5.0
美しさは皮一枚
「美しさは皮一枚、醜さは骨の髄まで」という意味の英語のことわざがある。
要するに「内面が大事だ」ということなのだろうが、別の捉え方もできる。
それは、光よりも闇が深いように、美しさよりも醜さの方が深い、ということだ。
この漫画を読んで、少しだけわかった気がした。
自分がなぜ、人間の汚さや醜さを描くような漫画や映画や小説に、敢えて触れようとするのか。
私は多分、人の醜さの底知れなさに、歪んだ魅力を感じるのだと思う。
表面の美しさには、限りがある。
少なくとも、時間的な制約からは絶対に逃れられない。
永遠に美しく、は不可能だ。
かさねの口紅の効果が永遠ではないように。
人は、いつまでも美しくあり続けることはできないし、どこまでも美しくなり続けることもできない。
しかし、どこまでも醜くなり続けることはできるのだ、恐ろしいほどに。
かさねの、表面の醜さ。
そして、容姿という運命のハンデに結局のところ負けた、その弱さ。
他人に成り代わってでも光を浴びようとする、そのあさましさ。
一度知ってしまった光の味をどうしても手放せない、その欲深さ。
その限りない醜さに、そして、魂の醜さと反比例するかのように増長してゆく、完璧に表面的な美しさに、ぞくぞくするほど心が昂った。
人の美しさは有限だが、醜さは底なしだ。
その底なしの闇を覗き込む恐ろしさと興奮が、ここにある。
私は、この漫画の行方を見届けたい。
ただ、底なしの闇の片隅に、最後には一欠片でもいいから、幻でもいいから、パンドラの箱に残っていた希望のように、何かの光が残る結末であってほしいと願うのは、甘いだろうか。
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