5.0
思いのほか癒される
うっかり恋してしまうと痛手になるようなイケナイ男子の香りがする、叶君。主人公の桃もその香りを感じ取り、その沼にハマらないようにと身構えるのですが……。
読み進めて思うこと。これはなかなかどうして微笑ましい。
桃の純粋さが微笑ましいはもちろんのこと、意外にも叶君にもそんなところがたくさんあって、少しずつ見せてくれる素直さや優しさにほっこりさせられます。
叶君はモテるし来る女を拒まないので、周囲から女癖の悪い男だと認識されていますが、本人から進んで女をひっかけたり騙したりすることはなく、むしろ女性に虚しさを感じている様子。それには、叶君のある過去が影響しているようです。
顔が好き、容姿がセクシー、そんな理由で言い寄る女ばかりの中、ちゃんと叶君の中身を見てくれるのが桃。恋愛経験こそ乏しい桃ですが、そこはやはり年上の社会人。本人も気づいていない懐の深さがあるんですよね。ちゃんと叶君と会話をして、様子を感じ取って、いたわったり心配したりする。(それをできない自分本位の女たちのどれほど多いことか……)そうして、叶君も桃に気持ちを向けていく。桃の願いを叶えたいと思ったり、側にいたいと感じたりする。
この2人の関係、もちろんキュンとする場面も盛りだくさんですが、私にとっては心温まる癒やしでもあります。
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その男、沼につき。