rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
121 - 130件目/全512件
  1. 評価:3.000 3.0

    毒気と中毒性

    同じ作者の「怨み屋」シリーズはかなり読んでいるが、基本的な作品の構成は似ていて、形容するなら、「毒気のない怨み屋」、「ライト版怨み屋」、といった感じになるかと思う。

    「怨み屋」が基本的には陰惨な話ばかりであるのに対して、本作は爽やかで、「そんなに上手くいくんかいな」と思うところもあるけれど、まあ、平和でいいんじゃないか、と。

    ただ、「怨み屋」シリーズのレビューの中で、私は奇妙な中毒性がある、という意味のことを書いたが、本作からはその中毒性を全く感じなかった。
    してみると、「怨み屋」の中毒性のひとつの要因は、本作から抜かれた毒気の部分でもあったのかな、と思うし、そういう意味では、いかにも物足りない漫画ではあった。

    • 2
  2. 評価:4.000 4.0

    貞ちゃんの心象風景

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    例えば「番町皿屋敷」というクラシックな怪談がある。
    井戸からお菊ちゃんが出てきて「いちま~い、にま~い」と皿を数えるアレである。
    これは当然、怪談の古典、悪く言えば時代遅れだ。
    「いや、井戸とかねえし」というのが現代だからだ。
    「皿割っちゃった?メルカリで買えばよくね?」というのが現代だからだ。

    「リング」はもう、このあたりから凄くて、「井戸」という古典の怖いモチーフを踏襲しつつ、貞ちゃんは井戸から出てきてしかもテレビから出てくる、という二段構えであって、「いや、井戸とかねえし」という現代人の安全圏を取り払った。

    しかし、そこからまた、時代は進んだ。
    「呪いのビデオ」なんて言われても、もはやVHSなんか誰も見ない。
    かといって「呪いのBlue-ray」とかだと、イマイチ怖くない。
    実のところ、貞ちゃんもいつの間にか「時代遅れ」になったのだ。

    本作は、終末世界を行く二人の少女と貞子のロードムービー的な漫画なのだれけれど、人類がほとんど滅びてもう呪う相手がいない、という世界は、何だか現代における貞ちゃんの心象風景みたいに感じられた。

    無邪気な二人と、どこまでいっても悪霊でしかない貞子の、決して大団円を迎えるはずのない、可愛らしくもどこかもの悲しい道行き。
    結末はわかっていたはずなのに、それでも少しだけ、胸が軋んだ。

    そんなふうに作品を閉じかけておいて、ラストのラスト、貞子をもって「いや、私ってホラーの人なのよ」と唐突に主張させるような幕切れが、実に素晴らしい。

    現代において改変され増殖され消費され続ける貞ちゃんの物語の中で、唯一、本作はちょっと、腑に落ちた。

    • 6
  3. 評価:3.000 3.0

    普通中の普通

    家に来た家政婦が何かおかしい、という話。

    いやもう、びっくりするくらい普通。
    昨今のサスペンスは、やたら凝った設定や展開ゆえに破綻する例も多いが、そういう中で、ここまで普通なのも珍しい。

    このへんはまあ、良くも悪しくも、というところだ。
    家政婦の狂気のあり方には何の説得力もないが、下手に論理をこねるより、いたいけな少年少女がイカれた家政婦に追い回される、頑張れ少年少女。
    という具合に、「ホーム・アローン」的なシンプルな読み方が出来る漫画、という点では、いいのかもしれない。

    ただ、筋としてここまでシンプルならば、展開としてもう少し工夫は欲しかったところで、あまりに平坦な印象は拭えない。

    罵詈雑言を吐いてけなされるような漫画ではないものの、賞賛すべき点も特にない。
    まさに普通、としか表現のしようがなく、星の数も三つ以外にはあり得ない。
    「五段階で三の評価を狙って漫画を描け」というお題のもとに作られたならば、大したものだけれど。

    • 9
  4. 評価:3.000 3.0

    消費される貞ちゃん

    私は中学生のときに小説「リング」に衝撃を受け、劇場に映画を観に行った貞子世代である。

    ギャグ漫画として、それなりの出来だとは思った。
    貞子の特徴や、「もはやVHSの時代ではない」という時代背景を踏まえて、まずまず上手く作ってあるとも思った。
    貞子を単なるネタとして雑に扱うのではなく、そこに一定のリスペクトや愛着も感じることは出来た。

    しかし、あの清く正しく恐ろしかった貞ちゃんが、こういう形で「消費」されてゆくことに関しては、一抹の寂しさも感じた。
    貞子世代としてはね。

    まあ、これを「消費される」と捉えるのか、姿かたちを変えて現代に生き残っていると捉えるのかは、難しいところなのだけれど。

    • 2
  5. 評価:2.000 2.0

    許されない改変

    ネタバレ レビューを表示する

    「タイトルがネタバレじゃん」と思ったのだが、原作のルポがあると知り、それならまあ、その点は仕方ないか、と思った。

    冒頭は「保護者サイド」の視点から描かれ、その後、同じエピソードが「教師サイド」の視点から描かれる。
    両者は全く別の内容であって、このあたりは、漫画ならではの演出で、なかなか面白いと感じた。

    実際の事件について、ちょっと気になって調べてみたが、とんでもない話で、親の異常性、学校および教育委員会のことなかれ主義とその脆弱性、浅薄なマスコミの無責任など、様々な問題を孕んだ事件であった。
    この事件を教師サイドに立って取材したルポの存在自体は貴重であるし、その漫画化を否定するつもりもない。

