「結婚商売」という何とも怪し気で打算の臭いのするタイトルにまどわされ読み始めるまでに少し時間が掛かりましたが、いざ読み始めたらすぐに物語の魅力に引き込まれました。
ツンデレでおよそヒロインらしからぬ「への字」口の伯爵夫人ビアンカと「鉄血」と恐れられながら妻には純朴な愛情を抱いている伯爵ザカリー、二人がとても可愛らしく好印象を持ちました。また語り手でもあるイボンヌの柔らかな語り口も昔ばなしを聞いているような安らぎを覚えます。
二人がお互いの気持ちに早く気づいて恋が成就すると良いな、とトーナメントの段はドキドキしながら読み、第二王子の邪な誘惑の時はハラハラしながら読み、そして戦争が始まってからは伯爵が無事にビアンカのもとに戻れるよう泣きそうな気持ちで読みました。領地を守るビアンカや領民たちの健気さにもぐっと来ました。(しかもこの時点ではまだ夫ザカリーは亡くなったと思っているのに)
戦争が無事終結し第二王子も己に相応しい死に方を遂げたあとビアンカの出産、死、そして蘇りがあります。ザカリーが一度は亡くなったかのように思わされたので、きっとビアンカも大丈夫だろうと考えていましたが、まるで聖書のラザロの蘇りの一節を見ているようした。
可愛らしいお嬢さんも授かった二人がかねてから約束し合っていたようにアルノーの四季を堪能するこの先のお話を楽しみにしています。
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結婚商売
095話
結婚商売(95)