rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
111 - 120件目/全512件
  1. 評価:3.000 3.0

    忘れられた設定

    オーソドックスな復讐モノで、特筆すべき点もないが、派手な破綻もなく、わりに丹念に作られている印象は持った。

    ただ、ちょっと気になるのは時代性で、「昭和30年」という設定には首を捻った。
    時代を感じさせる描き込みみたいなものはほとんど皆無で、舞台が現代であると言われても何の違和感もない。
    つまり、昭和30年をまるで描けていない、ということになる。
    というか、作者もその設定、忘れてないか?
    登場人物の一人が「私の株は爆上がりだわ!」とか言ってるし。
    昭和30年に「爆上がり」はないだろう。

    おそらく、舞台となる島が、名家の娘一人に実質的に支配されている、という前近代的な共同体の存在に説得力を持たせるために、時代設定を現代から外したのだろうが、それならそれで、もっとちゃんとしてくれ、という気にはなった。

    • 68
  2. 評価:5.000 5.0

    現在進行形の最高形/600本記念

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    まず、作画のレベルがとんでもない。
    まさしく大胆かつ繊細、という感じで、細やかで可愛らしくてカッコよくて迫力満点、抜群にポップであって、1コマで勝負できる芸術的な構図を連発するその圧倒的な画力は、少年漫画のひとつの理想形ではないかと思う。
    こんなに凄い画をほとんど見たことがない。
    週刊連載だろ?
    何だよこれ。

    バトルシーンは「ジョジョ」からの如実な影響を受けつつ、パリッとオリジナリティーもあって、こういうのを正当な「リスペクト」と呼ぶのだろう、と心から思った。
    最初のバトルシーンでは、唐突な「ジョジョ風」の表出に笑いながらも、そのあまりの素晴らしさに鳥肌が立った。
    いい大人が少年漫画でそんな体験、なかなか出来るものではない。

    題材は一応オカルトなのだが、正直、オカルト愛に溢れる、という感じではなく、あくまでモチーフとして器用に利用している印象ではある。
    偏屈なオカルト好きの私としては、そういうオカルトの扱い方というのはいかがなものか、という性格の悪いことを普段なら言うのだが、漫画としての技量が凄すぎて、どうでもよくなった。
    参りました。

    また、ターボババアやアクロバティックさらさらや邪視などの現代妖怪に付与された独自のバックグラウンドも絶妙で、それが作品に深みとアクセントを与えている。
    これが日本のクラシックな妖怪だと、勝手な後づけは反則感が強くなるが、現代妖怪に照準を合わせたのが巧妙である。
    アクロバティックさらさらの唐突な過去シーンには胸が熱くなった。

    笑いあり、涙あり、全てが高水準で、嗚呼、読んでいて本当に幸せだった。
    私は完全に別世界に連れ去られ、その世界においては、ただの少年でしかなかった。
    私と漫画だけが、その世界にはあった。
    遠い昔だ、そんなふうに漫画を読んでいたのは。
    二度とないだろうと思っていた。
    現在進行形の少年漫画でそんな体験を再び持てたことが、私は心の底から嬉しかった。
    ありがとうございました。

    あ、忘れてたけど、これ、ラブコメだ。
    何だそれ。
    もう、色々と凄すぎる。

    • 79
  3. 評価:4.000 4.0

    なりきれない悪霊

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    事故死して幽霊となったいじめられっ子が、自らの「幽霊の才能」を活かし、悪人を脅かしまくる、という話。
    生粋のホラーではなく、ギャグに振り切るでもなく、ほのぼのとしたテイストの漫画である。

    主人公は人を脅かす度にRPGのようにレベルが上がり、「ラップ音」「髪伸ばし」「巨大化」などのスキルを身につけてゆく。
    この「幽霊のスキル」という発想はなかなか面白く、作品にいいリズムを与えていると思った。

    また、生きている間は決して満ち足りたとは言いがたい生活を送っていた主人公が、幽霊となってからイキイキしている様子も、心地よく読めた。
    どす黒い復讐心に燃えたり、悪意に染まってゆくわけではなく、人間らしい弱さと優しさを持ったままであり続ける彼女の好感度が、作品を支えている。

    いじめを扱った漫画に陰惨な復讐譚が多く見られる中、本作は、とても優しい作品である。
    痛みを知る人間は、なかなか悪人にも悪霊にもなりきれない、それが現実に近いのではなかろうか。
    そのぶん、悪く言えば甘さやぬるさはあるのだが、人格破綻者レベルのいじめっ子すら憎みきれない主人公の、ある種の弱さや甘さが、私はわりに好きであった。

