんな本作に捧げる星は、三つ。
いわゆる「実話怪談」テイストで、こんなものと言えばこんなものなのかもしれないが、私はやはり、「普通ではない何か」を求めてホラーを読む、という夢を捨てられない。
- 2
2位 ?
よくも悪くも、普通。
普通の怪談話。
それ以上の何かを求めて読んだのか、と問われれば答えはノーなのだが、それにしても、普通。
そんな本作に捧げる星は、三つ。
いわゆる「実話怪談」テイストで、こんなものと言えばこんなものなのかもしれないが、私はやはり、「普通ではない何か」を求めてホラーを読む、という夢を捨てられない。
人生の土壇場で、遺品整理の仕事に拾われた主人公の話。
基本線は「遺魂断ち」を生業とする特殊な人間たちの活躍を描くオカルト路線なのだが、私はあまり特筆すべき点を見出だせなかった。
ホラーの側に振れたり、ハートウォーミングな側に振れたり、おそらくその両方をやりたかったのだと思うが、どっちつかずというか、その振れ幅が小さい。
かといって、キャラクターに突出した魅力があるかというと、そうでもない。
結果、大して冷えもしないし温まりもしない、という微妙なところに落ち着いてしまった気がしてならなかった。
何も知らずに読みたかった。
が、私は頭から「娘、または娘と夫の両方が死んでいるのでは」と疑いながら読み進めた。
夫死亡説は離婚届のくだりでどうやらなさそうだったので、そうなると、娘一択。
そういう目線で読んでいれば、必然的に、消費されない朝食とか、溶けていくだけのクリームソーダとか、主人公を奇異の目で見る周囲の様子とか、伏線は目につく。
結果、よく出来ているな、という一定の感心はしたけれど、サプライズは得られなかった。
娘の死に気づいたのは、私が鋭いからではなく、他のレビューによってである。
さすがに、ネタバレありのレビューの中身は読まなかったが、レビューのタイトルなどで皆が「6話が」「6話が」と書いていれば、どうしても目に入るし、「嗚呼、これは6話でどんでん返しがある漫画なのね」という先入観は、どうしても出来てしまう。
漫画、というか、作品におけるサプライズには、大きく二種類ある。
ひとつは、作品に「どんでん返しがある」という前提で見ても、成立するサプライズだ。
推理小説もサスペンス映画も、基本のサプライズというのは、こっちだ。
読者や観客は、作品が自分たちを騙そうとしているな、という前提で見るし、あとは読者・観客の想定をどう裏切れるか、という勝負になるわけだ。
もうひとつは、「そもそもどんでん返しがある作品だと思っていなかった」という種類のサプライズだ。
推理モノやサスペンスとは違って、「えっ、そういう話だと思っていなかった」というサプライズである。
本作は完全に、後者だ。
そして重要なのは、後者の場合、「どんでん返しがある」ということ自体がネタバレなのだ、ということだ。
問題はそのどんでん返しの内容ではない。
どんでん返しがあると知ってしまった瞬間、サプライズのかなりの部分が失われるのである。
今まで結構な数のレビューを書いてきて、他のレビューに恨み言を言うようなことはほとんどなかったのだけれど、今回はちょっと、残念だった。
まあ、本作の場合、そのどんでん返しは「オチ」ではなく、言わばスタートのようなものなので、今後が楽しみなことに変わりはないのだが。
冷静に見れば、いくらホラー漫画とは言え滅茶苦茶で、突っ込みどころだらけなのだけれど、こちらが突っ込む余地を残さないほどの強烈な勢いでもって押し切られる。
そして、冷静に見る、なんてことを考えたこちらが間違っていたのだ、というような気分にさせられる。
楳図かずおというのはそういう無類のパワーを持った作家であって、ここまで来るともう、一種のスタンド使いみたいなものだと思う。
私としてはもう、「参りました」と言う以外にない。
同性愛の問題はいったん置くにしても、ある種の時代においては、誰かを失うということが、文字どおり、世界の終わりになり得る。
それはしばしば、大人になってから振り返れば「何であんなことで傷ついていたんだろう」と首を傾げるような類の傷であったりするのだが、これはもう、完全に大人が間違っている。
痛みや不幸なんて、その瞬間には絶対的なものだ。
「何であんなことで」というその些細な傷こそが、その時代には、全てだったのだ。
本作は、その部分をなかなかリアルに、またクリアに描いていて、そういう意味では、普遍的なものを表現し得ている作品だとは思った。
ただ、ここは本当に難しいところなのだけれど、私は、ちょっと「悲劇の顕示」みたいなものを感じてしまって、それが鼻についたというか、イマイチ入り込めなかった。
わかりやすく言えば、「ほら、こういうのって悲惨だよね、汚れた大人になってしまう前ならではの時代の悲劇だよね」というようなうるささを、どこかに感じてしまったのだ。
この点は、正直どうにも作品に非があるようには感じられず、ただただ、申し訳なかった。
作品と読者の相性というのは、とても微妙で、難しい。
申し訳ないが、はっきり言って、面白くはなかった。
登場人物たちの行動が不自然に過ぎて、「嗚呼、これは恋愛に疎い人が描いてるな」という性格の悪い感想が浮かんだ。
だいたい、浮気の模様をSNSの裏アカウントに綴る既婚の男なんているか?
