rokaさんの投稿一覧

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171 - 180件目/全511件
  1. 評価:4.000 4.0

    振り回されるだけのミステリ

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    はっきり言って、この設定はずるいと思う。
    遺書が深読みやら裏読みやらいくらでも出来てしまうものである以上、後づけでいくらでも話が作れてしまうからである。
    その上、遺書は活字で書かれているわけで、偽造・捏造可能となると、そもそも遺書が本人によって書かれたものではないかもしれないとか、自殺ですらないかもしれないとか、そういうレベルのことまで何でもありになってくる。
    おそらく、連載開始時点ではそれほど今後の展開が緻密に練られていたわけではないだろう、という気がする。
    別にそれ自体を非難する気もないのだが、ここまで何でもありだと、読者に「推理」の余地というものがほとんどない。
    つまり本作は、「考えるだけ無駄」なミステリなのであり、それはもう、ミステリ漫画としては致命的だと思う。

    ただ、こんなこと言っておいて何だけれど、面白かった。
    プロットとしては変化がなく、三十人くらいの生徒たちがただただ自らに宛てられた遺書を公開していく、というだけの内容、ほとんど「何も起きていない」といっていい話であるにも関わらず、私は読むのを止められなかった。
    「彼女に何が起こったのか」という謎の一点でここまで引っ張れるのは、それなりに作品に力があるということなのだろう。
    また、「こういう系」の作品は、往々にして人が死にまくったり、人間離れしたサイコ学生が出てきたり、何かと「起こりすぎる」ことで興が削がれるが、そういうことがなかったのも、ポイントが高かったのかもしれない。
    要するに、「何も起きない」ということが、奏功したのかとも思われる。
    そう考えてみると、この「やったもん勝ち」のずるい設定を考案した時点で、本作はある部分、既に成功していたのかもしれない。

    読者の推理に対して排他的である、というミステリとしての致命傷を負っている作品ではあるが、「推理を楽しむ」ミステリではなく、「ただ振り回されるだけのミステリ」として、私はそれなりに楽しんだ。
    それを邪道と呼ぶかどうかは、微妙なところなのだけれど。

    • 33
  2. 評価:3.000 3.0

    古きよき、だが

    古きよきホラー漫画時代を思い出す短編集。
    表題作は「怖い昔話」風の一編。

    これは今まで色んなホラー漫画のレビューに書いてきたのだが、幼い頃、従姉の家に行くと必ずホラー漫画雑誌が置いてあって、それを読むのが楽しみだった。
    もちろん、あの頃のドキドキみたいなものは永遠に戻らないのだが、私にとってはひとつの原体験みたいなものだったと言ってよいかと思う。

    そういうわけで、この種の漫画を読むときは、いつも一種の懐かしさと慕わしさを覚える。
    それだけで十分と言えばまあ、そうなのだが、大人になった今でも楽しめた、と言うには、本作はちょっとパワー不足のような気もした。

    • 4
  3. 評価:5.000 5.0

    こっちの台詞

    「女の園の星」が面白すぎて、こっちに飛んできた。

    あまりに素晴らしい才能というのは、もう、私なんかがいちいち言葉にするのも馬鹿らしくなってくるのだが、本作もまさにそういうことで、とにかく黙って「うしろの二階堂」だけでも読んで下さい。
    よろしくお願いします。

    フィクションを作る才能にも色々あると思うのだけれど、この人のそれは「構築する」というようなタイプの才能ではなくて、日常を「切り取る」ということに特化した才能ではないかと思う。
    例えば、優れた写真というのは、結局、目の前にあるものをどう切り取るか、ということになるかと思うのだが、そういう種類の感覚がずば抜けている。

    「女の園の星」のレビューでも同じことを書いたけれど、読んだ後で、自分が生きている日々に対する見方が少し、変わるような、日常をもう少し慈しみながら生きてみようかな、と思えるような、本当に素晴らしい漫画である。