    • 4
  4. 評価:2.000 2.0

    そりゃねえぜ

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    呪いの指輪を巡るホラー。

    恐怖描写にはなかなか気合が入っていて、その点はよかった。

    が、オチが酷すぎる。
    簡単に言うと、「復讐かと思ったら、無差別だったのだ!」である。
    そりゃねえだろう。
    逆だろう。
    ミステリで考えてみてほしい。
    「無差別に発生していたと思われていた事件に、実はこんな繋がりが!」
    これならわかりますよね。
    ところが本作、そうじゃないんすよ。
    「何かしらの繋がりがあると思われていた事件は、実は無差別だった!」
    そんなタコな。

    誤解しないでほしいのだが、無差別の呪い自体を否定しているわけではない。
    むしろ、個人的にはホラーって無差別の方がしっくりくる。
    しかし、いかにも「真相」がありそうなミステリ的アプローチをしておいて、「無差別だった」をサプライズのように提示するのは、あんまりではなかろうか。

    • 8
  5. 評価:3.000 3.0

    交換殺_人の是非

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    それぞれ人生に絶望し、殺したい相手がいる三人の女性たちがインターネット上で知り合い、交換殺_人を実行する話。

    復讐モノというよりは、「こいつを殺さなければ自分の人生が駄目になる」というような相手をそれぞれ殺_すわけであって、このあたり、動機部分にはまずまず説得力があった。
    復讐であれば、「復讐のためにそこまでやる?」という部分にリアリティーを与えるのが難しいのだが、本作はあくまで自分が生きるために、という位置なので。

    ただまあ、プロット自体は平凡で、特別に退屈もしなかったけれど、盛り上がりもしなかった。

    だいたい、この交換殺_人というのは、正直、どうなんだ、と思う。
    縁もゆかりもない相手を殺_す以上、実行犯は疑われない、動機がある人間はその時間アリバイ完璧、となるから、警察の目をくらます、という意味では、不謹慎ながらお手軽な手段なのだろう。
    しかし、強_盗とか保険金目当てならともかく、個人的に怨みがある相手を葬るのに、他人の手を汚す、というのは、いかがなものか。
    私は主人公の女性三人に味方する立場で読みはしたけれど、人を殺して自らの人生を切り開かんとする以上、その相手の血で汚すのはやはり、自らの手であるべきではなかろうか、とは思った。

    • 4
  6. 評価:3.000 3.0

    焦点はどこに

    特にストレスなく、テンポよくサクサク読めた。
    その点はよし。

    ただ、ミステリとしては圧倒的に薄い。
    いや、もちろん、本作がそもそも「本格ミステリ」みたいな路線を志していない、ということは百も承知である。
    しかし、それにしたって、とは思う。

    また、ミステリ的な部分よりも、人の死を巡る人間ドラマとか、人の死を見送る職業の人間がとらえた機微とか、そういう部分が焦点なのだとしても、その掘り下げや広がりも物足りず、特にこれ、といった魅力を見出せなかった。

    • 3
  7. 評価:2.000 2.0

    お前は私のキャパを超えている

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    マッチングアプリで出会った女の子に即日実家に誘われ、ホイホイ着いていく。
    その実家の村への道すがら、「この先命の保証なし」という立て札があるのに「あんな注意書き本当に存在するんだな」で流す。
    村の入り口がまるで刑務所だと感じながらもスイスイ入ってゆく。
    「景観保存地区」だからと、バッグにスマホに鍵に時計、全て取り上げられて平然としている。
    マッチング彼女に胸を押しつけられただけで「まあいっか」とリセットされる。
    この全てが、冒頭の第一話で提示される主人公の姿である。

    駄目だ。
    お前はいくら何でも私のキャパを超えている。

    まあ、一話でレビューを書くのも失礼だから、それなりに読み進めてはみたけれど、共感できるとかできないとかそういうレベルではない主人公の馬鹿さ加減をリカバリーできる要素は、特になかった。

    • 42
  8. 評価:2.000 2.0

    復讐される側の主人公

    昔、「ラストサマー」というホラー映画があったが、それに近い。
    主人公たちが過去に犯した罪によって、復讐される、という話。

    本作のように、「復讐される側」が主人公の作品は、「過去にやったことは悪いが、同情の余地があり、何とか助かってほしいと願ってしまう」という読者の微妙な感情を引っ張り出せないと、成功しない。
    これは結構難しくて、過去の罪を上手く設定するとか、キャラクターの丁寧な作り込みとか、きちんとしたバックグラウンドがないと成立しない。
    本作はそのいずれも物足りなく、入り込めなかった。

