5.0
ホラーって楽しい
マッド・メディカル・ホラー・ブラック・コメディ、とでも言うか、とても楽しい漫画である。
「ブラック・ジャック」のホラー・コメディ版、というと少しは伝わるだろうか。
あるいは、「ブラック・ジャック」と「笑ゥせぇるすまん」を足してグロテスクな味つけをした、というか。
とにかく、主人公である人造人間・ふらんのキャラクターがいい。
人間離れした(まあ人造人間だけど)圧倒的な医療技術、常識と倫理観の完全な欠如、それでいて、彼女は決してサイコ系のキャラクターではなく、基本的には「善意」で動いている。
世のため人のため、である。
そうして善を為そうとして、結果的に酷いことばかりやっている。
が、考えてみれば、人間とはそもそもそういうものではなかろうか。
ヒトラーだって、善と信じてやったのだ。
その意味では、まことに人間らしい人造人間である。
このあたりのバランス感というか、アンバランス感が絶妙で、出来事としては結構残酷な筋立てのエピソードが多いにもかかわらず、不快感も悲壮感もまるでない。
これだけバッドエンドを積み重ねながら、後味はむしろ爽やか、というのは、凄いことだと思う。
その奇異な読後感に私はすっかりやられてしまい、先を読むのが止まらなかった。
嗚呼、ホラーって楽しいなあ、という感慨を抜群の疾走感で届けてくれる、悪意の皮を被った善意に満ちた、良質な作品。
序盤でいうと、「CHRYSALIS」のエピソードは必見である。
- 7
フランケン・ふらん