rokaさんの投稿一覧

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471 - 480件目/全506件
  1. 評価:5.000 5.0

    本当のギャンブル

    本来はタイプの顔じゃないのに、付き合ってしばらくしたら、可愛くて仕方がなくなる、なんてこと、ありますよね。
    何が言いたいのかというと、福本氏の「絵」
    が、その現象と似ている、ということである。

    でもそれは、漫画の世界では、かなりのハンデ戦だ。
    まことに失礼なことを言うが、少なくとも絵を見て「読みたい」と感じさせる漫画では全くないと思う。
    漫画は、雑に言えば、絵と文字だ。
    その絵に、魅力がない。
    正確には、この絵に魅力を感じるのは、読んで、この世界に引き込まれた後の話であり、入り口での魅力ではない。
    そういう「飛車角落ち」のような勝負を漫画という賭場で仕掛け、それに勝利した福本氏は、本当に凄いと思う。

    「そんなギャンブル、ありかよ」と作品の中で何度も感嘆したが、一番のギャンブルは、福本氏が「漫画」を選択したという、その事実ではなかろうか。

    • 11
  2. 評価:5.000 5.0

    ざわ…ざわ…

    ざわ…ざわ…

    カイジ本編で強烈な印象を与えた利根川を主人公にしたスピンオフ……!
    どんな悪の美学を見せつけてくれるかと思いきや……意外……!
    作品の内容は……コメディ……!
    圧倒的コメディ……!
    別の作者にも関わらず、オリジナルと変わらない絵柄で、カイジ好きならニヤリとすること間違いなし……この魅力……悪魔的だ……!
    では、オリジナルを知らなければ楽しめないのか……?
    そうでもないっ……!
    初見の読者に対しても、決して排他的ではない……!
    僥倖……まさしく僥倖……!
    ならば、カイジを知らなくても読むべきか……?
    だが………駄目っ………!
    それこそが罠っ………!
    先にスピンオフを読むなど……悪手……これ以上ない悪手……!
    あくまで、オリジナルありきだっ……!
    その後で読んでこそ、この漫画は輝く……!

    ざわ…ざわ……

    • 36
  3. 評価:5.000 5.0

    歪んだ「スタンド・バイ・ミー」

    映画「スタンド・バイ・ミー」を観るといつも思う。
    そこにいる少年たちは、自分の少年時代とは絶対的に違うのに、そこにある何かは、絶対的に自分の少年時代のものだな、と。
    この漫画に対しても、同じことを感じた。

    私の、というか多くの読者の思春期は、さすがにここまで歪んではいなかったはずだ。
    にもかかわらず、この漫画にあるのは、私の歪みであり、あなたの歪みである。
    「黒歴史だよね」なんて飲み会で笑って話せるレベルではない思春期の記憶を持つあなたに、この漫画は、きっと刺さる。

    今さらどうにもならない、甘くて苦い記憶を、感傷を、行き場のなさを、顕微鏡並みの倍率で誇張して見せつけたような作品であって、だから私は、この漫画を無視できない。
    恐ろしく歪んだ「スタンド・バイ・ミー」のような名作。

    • 20
  4. 評価:4.000 4.0

    それでも、愛は、愛

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    一気に読んでしまった。
    原作の利なのだろうが、読ませるパワーがすごい。

    恋人の失踪。父の癌が発覚。母の死。
    立て続けに起きた不幸の中、見つけた謎のノート。
    父は、母は、人殺しなのか?
    母だと思っていた人の正体は?
    そして、自分自身の正体は?

    ノートの内容は、前半はサイコ的な恐怖を感じさせるが、後半は、ミステリとしての面白さをキープしつつも、叙情的な方向に移り変わってゆく。
    それは、この作品のテーマそのものとシンクロする。
    異常な殺_人者の告白から、異常な愛の物語へ。
    このシフトチェンジが素晴らしい。

    終盤、主人公の殺_人気質が覚醒し、自らの体に流れるおぞましい血によって、呪わしい運命を辿る、という展開も、ありだった。
    でも、母の愛が、それを救った。

    過ちから始まった愛。
    秘密と偽りのもとに成立していた愛。
    人を殺めることで誰かを守ろうとするような愛。
    愛を手にする資格など持たないような者の愛。
    自らは死に向かうことで、誰かの愛を生かすような、悲しい愛。
    それでも、愛は、愛。
    ラスト、車で走り去る二人を見送りながら、私は、そんなことを考えていた。

