rokaさんの投稿一覧

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191 - 200件目/全509件
  1. 評価:5.000 5.0

    覚えていること、忘れること/500本記念

    個人的な話だが、ちょうど500本目のレビューである(まあ厳密には削除されたレビューが2本あるのだが)。
    少年時代の思い出深い作品として、本作を選んだ。

    相手の頭部に手をかざすことで、任意の記憶を消去する能力を持つ医者の話。

    当時の少年ジャンプ連載作品の中では完全に異質だったが、当時を思い返してみても、これほど深く心を動かされた漫画というのは他にあまりなかった。
    少年漫画らしからぬ細く鋭いタッチ(作者が女性であることを後年になって知った)もさることながら、決定的な異質性は、本作が人の悲しみを描く漫画だった、ということにあったのではないかと思う。

    覚えていることも、忘れることも、悲しいことだと私は思う。
    何だよ、それじゃ全部悲しいじゃん。
    そうなのである。
    でもそれを、よりによって少年漫画でやるかね、というのが、本作だった。
    そしてまた、忘れられない悲しみを徹底的に描きながら、それでも覚えていることの素晴らしさ、美しさを描いたのも、本作だった。

    私たちは日々、膨大な量の情報にさらされながら、意識的に、あるいは無意識的に、これまた膨大な量の記憶を保持したり捨て去ったりしながら生きている。
    昔の恋人の香水の香りから、昨日の夕飯のメニューまで。
    覚えたいのに消えてゆくログに悩み、忘れたいのに忘れられない記憶に傷つきながら、私たちは生きている。
    でも、きっと、あるはずなのだ。
    何に代えても覚えていたいことが。
    いつか自分が年老いたときに、深いところで胸の内を温めてくれるような、これさえあれば残りの人生を生き抜いてゆけると思えるような、そういう種類の記憶が、私にも、あなたにも。
    それを、ありったけの悲しみの中から、そっとすくい上げるような漫画だった。

    誰かが言ったそうである。
    生きてゆくということは、思い出を作ることなのだ、と。
    ならば、この漫画にあったのは、私たちが生きてゆくということ、そのものであったと言っていい。

    あと百年もすれば、こんな私の文章など、地球のどこにも残っていないし、誰も覚えてはいないだろう。
    それでも生きてゆくということを考えるとき、私はときどき、この漫画のことを思い出す。

    • 18
  2. 評価:5.000 5.0

    芸としての短編

    高校生探偵マーニーが、「コナン君」とか「金田一少年」みたいな大袈裟な事件ではなく、もっと小規模な日常の事件を解決してゆく連作短編。

    いやーもう滅法面白かった。
    「フランケン・ふらん」にしても、一話完結の短編ということに関して言えば、この人はもう達人の域なんじゃないかと思う。

    まず、作品の雰囲気がいい。
    この作者の漫画は何ともセンスが欧米的で、日本の漫画とはちょっと違う文脈、古きよきハリウッド映画のそれに近い文脈で作品世界を作っているようなところがあり、独特の味わいがある。
    こういう漫画を描く人って、なかなかいない気がする。

    そして、何が凄いって、その尺の短さである。
    正直、最初は、短い一話の中で性急に話が進みすぎる気もしたが、そのリズムに慣れてくると、非常に心地よいものに感じた。

    この制約のなかできっちり起承転結を編み上げる技術というのは、ひとつの芸と言って差し支えないかと思う。

    削ぎ落とせるものは全て削ぎ落とし、それでいて、本質は確かにそこにあり、可笑しさや哀愁が薫っている。
    そんなのもう、ほとんど短歌とか俳句の世界であって、そういう意味では、欧米的なセンスによって描かれながら、何とも日本的な芸でもって成立しているような、奇異なバランスの光る作品。

    素晴らしい。
    本物の芸に触れるというのは、とてもいいものだ。

    • 5
  3. 評価:5.000 5.0

    「見える」ってこんな感じ?

    基本路線はホラー・コメディなのだが、主人公はただただ「見えるだけ」であり、ただただ「見えないふり」をするだけである。
    この「全力で見えないふりをするだけ」という設定が新しく、ホラー・コメディという作品のテイストに上手くマッチしている。

    漫画としては、霊の造形が素晴らしい。
    冷静に見れば「いや、そんな霊はいないだろ」というバイオハザードのクリーチャーレベルのものばかりなのだが、そのインパクトは絶大だ。
    バイオハザードファンの私としては、この作者にクリーチャーのデザイン担当をしてほしいと思ったくらいである。

    そして、極めて非現実な造形の霊とはうって変わって、霊の「見え方」と、「見える人」の描き方に関しては、「本当に見える人ってこんな感じじゃないのかな」というリアリティーがある。
    漫画を読んでいてそんなふうに思ったのは初めてで、もしかして作者は「見える人」なんじゃなかろうか、という邪推をした。

    基本的には短いエピソードの集積なのだが、「続きもの」としての魅力もちゃんとあり、一度登場したキャラクターの再登場によって展開していくストーリー運びも、なかなか巧みである。
    特に、サイコ野郎っぽい教師のエピソードでの「返し技」はシンプルながらも絶妙で、思わず唸った。

