5.0
胸が締め付けられる、師弟の人間ドラマ。
本作は、異世界ファンタジーというカテゴリではなく、胸が締め付けられる「人間ドラマ」だと言いたい。
『進撃の巨人』のような、人間同士や社会構造の不条理な衝突や争い、そこから生じる個人の苦悩や葛藤が描かれているので。
絵の質の高さも素晴らしい。背景や小物1つまで、手を抜かない丁寧さ。
他の方も書かれていたが、師匠のレオン(表紙右)は浦沢直樹先生の絵を彷彿し、優しい温かみを感じた。
2022年3月現在、39話まで配信され、まだ未完で続く。
※以下、ネタバレ含みます。ご注意ください。
生まれつき「導脈」を持つ者が魔導師となり、それは人々に忌み嫌われ、不遇な賤職と差別を受けるラバルタ国。
無名な魔導教師レオンは、魔導の知識と操作は優秀だが、導脈が細くて魔力に乏しく、魔導師の中では三流以下と嘲られ、村人からも忌避迫害されていた。
ある日、魔力は莫大だが反抗的で操作を学ばない、問題児ゼクスの指導を頼まれる。
ゼクスは被差別民族の出身で、ラバルタ国に両親も故郷も抹殺され、他人に心を許さない。
そして、脳機能障害によるディスレクシア(難読症)で、文字を読むことが出来ない。
ゼクスを引き受けたことを後悔するレオンと、傷つき孤独な少年ゼクスに、師弟の絆が生まれるまでを、レオン目線で描く1~11話。
12~39話はゼクス目線で、青年になったゼクスは、レオンと喧嘩別れをし、魔導師最高峰の「鉄の砦」に迎えられる。
そこでも差別と直面するが、信じ合える仲間もでき…。
差別から脱する為に入った「鉄の砦」でも、社会の不条理で理不尽な現実を目の当たりにしたゼクスは、自分が強くなることで師レオンの名誉を高めよう…と決意する。
師レオンへの深い思慕や尊敬、仲間との絆は胸が締め付けられる。
しかし、民族差別、魔導師同士の権力争い、旧自治領の占領と独立を巡る内乱。
切迫した状況から、ラバルタ国に反旗を翻した魔導師もいれば、そのために村人や政府に虐.殺された魔導師も多く…と、キレイ事ではない状況の中で、ストーリーは進む。
莫大な魔力を持つ弟子に「嫉妬してるのか」と言われ、否定出来なかったレオン。
その劣等感、愚直な誠実、不器用な生き様…は人間臭く。己を責め、ゼクスを思い続ける心情は、切なく哀しい。
歴史と社会の渦の中の、この師弟の物語は、やはり「人間ドラマ」という言葉が相応しく思う。
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