    何だよ、「夢中さ、きみに。」って。
    それはこっちの台詞だっつーの。

    • 111
  4. 評価:3.000 3.0

    比較の問題

    素人探偵である主人公の少女が、死んだ兄とコンビを組んで事件を解決してゆく話。

    同じ作者の「名探偵マーニー」という漫画があり、作品の枠組みや雰囲気はかなり類似している。
    大きな相違点としては、死んだ兄が主人公のバディ役である点で、これがもちろん、本作のアイデンティティーである。
    が、私は正直、この設定にイマイチ乗っかれなかった。
    乱暴に言えば、この設定は「要らない」と思った。
    本作がつまらないわけではないものの、比較をすれば、明らかに「名探偵マーニー」に軍配が上がるのではないか。

    作者は短編の名手であると思う。
    以前、「名探偵マーニー」のレビューの中で、「ここまで短編が上手いともう短歌とか俳句の芸の世界」という意味のことを私は書いたが、その本質は「削ぎ落とす」ということに他ならない。
    限られた尺の中で十分にドラマを描くためには、余計なものはことごとく削ぎ落とさなければならない。
    それこそ、肉を落とされた骸骨のように。

    しかし、「死んだ兄が相棒として存在している」というのは、結構重たい「肉づけ」なのだ。
    この存在がある以上、主人公にも、兄にも、見せ場を与えないといけない。
    また、本作は悪事に手を染める人間のバックグラウンドに、人の悪意を具現化したみたいな霊的な存在(イメージは「ホムンクルス」という漫画のそれに近い、本質的には全然違うけど)も描いているので、その描写も必要になる。
    結果、限られた尺の中では許容量オーバー気味になり、詰め込まれた要素は増えているのに、話としては薄くなっている、と感じた。
    また、「名探偵マーニー」で感じられたような「削ぎ落とされた短編の美学」みたいなものも、かなり目減りしてしまっている気がした。

    ただ、仮に「死んだ兄が相棒」の設定をなくすと、これはもう、「名探偵マーニーと同じじゃん」ということになり、何か変化をつけるしかなかったのはわかる。
    が、正直それならもう、「名探偵マーニー2」でよかったんじゃないか、という気がしないでもない。

    まあ、これら全て比較の問題であって、純粋に本作を見た場合、私の評価はちょっと厳しすぎるかもしれない。

    • 3
  5. 評価:3.000 3.0

    実在、はともかく

    アパレルの接客業で働く主人公が、次々と舞い込んでくる心霊関係の依頼を圧倒的な霊能力で解決していく話。

    あくまで漫画単独としての評価であり、主人公のモデルが実在した霊能者であるとか、そういう話はいったん置いておく。

    テンポよくサクサク読めるけれど、心霊漫画として特筆すべき点を私は見出だせなかった。
    いわゆる「実話に基づく」という枕がなければ、大して印象に残らなかったと思う。

    今まで様々なオカルト媒体から得てきた知識を凌駕するようなものも特になく、「やはり本物の霊能者が言うことは違うな」みたいな鮮烈なインパクトも説得力もなかった。

    結構な量のレビューを書いてきて、初めてこの話をするが、私は正直、幽霊の存在は、まあまあ信じている。
    一度だけ、多分、幽霊を見たこともある。
    ただ、「霊能者」の存在には、どうにも胡散臭さを感じてしまう。
    これは、世の中にエセ霊能者が溢れているせいなのだろうが、いずれにしても何かを信じられないというのは、残念という他にない。

    • 4
  6. 評価:3.000 3.0

    普通のホラー

    よくも悪くも、普通。
    普通の怪談話。
    それ以上の何かを求めて読んだのか、と問われれば答えはノーなのだが、それにしても、普通。
    そんな本作に捧げる星は、三つ。

    いわゆる「実話怪談」テイストで、こんなものと言えばこんなものなのかもしれないが、私はやはり、「普通ではない何か」を求めてホラーを読む、という夢を捨てられない。

    • 3
  7. 評価:3.000 3.0

    小さな振れ幅

    人生の土壇場で、遺品整理の仕事に拾われた主人公の話。

    基本線は「遺魂断ち」を生業とする特殊な人間たちの活躍を描くオカルト路線なのだが、私はあまり特筆すべき点を見出だせなかった。
    ホラーの側に振れたり、ハートウォーミングな側に振れたり、おそらくその両方をやりたかったのだと思うが、どっちつかずというか、その振れ幅が小さい。
    かといって、キャラクターに突出した魅力があるかというと、そうでもない。
    結果、大して冷えもしないし温まりもしない、という微妙なところに落ち着いてしまった気がしてならなかった。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    レビューの是非