    本物の「見える人」の共感を呼ぶ漫画ランキングをやったら優勝しそうな妙なリアリティーと、過剰なまでのクリーチャー造形が楽しい、新しいホラー漫画の傑作。

    • 17
  4. 評価:3.000 3.0

    ホラーとスタイリッシュ

    実によく出来た漫画だと思った。
    漫画としての表現力の豊かさ、という意味では、確かな技量のある作者なのだろうとも思った。
    コマの使い方に自由さがあって、派手で、スタイリッシュである。
    しかし、私はこれを「ホラー漫画」であるという前提で読んだ。
    そうすると、この「スタイリッシュ」は、いささか問題なのだ。

    例えば映画で、「スタイリッシュなアクション」という宣伝をよく目にする。
    アクションでスタイリッシュならば、それは「売り文句」になるということだ。
    あるいは、「スタイリッシュなラブストーリー」というのも洒落た印象を与える。
    「スタイリッシュなサスペンス」なんていうのも、新進気鋭の感が出て悪くない。
    だが、「スタイリッシュなホラー」、これは、聞いたことがない。
    私が気づくまでもなく、それは「売り文句」にはならないのだと、ホラー業界の人間たちは知っているのだろう。
    要するに、「ホラー」と「スタイリッシュ」は、相性が悪いのだ。

    上手く説明できないから、私が今までレビューで高評価をつけてきたホラー漫画をいくつか挙げる。

    「裏バイト:逃亡禁止」
    「ミスミソウ」
    「不気田くん」
    「座敷女」
    「死人の声をきくがよい」
    「サユリ」
    「ユーレイ窓」
    「おろち」
    「不安の種」
    「マガマガヤマ」

    ほらね、「スタイリッシュ」なんて形容できそうな作品はひとつもない。
    ある意味では、スタイリッシュの対極にあることが、ホラーである、ということなのではなかろうか。

    ただ、言い方を変えれば、ホラー漫画として読まなければ、楽しい作品だ、ということになるのかもしれない。
    しかしまあ、この筋立てでホラーとして読むな、というのは、ちょっと無理がある。

    • 5
  5. 評価:4.000 4.0

    適切な怪談

    謎の少年が毎回一話の怪談を語っていく、という漫画。
    一人百物語である。

    正直、お世辞にも上手い絵とは言えないのだが、不思議と引き込まれるものがあった。
    ことホラー漫画に関しては、「上手い・下手」とはちょっと別の次元のところで、ホラーというジャンルに関する「向き・不向き」というものがあると思うので、そういう意味で「向いている」絵なのではないかと思う。

    ストーリーとしては、凝った伏線とか、あっと驚くような展開とか、そういうものはないのだけれど、怪談話というのは本来、いい意味で「この程度」がいいのではないかと個人的には思う。
    シンプルで、論理性みたいなものはなくて、核心のところでは、わけがわからない。
    私はそれが怪談話の品とか節度とかいうものだと考えるし、本作はまさに「そういう」怪談で、なかなか好みに合っていた。

    何が怖いって、タイトルの意味が全くわからないところである。
    語り手の少年も謎だし、これから色々と明らかになっていくのだろうと思うと、単なる一話完結の怪談漫画という制約を超えた楽しみもある。
    しかし、本当に百話続くのかなあ。

    • 23
  6. 評価:2.000 2.0

    浅いメタファー

    恋人との結婚を考えている男性が、ある日、自分の父親が河童だということに気づく、という話。

    シュールな設定自体は面白いと思ったし、父が河童だ、とわりにあっさり受け入れる展開のはやさも悪くなかった。
    ただ、私の脳の機能が欠損しているのかもしれないが、感動、というものは全くなかった。

    この作品の河童というのは、人種とか身分とか何でもいいのだけれど、要するに結婚の障害となるもののメタファーとして描かれている、というか、描かれているに過ぎないのだ、と私は解釈した。
    そこに一種の安直さというか、底の浅さが見えてしまった気がした。
    河童まで出して表現したものがそれだけかい、というふうに意地悪く思ってしまった次第である。
    まあ、私は河童が好きなので、河童ナメんな、と思ったのもちょっとある。

    本作を読んだ感想というのは、「上手いこと言った」と得意げにしている人に対して、「いや、そんなに上手くないけどね」と思ってしまうときの感じに似ていた。
    つくづく、自分の性格が悪いと思うけれど。

    • 6
  7. 評価:4.000 4.0

    情報として

    正直なところ、「漫画」としての面白味というのは、それほど感じなかった。
    クセのある設定の主人公弁護士のキャラクターにも、あまり魅力を覚えなかった。
    ただ、漫画であれ何であれ、書物というものを「情報」として評価する場合、なかなか優れた作品になっているとも思った。

    SNSでの誹謗中傷の被害やそれを巡る法制度、訴訟、裁判、被害者サイドが法的措置に踏み切ることのメリット(現実的にはあまりに乏しいが)とリスク、その選択の意義と、金銭的なプラマイでははかれない価値。
    そういった実情を、私たちは本当のところ、あまり知らない。
    これだけ豊富な情報量を、漫画として一定のポップさを保持したまま、きちんと整理して提示することは、なかなか出来ることではない。

