2.0
何だそのピュアさは
家族に取り入り、家族を乗っ取ろうとする男の話。
とだけ書くと、現実にありそうだが、実際には猛烈な嘘臭さが漂う。
例えば悪名高い北九州の事件なんかは、ある種の家族乗っ取り事件だが、当然、本来の目的は、金だ。
そこに、サディズムとか過剰なコントロールへの欲求とか、異常な要素は絡むとしても、極めて現実的な目的がある。
また、仮にだが、家族を崩壊させることが目的だ、というのも、現実にそんな事件があるかは別として、まだギリギリ理解できる。
しかし、本作の主人公(?)は、全く違う。
自身は恵まれない家庭に育ち、幸せな家庭を築くために、他の家族を乗っ取ろう、というのである。
そんなタコな。
何だ、そのピュアさは。
それだけの目的なら、普通に自分の家族を一から作った方が早いだろ。
他の家族を乗っ取るために、まずターゲットを探し、その隣人になり(そのために家族向けのアパートの一室を借り)、身分を偽り、家族の問題や秘密を把握し、周辺でトラブルを起こし(あるいは助長し)、次にそれを解決し信頼を得て…とかもう、気が遠くなる。
そのコストとバイタリティーを、婚活に使えよ婚活に。
まあ、色々書いたが、仮に非現実的な人物像であっても、漫画においては、強引に面白くすることは可能である。
それがフィクションの強みだ。
だが本作は、悲しいほどに盛り上がらない。
それはやはり、漫画としての表現の拙さが最大の理由という他にない。
- 8