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作品レビュー
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181 - 190件目/全498件

  1. 評価:4.000 4.0

    情報として

    正直なところ、「漫画」としての面白味というのは、それほど感じなかった。
    クセのある設定の主人公弁護士のキャラクターにも、あまり魅力を覚えなかった。
    ただ、漫画であれ何であれ、書物というものを「情報」として評価する場合、なかなか優れた作品になっているとも思った。

    SNSでの誹謗中傷の被害やそれを巡る法制度、訴訟、裁判、被害者サイドが法的措置に踏み切ることのメリット(現実的にはあまりに乏しいが)とリスク、その選択の意義と、金銭的なプラマイでははかれない価値。
    そういった実情を、私たちは本当のところ、あまり知らない。
    これだけ豊富な情報量を、漫画として一定のポップさを保持したまま、きちんと整理して提示することは、なかなか出来ることではない。

    気に入ったのは、主人公の弁護士が、選択肢を明確に提示した上で、きちんと依頼人に選ばせようとしているところだった。
    「ものを教える」という側面を持つ職業の人間にとって、これは重要な職業倫理であると私は思う。
    つまり、教えることや導くことよりも、選択肢の提示こそが、まずもって重要な仕事である、ということだ。
    こちらの道を選べばこういう危険があるし、あちらの道を行けばこういう痛みを伴う、どちらを選ぶかを決めるのは、あなたですよ、と。
    これは、全く違う作品だけれど、「九条の大罪」にあった「法律の世話はできるが、人生の面倒は見られない」という台詞にも通じるかと思う。

    極めて現代的な情報力を持った、なかなか有意義な作品。
    私は普段、SNSとは縁遠いところにいるけれど、SNSが生活の一部である、というような読者は特に、一読の価値はあるかと思う。

    • 590
  2. 評価:3.000 3.0

    爬虫類の必然性

    ある日突然、飼っているヒョウモントカゲモドキが半擬人化した男の話。

    はっきり言って面白かった。
    ぐいぐい読まされたし、ラストはちょっと感動すらしてしまった。
    でも、ふと我に返って、思った。
    これって、爬虫類である必要、あったんだろうか、と。

    500近いレビューを書いてきて初めてこのことに触れるが、私は爬虫類を2匹飼っている。
    そして、彼らを溺愛している。
    爬虫類飼育者の読者の立場からものを言うと、本作における爬虫類に対する考察や洞察というのは、はっきり言って全然物足りない、というか、ないに等しい。
    かといって、爬虫類をまるで知らない人にとっては、わかりにくい、という感想になるだろう。
    そうすると結局、どっちつかずの中途半端なところに落ち着いてしまっている、という印象を持った。

    また、ヒョウモントカゲモドキやニシアフリカトカゲモドキやニホンヤモリといった、それぞれの爬虫類の特徴が、キャラクターメイキングにはそれほど生かされていないことも気になった。
    それゆえ、先に述べた「爬虫類である必要あるか?」という感想になる。
    別にこれが、犬や猫、ウサギやハムスター、あるいは昆虫であっても、ほとんど変わらない作品になったのではないか、という気がしてしまう。

    爬虫類という、ある程度マニアックな(時代的に、これからはそうでもなくなっていく気はするのだが)生物を扱いながら、作品自体はそれほどマニアックな方向に振り切れていない、という思い切りの悪さみたいなものは、終始、違和感として付きまとった。
    他作品と比較するのはフェアではないかもしれないが、私に多大な影響を与えた「秘密のレプタイルズ」と比べると、爬虫類に対する造詣の深さも、偏執的と言っていいほどの愛着も、まるで勝負にならない。

    爬虫類に対して愛情のない作者ではないと思う。
    しかし、作品からその発露をあまり感じられなかったのは、残念と言う他にない。

    この漫画を読み終えた後で、私は飼っている爬虫類に向かって「君たちもそう思うかい?」と尋ねてみたが、彼らは私のことをちらりと見ることさえしなかった。
    何しろ、爬虫類は、なつかないので。

    • 6
  3. 評価:3.000 3.0

    埋もれる

    ある日突然、ゾンビ化的なサムシングによって日常が崩壊する、という話で、当然、そんな話は全世界で掃いて捨てられるほど作られているので、作品としてどこで勝負するのか、という問題になってくる。

    本作のアイデンティティーは、主人公の女子高生が筋金入りのサバイバルオタクで、反則級のサバイバルスキルを持っている、という点と、終末観を敢えて漂わせない微妙に緩い雰囲気かと思ったが、いかんせんそれだけでは、あまりに手垢にまみれたこのジャンルの作品としては、弱い、という印象は拭えなかった。

    • 4
  4. 評価:4.000 4.0

    尖った細部

    引っ越した家に座敷わらしが三人(?)住んでいて、それと同居することになったミステリ作家の話。

    話としては、倫理観を微塵も持たない残虐な座敷わらしたちとのドタバタコメディ、という感じで、それ自体もなかなか面白かったのだが、本作の尖ったところは、むしろ細部にあると思う。

    まず、タイトルである。
    B級ホラー映画(というかB級以下なのだが)に通じた読者ならピントときたかと思うが、「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」や「アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ」あたりを意識したものと思われる。
    しかしまあ、ザシキチルドレンときたか。
    このセンス。

    他にも、作中、主人公がやっているソシャゲのガチャのレアキャラが「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスだったり、第一話の冒頭で出てくる引越社の名前が「人間椅子引越社」だったりと、作者は完全に「その筋」の人と思われる。

    いずれも、「そんなの普通、読者に伝わらないだろ」というネタを恐れることなくねじ込む、その心意気やよし。
    ただ、個人的には、もっと「そっち系」で突っ走ってほしかった気もする。

    • 6
  5. 評価:2.000 2.0

    悪女の違和感

    従妹にたちの悪い女を持ってしまった主人公の話。
    たちの悪い、というのは、主人公の恋人を奪い、悪びれることもなくその男といる場に主人公を呼ぶような女である。
    そして、主人公についてきた男友達に露骨に色目を使うような女である。
    おいおい。

    いわゆる「悪女」モノだが、何やらしっくりこなかった。
    悪女の定義みたいなものは人それぞれあるにせよ、その条件というのは、可愛くて、強かで、賢くて、怖い、そして、「可愛い」以外の要素を外には見せない、ということではなかろうか。

    その点、この漫画の従妹は、まずもって頭が悪すぎる。
    馬鹿な女のフリが出来るのが悪女なのであって、本当の馬鹿では悪女の魅力にも迫力にも欠ける。
    怖さはまあ、ないこともないが、それはチャーミングな笑みを浮かべて平気で背後から刺すような怖さではなく、デーモン閣下みたいなのが「グハハハハハ」と笑うような類の怖さなのである。
    読んだ人には、何となく伝わるんじゃないかと思う。
    このあたりはまあ、正直、漫画としての表現の稚拙さもある。

    また、主人公のキャラクター設定も甚だ疑問で、お人好しにも限度があるだろう。
    ここまで間抜けだと、はっきり言って同情の余地がない。
    ときどき、詐欺被害に遭った人に対して「騙される方も悪い」という残酷な攻撃がなされるが、私は主人公に対して、それと似たような感情しか抱けなかった。

    主人公を応援できない、かといって悪女の側にも魅力はない。
    それだともう、作品についてゆくことは難しい。

    • 8
  6. 評価:3.000 3.0

    死んだ人助け

    死者の声が聞こえる主人公が、「死んだ人助け」をする話。

    「死者の無念を晴らす」とよく言うが、現実世界において、基本的にそれは「生者のため」のものであり、死者はただ死んでいるだけである。
    しかし、本作はあくまで「死者のために死者を救う」物語である。
    このあたりは正直、もう少し踏み込んでほしかったけれど、「多重人格探偵サイコ」の大塚英志が絡んでいるだけあって、「死を徹底して描く」ことにはしっかりエネルギーを使っている。

    主人公の仲間たちも、死体限定ダウジングの天才、アメリカ帰りのエンバーミング(死後処置)の資格保持者、宇宙人と交信できるチャネリング青年、とバラエティー豊かで、なかなか楽しい。
    個人的には、もう少し現実に寄せてほしかった気もするが。

    あとは、これだけ死を描きまくる漫画でありながら、絵柄の問題か画力の問題か、死体の描写がちょっと迫力に欠けるのは気になった。

    • 5
  7. 評価:2.000 2.0

    未曾有の危機下で

    ネタバレ レビューを表示する

    ある日突然、「正解のボタンを押せば何も起きないが、不正解のボタンを押せば全国民が死ぬ」というボタンを悪魔に渡された男の話。

    元ネタは多分、映画にもなった「運命のボタン」だろう。
    押せば100万ドルもらえるが、この世界のどこかであなたの知らない誰が死ぬ、というアレである。

    読み始めた頃は、どちらが正解なのかを知恵を絞って解き明かそうとするストーリーになるのかと思ったら、違った。
    国民投票が行われただけで、謎解き的なくだりは全くなく、主人公は結局、ヤマ勘で選んだだけである。
    話の落としどころとしては、悪魔の狙いが、危機下において人間の醜い本性を暴き出し、悪魔に変える、的なことだった、と。
    それはネタとしては悪くないのだけれど、それ以外の見どころが乏しすぎる。

    未曾有の危機下において、個人が、国家・社会が、世界が、どう動くのか。
    そのリアリティーを描くことは、容易ではない(何しろ未曾有なわけですから)。
    しかし、こういう大風呂敷を広げるなら、そこに挑まないと、というか、それ以外に焦点はないと言っても差し支えないストーリーだろう。
    その掘り下げ、広がり、あまりに稚拙で雑だ、という印象は拭えなかった。
    だいたい、白黒どっちのボタンにしますか、他に何の情報もないですけど、という状況で、国民投票って。
    そんな阿呆な。

