rokaさんの投稿一覧

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481 - 490件目/全506件
  1. 評価:4.000 4.0

    ジャンル変貌の妙技

    スタートで「こういう話かな」と思っていたのを、いい意味で、かなり裏切られた。
    「フロム・ダスク・ティル・ドーン」というジャンル崩壊映画があるが、それをちょっと思い出した。
    この手の作品は、ジャンルの切り替えが上手く決まらないと「何やねん」という悲惨な出来になるが、なかなかバシッと決まっていたと思う。

    また、基本的にはリアリティーもクソもない話だが、主人公のキモい男の「最底辺だけは嫌だ」という信条は、その是非はともかく、現代の価値観としてなかなかリアリティーがあったし、何より、漫画の主人公の価値観として新しさを感じた。
    個人的には、「僕たちがやりました」のトビオの「普通でいい」という価値観と双璧である。

    そして、この魅力もクソもない主人公でどうすんだよと思いきや、人間に対する観察眼の鋭さや、常人離れした嗅覚という設定を巧みに生かして、意外とカッコよく見せた手腕は、見事と言う他にない。

    惜しむらくは、まあ、表紙がひどい。

    • 15
  2. 評価:3.000 3.0

    サスペンスとしてもギャグとしても

    大真面目にサスペンスをやろうというのではなく、サスペンスと、ギャグと、その際どい中間を狙ったような気がする。
    それが悪いとは言わないし、新しい路線を、というガッツは買うのだが、その挑戦が成功しているとは言いがたい。
    じゃあどうすればよかったのかは、ちょっとわからないのだが。

    焼肉屋と寿司屋が一緒になっている飯屋があるが、私は焼肉が食べたければ焼肉屋に行くし、寿司が食べたければ寿司屋に行く。

    • 13
  3. 評価:3.000 3.0

    サイコキラーの許容範囲

    学生時代に犯罪心理学をちょっとかじって、古今東西のサイコキラーの書物を読んでいた。
    「美しきサイコキラー」なんて、滅多にいない(テッド・バンディなんかは例外だろうけど)。
    「美しき女性のサイコキラー」となると、私の知る限り、一人もいない。
    別に、現実にいない人物が漫画にいちゃいけないわけではないが、美女のサイコキラーという設定に、私は冷めてしまった。
    ファンタジーではなく、あくまで「現実」を舞台に展開する漫画には、こういう逸脱をしてほしくない。
    美女のサイコキラーなんかよりも、コナン君の「怪盗キッド」の方が、まだ現実として許容できる。

    • 8
  4. 評価:4.000 4.0

    私情の究極

    同じ「裏社会」モノということで、「闇金ウシジマくん」と比較されることがあるが、全く違う。
    ウシジマくんは、徹底的に私情を捨てて生きている。
    一方、本作の「ヒーロー」二人は、究極的に私情に走って生きている。
    どちらがいいとか、面白いとか、そういうことではない。
    ただ、私情に生きる二人の方が、いくぶん人間的であるし、また、弱い。
    私情に生きる人間は、真に冷酷にはなり得ないからだ。

    ウシジマくんを読んだときは、私情を捨てることこそが、この主人公が現代を生き抜くために身につけた必死の手段なのだと思い、胸が熱くなった。
    そして、少し、悲しくなった。
    「外道の歌」の二人は、時代性とは無縁の、ある意味では古典的な営みを送り続けている。
    その愚直さに、胸が熱くなった。
    そして、少し、悲しくなった。

    • 5
  5. 評価:5.000 5.0

    新しいハッピーエンドの形

    打算的な結婚を求めたり、結婚に過剰な夢を抱く人々が、「笑うせえるすまん」的なノリで地獄を見る話かと思ったら、全く違った。
    何ともオリジナリティーに溢れる、変化球のハッピーエンドがそこにあった。
    現代は、難しい。
    ロマンチックな恋愛の延長としての結婚を描けば「現実的じゃない」「夢見すぎ」となるし、かといって、打算だけでは寒すぎる。
    そして、どっちを描いても、作品としての新しさは別にない。
    薔薇色の結婚は信じられない、鉛色の結婚は信じたくない、そんなワガママな現代において、「恋愛」から始まるのではない「愛」だってあるかもしれないぜ、という結婚の可能性を描いてみせたことには本当に価値があるし、素晴らしいと思った。

