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作品レビュー
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271 - 280件目/全498件

  1. 評価:4.000 4.0

    限りなく等身大

    私の好きな押切蓮介の漫画家生活を描いたエッセイ風の漫画。

    私が初めて読んだ押切蓮介の漫画は「ミスミソウ」だった。
    今まで読んできた全ての漫画を思い返してみても、あれほど深く感情を抉られた作品というのは他にほとんどない。
    一体どんな人があんなものを描くのだろう、という興味はずっとあって、本作を知り、手に取った。

    本作を読んでしみじみ感じたのは、どんなに強烈な作品を世に送り出す漫画家でも、やはり人間なのだ、ということだ。
    それは当たり前の事実なのだけれど、私たちは基本的に、知らない。
    あのホラー漫画やあのギャグ漫画を描いている人々が、どんな日常の中で、何を思い、どんな地獄を抱えながら、ネームを提出しているのかを、知らない。

    だからといって、別に、本作で押切蓮介がわかったと言う気もない。
    作者、というものをナメてはいけない。
    エッセイだろうが日記だろうが、作品は作品であり、作者は作者であって、現実の人間ではない。
    ただ、この漫画で描かれた押切蓮介の姿は、限りなく赤裸々で、等身大に近いように思えたし、おどけながらも自分の血肉を紙面に塗りたくるような飾らない姿勢には、好感を持った。

    こういう生活の中から「ミスミソウ」が生まれたのかと思うと、何だかちょっと、胸が熱くなった。
    「ミスミソウ」は、あまりに心にかかる負荷が大きく、一度読んだきり、読み返す決心がつかないでいる唯一の漫画なのだけれど、本作の押切蓮介に敬意を表して、もう一度読んでみようかな、という気になった。

    • 4
  2. 評価:3.000 3.0

    ホラーとスタイリッシュ

    実によく出来た漫画だと思った。
    漫画としての表現力の豊かさ、という意味では、確かな技量のある作者なのだろうとも思った。
    コマの使い方に自由さがあって、派手で、スタイリッシュである。
    しかし、私はこれを「ホラー漫画」であるという前提で読んだ。
    そうすると、この「スタイリッシュ」は、いささか問題なのだ。

    例えば映画で、「スタイリッシュなアクション」という宣伝をよく目にする。
    アクションでスタイリッシュならば、それは「売り文句」になるということだ。
    あるいは、「スタイリッシュなラブストーリー」というのも洒落た印象を与える。
    「スタイリッシュなサスペンス」なんていうのも、新進気鋭の感が出て悪くない。
    だが、「スタイリッシュなホラー」、これは、聞いたことがない。
    私が気づくまでもなく、それは「売り文句」にはならないのだと、ホラー業界の人間たちは知っているのだろう。
    要するに、「ホラー」と「スタイリッシュ」は、相性が悪いのだ。

    上手く説明できないから、私が今までレビューで高評価をつけてきたホラー漫画をいくつか挙げる。

    「裏バイト:逃亡禁止」
    「ミスミソウ」
    「不気田くん」
    「座敷女」
    「死人の声をきくがよい」
    「サユリ」
    「ユーレイ窓」
    「おろち」
    「不安の種」
    「マガマガヤマ」

    ほらね、「スタイリッシュ」なんて形容できそうな作品はひとつもない。
    ある意味では、スタイリッシュの対極にあることが、ホラーである、ということなのではなかろうか。

    ただ、言い方を変えれば、ホラー漫画として読まなければ、楽しい作品だ、ということになるのかもしれない。
    しかしまあ、この筋立てでホラーとして読むな、というのは、ちょっと無理がある。

    • 5
  3. 評価:2.000 2.0

    浅いメタファー

    恋人との結婚を考えている男性が、ある日、自分の父親が河童だということに気づく、という話。

    シュールな設定自体は面白いと思ったし、父が河童だ、とわりにあっさり受け入れる展開のはやさも悪くなかった。
    ただ、私の脳の機能が欠損しているのかもしれないが、感動、というものは全くなかった。

    この作品の河童というのは、人種とか身分とか何でもいいのだけれど、要するに結婚の障害となるもののメタファーとして描かれている、というか、描かれているに過ぎないのだ、と私は解釈した。
    そこに一種の安直さというか、底の浅さが見えてしまった気がした。
    河童まで出して表現したものがそれだけかい、というふうに意地悪く思ってしまった次第である。
    まあ、私は河童が好きなので、河童ナメんな、と思ったのもちょっとある。

