rokaさんの投稿一覧

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181 - 190件目/全506件
  1. 評価:5.000 5.0

    騙された私の負け

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    第一話の冒頭は、ある男子生徒が女子生徒に、読者が目を背けたくなるほど悪質ないじめを行っている描写に始まる。
    よくあるいじめ→復讐系の漫画かと思いきや、これがまるっきりのミスリードで、途中から(というか序盤から)完全なギャグ漫画に変貌する。

    実は、いじめていた男の子(主人公)の方が、女の子(ヒロイン)に、いじめることを強要されており、いじめが生ぬるいと、後でヒロインから苛烈を極める暴力でもってお仕置きされる、という設定である。
    なぜ少女がそのような奇行に走るのか、明らかにならないままストーリーは進むのだが(一応、過去にいじめで友達を亡くしていて、それを救えなかった自分を罰しているのでは、と感じさせるような伏線は出てくるが、読んだところまででは何とも言えない。私は「文化祭編」まで読んだ)、その本筋はいったん置くにしても、実にいい拾い物をした、と思える漫画であった。

    いじめというセンシティブな題材を扱っているだけに、これをギャグにもっていくのは不謹慎と言えばまあそうなのだが、はっきり言って私は楽しくてしょうがなかった。
    肝心のギャグ部分が、単純にとても面白かったからだ。

    本作は様々な少年バトル漫画、スポーツ漫画、推理漫画、ホラー漫画、などのパロディに満ちていて、私が元ネタをわかったのはごく一部だと思うが、「少年漫画あるある」を逆手にとったその懐の深さと造形の深さ、センスの良さ、そして、少年漫画への愛情みたいなものには、ほとんど感動すら覚えた。

    何とかいじめをやめて平穏な学園生活に戻りたい主人公、主人公が自分以外をいじめることも主人公以外が自分をいじめることも許さない奇怪なヒロインを始め、新選組に憧れるまるで頼りにならない正義漢、黒板を片手で振り回す本物のいじめっ子、主人公を溺愛する万能サイコ美少女、タフな肉体を持つミュンヒハウゼン症候群少女、と脇を固めるキャラクターたちも可愛くて楽しい。

    そんなわけで、第一話だけ読んでやめない方がいい、と声を大にして言いたい漫画なのだが、最初だけ読んで離脱する読者がないよう、第一話からきっちりネタばらしをしてくる点は実に巧妙で、その大胆さには舌を巻く。
    第一話のサプライズの大きさ、という点では、私が読んだ漫画の中で歴代一位かもしれない。

    星五つはあげすぎな気もするが、これだけ見事に騙されると、もう、私の負けである。

    • 9
  2. 評価:4.000 4.0

    ホラーの二重奏

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    土着系、民族系のホラーで、小説が原作(未読)。
    個人的には好きなジャンルで、軽度な(よく言えばポップな)民俗学のバックグラウンドで味をつけた「ぼぎわん」の存在感はなかなか面白かった。

    題材は目新しいものではないが、本作の見せ場は構成の妙で、原作がホラー大賞を受賞したのも、おそらくこの構成力が評価されたのが一因かと思われる。
    三部構成で、第一部が夫、第二部が妻、第三部が事件を追う記者の視点から、それぞれ綴られる。

    私は、第一部から第二部への切り替えの見事さに感心した。
    第一部を読むと、語り手の夫は普通のサラリーマンで、妻と子どもを守るために怪異に立ち向かうオーソドックスな主人公として映るのだが、まずこの夫が、第一部のラストで死ぬ。
    そして第二部では、その夫が、妻から見れば、実は半ば死んでほしいくらいに疎ましい男だったことが明らかになる。
    この描写が、凄い。
    何が凄いって、夫が実は不倫をしていたとか、とんでもない過去の秘密があったとか、そういうことは一切なく、ただ単に、夫が見ている世界と妻が見ている世界が全く違った、という描き方をしている点である。
    現実とは多くの場合、こうなのだろう。
    主観と客観のズレ、というか、誰かの主観と誰かの主観のズレ。
    「寄生獣」の中で、ミギーが「仮に魂を入れ替えることが出来たなら、全く違う世界が見えるはずだ」という意味のことを言っていたが、私たちはそういうズレの中に生きており、そのズレが許容量を超えて乖離したとき、例えば夫婦関係が破綻したりする。
    それに気づかないのはだいたい男の方で、本作も然りである。
    本作はいわゆる「人怖」のホラーではないが、「ぼぎわん」という怪異の恐怖と、人間関係にまつわる人の愚かさという一種の恐怖が二重奏となって、とても興味深かった。