    ネタバレ レビューを表示する

    何も知らずに読みたかった。
    が、私は頭から「娘、または娘と夫の両方が死んでいるのでは」と疑いながら読み進めた。
    夫死亡説は離婚届のくだりでどうやらなさそうだったので、そうなると、娘一択。
    そういう目線で読んでいれば、必然的に、消費されない朝食とか、溶けていくだけのクリームソーダとか、主人公を奇異の目で見る周囲の様子とか、伏線は目につく。
    結果、よく出来ているな、という一定の感心はしたけれど、サプライズは得られなかった。

    娘の死に気づいたのは、私が鋭いからではなく、他のレビューによってである。
    さすがに、ネタバレありのレビューの中身は読まなかったが、レビューのタイトルなどで皆が「6話が」「6話が」と書いていれば、どうしても目に入るし、「嗚呼、これは6話でどんでん返しがある漫画なのね」という先入観は、どうしても出来てしまう。

    漫画、というか、作品におけるサプライズには、大きく二種類ある。

    ひとつは、作品に「どんでん返しがある」という前提で見ても、成立するサプライズだ。
    推理小説もサスペンス映画も、基本のサプライズというのは、こっちだ。
    読者や観客は、作品が自分たちを騙そうとしているな、という前提で見るし、あとは読者・観客の想定をどう裏切れるか、という勝負になるわけだ。

    もうひとつは、「そもそもどんでん返しがある作品だと思っていなかった」という種類のサプライズだ。
    推理モノやサスペンスとは違って、「えっ、そういう話だと思っていなかった」というサプライズである。

    本作は完全に、後者だ。

    そして重要なのは、後者の場合、「どんでん返しがある」ということ自体がネタバレなのだ、ということだ。
    問題はそのどんでん返しの内容ではない。
    どんでん返しがあると知ってしまった瞬間、サプライズのかなりの部分が失われるのである。

    今まで結構な数のレビューを書いてきて、他のレビューに恨み言を言うようなことはほとんどなかったのだけれど、今回はちょっと、残念だった。

    まあ、本作の場合、そのどんでん返しは「オチ」ではなく、言わばスタートのようなものなので、今後が楽しみなことに変わりはないのだが。

    • 63
  9. 評価:4.000 4.0

    唯一無比の勢い

    冷静に見れば、いくらホラー漫画とは言え滅茶苦茶で、突っ込みどころだらけなのだけれど、こちらが突っ込む余地を残さないほどの強烈な勢いでもって押し切られる。
    そして、冷静に見る、なんてことを考えたこちらが間違っていたのだ、というような気分にさせられる。
    楳図かずおというのはそういう無類のパワーを持った作家であって、ここまで来るともう、一種のスタンド使いみたいなものだと思う。
    私としてはもう、「参りました」と言う以外にない。

    • 8
  10. 評価:3.000 3.0

    悲劇の顕示、みたいなもの

    同性愛の問題はいったん置くにしても、ある種の時代においては、誰かを失うということが、文字どおり、世界の終わりになり得る。
    それはしばしば、大人になってから振り返れば「何であんなことで傷ついていたんだろう」と首を傾げるような類の傷であったりするのだが、これはもう、完全に大人が間違っている。
    痛みや不幸なんて、その瞬間には絶対的なものだ。
    「何であんなことで」というその些細な傷こそが、その時代には、全てだったのだ。
    本作は、その部分をなかなかリアルに、またクリアに描いていて、そういう意味では、普遍的なものを表現し得ている作品だとは思った。

    ただ、ここは本当に難しいところなのだけれど、私は、ちょっと「悲劇の顕示」みたいなものを感じてしまって、それが鼻についたというか、イマイチ入り込めなかった。
    わかりやすく言えば、「ほら、こういうのって悲惨だよね、汚れた大人になってしまう前ならではの時代の悲劇だよね」というようなうるささを、どこかに感じてしまったのだ。
    この点は、正直どうにも作品に非があるようには感じられず、ただただ、申し訳なかった。
    作品と読者の相性というのは、とても微妙で、難しい。

    • 5

設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています