3.0
ホラーとスタイリッシュ
実によく出来た漫画だと思った。
漫画としての表現力の豊かさ、という意味では、確かな技量のある作者なのだろうとも思った。
コマの使い方に自由さがあって、派手で、スタイリッシュである。
しかし、私はこれを「ホラー漫画」であるという前提で読んだ。
そうすると、この「スタイリッシュ」は、いささか問題なのだ。
例えば映画で、「スタイリッシュなアクション」という宣伝をよく目にする。
アクションでスタイリッシュならば、それは「売り文句」になるということだ。
あるいは、「スタイリッシュなラブストーリー」というのも洒落た印象を与える。
「スタイリッシュなサスペンス」なんていうのも、新進気鋭の感が出て悪くない。
だが、「スタイリッシュなホラー」、これは、聞いたことがない。
私が気づくまでもなく、それは「売り文句」にはならないのだと、ホラー業界の人間たちは知っているのだろう。
要するに、「ホラー」と「スタイリッシュ」は、相性が悪いのだ。
上手く説明できないから、私が今までレビューで高評価をつけてきたホラー漫画をいくつか挙げる。
「裏バイト:逃亡禁止」
「ミスミソウ」
「不気田くん」
「座敷女」
「死人の声をきくがよい」
「サユリ」
「ユーレイ窓」
「おろち」
「不安の種」
「マガマガヤマ」
ほらね、「スタイリッシュ」なんて形容できそうな作品はひとつもない。
ある意味では、スタイリッシュの対極にあることが、ホラーである、ということなのではなかろうか。
ただ、言い方を変えれば、ホラー漫画として読まなければ、楽しい作品だ、ということになるのかもしれない。
しかしまあ、この筋立てでホラーとして読むな、というのは、ちょっと無理がある。
- 5
詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。