千年万年りんごの子

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あらすじ

親を知らない夫。りんごと育った妻。夫婦は、りんごの村の禁忌を破った。――雪深いりんごの国に婿入りした雪之丞(ゆきのじょう)。昭和の激動から離れ、北の家族と静かに巡る四季は親を知らない彼の中になにかを降り積もらせてゆく。それは冬、妻の朝日(あさひ)が寝込んだ日。雪之丞の行動が、りんごの村に衝撃を与えた。りんごの時間が動き出す、田中相 初連載作!

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    第9話/りんごのまち弘前取材記/花と鉄
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みんなのレビュー

  1. 評価:5.000 5.0

    ずっと心に残る作品です。

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    表紙とタイトルから、ファンタジー系のお話かと思いきや、民俗学系の要素満載でした。(民俗学とは、現在の生活様式の中に残る習慣やしきたりを、その土地に住む者達の習わし・言い伝え・民間信仰などを通して、その成り立ちを検証する学問のこと。)一部ぞくっとするところもありますが、主人公の妻の明るい笑顔としゃべり口調に、ほっこりします。主人公が、見合い結婚にもかかわらず自分を受け入れてくれた妻を、全力で守ろうとする姿に心打たれ、応援してしまいます。結末はとても切なく悲しい。人が生まれ生きて死ぬこと、人を愛することについて考えました。

    • 13
  2. 評価:5.000 5.0

    胸が熱くなりました


    独特の絵柄で、神秘的で閉鎖的で秘密めいた地方特有の怪しさと、弱くて強い人の心を見事に描いたファンタジックミステリー。

    あらがえない大きな力、それに囚われ続ける村人たち。
    人情、恐れ、愛、深い深い森の中に連れ去られて行くような、その奥で大切なものを捕まえるような、そんな作品です。

    描写が本当に独特で、この作者の他の作品も気になって来ます。
    ちょっと他にはないですね。

    • 12
  3. 評価:5.000 5.0

    ほとばしる思い…!!

    村の土着神に 魅入られてしまった妻と
    何とか阻止しようと苦悩する夫の
    美しくも切ないストーリー

    素朴で温かい画で 言葉にできない思いの
    描写が素晴らしい!
    夫婦が 愛を育んでいく様子にときめいて
    その後の展開には 身につまされる思いで
    泣けてきます
    映像化されたら とても美しいであろう箇所が
    あちこちに散りばめられている作品☆

    • 12
  4. 評価:5.000 5.0

    因習と、運命と、愛と

    「りんごの村」に婿入りした主人公が村の禁忌を知らずに破ってしまったことで、妻が生け贄(的な何か)にされることになり…というストーリー。

    閉鎖的な村の伝承と因習を紐解いてゆく展開はちょっと横溝正史的というか、ある種のミステリーであり、民俗学をバックグラウンドに据えた舞台装置は、なかなか魅力的であった。

    だが、そのミステリーの「着地点」は、犯人がどうとかトリックがどうとか、そういうことにはなり得ない。
    何しろ相手は超自然であって、神様みたいなものだから、「解決」なんてあるはずがない。
    どうしたってミステリーがファンタジーの文脈へと回収されてゆくわけで、そのあたりの落としどころをどう定めるかという部分には結構、注目していたのだけれど、これはもう、見事という他なかった。

    そして、忘れちゃいけない、本作はラブストーリーなのだった。
    ミステリアスで、ファンタジックで、でも何より、ラブストーリーなのだった。
    共同体の中で揉み消され、「なかったこと」として忘れ去られていった愛は、逆らいようのない運命に踏み潰され、吹き散らされていった愛は、昔も今も(それこそ決して「物語」にはならない次元で)掃いて捨てるほどあったのだろう。
    しかし、因習にも運命にも命をかけて抗って、文字通り全てを失う覚悟で守ろうとした、優しくて穏やかだけれど、苛烈で壮絶なその愛の発露に、私は泣いた。

    by roka
    • 4
  5. 評価:5.000 5.0

    民俗学的なベースに基づいている面白さ

    ネタバレ レビューを表示する

    自然の中で暮らす素朴な生活の中で起こるちょっと不思議なお話かと思って読み始めたら、底を流れるテーマの重さにグイグイ惹き込まれました。

    「蟲師」や「夏目友人帳」や諸星大二郎作品と同じ空気を感じます。

    マレビト、マヨイガ、生と死、神と鬼と人、神殺し、林檎が象徴するものなど。
    民俗学的知識で構成された世界観の中で、静かに紡がれる物語。
    そして、東北の自然や人の描写。
    どれも、上手いです。

    これは、何度も読み返したい物語です。

    • 4

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