rokaさんの投稿一覧

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131 - 140件目/全511件
  1. 評価:4.000 4.0

    可愛さという毒

    愛とは何か、なんてことは、難しすぎて私にはわからない。
    ただ言えることは、誰かが愛と呼ぶものを、我々がどう感じどう許容するかは、かなりの部分、いい加減な印象によって左右される、ということだ。
    可愛い皮を被ってはいるが、それを証明するような、実に意地の悪い漫画である。

    要するに、この漫画の主人公が(ある部分で)無邪気で、(ある部分で)純粋な美少女ではなく、ある程度無邪気で、ある程度純粋な、気持ちの悪い少年だったらどうなのか、ということだ。
    犬木加奈子の「不気田くん」(知らない人は検索して下さい)みたいな主人公だったらどうなのか、ということだ。
    賭けてもいいが、この漫画の主人公に決定的な違和感を抱きつつも、何だかんだで温かい目で見つめていた読者の大半が、「てめえ、そんなの愛じゃねえんだよ」と不気田くんを叩き、「許せない」と糾弾するだろう。

    いや、私はそうならない自信があるよ。
    なぜなら不気田くんが大好きだからである。

    まあ、それはいい。

    それはいいのだが、人の愛(ないし人が愛と呼ぶもの)の基準なんてひどく曖昧で、危ういものだ、ということが私は言いたい。
    であるから、誰かに対して愛だの愛じゃないだの、簡単に言っちゃいけないわけ。
    でも、さすがにこれは…となるでしょう、この漫画を読むと。
    そういう漫画。
    可愛さという単純だけれど強烈な毒でもって、愛の定義に揺さぶりをかける漫画。

    彼女が愛と呼ぶものを、あなたも愛と呼びますか、と。

    まあ、愛はときに凶暴で、人なんて簡単に殺_す。
    私は、そう思うけどね。

    • 3
  2. 評価:3.000 3.0

    その謎は煌めいているか

    映画でも小説でも漫画でもそうなのだが、ある種の曖昧さや抽象性というものを保持したままで作品を閉じる、つまり、話の筋について「何が起きたのか」について明確な答えを提示しない、ということ自体は、私は否定しない。
    映画の例で言うと、デイヴィッド・リンチという監督の一連の作品なんかはその最たるものだと思うが、私は大好きである。

    ただ、この種のアプローチには間違いなく弊害もあって、どこの誰が発明したのかは知らないが、実際は大した話ではない、それどころか、下手をすればそもそも結末を考えていない、にもかかわらず、「とりあえず曖昧にしといたらええんやろ?」とばかりに結末を濁すことで、何かそこに深みのようなものを感じさせてやろう、という作品が生まれ得てしまうことも事実である。
    それはちょっとまあね、ずるいわよね。

    本作がそうだ、と断定したわけではない。
    正直、私にはわからなかった。
    そこに何かあるのか、それとも、何もないのか。
    ただ、いずれにしても、こういうタイプの作品は、「そこにあるかもしれない何か」を探り当てたい、という読者の思いを喚起させられなければ、やはり成功とは言い難いのではないか。
    謎の答えがどうであれ、その謎自体は、煌めいて見えなければならないのだと思う。

    まあ、ショートムービーのような洒落た雰囲気、海中の描写の美しさには感心したけれど。

    • 2
  3. 評価:4.000 4.0

    非凡なセンスと、それ以外の何か

    ほとんどセンスだけで成立しているような漫画だと思う。
    実際、そのセンス自体は非凡であり、一応ホラー漫画っぽい体裁をとりつつも、ホラーの決まり事、お約束、そういうものをサラッと裏切りながら、というか、むしろホラー漫画の定型というものを逆手にとって、次から次へと連作的に話を紡いでゆくその様は、ホラー漫画という枠を飛び越えて、真っ当な「芸」として成立している。
    この才能は実に何というか、現代的で、感嘆した。

    ただ、「センスだけで成立している」というのは100%の褒め言葉であるかというとそうでもなくて、裏を返せば、小手先で作品を転がしている、というような印象も受けた。
    このあたりは、賛否、というか、好き嫌いがあると思う。
    「センスだけで何があかんねん」と言われれば、私はそれに対するまともな抗弁を持たない。
    しかし、三十年以上ホラーとベッタリで生きてきた経験上、ことホラーというジャンルにおいては、作り手のある種の偏執、いくぶん綺麗に言えば、恐怖や怪異に対する愛着や愛情みたいなものが、露骨に作品に出る。
    ホラー漫画における「センス以外の何か」とは、そういう部分だと私は思うし、私がホラー漫画に求めているのは、むしろその「何か」であるような気がしないでもない。

    • 4
  4. 評価:3.000 3.0

    設定の機能

    自ら怪異を体験することによってホラー漫画を描く鬼才の漫画家と、その助手みたいな役どころを務めることになった少年の話。

    ホラー漫画としては、上記の設定の部分がアイデンティティーかと思われる。
    が、いかんせん、それだけでは「弱い」という印象は拭えなかった。
    ホラー描写も、漫画家のキャラクターも、特段魅かれる部分がなく、残念ながら、設定が上手く機能しているようには思えなかった。

    • 3
  5. 評価:3.000 3.0

    あまりに記号的な

    「空が灰色だから」という傑作漫画があるが、それをちょっと思い出した。
    本作と類似しているというわけではないのだが、あの言葉にしようのない「心のざわつき」を喚起する漫画、本作が狙ったところは、もしかしてそれに近いんじゃないのかな、と。
    ただ、申し訳ないが、この漫画がそれに成功しているとは言いがたい。