    • 17
  6. 評価:2.000 2.0

    後味について

    自分は、後味の悪い作品が好きでもないし、嫌いでもない。
    そこは、どちらにしても評価のポイントではない。
    後味を悪くしてまで描く価値のある何かが、そこにあると感じられたか。
    それだけ。
    その答えが「イエス」だったから、「ミスミソウ」は星を五つつけた。
    本作は、残念ながら、「ノー」だった。
    上手く言えないが、「後味の悪さ」は「結果」であって、それが「目的」になってはいけない気がする。

    • 7
  7. 評価:4.000 4.0

    それどころじゃない

    ブラック企業の会社員と、かまってほしい幽霊の漫談的なコメディ。
    一貫して「それどころじゃない」という主人公のスタンスがいい。
    一般的なホラー作品では、幽霊が出てくることが一大イベントで、そのイベントを中心に作品が回る。
    でも、「この書類を上げるまでは、幽霊どころじゃない」というのは、現実的には、結構あり得る状況だと思う。
    そういう意味で、「普通の」ホラーの「お約束」に対するアンチ・テーゼみたいな漫画でもあるし、幽霊すら優先できない日本の企業社会ぶりに対する風刺みたいな漫画でもあって、なかなか含蓄は深いと思う。

    • 7
  8. 評価:4.000 4.0

    切れた糸

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    おぞましい世界観は非常に丁寧に作り込まれていた。
    不穏でおどろおどろしい土着的な日本の「村」の舞台を、ダークファンタジーのフォーマットに綺麗に落とし込んでいると感じた。
    それだけに、終盤の失速と唐突な閉幕はひどく残念だ。
    伏線も回収されぬまま、いくつもの謎を残したまま。
    作品は途端に力を失い、地面に崩れ落ちてしまった。
    まるで、糸の切れた操り人形のように。

    • 14
  9. 評価:5.000 5.0

    四部が一番好き

    ジョジョはみんな好きだが、中でも四部が一番好きだ。
    まず、圧倒的に「敵」の規模が小さい。
    吉良吉影は、ディオやプッチ神父のような世界を変えかねない存在ではなく、「静かに暮らしたい」だけの変態である。
    このスケールの小ささがいい。
    仗助君たちのやることも実に呑気で、ネズミを狩るわ、イタリア料理店に行くわ、チンチロリンでイカサマをやるわ、ジャンケンに命をかけるわ、という有り様である。
    この平和さがいい。
    ジョジョの奇妙な「大冒険」もいいが、小さな日常の冒険が詰まったような四部が、私は好きだ。

    余談だが、学生時代、いつか子どもが生まれたら、「仗助」と名づけようと半ば本気で思っていた。

    • 22
  10. 評価:5.000 5.0

    牛のジェットコースター

    死の予言から逃れようとする若者たちのサスペンス。
    「件」とは一体何なのか?
    運命を変える術はあるのか?
    というのがストーリーの基本線だが、死に直面した登場人物たちの生き様や、交錯する思惑も見もので、「みんなで協力して運命に立ち向かう」という単純な構図とは一線を画している。
    時系列を錯綜させる構成や、一種の群像劇的な見せ方も、技術の高さが半端ではない。
    「モンタージュ」にしてもそうだが、この作者は作中で時系列を操作するのが上手い。
    そしてまあ、信じられないくらいに物語は動きに動く。
    本当に、動きすぎて困った。
    この過剰な「動き」を受け入れられるかどうかが、評価の分かれ目になると思う。
    個人的には、大満足。
    どちらかと言えば、ジリジリ迫りくる死の恐怖を、牛のように単調な動きのスローなストーリーで見せるのが似合いそうな題材なのに、繰り広げられるのはジェットコースターもびっくりの怒涛の展開。
    あまりにもスピーディーで、あまりにもサスペンスフルな傑作。

    • 4

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