3.0
欲の表層
果実だけを食べて生活し、果汁のような中毒的な体液を持つという特異体質の双子が、謎の老婆に搾取されているのだが、という話。
元ネタはおそらく、中国の都市伝説の「桃娘」だと思うが、題材的にはなかなか面白かった。
ただまあ、退廃的とか、耽美的とか、言えないこともないのだけれど、私はどこか表面的で、浅薄な印象を受けた。
この題材であれば、搾取する側の人間と、搾取される側の人間、双方の「業」みたいなものをどこまで描ききれるか、ということになると思うのだけれど、そのあたりの深みは、作品からイマイチ感じられなかった。
私たちの多くは、搾取の現場を見れば、それに心を痛めたり、反対したりする。
だが、自らがその搾取によって恩恵を受けているかもしれない、という事実については、考えない。
例えば、子どもが極端な低賃金で長時間の労働を強いられているとして、というかそういう現実は世界中にあるが、その場面に立ち会えば、私は悲しむ。
だが、そのような子どもたちの労働によって私の必需品が安価に生産されているのかもしれない、という事実については悩まない、というか、見て見ぬふりをして生きている。
搾取を巡る人間の欲望や無関心というのは、そう単純な問題ではないが、本作における「欲」の描き方というのは、いささかステレオタイプに過ぎるような気がした。
また、本作を表層的な印象にしてしまっているひとつの要因は、残念ながら、フルカラーという形式だと思う。
漫画の技術的な面に関しては、私は完全に門外漢なので、あまり偉そうなことは言いたくないのだが、このカラーが「薄っぺらい」「安っぽい」というイメージを与えてしまっている非は大きい。
極端に言うと、量産型のプリント品、みたいな(もちろん商品としての漫画は全てそうなのだけれど)印象である。
特に背景の描き込みをカラーによってごまかしている感が強く、そのあたりも、作品世界に奥行きを感じられないひとつの要因になってしまっている気がする。
特異な世界を構築しようと志したであろう漫画であるだけに、もうちょっと何とかならなかったのかな、という気持ちは拭えなかった。
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