まあ、そういう人間がこの世にいてはならないとは言わないが、私はこの時点でいっきに冷めた。
星をひとつ足したのは、作者の意図とは全く別のところで、妙に笑えたからである。
ところどころに、何か「ジョジョ」とか「HUNTER×HUNTER」とかの心理戦のシーンみたいな演出が入る。
読んだ人は、ちょっと読み返してみてほしい。
例えば、主人公が夫の浮気相手を突然に悟る場面。
「私の女の勘が言っている」
このシーンは、「HUNTER×HUNTER」でスクワラというキャラが散るシーンを彷彿とさせる。
実際、この気づきは唐突極まりなく、主人公が念能力でも使っているとしか思えない。
あるいは例えば、主人公が急に誘惑されるシーン。
主人公の夫の浮気相手の夫が、
「あなたを抱くというメリットがね」などと言っていきなり駆け引きを始めるわけだが、このあたり、背景に「ゴゴゴゴゴ…」という文字を入れたくならないだろうか。
私はこれが面白くて、「この男ッ!妻の不倫相手の妻に関係を迫るタイプのスタンド使いッ!」とか妄想して遊んだ。
それくらいしかすることがなかった。
うーん、恋愛漫画のふりをした、バトル漫画のパロディ風ギャグ漫画にすればよかったんじゃあないか?
いわゆる「スクールカースト」をテーマにした群像劇。
女子高の人間模様が、それぞれの生徒の立場から描かれる。
オムニバスで、テンポよく読んでいける。
形式としては、好きな部類である。
私は男子高だったから、これが現実の女子高の姿にどれほど近いのかは全くわからない。
それに関する意見は、女性の皆さんに任せる。
ただ、さもありなん、とは思ったし、個々の登場人物の描き分けは、それぞれに個性があって、パリッとキャラが立っていた。
どのキャラクターの視線にも、光があり、影があった。
群像劇として、単純に、よく出来ていると思って感心した。
スクールカースト、という概念は厳然とあるとしても、その上位がハッピーで、下位が惨めだ、というほど、学校という社会は、というか、生きてゆくということは、単純ではない。
私の好きな小説の中に、「何かを持っている人間はいつそれを失うかと怯えているし、何も持たない人間は一生何も持てないままなんじゃないかと怯えている、みんな同じさ」という意味のくだりがる。
スクールカーストの最上位で肩で風を切って歩いているあの子も、何とか彼女にしがみついて生き抜こうとしているあの子も、下位でひっそりとうつむいているあの子も、実のところ、皆それぞれの痛みを抱えて生きている。
どこに属してどう生きたところで、イージーモードの人生というのは、多分、ないのだろう。
本作のスタンスというのは、そういった全てを、大人の興味本位の目線から笑うのではなく、少しずつでも彼女たちに寄り添おうとしたものであるように思えて、私は嫌いではなかった。
「先生の白い嘘」から飛んできた。
「これはちょっと言葉にならないよな」という、感情だったり、あるいは感情未満の感覚みたいなものだったり、自分でもそれが何なのかわからないような、ときにはそれが自分の中に存在していることにも気づけないような、あるいは認めたくないような、ぐちゃぐちゃの有象無象を抱えて、私たちは日々、生きている。
それは別に、言葉にならなくていいものなのかもしれない。
形にならなくていいものなのかもしれない。
それは、そうなのだけれど。
そんな、何とも表現されないままに、自分の中にたまっていったり、通り過ぎていったりする「何か」に、漫画という手段でもって形を与えたのがこの作品なのではないかと思ったし、私たちの言葉にならない言葉を翻訳するような感性と技術には、もう、感心するしかなかった。
話としてはそこまで凝ったミステリ的な深みはないが、それでかえって、漫画としての勢いで読ませる、コンパクトでスリリングな作品に仕上がっている。
ストーリーはシンプルな反面、道中で様々な小道具を駆使して盛り上げるのも、まさに匠の技である。
心理描写の雰囲気なんかは完全に「カイジ」のそれで、「絵」なしで作者のカラーを感じさせるというだけでも、福本伸行の色の濃さは大したものだと思う。
ただ、これで「絵」が福本伸行だったら…と考えると、正直、これほど緊張感のあるサスペンスになったかは疑問符がつく。
そういう意味でも、本作のタッグは理想的だった気がする。
話の尺も、絶妙なところ。
これはもう、一気読みするしかないだろう。
壮絶ないじめを受け、挙句の果てには屋上から落とされた主人公が、落下地点で教師と激突し、その教師と精神が入れ替わる、というところから始まる復讐の物語。
うんざりするほど量産されてきた典型的な「いじめ→復讐」系の漫画ではあるのだが、烏合の衆とはレベルが違い、これがもう、滅法面白い。
完全にハマってしまい、最新話まで一気読みした。
細かい点を見れば、教師の肉体で女子生徒と関係を持ってしまう主人公の行動原理だとか、無能すぎる警察だとか、特に後半では「精神の入れ替わり」を周りの人間があっさり信じてしまうとか、突っ込みどころは豊富にあるのだが、そんなものは些事に過ぎないと断言したくなるほど、本筋がマジで面白すぎる。
本作の突出した魅力は、その「展開力」だと思う。
緻密な構成力、というのではなく、どちらかと言うと荒っぽいのだが、とにかく話を勢いよく転がしていくのが、上手い。
その展開力、ストーリーの推進力を支えているのは、キャラクターのドラスティックな変貌ぶりで、メインの登場人物の多くが、作品開始時とはまるで違う印象になる。
半端な変化ではなく、熱血漢の教師が極悪人のサイコ野郎になり、いじめに加担していたクズ女がヒロインになり、役立たずの端役が女神になる、という具合である。
しかも、それらに決定的な違和感がない。
いやー、久しぶりに漫画で少年時代のワクワクを思い出した。
これほどまでに手垢にまみれたジャンルで、今更これほど胸が高鳴ろうとは、驚きであると言う他にない。
ありがとうございました。
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