    復讐が奇妙な漫画アプリによって予告される、という点は新しいには新しかったが、だからどうということもなく、「何でそんな回りくどいことを」という感想以外は湧かなかった。

    • 3
  9. 評価:3.000 3.0

    少年時代の終わりに

    週刊少年ジャンプで本作の連載が始まったのは、私の大好きだったジャンプのギャグ漫画「王様はロバ」と「すごいよ!!マサルさん」の連載が相次いで終わり、「幕張」もピストルズのように消え失せて、少し経った頃だったように記憶している。
    私は十代の終盤で、そろそろ「少年」ではなくなりかけていた。

    週刊少年ジャンプの歴史的に見れば、上記の作品たちに続く「ギャグ枠」における重要作品が、「ボボボーボ・ボーボボ」になるのではないかと思う。

    残念ながら、私は全く笑えなかった。

    この頃から私がジャンプを離れたのも、おそらく本作に全く入ってゆけなかったことと無縁ではないように思われる。
    申し訳ないが、若い心で思った。
    天下のジャンプのギャグ枠が、これなのか、と。

    「つまらねえから笑えねえんだよ」と本作を切り捨てたわけではない。
    私が感じたのは、何か決定的なズレだった。

    笑えなかったのは、理解できなかったからだ。
    こういうことを書くと、誰かが言うのだろう、「わけがわからないけど面白いのがボーボボなんだよ」と。

    違う。

    そんなこと言ったら、「マサル」だって相当わけがわからなかった。
    だから、ややこしい言い方になるけれど、「わけのわからなさが面白い、という作品であることは理解できるけれど、ボーボボのわけのわからなさの面白みが、私には理解できなかった」ということになる。
    シュールだとかナンセンスだとか、言葉はどうでもいいのだが、「マサル」のそれは笑えたのに、「ボーボボ」のそれは笑えなかった。
    その差がどこにあるのか、私にはわからない。
    それは多分、言語化不可能な感覚的なものであり、つまり、致命的なものだったのだと思う。

    私の好きな小説の中に、「若い世代の音楽を理解できないと感じたら、それは自分たちの世代が次の世代に時代の松明を譲り渡した最初の合図だ」みたいな言葉がある。
    多分、そういうことなのだろう。

    「ボボボーボ・ボーボボ」は、私の少年時代の終わりとして、ひとつのサインだったような気がする。

    少年はいつか、少年ではいられなくなる。
    別に悲しくはない。
    ただ、終わってしまった少年時代について考えるとき、私はときどき、「ボボボーボ・ボーボボ」のことを思い出す。

    • 4
  10. 評価:5.000 5.0

    突出した奇異なバランス

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    とても素晴らしい作品集だと思ったのだが、上手く言葉を探せなかった。
    ここまで言葉が出てこないことは珍しい。
    私は自らの言葉の乏しさに久しぶりに失望した。
    何なんだろう、これは。

    多分、突出しているのは、バランスなのだと思う。
    登場人物(特に女性)の切実な感情や、繊細な揺れといったものを、決して重くならない中で、かといって軽々しくでもなく、あくまでゆるく、ふわっと、スライムのような質感で描く、という絶妙なバランス。

    本当はもっと「笑えない」類のシリアスな物事が、SFだったり、巨大ヒーローだったり、UMAだったりによってある種のパロディ的な方向に緩和されているが、ポップな中で、核となる生傷の痛みのようなものは鮮やかに息づいたままである、という奇異なバランス。

    天秤の両方に同じものを載せてつり合っている、という種類のバランスではなく、小さな金塊と巨大な綿あめでもってつり合わせているような、その独特のバランスが凄い。

    そういったバランスが多分に、論理的にでも計算づくでもなく、感覚的に積み上げられていて、いささか差別的な言い方になるが、実に女性的な漫画だと思った。
    「枕草子」が当時、女性にしか書けなかったように、こういう漫画というのはおそらく、男性にはなかなか描けない。
    その感覚的な部分というのは、本質的には言語化と相容れないものであって、私なんかの言葉が追いつかないのも、それと無関係ではないと思われる。

    私はとにかく「ツチノコ捕獲大作戦!」が大好きで、何度も何度も読み返した。
    それは多分、これが「したたかな女の子と情けない男の子」、両方の本質を鋭敏に貫いた話だったからだろう。
    幻想を見るのも夢に破れるのもいつも男の方よね、というひとつの本質を、あり得ないくらい的確に、これ以上ないくらいミニマルに、悲劇と喜劇の完璧なバランスの上で成立させた、離れ業的な傑作である。
    これ以上に素晴らしい短編漫画のラストシーンを、他にほとんど知らない。

    • 3

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