4.0
非凡なセンスと、それ以外の何か
ほとんどセンスだけで成立しているような漫画だと思う。
実際、そのセンス自体は非凡であり、一応ホラー漫画っぽい体裁をとりつつも、ホラーの決まり事、お約束、そういうものをサラッと裏切りながら、というか、むしろホラー漫画の定型というものを逆手にとって、次から次へと連作的に話を紡いでゆくその様は、ホラー漫画という枠を飛び越えて、真っ当な「芸」として成立している。
この才能は実に何というか、現代的で、感嘆した。
ただ、「センスだけで成立している」というのは100%の褒め言葉であるかというとそうでもなくて、裏を返せば、小手先で作品を転がしている、というような印象も受けた。
このあたりは、賛否、というか、好き嫌いがあると思う。
「センスだけで何があかんねん」と言われれば、私はそれに対するまともな抗弁を持たない。
しかし、三十年以上ホラーとベッタリで生きてきた経験上、ことホラーというジャンルにおいては、作り手のある種の偏執、いくぶん綺麗に言えば、恐怖や怪異に対する愛着や愛情みたいなものが、露骨に作品に出る。
ホラー漫画における「センス以外の何か」とは、そういう部分だと私は思うし、私がホラー漫画に求めているのは、むしろその「何か」であるような気がしないでもない。
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リリースレッド 怪異の起こる街