つまるところ出自や境遇が人生に吉と出るか凶と出るかなんて自分次第だと言うこと。
アルテのフィレンツェ時代は「貴族で女」であることは色眼鏡で見られるマイナス点だったかもしれないけれど、今のヴェネツィアでの生活は当に「貴族で女」だったからこそ手に入れることができた。
アルテはそれを負い目に感じて「もっと励まねば」と自分を追い込んでしまったけれど、またいつその状況が変わるかは誰にも分からない。
大事なのはレオさんがそうだったように、「自分の置かれた場所で最大限の努力をすること」じゃあないのかな?
アルテもその意味ではヴェネツィアに来たからこそ、また居るからこそ見聞きできる経験を貪欲に取り入れているように感じる。
カタリーナもまた然り。例え料理人として立って行くことを望んだとしても身分を捨てない限り許されないでしょう。その母ソフィアも世間的には恵まれた立場でいながら不自由な生活を強いられ、ダフネに至っては蹂躙された半生だったと思う。
でも彼女たちもそれぞれ置かれた立場で闘っているのを感じる。自分なりのやり方で。
芸術というものに関わっている端くれとしてアルテの姿勢にはものすごく共感を覚えるし、「好きこそものの上手なれ」というシンプルな教えを思い出す。
アルテがこのまま我が道を思うがままに進んで行けるといいなと願わずにはいられない。
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アルテ
120話
第35話 ファリエル家の肖像画家④(1)