5.0
正にSSR
透明なアクリル板越しに会話をしているだけなのに、ゾクゾクします。ゲームでSSRを引いたような興奮が、思惑とは全く違う意外な方向へ。泥沼に足をとられ、やがては思うように動けなくなり、もはや決して抜け出せなくなっている。映画「ミザリー」を思い出させる、何をきっかけにキレるかわからない、完全にヤバい犯人の表情と態度の変化。稀代のサイコキラー品川真珠の仕掛けるトラップの見事さ、人を手玉にとる話術の巧みさ、あっけなく騙されてしまう人間心理の恐ろしさ。刑事でも探偵でもなく、児相の職員が主人公。逮捕後、犯人は2年間ずっと黙秘を続けていて、犯行の動機も詳細も何ひとつ供述していない。なぜ彼女は遺体を切断したのか。なぜ犯行時は太っていたのか。なぜピエロのメイクをしていたのか。その理由をもし語ったとして、それが真実であるかは全くわからない。歯の浮くような嘘八百と、血が吹き出るような叫びの本音、それらが入り乱れる会話の中の、ほんのわずかな手がかりを求めて、主人公は乗り掛かった船(完全に沈没船〉で綱渡りを続けている…
虐待を受けて育ったサイコキラーとの心理戦はここからが本番。犯人は突如アラタの同僚に手紙を出して接触をはかる、というところまで読みました。
絶対に有罪・極刑という一審は覆らないのに、この犯人が檻から出られることは無いとわかっているのに、会話を続けていると感じる、本能的な恐怖。主人公も周囲の人々も、獄中からの手紙一枚言葉一つで次々と心を乱され翻弄されてゆく異常な状況。「いやこんなのありえないでしょう」とどこかで言いたいんだけれど、どハマりしました。凄く怖いのに、続きが気になって仕方ありません。ほんと、どうなるの?こんなSSRと結婚するの?アラタ、マジで。
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夏目アラタの結婚