4.0
ジャンル変貌の妙技
スタートで「こういう話かな」と思っていたのを、いい意味で、かなり裏切られた。
「フロム・ダスク・ティル・ドーン」というジャンル崩壊映画があるが、それをちょっと思い出した。
この手の作品は、ジャンルの切り替えが上手く決まらないと「何やねん」という悲惨な出来になるが、なかなかバシッと決まっていたと思う。
また、基本的にはリアリティーもクソもない話だが、主人公のキモい男の「最底辺だけは嫌だ」という信条は、その是非はともかく、現代の価値観としてなかなかリアリティーがあったし、何より、漫画の主人公の価値観として新しさを感じた。
個人的には、「僕たちがやりました」のトビオの「普通でいい」という価値観と双璧である。
そして、この魅力もクソもない主人公でどうすんだよと思いきや、人間に対する観察眼の鋭さや、常人離れした嗅覚という設定を巧みに生かして、意外とカッコよく見せた手腕は、見事と言う他にない。
惜しむらくは、まあ、表紙がひどい。
- 15
最底辺の男-Scumbag Loser-