    本作を読んだ感想というのは、「上手いこと言った」と得意げにしている人に対して、「いや、そんなに上手くないけどね」と思ってしまうときの感じに似ていた。
    つくづく、自分の性格が悪いと思うけれど。

    • 6
  4. 評価:3.000 3.0

    死んだ人助け

    死者の声が聞こえる主人公が、「死んだ人助け」をする話。

    「死者の無念を晴らす」とよく言うが、現実世界において、基本的にそれは「生者のため」のものであり、死者はただ死んでいるだけである。
    しかし、本作はあくまで「死者のために死者を救う」物語である。
    このあたりは正直、もう少し踏み込んでほしかったけれど、「多重人格探偵サイコ」の大塚英志が絡んでいるだけあって、「死を徹底して描く」ことにはしっかりエネルギーを使っている。

    主人公の仲間たちも、死体限定ダウジングの天才、アメリカ帰りのエンバーミング(死後処置)の資格保持者、宇宙人と交信できるチャネリング青年、とバラエティー豊かで、なかなか楽しい。
    個人的には、もう少し現実に寄せてほしかった気もするが。

    あとは、これだけ死を描きまくる漫画でありながら、絵柄の問題か画力の問題か、死体の描写がちょっと迫力に欠けるのは気になった。

    • 5
  5. 評価:3.000 3.0

    幼い問いと、茶番劇

    「ジンメン」の妙な迫力は買う。

    ただ、人間による他の動物の搾取とか、愛玩という名の自己愛とか、描きたいことはわからないでもないけれど、正直、浅い、薄い、という印象は拭えなかった。

    人間と他の生命との関わりというのをテーマにした漫画、というと、私はどうしても「寄生獣」が浮かぶ。
    比較してもしょうがないとはいえ、どう考えても、本作は「寄生獣」の遥か手前で止まっている。
    私が小学生なら「ふうむ」と思ったかもしれないが、今更そんなに無知にも無垢にもなれない。
    本作が投げかけている問いがあるとして、私は「そんなのわかってるっつーの」と性格の悪い感想しか出てこなかった。
    あまりに幼稚な問いに過ぎて、「寄生獣」の広川市長に会いたくなった。

    百歩譲ってその点を看過しても、主人公たちのやり取りや独白や行動は、どうにも茶番にしか見えなくて、全く入り込めなかった。

    とにかく全てが幼稚だ。
    かといって、子どもが読むにはグロ過ぎる。
    どうすりゃいいんだよ。

    私は動物が好きで、もう少し何かを見出だせる漫画ではないかと思っていたのだが、残念だ。

    • 5
  6. 評価:3.000 3.0

    上手い二塁手とホームランバッター

    この作者は、ストーリーテリングに関してはかなり優れた人だと思っている。
    特に、「嫌な話」を語らせたら一級品である。
    「走馬灯株式会社」にしても、「マーダーインカーネイション」(こちらは原作のみ)にしても、「何て嫌なことを考えるんだ」という想像力には舌を巻く。

    その点は、本作でも遺憾なく発揮されているように見えるが、ちょっと悪趣味に走りすぎている気もした。

    加えて、この作者の得意分野は短編であるとも思うので、ストーリーが長きに渡って連続的に展開する作品とは、ちょっと相性が悪いようにも感じた。
    これは正直、「鉄民」でも思った。

    昔、私の好きな小説の中で、生まれついての短編の名手に優れた長編が書けないのは、上手い二塁手がホームランバッターになれないのと同じだ、という意味のくだりがあったが、この作者も、あくまで上手い二塁手なんじゃないか、という気がする。

    • 5
  7. 評価:4.000 4.0

    青年か、少年か

    悪霊に憑かれた人間を葬る「はぶり」という家業を受け継いだ少年の物語。

    一応、青年漫画というくくりだが、私は、いたって普通の少年漫画として本作を読んだ。
    いい意味で、だ。

    序盤から九歳の少年が家族を殺_すとか、毎回首を斬り落とすとか、過激な描写と悲劇的な設定によって少年漫画の枠から外れているのだろうが、主人公の少年が苦難に立ち向かい、逆境や自分の弱さを乗り越えることで成長してゆく、という展開や主題は完全に少年漫画のそれである。
    青年漫画の皮をかぶった少年漫画、と言えるかもしれない。