    ところが、問題は第三部である。
    「ぼぎわん」という正体不明の怪異を描く第一部。
    オカルトの恐怖に人間関係の恐怖を重ねつつ、謎解きが進む第二部。
    そして第三部は、雑に言うと、霊能バトル漫画に近い、イメージ的には。
    どうしてこうなったんだろう、と私は首を捻ったが、もしかしたら作者が本当にやりたかったのはこれなのかもしれない。
    だとしたらしょうがない。
    しかし、私はこのジャンル変更みたいな展開にどうにも乗っかれず、第二部までが楽しかっただけに、ちょっと残念だった。

    • 5
  3. 評価:2.000 2.0

    古田の必然性

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    この漫画というか企画に、古田本人がOKを出したことに驚く(さすがに無許可じゃないだろうから)し、その企画力はまあ、買おう。

    ただ、尺の都合上しょうがないのかもしれないが、内容は非常に薄い。
    キャッチャーのスローイングやキャッチング、リード面などについて、多少の「古田的な」言及はあるものの、はっきり言って、ネットでちょっと調べただけでも書けるレベルの情報しかないし、古田である必要性も「高校までは無名だった」「メガネのキャッチャー」くらいしか感じない。
    私はヤクルトファンでも古田ファンでもないが、仮にファンだったならムカついたと思う。
    結局、安っぽい精神論みたいなところに帰着していく後半も本当に寒い。

    あと、古田が似ていない。

    • 2
  4. 評価:2.000 2.0

    誰も彼もがどうかしている

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    まあ不倫ものだけど、何かもう、登場人物たちがあまりにぶっ飛んでいて、ついていけなかった。
    性格が悪いとか、変わり者とか、そういうレベルではなく、ほとんど異常者である。

    【異常者①主人公の夫の不倫相手】
    シングルマザー、職業は弁護士。
    夫が妻(主人公)を裏切る瞬間がたまらないわ、というようなトチ狂った恋愛観を持つ悪徳女。
    客がたくさんいるレストランで「早く奥さんと別れてよ!」と怒鳴り散らすなど、情緒不安定な側面も持つ。
    だいたい、こんな、すぐに我を失うようなヒステリックな人間に、弁護士が務まるのか?

    【異常者②主人公の夫】
    異常者①と不倫中の銀行マン。
    結婚した当初は優しかったが、仕事のストレスから豹変していく。
    けなげに夫を慕う主人公に対して、結婚記念日には床に現金をばらまき、「好きなものでも買うといい」と言い放つ。
    お前はおぼっちゃまくんか。
    どうしてそうなるんだというレベルで人格を破綻させている。

    【異常者③主人公】
    夫が上記のようなサイコぶりを発揮しているにも関わらず、あくまで夫を迷いなく愛している、と書くとまともそうだが、いくら何でも度が過ぎている。
    夫が食卓で妻の方を見ようともせず、ずっとスマホをいじっているのに、「今日は久しぶりに夫と夕食だえへへへ」と喜ぶなど、常人よりIQが大幅に欠落しているのではないかというレベルで幸福のハードルが低すぎる。

    【異常者④主人公の幼馴染】
    本来であれば白馬の王子様的な位置づけのはずのこいつがとにかく一番ヤバい。
    主人公が苦しんでいると見るや、ソッコーで夫の不倫現場の写真を撮って主人公に見せるというバイタリティーの持ち主だが、主人公の弱みにつけこんであわよくば、というような狙いがなく、「花ちゃんをいじめるやつは許さない」というティーンエイジャー未満の正義感で動いている。
    主人公を救うというより、もはや夫とその不倫相手を陥れることが目的化している感があり、とにかく不気味すぎる。

    あれ?
    何かちょっと面白そうな感じになってしまった。
    まあいいか、それはそれで。

    • 25
  5. 評価:3.000 3.0

    決まらない豹変芸

    以前、この作者の「灰色の乙女」という漫画を読んだとき、登場人物の豹変によって恐怖を演出することに成功している、という印象を持った。
    本作でもその「豹変」は健在で、人間のいわゆる「裏の顔」みたいなものは、この作者が入れ込んでいるモチーフなのかもしれない。

    ただ、本作の場合、「灰色の乙女」で見られたほど、その「豹変芸」は上手く機能していないように思えた。
    それはおそらく、登場人物を支えるバックボーン的なものに、イマイチ説得力を感じなかったからではないかと思う。

