4.0
露悪のとことん逆を行く
連作短編の話の作りとして、非常に上手い。
リズムよく、簡潔で、それでいて性急な印象を与えずに、読み手の感情を爽やかに揺さぶる。
いや、本当に上手だと思う。
しかし、正直なところ、「男女のリアルな恋愛模様を描いた」というような作品ではない。
もっとも、それはハナから意図されていないのかもしれないのだが、「いや、そうはならんやろ」という展開は結構ある。
それは見方によっては、いわゆる成人漫画にあるような「男に都合のいい展開」にも映る。
そして何より、こういう言い方はちょっと嫌なのだけれど、本当の人間はもっとずっと醜い、と私は思う。
本作のように、性が絡むような場合は、特に、である。
本作の登場人物たちは、いささか雑な表現をすると、みんな可愛い。
というか、可愛すぎる。
本当の私たちは、こんなに可愛くは生きられない。
本作から著しくリアリティーを削いでいるのは、その点ではないかと思う。
だが、その点こそがおそらく、本作の美点なのではないかとも思う。
露悪的、なんていう言葉がある。
本作がやっていることは、言ってみれば、その真逆だ。
人間の美しい部分、爽やかな部分、可愛らしい部分ばかりをクローズアップして、作品に落とし込んだような漫画である。
悪く言えば、安牌ばかり切っている、とも言える。
そのような描き方を、例えば「人間の醜さから目を背けている」と非難するのは簡単だ。
けれど、作者はきっと、そういうふうに描きたかったのだろう。
描きたかったら、描くべきだ。
リアリティーを犠牲にしながらも、本作が見せた「私たちがこんなふうに綺麗でいられたらいいよね」という切ない提示みたいなものは、私は嫌いではなかった。
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