    • 13
  8. 評価:5.000 5.0

    ホラーって楽しい

    マッド・メディカル・ホラー・ブラック・コメディ、とでも言うか、とても楽しい漫画である。

    「ブラック・ジャック」のホラー・コメディ版、というと少しは伝わるだろうか。
    あるいは、「ブラック・ジャック」と「笑ゥせぇるすまん」を足してグロテスクな味つけをした、というか。

    とにかく、主人公である人造人間・ふらんのキャラクターがいい。
    人間離れした(まあ人造人間だけど)圧倒的な医療技術、常識と倫理観の完全な欠如、それでいて、彼女は決してサイコ系のキャラクターではなく、基本的には「善意」で動いている。
    世のため人のため、である。
    そうして善を為そうとして、結果的に酷いことばかりやっている。
    が、考えてみれば、人間とはそもそもそういうものではなかろうか。
    ヒトラーだって、善と信じてやったのだ。
    その意味では、まことに人間らしい人造人間である。

    このあたりのバランス感というか、アンバランス感が絶妙で、出来事としては結構残酷な筋立てのエピソードが多いにもかかわらず、不快感も悲壮感もまるでない。
    これだけバッドエンドを積み重ねながら、後味はむしろ爽やか、というのは、凄いことだと思う。
    その奇異な読後感に私はすっかりやられてしまい、先を読むのが止まらなかった。

    嗚呼、ホラーって楽しいなあ、という感慨を抜群の疾走感で届けてくれる、悪意の皮を被った善意に満ちた、良質な作品。

    序盤でいうと、「CHRYSALIS」のエピソードは必見である。

    • 6
  9. 評価:4.000 4.0

    異常な表現力

    頭蓋骨に穴を開ける「トレパネーション」手術を受けた男の話。

    手術後、主人公は他人の深層心理みたいなものが視覚化して見えるようになるのだが、その表現が圧巻である。
    水木しげるによる妖怪の表現とか、ジョジョのスタンドの表現とか、「見えざるもの」を魅力的に描ける、というのは漫画の素晴らしい利点のひとつだと思うが、本作のホムンクルスのインパクトも凄まじい。

    ホムンクルスは一貫して不気味でグロテスクな存在として描かれるが、闇雲なグロテスクではなく、人間の本質的な弱さや醜さを具象化しているようで、なかなか巧妙に練られている。
    江戸時代の頃、日本で描かれた妖怪の絵というのは、そこから人情や世相を読み解く「絵解き」の側面があったが、私は本作のホムンクルスを見て、その妖怪画を想起した。

    トラウマとコンプレックス、主体と客体、内面と外面、といった人間存在の根幹に迫るようなアプローチをしている作品だが、そのあたりは難しすぎて、私の頭脳ではキャパを超えてしまった。
    ただ、そういう小難しい話を抜きにしても、普通ではあり得ない表現に成功した漫画として、一読の価値はあると思う。

    途中、ちょっと迷走する期間が長いのは気になったが、考えてみれば、主人公自身が終始迷走しているような漫画なので、それはそれで、作品に相応しいのかもしれない。

    • 6
  10. 評価:4.000 4.0

    絶品シチュエーションコメディ

    同じ作者の「てっぺんぐらりん」を先に読んで、それがあまりに素晴らしくて、こっちに飛んできた。

    江戸の花魁が現代にタイムスリップする、という非常にわかりやすいシチュエーションコメディなのだが、これがまあ、滅法面白い。

    設定としてはとりわけ新しいものではないが、時代のギャップをどう笑いに落としこむか、というセンスが光るのと、一方で、江戸時代の人々が妙に現代に馴染んでしまっている可笑しみもあって、とても楽しく読めた。

    また、主人公の花魁が現代の中で「浮いている」様子が、話の筋としてだけではなく、絵柄としても表現されている、という巧みさには、思わず唸った。
    背景となる周囲の人々と異なり、花魁の姿だけは、浮世絵風の絵柄で描かれる。
    これは非常に漫画的な表現で、映画にも、小説にも、真似が出来ない。

    星をひとつ引いたのは、「てっぺんぐらりん」が超越的に凄すぎたのと、もうひとつは、本作のすぐ後で「女の園の星」を読んでしまったせいである。
    こういう評価はあまりフェアではないと思いつつ、「女の園の星」を通じて、私は、シチュエーションを作りこむタイプのギャグ漫画より、日常の中から笑いを拾う、という種類のギャグ漫画の方が明確に好きなのだ、ということに気づいてしまったのだった。
    そのあたりは当然、本作に責任はない。
    全ての作品の評価には、タイミングという運が関わっており、何もかもを客観的に判断し続ける能力は、私にはない。

    • 3
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