    抽象的な言い方になるが、「何とも言えない」感じのエピソードが、記号として放り出されている、という印象を受けた。

    「空が灰色だから」の中には、決して言葉に出来ない何やかやを抱えて生きる、漫画的だが同時にひどく人間的な彼や彼女がいた。
    それは、思春期というわけのわからない時代の中で、適切な言葉を持ち得ないまま、何とか生きていたあなたや私の姿そのものだった。

    本作の中には、あなたも私もいない。
    それが否定されるべきかは難しいところだが、少なくとも、血の通わないエピソードに揺らされるほど、私の心に余裕はない。

    • 3
  6. 評価:3.000 3.0

    ジョークとしては

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    よくあるデスゲーム系、なんて言うのもはばかられるくらい、全てがテンプレどおりで、笑ってしまった。
    これをマジでやっているなら寒すぎるが、作り手の側も半分(たぶん半分以上)ギャグでやっており、それが逆に好感が持てた。
    このジャンルはあまりに手垢にまみれてしまったし、はっきり言って「真面目に読むとつまらない上に、ジョークとしても笑えない」ような作品が溢れる中、「まあ、ジョークとしては面白い」という本作は、なかなか貴重であった。
    しかしまあ、高評価をつけられるかとなると、そんなことはないのだが。

    • 4
  7. 評価:3.000 3.0

    漫画の中の文学

    うーん、評価が難しい。
    独特の世界観、と言えばそうなのかもしれないが、ちょっと「狙いすぎ」という気もする。

    おそらく作品のひとつの方向性として、「漫画で文学をやる」みたいなことはあるのではないかと思う。
    その志を否定するわけではないし、実際、文学を感じさせる漫画の中に優れた作品もあると思う。
    だが、誤解を恐れずに言えば、漫画は漫画だ。
    それ以上でもそれ以下でもない。
    漫画の中の文学というのは、あくまで読む側が「感じる」ものであって、作り手の側が押しつけるものではない。
    そのあたり、本作の文学の主張はちょっとうるさすぎる気がして、私は入り込むことが難しかった。

    • 2
  8. 評価:4.000 4.0

    設定の巧妙さ

    孔明が現代日本にタイムスリップする、というシチュエーションコメディ。

    設定一発の作品だが、巧みなのは、場違いな孔明、という設定それ自体ではなく、孔明に売れない歌手のプロデュースをさせる、というポジショニングの方だと思う。
    この発想が絶妙である。
    実際、作品として、歴史上の人物が現代に、というのはさして目新しくもないが、その人物に「何をさせるのか」というのはなかなか難しく、その点、本作は成功していると思った。

    プロデュースの戦略も、実際の孔明のエピソードを上手く絡めていて、作者の孔明愛、三國志愛が感じられる。
    私は三國志に明るくないが、詳しい読者は、さらに楽しめるのではないかと思う。

    • 7
  9. 評価:2.000 2.0

    タイトルでアレルギーを起こす

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    ミもフタもないことを言うが、タイトルが嫌だ。
    冗談ではなく、タイトルは大事だ。
    ある意味、その作品を象徴するものだからだ。

    まず、こういう「とりあえずセンセーショナルよね」的なタイトルが私は大嫌いである。
    「私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。」とか(他作品へのとばっちりで申し訳ないが)ね、もうタイトルたけで知性の欠如を感じる。

    次に、「読者に問いかけちゃうわよ」的なタイトルも私は大嫌いである。
    「離婚してもいいですか?」とか(繰り返し、とばっちりで申し訳ないが)ね、お前は誰に聞いてんだ、とイライラする。

    何と本作、その両方を兼ね備えたタイトルである。

    何が「罪ですか?」だ、罪だっつーの、殺_人は罪だっつーの、法治国家ナメんな。
    罪を遂行する覚悟を決めろ、汚れて生きることから目を背けるな、罪を正当化すんな。

    あー、またムカついてきた。
    タイトルがアレルギーを引き起こす。
    もうね、なぜ私がこれを読んだのかがね、謎だよね。

    さて、本編ですけれども、正直、タイトルほどは酷くなかった。
    しかしまあ、これで「殺された」っていうのはいくら何でも無理があるし、被害者は気の毒ではあるけれど、自らの愚かさでもって自分を追い込んだようなところもあり、そこまで同情できなかった。
    そうするとまた、タイトルにムカついてきて、私はただ、絶望するしかなかった。

    • 43
  10. 評価:3.000 3.0

    とってつけた

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    復讐代行業者の話。

    普通の復讐モノは世に溢れているから、何とかアイデンティティーを出そうともがいた感はある(その努力に免じて星をひとつ足した)。

    復讐する側は読者の同情を誘う被害者で、復讐を遂げて終了、ではなく、復讐する側もろくでなしで、結局地獄行き、という展開があったのも、そこまでオリジナリティーがあるかは別として、一捻り加えようとした意向はわかる。

    だが、残念ながら、作品の大部分は空回りである。

    まず、復讐代行業者の目的(業者であるから目的は本来、利益のはずだが)やルールや信条みたいなものが、よくわからない。
    このあたり、シビアにやっておかないとリアリティーもクソもなくなるが、圧倒的に設定が緩い。

    極めつけは、おそらく本作の最大のアイデンティティーであるはずの、「物語が裏返ったわ…」である。
    要するに、復讐のエピソードを、「シンデレラ」とか「かちかち山」とか、童話や昔話に不意になぞらえるのだが、これのとってつけた感が半端ではなく、完全にすべっている。
    努力は認めるが、核のところでここまで失敗していると、高評価は難しい。

    • 3

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