5.0
日本少女漫画界の金字塔
圧倒的スケールの歴史ロマン。なんといっても、「オスカル様」という不世出のスーパースターを生み出した日本の国宝とも言うべき傑作。その魅力と人気は、連載から半世紀を経てなお劇場版アニメ映画化されていることからもわかります。オーストリア皇女とフランス王太子との政略結婚から始まる豪華絢爛なベルサイユ宮殿の一大叙事詩。次から次へと事件が起きて、息もつかせぬ展開、とにかく中身が濃い!本当にこれが単行本たった9巻に見事に過不足なく納まってるのが未だに信じられない。しかしオスカル、アントワネット、フェルゼン〔後半にアンドレ追加)のメインキャラクターの描き方の見事さは言うまでもないけど、脇キャラも魅力的!マリアテレジア女王、ロザリーとジャンヌの姉妹、ポリニャック夫人とシャルロット親子、ベルナールとロベスピエールら革命の志士たち、アランほか衛生兵たち、優男ジェローデル、アントワネット王妃の3人の子供たち、ジャルジェ将軍夫妻、アンドレとおばあちゃん、その他無数に出てくるキャラ、どれも存分に描き切っている。私の推しは何気にルイ16世。初顔合わせで嫁に「どろんとした目」とまで言われちゃう残念な外見の人(でもホント実際の肖像画、どろんとしてる笑)。女性からすると100%「良い人」で終わっちゃうタイプだけど、誠実で心優しくて慎ましくて、良き夫として描かれています。
しかしフランスの王様や貴族がやりたい放題やった挙句、膨大な赤字や借金を全部一般市民に回してたら、そりゃ経済破綻するわ。今回改めて読み返してみて、当時の貴族や僧侶などの第二階級は税金を免除されてたってのが正直信じられない。仮にも一国の皇太子が亡くなったっていうのに、お葬式を挙げるお金が国庫にないという王族のみじめさ。若い頃のアントワネットがドレスや賭博や離宮での生活などの贅沢ざんまいの浪費のツケが一気にここでやってくる。フランス革命は起こるべくして起こったんだよなあ。
また、今回読み返してみて、改めて画力の凄さに圧倒されました。特に、線の力強さ、躍動感!絶頂期の池田理代子先生の神がかり的なペンの描線!多くの少女の胸をときめかせた、オスカル様の魔性の目力!香り立つような情熱とエレガンスと詩情、重厚感!
…残念ながら、先日公開された映画作品はどーにも「薄い」…。別モノとして見るのが正しいですね。
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ベルサイユのばら