    「灰色の乙女」の場合、それは端的に言えば「愛」だった。
    歪んだ愛かもしれないし、あれを愛とは呼ばない人が多くいることも受け入れるが、少なくとも主人公にとっては、愛だった。
    が、本作、それが何なのかイマイチ伝わらない。

    ナチュラルな豹変は狂気だが、作り物の豹変は途端に「演技」に成り下がる。
    私は「灰色の乙女」の狂気的な部分に惹かれただけに、本作の演技的な豹変には、いささか残念な気持ちになった。

    • 2
  6. 評価:5.000 5.0

    ノスタルジア、そして、戦う子ども

    この原作者の漫画化作品は「死者恋」「フクロウ男」と読んできて、これが三つ目。
    「フクロウ男」も結構凄かったけれど、本作には完全にやられた。

    話としては、いわゆる「ループもの」で、主人公の少年は、友達を救うために、同じ一日を何度も繰り返す。

    私はそもそも短編小説という表現形態が好きで、短編小説の良質な漫画化も好きである。
    その点から言えばもう、本作は満点という他にない。

    何がいいって、作品の空気感がいい。
    ピンポイントの世代で言えば、私より少し上の年代により刺さるのだろうが、描かれているのはほとんど普遍的と言って差し支えない、あなたや私の「あの頃」であり、そのノスタルジックな手触りは、絵柄と相まって、とても魅力的に映った。
    そのノスタルジアと、反復される友人の死、というもの悲しいファンタジーが、一種特異な世界観を創出している。

    思うのだが、子ども、という存在は、大人ではあり得ない種類の戦いみたいなものを、日夜続けている気がする。
    その大半は、大人になってしまった我々の目からは些細な問題に映るので、私たちはいつしか、その壮絶さを忘れる。
    「下らないことで悩んでたよね」と。
    しかし、大人がどれほど子どもを笑っても、あるいは自らの幼さを自嘲的に振り返っても、やはりそこには過酷な戦いがあったのだと思うし、その欠片くらいは忘れたくないと私は思う。
    子どもと関わる人間であるなら、なおさらだ。

    本作が描いたのは、「昨日」が繰り返されるファンタジーであるのと同時に、大人には決して理解されることのない孤独な戦いを続ける少年の、つまりは、かつてのあなたや私の、普遍的な物語でもあったと思う。
    そういう意味で、本作は、戦い続ける子どもたちへのアンセムであり、その戦いを終えた大人たちへのレクイエムでもある。

    作品において「子ども」を描く、ということについて、これ以上に誠実な視線というものを、私はあまり知らない。

    • 37
  7. 評価:4.000 4.0

    虚実の振れ幅

    自らが「都市伝説」になる、という妄念に憑りつかれた男の話。
    私がどうかしているのかもしれないが、主人公の気持ちは、何となくわかる。
    私も都市伝説になりたーい。

    ただまあ、主人公の狂気のリアリティーにはそれほど説得力がなく、はっきり言って、客観的に見れば嘘臭いことこの上ない話なのだが、何となく勢いで押しきられてしまった感がある。
    そういう意味では、力のある表現だったのだろう。

    これは原作がそうなのだろうが、現実と妄想が虚実ないまぜになった作品世界を、とても上手に構築していると感じた。
    読み終えて、いったいどこまでが現実だったのだろう、と考え出すと、その振れ幅は0から100まであるような気さえしてきて、それがちょっと、怖かった。
    「現実か妄想か」みたいな作品はそれほど珍しくはないけれど、ここまで異様な振れ幅を持った作品というのは、あまりない気がする。

    ラストの返し技もなかなか上手く決まっていて、短くて良質なものを読んだな、という気分に浸れた。

    • 14
  8. 評価:5.000 5.0

    覚えていること、忘れること/500本記念

    個人的な話だが、ちょうど500本目のレビューである(まあ厳密には削除されたレビューが2本あるのだが)。
    少年時代の思い出深い作品として、本作を選んだ。

    相手の頭部に手をかざすことで、任意の記憶を消去する能力を持つ医者の話。

    当時の少年ジャンプ連載作品の中では完全に異質だったが、当時を思い返してみても、これほど深く心を動かされた漫画というのは他にあまりなかった。
    少年漫画らしからぬ細く鋭いタッチ(作者が女性であることを後年になって知った)もさることながら、決定的な異質性は、本作が人の悲しみを描く漫画だった、ということにあったのではないかと思う。

