4.0
過酷な宮廷で敵味方入り乱れて欺き合う
陰謀渦巻く本格的な宮廷劇に異族のファンタジー要素が入り込んで話の把握は大変です。
美麗な絵と先の読めない展開で無料分は面白く読めました。
序盤に対立する幻妃は苛烈だが芯のある女性でまともな方だったというのが、権力を弄ぶ雲妃の入内ではっきりしてくるという。堅物と思われる雲将軍から何故あんな残虐で媚びた娘が出てくるのか。尊太后の意を汲んで後宮を荒らすのが目的とはいえ、あまりにも常軌を逸している。こうなることが読めていたからこそ、皇帝は幻妃を残していたのだということがよくわかります。少なくとも幻妃は宮中の掟や秩序を意識していた。雲妃はそんな認識は皆無で、宮中で軍犬を放って実家に迷惑がかかることすら理解できない。幻妃のような覚悟もない。この作品でもトップの屑。
尊太后は異族排斥に執念を燃やし、霊族の主人公や和平志向の皇帝とは対立しますが、支配者として一貫はしています。よくわからないのは前帝で、和平志向の浮丘宰相と組んで皇位を簒奪し、その娘を妃に迎えて皇太子(現皇帝)まで設けながら、異族討伐に舵を切って諌めた皇太子を冷遇したこと。しかも結局幻族との同盟に傾き、尊太后に暗殺されたと思われる遠征先での急死。断片的な情報からすると、前帝は首尾一貫しない行き当たりばったりで横暴な人物ということになりますが、この作品のことだから何か裏でもあるのか。
説明が飛び飛びなのが難点ですが、作り込んであって読みごたえがあります。
- 0