3.0
変則ストックホルムシンドローム
ヒロインが異常な男に監_禁・乱暴される、というところまではテンプレートの胸くそ悪い話なのだが、実はヒロイン自身もかなり病んでいる、という部分からがこの作品のアイデンティティーだろうか。
一種の変則的なストックホルムシンドロームみたいな話で、このヒロインの闇をどこまで許容できるかで、評価が分かれると思う。
私は正直、ヒロインに普通に幸せになってほしい、としか思えなかった。
しかしもちろん、その「普通」というのも「幸せ」というのも、私の独善的な判断に過ぎない。
価値観の多様化、とかよく言われるし、私自身、他人の生き方には出来るだけ寛容でありたいと思って過ごしている。
だが、それは、難しい。
本当に、難しい。
これほど極端ではないにせよ、この漫画の二人に類する結びつきを持つ男女というのは、世の中にいくらでもいるはずである。
彼らが痣と傷だらけの顔で「幸せだ」と微笑むとき、私はそれを祝福できるのだろうか。
読みながら、私はずっとそんなことを考えていた。
- 10