    覚えていることも、忘れることも、悲しいことだと私は思う。
    何だよ、それじゃ全部悲しいじゃん。
    そうなのである。
    でもそれを、よりによって少年漫画でやるかね、というのが、本作だった。
    そしてまた、忘れられない悲しみを徹底的に描きながら、それでも覚えていることの素晴らしさ、美しさを描いたのも、本作だった。

    私たちは日々、膨大な量の情報にさらされながら、意識的に、あるいは無意識的に、これまた膨大な量の記憶を保持したり捨て去ったりしながら生きている。
    昔の恋人の香水の香りから、昨日の夕飯のメニューまで。
    覚えたいのに消えてゆくログに悩み、忘れたいのに忘れられない記憶に傷つきながら、私たちは生きている。
    でも、きっと、あるはずなのだ。
    何に代えても覚えていたいことが。
    いつか自分が年老いたときに、深いところで胸の内を温めてくれるような、これさえあれば残りの人生を生き抜いてゆけると思えるような、そういう種類の記憶が、私にも、あなたにも。
    それを、ありったけの悲しみの中から、そっとすくい上げるような漫画だった。

    誰かが言ったそうである。
    生きてゆくということは、思い出を作ることなのだ、と。
    ならば、この漫画にあったのは、私たちが生きてゆくということ、そのものであったと言っていい。

    あと百年もすれば、こんな私の文章など、地球のどこにも残っていないし、誰も覚えてはいないだろう。
    それでも生きてゆくということを考えるとき、私はときどき、この漫画のことを思い出す。

    • 18
  9. 評価:5.000 5.0

    芸としての短編

    高校生探偵マーニーが、「コナン君」とか「金田一少年」みたいな大袈裟な事件ではなく、もっと小規模な日常の事件を解決してゆく連作短編。

    いやーもう滅法面白かった。
    「フランケン・ふらん」にしても、一話完結の短編ということに関して言えば、この人はもう達人の域なんじゃないかと思う。

    まず、作品の雰囲気がいい。
    この作者の漫画は何ともセンスが欧米的で、日本の漫画とはちょっと違う文脈、古きよきハリウッド映画のそれに近い文脈で作品世界を作っているようなところがあり、独特の味わいがある。
    こういう漫画を描く人って、なかなかいない気がする。

    そして、何が凄いって、その尺の短さである。
    正直、最初は、短い一話の中で性急に話が進みすぎる気もしたが、そのリズムに慣れてくると、非常に心地よいものに感じた。

    この制約のなかできっちり起承転結を編み上げる技術というのは、ひとつの芸と言って差し支えないかと思う。

    削ぎ落とせるものは全て削ぎ落とし、それでいて、本質は確かにそこにあり、可笑しさや哀愁が薫っている。
    そんなのもう、ほとんど短歌とか俳句の世界であって、そういう意味では、欧米的なセンスによって描かれながら、何とも日本的な芸でもって成立しているような、奇異なバランスの光る作品。

    素晴らしい。
    本物の芸に触れるというのは、とてもいいものだ。

    • 5
  10. 評価:5.000 5.0

    「見える」ってこんな感じ?

    基本路線はホラー・コメディなのだが、主人公はただただ「見えるだけ」であり、ただただ「見えないふり」をするだけである。
    この「全力で見えないふりをするだけ」という設定が新しく、ホラー・コメディという作品のテイストに上手くマッチしている。

    漫画としては、霊の造形が素晴らしい。
    冷静に見れば「いや、そんな霊はいないだろ」というバイオハザードのクリーチャーレベルのものばかりなのだが、そのインパクトは絶大だ。
    バイオハザードファンの私としては、この作者にクリーチャーのデザイン担当をしてほしいと思ったくらいである。

    そして、極めて非現実な造形の霊とはうって変わって、霊の「見え方」と、「見える人」の描き方に関しては、「本当に見える人ってこんな感じじゃないのかな」というリアリティーがある。
    漫画を読んでいてそんなふうに思ったのは初めてで、もしかして作者は「見える人」なんじゃなかろうか、という邪推をした。

    基本的には短いエピソードの集積なのだが、「続きもの」としての魅力もちゃんとあり、一度登場したキャラクターの再登場によって展開していくストーリー運びも、なかなか巧みである。
    特に、サイコ野郎っぽい教師のエピソードでの「返し技」はシンプルながらも絶妙で、思わず唸った。

    本物の「見える人」の共感を呼ぶ漫画ランキングをやったら優勝しそうな妙なリアリティーと、過剰なまでのクリーチャー造形が楽しい、新しいホラー漫画の傑作。

    • 15

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