5.0
久しぶりにコメントします。私は原作の小説を読んでいません。少なくともこの漫画連載が終わるまでは、原作の小説版を読むつもりはないし、次回が知りたくて知りたくて我慢できない!と言うほどグイグイ引っ張られたかというと、そうではない。漫画の方を愛読してる方のほとんどが頷かれるかと思いますが、ここまでやや中弛みしてる回が多かった。各回のコメントの数がそのことを如実に表しています。また「だんだん自分が読みたいタイプのラブロマンスじゃなくなっていくな」(めちゃコミのあおりバナーの功罪もあるが、いわゆるイチャイチャ多めの溺愛漫画だと期待してたら段々そーゆーシーンが少なくなっていく笑)と感じた読者は途中から離脱していったと思います。
離脱こそしなかったけれど、私もある地点から最初の熱が薄れて惰性で読んでいました。ぶっちゃけ「別にこの後の展開知らなくてもいいか」になっていたのですが、そもそも、私はこの小説がなぜ世界的ベストセラーなのかに興味があった。実際「世界的ベストセラー」という文句が出版者の盛りだったとしても、膨大な数の熱狂的ファンをガチで掴んでるのは間違いない、それがどうしてなのか知りたかった。
この漫画の醍醐味は、ひとつは実父から虐待を受け続けて自己肯定感を持てないヒロインのモノローグが、読者によって同情も共感も反発も抱えることの出来る、非常に生々しいものであること。これが、ひ弱な深窓の令嬢が初めて外の世界に出て、ほんの少しずつ、転びながら傷つきながら乗り越えていく姿を、単純ではなくとても複雑で奥深いものにしています。また、彼女を救い出した完全無欠の無敵の英雄がどこか「危うい」ということが、この作品の強烈な魅力。彼女を崇拝し、ほとんど依存に近いほど心の拠り所にしている(女として生まれてここまで惚れられて本望っちゃ本望だけど笑)、自分から離れること傷つくことを恐れるあまり、常に行動を監視し、無意識に束縛している。リフタンは過去に魔法を使う大切な人を失った経験があるんだとは思う。思うけれども、またも言っちゃいけないことを言っちゃった。「この役立たず」とマクシーを罵って無能と思い込ませ続けた父親と同じ。人を無力化しコントロールしようとするのは、自己愛と同じ。自分の持つ能力と可能性、そして意思を持つことに成功したマクシーがついにリフタンに本音を爆発させましたね。これが見たかった。
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オークの樹の下
089話
第89話