    何かもうひとつ欲しい、という気もしたが、少年時代に少年漫画を読んでいたような気持ちで、テンポよく、それなりにワクワクできた。
    特に、不満はない。

    • 4
  8. 評価:5.000 5.0

    料理漫画界の異端児

    主人公が悪漢である、という漫画は、特別に珍しくもない。
    しかし、それが料理漫画となると話は別だ。

    料理漫画の主人公は、料理を美味しく食べてもらいたい、純粋・素朴・爽やか系のキャラが普通だ、というか、そうであるべきだろ。
    審査員にマジック_マッシュルームを食べさせて幻覚を見せ、謀略によって対戦相手を陥れ、「料理は勝負だ!勝てばいいんだよ!」などと叫ぶ山猿のような面構えの悪漢が主役を張る料理漫画なんて、そうそうあるはずがない。

    何が凄いって、この漫画には、五番町霧子と小此木タカオがいることだ。
    名門料理店の志高き跡継ぎと、料理は素人だが好感度は抜群の好青年。
    普通の料理漫画なら、この二人のどちらかを主人公にする。
    しかし、その二人を蹴散らして、秋山醤(ジャン)、なのである。
    何だよそのチョイス。

    しかし、秋山醤、この異端児が、たまらなく魅力的である。

    それはもちろん、彼が作る料理の抜群のインパクトも理由ではある。
    羊の脳味噌を使った茶碗蒸しだの、鳩の血の卵だの、読んだのは十年以上も前なのに、醤が「魔法」とうそぶいた料理の数々は、今でも鮮明に思い出せる。
    ちなみに、この漫画の料理には、突飛ではあるが、決して出鱈目ではない、と思わせる説得力があり、その点もポイントが高い。

    また、脇役がパリッと立っていることも大きい。
    前述の霧子や小此木もあるが、凄まじいのは蟇目檀や五行道士といった悪役の造形で、彼らの存在によって、醤がきちんとヒーローになれている部分は大きい。
    毒をもって毒を制す。

    そして、賢明な読者であれば、気づく。
    どれほど口と態度と性格が悪くても、醤もまた、料理を愛しているのだ、ということに。
    ただ、例えば霧子とは、その愛し方が違うだけなのだ。
    例えば素行と発言は最悪でも、リアム・ギャラガーが、確かに音楽を愛していたように。

    料理漫画としては完全に異端だが、私は、最も好きな料理漫画である。

    • 3
  9. 評価:4.000 4.0

    奇妙な中毒性

    昭和の映画や漫画のパロディの寄せ集めで成り立っているような作品。
    だいたい絵柄からして、水木しげるのパロディ、というかハイレベルな「模写」なので、もう、パロディというか、何なのだ、という作品。

    こんな漫画を今どき描いても、元ネタに「わかる!」となる読者は少なそうだし、そういう読者層がターゲットとも思えない。
    しかし、「細かすぎて伝わらないモノマネ」的というか、「別にわかってもらえなくてもいい」というスタンスで描いている気がする。
    そういう意味では、結構とがった漫画である。

    正直、明確に「面白い!」と言える作品ではなかった。
    だが、妙な中毒性があるのも事実で、「大して面白いとも思えないのに気がついたら全て読んでしまった」、そういう意味では、節分の豆のような漫画である。

    私は水木しげるの信奉者なので、この絵柄が現代に存在しているだけで嬉しくなってしまう。
    そんなわけで、私の評価は甘いかもしれない。

    • 4
  10. 評価:5.000 5.0

    因習と、運命と、愛と

    「りんごの村」に婿入りした主人公が村の禁忌を知らずに破ってしまったことで、妻が生け贄(的な何か)にされることになり…というストーリー。

    閉鎖的な村の伝承と因習を紐解いてゆく展開はちょっと横溝正史的というか、ある種のミステリーであり、民俗学をバックグラウンドに据えた舞台装置は、なかなか魅力的であった。

    だが、そのミステリーの「着地点」は、犯人がどうとかトリックがどうとか、そういうことにはなり得ない。
    何しろ相手は超自然であって、神様みたいなものだから、「解決」なんてあるはずがない。
    どうしたってミステリーがファンタジーの文脈へと回収されてゆくわけで、そのあたりの落としどころをどう定めるかという部分には結構、注目していたのだけれど、これはもう、見事という他なかった。

    そして、忘れちゃいけない、本作はラブストーリーなのだった。
    ミステリアスで、ファンタジックで、でも何より、ラブストーリーなのだった。
    共同体の中で揉み消され、「なかったこと」として忘れ去られていった愛は、逆らいようのない運命に踏み潰され、吹き散らされていった愛は、昔も今も(それこそ決して「物語」にはならない次元で)掃いて捨てるほどあったのだろう。
    しかし、因習にも運命にも命をかけて抗って、文字通り全てを失う覚悟で守ろうとした、優しくて穏やかだけれど、苛烈で壮絶なその愛の発露に、私は泣いた。

    • 3
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