3.0
その愛を叫べ
あまりマニアぶるのもどうかと思うが、私は物心ついた頃からの生粋の妖怪オタクなので、こういう種類の漫画にはいささか厳しくなるのは許してもらいたい。
昭和初期という時代や「奇獣商」という設定には独特の情緒があって、作品の雰囲気は悪くなかった。
テンポよくサクサク読める点も、個人的には好みだった。
しかし、何かが決定的に足りない、という不満は、決して晴れることがなかった。
それは、ひとことで言えば、怪異という存在に対する偏執、ということになるかと思う。
もう少しポジティブな(あるいは酷な)言い方をすれば、愛情、と言ってもいい。
もちろん、妖怪変化を描く人間が、妖怪を好きで好きでたまらない、という人間である必要は、本当は、ない。
別に、大して好きではない妖怪を、作品の「題材」として器用に用いるのも、アリだと思う。
だが私は、水木しげるチルドレンだ。
妖怪という訳のわからないものに対して、あれほど過剰で激烈で、それでいて適当で、ただ、どうしようもなく愛してしまう、という向き合い方をした人間によって、私は妖怪を知ったのだ。
その魂は、水木しげるが鳥山石燕から受け継いだものだし、例えば京極夏彦に受け継がれたものなのだと思う。
この世界の片隅で密かに妖怪を愛する者として、本作には、ある種の不満と寂しさみたいなものを感じないわけにはいかなかった。
もちろん、作者が妖怪をどう思っているのか、本当のところはわからない。
だが、その点が問題なのだ。
わからない、伝わらない、ということが。
本当に妖怪が好きなら、作品の中で、もっとその愛を叫べよ。
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