    気に入ったのは、主人公の弁護士が、選択肢を明確に提示した上で、きちんと依頼人に選ばせようとしているところだった。
    「ものを教える」という側面を持つ職業の人間にとって、これは重要な職業倫理であると私は思う。
    つまり、教えることや導くことよりも、選択肢の提示こそが、まずもって重要な仕事である、ということだ。
    こちらの道を選べばこういう危険があるし、あちらの道を行けばこういう痛みを伴う、どちらを選ぶかを決めるのは、あなたですよ、と。
    これは、全く違う作品だけれど、「九条の大罪」にあった「法律の世話はできるが、人生の面倒は見られない」という台詞にも通じるかと思う。

    極めて現代的な情報力を持った、なかなか有意義な作品。
    私は普段、SNSとは縁遠いところにいるけれど、SNSが生活の一部である、というような読者は特に、一読の価値はあるかと思う。

    • 595
  8. 評価:3.000 3.0

    爬虫類の必然性

    ある日突然、飼っているヒョウモントカゲモドキが半擬人化した男の話。

    はっきり言って面白かった。
    ぐいぐい読まされたし、ラストはちょっと感動すらしてしまった。
    でも、ふと我に返って、思った。
    これって、爬虫類である必要、あったんだろうか、と。

    500近いレビューを書いてきて初めてこのことに触れるが、私は爬虫類を2匹飼っている。
    そして、彼らを溺愛している。
    爬虫類飼育者の読者の立場からものを言うと、本作における爬虫類に対する考察や洞察というのは、はっきり言って全然物足りない、というか、ないに等しい。
    かといって、爬虫類をまるで知らない人にとっては、わかりにくい、という感想になるだろう。
    そうすると結局、どっちつかずの中途半端なところに落ち着いてしまっている、という印象を持った。

    また、ヒョウモントカゲモドキやニシアフリカトカゲモドキやニホンヤモリといった、それぞれの爬虫類の特徴が、キャラクターメイキングにはそれほど生かされていないことも気になった。
    それゆえ、先に述べた「爬虫類である必要あるか?」という感想になる。
    別にこれが、犬や猫、ウサギやハムスター、あるいは昆虫であっても、ほとんど変わらない作品になったのではないか、という気がしてしまう。

    爬虫類という、ある程度マニアックな(時代的に、これからはそうでもなくなっていく気はするのだが)生物を扱いながら、作品自体はそれほどマニアックな方向に振り切れていない、という思い切りの悪さみたいなものは、終始、違和感として付きまとった。
    他作品と比較するのはフェアではないかもしれないが、私に多大な影響を与えた「秘密のレプタイルズ」と比べると、爬虫類に対する造詣の深さも、偏執的と言っていいほどの愛着も、まるで勝負にならない。

    爬虫類に対して愛情のない作者ではないと思う。
    しかし、作品からその発露をあまり感じられなかったのは、残念と言う他にない。

    この漫画を読み終えた後で、私は飼っている爬虫類に向かって「君たちもそう思うかい?」と尋ねてみたが、彼らは私のことをちらりと見ることさえしなかった。
    何しろ、爬虫類は、なつかないので。

    • 6
  9. 評価:3.000 3.0

    埋もれる

    ある日突然、ゾンビ化的なサムシングによって日常が崩壊する、という話で、当然、そんな話は全世界で掃いて捨てられるほど作られているので、作品としてどこで勝負するのか、という問題になってくる。

    本作のアイデンティティーは、主人公の女子高生が筋金入りのサバイバルオタクで、反則級のサバイバルスキルを持っている、という点と、終末観を敢えて漂わせない微妙に緩い雰囲気かと思ったが、いかんせんそれだけでは、あまりに手垢にまみれたこのジャンルの作品としては、弱い、という印象は拭えなかった。

    • 4
  10. 評価:4.000 4.0

    尖った細部

    引っ越した家に座敷わらしが三人(?)住んでいて、それと同居することになったミステリ作家の話。

    話としては、倫理観を微塵も持たない残虐な座敷わらしたちとのドタバタコメディ、という感じで、それ自体もなかなか面白かったのだが、本作の尖ったところは、むしろ細部にあると思う。

    まず、タイトルである。
    B級ホラー映画(というかB級以下なのだが)に通じた読者ならピントときたかと思うが、「アタック・オブ・ザ・キラー・トマト」や「アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ」あたりを意識したものと思われる。
    しかしまあ、ザシキチルドレンときたか。
    このセンス。

    他にも、作中、主人公がやっているソシャゲのガチャのレアキャラが「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスだったり、第一話の冒頭で出てくる引越社の名前が「人間椅子引越社」だったりと、作者は完全に「その筋」の人と思われる。

    いずれも、「そんなの普通、読者に伝わらないだろ」というネタを恐れることなくねじ込む、その心意気やよし。
    ただ、個人的には、もっと「そっち系」で突っ走ってほしかった気もする。

    • 6

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