    しかし、原作がフィクションではなくルポルタージュである以上、原作の改変は絶対にまずい。

    まず、主人公の教師の年齢が全く違う。
    現実では46歳とのことだが、漫画ではかなり若く描写されている。
    おそらく漫画の主人公としての見栄えを考慮してなのだろうが、それはやっちゃいけない。
    フィクションなら何でもありとは言わないが、どういったってノンフィクションは、事実に対して一定の責任を負わざるを得ない。

    この改変があった時点で、私はこの漫画の全てを信用できなくなった。
    仮に原作のルポが真摯な取材に基づいて書かれているのだとしても、この漫画がそれを忠実に再現しているのかどうかは、甚だ疑わしい。

    • 6
  6. 評価:3.000 3.0

    漫画として、絵本として

    おそらく、絵本作家エドワード・ゴーリーの影響を受けているのではなかろうか。

    牧歌的な世界にダークファンタジーを落とし込んだような雰囲気は魅力的で、その雰囲気を楽しむ漫画、もっと言えば、「絵本」として見るならば、なかなか完成度は高いと思った。

    しかし、「漫画」として、となると、どうだろう。
    私が非常に気になったのは情報量の圧倒的な少なさで、読めども読めども話は進まない。
    それは単に、本作が、作品の尺に比して語るべき情報を持っていないからである。
    その全てを非難する気もないのだが、情報量が少ないなら少ないで、もう少しコンパクトに収めてほしかったとは思う。

    • 3
  7. 評価:2.000 2.0

    噛み合わないテンション

    宝塚歌劇団みたいな女性オンリーの歌劇学校に、男が潜んでいるという噂があるのだが…という話。

    何というか、作中の登場人物たちのテンションと、読むこちら側のテンションが、全く嚙み合わない。
    もっと言うと、登場人物たちのテンションについていけない。
    現実世界でときどき、「お前何でそんなにテンション高いの?」ということがあるが、読んでいる最中、あれが終始続くと思っていただければわかりやすいかと思う。

    この原因はおそらく、圧倒的な説明不足にある。
    キャラクターたちが泣いたり喚いたりすることについて、作者の側にはおそらくそれなりの必然性というものがあるのだろうが、それがあまりに伝わらない、というか描いていない。

    何か、みんなが盛り上がって騒いでいるときに一人で冷めていると、協調性がない奴みたいに見られるが、私は終始そういう奴の立場で作品を眺めるしかなかった。
    多分、私が悪いんじゃないと思うんだけど。

    • 3
  8. 評価:3.000 3.0

    ギャップの恐ろしさ

    眠る度に異世界にワープするという、「エルム街の悪夢」的なSFサバイバル。

    設定としては悪くないと思うのだが、何しろサバイバルするのが夢の中なので、日常は日常としてあり、夢は所詮夢であって、どうしても緊張感に欠ける。
    サバイバルというジャンルにおいて緊張感以上に大切なものは多分ないので、そういう意味では、致命的である。
    このあたり、もう少し何とかならなかったのか、というもったいなさは感じた。

    ただ、のんびりとした牧歌的な作品の絵柄やテイストに比して、モンスター的な存在の描写はかなり力が入っており、正直、私は怖かった。
    ホラーなりサバイバルなり、もっと「いかにも」的なトーンで来てもらえれば、こちらとしてもそれ相応の準備というものを無意識にするのだが、本作の場合、ノーガードで殴られるようなダメージがあり、恐怖描写のインパクトは相当なものであった。

    それだけに、うーん、もったいない。

    • 2
  9. 評価:3.000 3.0

    小綺麗ではあるけれど

    ジャンルとしては一応、SFということでいいのだと思う。
    ロボット、アンドロイド、崩壊した近未来、という王道のモチーフである。

    それなりに見せ場もあり、グッとくるような展開もあり、派手な破綻もなく、結末もひねりが利いていて、小綺麗にまとまってはいる。
    しかし、上手く言えないが、作者はSFを描きたかったのだろうな、という感じは全くしない。
    「そこに世界を創る」のがSFだと私は思うが、そういう志みたいなものは皆無であって、SFは単なる具材に過ぎず、描きたかったものは何か別のところにあるのだろう、とは思った。
    ただ、じゃあ何を描きたかったんだ、ということになると、正直、よくわからない。

    小綺麗で形は整っているけれど、どこか空虚な印象が終始付きまとい、私はそれが苦手であった。

    • 2
  10. 評価:2.000 2.0

    怖いんじゃない、痛いんだ

    私は怖い話は好きだが、痛い話は嫌いである。
    ということで、読んだ私が間違っていた。
    その点は、すみませんでした。

    別に本作はホラー漫画ではないし、「いや、別に怖がらせることなんて狙ってねーし」と開き直られたら、私は何の反論も出来ない。
    だったらまあ、「怖い」というのは、「読者にスリルを与える」というふうに言い換えてもらってもいい。

    申し訳ないけれど、漫画でも映画でも、ホラーであれサスペンスであれ、「痛い」の方向に振り切った作品というのは、はっきり言って志が低いと思う。
    こういう言い方は嫌いなのだが、低俗だ。
    なぜなら、読者に恐怖を与えるより、「痛い」と感じさせる方が、百倍簡単だからである。

    ちょっと想像してみればわかるが、あなたが今から大の大人を怖がらせる話をして下さい、という課題を与えられたとしよう。
    結構ハードル高くないですか?
    しかし、これが「痛がらせる話」となると、途端に敷居が低くなる。
    それこそ爪がはがれた話でもすれば、事足りるだろう。

    感動の押し売りみたいな作品のことを指す「感動ポルノ」なんて言葉があるが、この種の作品を今後私は「恐怖ポルノ」と呼ぼうと思う。

    • 3

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