見事としか言いようのない作品でした!
ファッションという女性にとって身近で興味を惹くテーマでありながらその実、現代に於いても女性を取り巻く様々な問題(女性差別・労働環境・DV・各種ハラスメント・結婚・生理etc)にさり気なく触れています。
そもそも主人公ユーリが男性として活動を始めなければならなかった理由が「女性では仕事上認められないから」でした。これは後々までもユーリを苦しめることになります。
更に女性の感覚でつい助けた出来事が大問題になりあわや罪に問われるか、という事態にまで発展しますがユーリは持ち前の才能と負けん気でピンチを大チャンスに変え女王陛下の信頼まで勝ち取ります。
同時にファッションの改革も行われ、城内で働く女性たちはコルセットやファージンゲール、パニエから解放されました。
更に廃れていた鍛冶技術をファスナーに活かすことで新たな産業に役立てるところにまで至っています。
疑いを掛けられたことでギクシャクしていた人間関係も新しい染色技術を進んで披露することで解決しました。
女王陛下は原料となる綿花の育成や服飾生産を地方の特産にしようとするなどファッションを通じてまるで社会の仕組みまで教えてくれているようです。
忘れてならないのはユーリが「庶民のために安価な既製服を作りたい」という高い志を持っていることです。その夢を叶えるために挫折してもしなやかにかわし前を向き続ける姿が一番の魅力だと思います。
もちろん彼女を愛し支え続けてくれるエナン(可愛いですね〜)とのロマンスもやきもきしながら楽しませていただきました。
レスタの切なさやアルシノエの煩悶に時に胸を締めつけられ、愛らしいプラムの存在に癒され、燻し銀のようなイレクサ伯爵夫人からは気品の何たるかを学びました。
そして女王陛下。理想の上司No.1と思われる美しく聡明な方でありながら女性故の縛りや社会的圧迫に悩まされるところは親近感を覚えます。
最後にこの物語の締めくくりの言葉を紹介しておきます。
「誰もが自分だけの物語を持っている。夢を叶えるための一歩を踏み出す勇気を持てるように。挫折してもまた立ち上がれるということを信じて疑うことのないように。周囲を見渡すほんのすこしの余裕さえあればわたしたちは必ず手を取り合える。そんな出会いがいつだって待っているはず。」
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異世界女王と転生デザイナー
146話
外伝 第12話【完】