    • 21
  5. 評価:4.000 4.0

    見所の多いサバイバル

    映画でも漫画でも、サバイバル系は、「メインの敵」以外に焦点があると面白い。
    そういう意味で、この漫画は成功している。

    その1…VS猿。
    これがもちろんメインだが、「本当に猿なのか?」という謎もあり、一筋縄ではない。

    その2…内部の人間の裏切り。
    自分が生き残るために、仲間を売る奴らとの攻防。

    その3…内部犯の可能性。
    何と内部の人間に猿の仲間がいる可能性あり。
    敵が人間ならともかく、猿の仲間??
    謎めいた展開。
    上手く回収してほしいけど。

    その4…「山」の脅威。
    舞台が険しい山なので、猿の他に、自然との戦い、という側面もある。

    その5…疑心暗鬼からの仲間割れ。
    誰も信じられなくなり、登場人物たちが正気を失ってゆく、という王道パターンだが、生命維持に不可欠な「水」の問題を絡めることで、この展開に説得力を与えている。

    ということで、なかなか見所の多いサバイバルホラーになっていると思う。

    • 105
  6. 評価:4.000 4.0

    甦る童心

    子どもの頃、近所の駄菓子屋で一日早く発売される少年ジャンプを待ち望みながら生きていた頃、自分がどんなふうに漫画にドキドキしていたのかを、ちょっと思い出した。
    大人として偉そうに漫画を「評価」するようになるずっと前の、可愛らしい昂りを思い出した。
    そういう作品って、貴重だ。

    • 9
  7. 評価:5.000 5.0

    美しさは皮一枚

    「美しさは皮一枚、醜さは骨の髄まで」という意味の英語のことわざがある。
    要するに「内面が大事だ」ということなのだろうが、別の捉え方もできる。
    それは、光よりも闇が深いように、美しさよりも醜さの方が深い、ということだ。

    この漫画を読んで、少しだけわかった気がした。
    自分がなぜ、人間の汚さや醜さを描くような漫画や映画や小説に、敢えて触れようとするのか。
    私は多分、人の醜さの底知れなさに、歪んだ魅力を感じるのだと思う。
    表面の美しさには、限りがある。
    少なくとも、時間的な制約からは絶対に逃れられない。
    永遠に美しく、は不可能だ。
    かさねの口紅の効果が永遠ではないように。
    人は、いつまでも美しくあり続けることはできないし、どこまでも美しくなり続けることもできない。
    しかし、どこまでも醜くなり続けることはできるのだ、恐ろしいほどに。

    かさねの、表面の醜さ。
    そして、容姿という運命のハンデに結局のところ負けた、その弱さ。
    他人に成り代わってでも光を浴びようとする、そのあさましさ。
    一度知ってしまった光の味をどうしても手放せない、その欲深さ。
    その限りない醜さに、そして、魂の醜さと反比例するかのように増長してゆく、完璧に表面的な美しさに、ぞくぞくするほど心が昂った。
    人の美しさは有限だが、醜さは底なしだ。
    その底なしの闇を覗き込む恐ろしさと興奮が、ここにある。

    私は、この漫画の行方を見届けたい。
    ただ、底なしの闇の片隅に、最後には一欠片でもいいから、幻でもいいから、パンドラの箱に残っていた希望のように、何かの光が残る結末であってほしいと願うのは、甘いだろうか。

    • 20
  8. 評価:5.000 5.0

    別格の恐怖

    ホラー漫画は結構読んだが、サイコものとしての怖さは、ちょっと別格なんじゃないかと思う。
    一種の正体不明性と、突っ放したような後味が絶妙に嫌だ。

    何がホラーって、座敷女の行動原理が、根本ではさっぱりわからない、ということだ。
    例えば、「面白半分で肝試しに行ってひどいめに遭う」とか、「新種のウィルスが蔓延した結果、街にゾンビが溢れる」とか、「過去のちょっとした罪を怨まれて復讐される」とか、そういうある種の因果関係みたいなものが、この漫画にはない。
    主人公はただ、運が悪かっただけだ。
    正体不明の何かが唐突に現れ、私たちの日常をあっさり崩壊させる。
    本当のホラーって、そういうことなんじゃないかと思う。

    訳がわからないというのは、とても恐ろしい。

    • 8
  9. 評価:5.000 5.0

    異常なほど独特

    正直、星を五個つけている他の漫画ほど気に入ったわけではないし、人に薦めようとも思わない。
    しかし、あまりに独特な作品の空気に、半ば強引に引っ張られてしまった。

    元受刑者たちのキャラクター造形の巧みさ。
    現実にいたらどう考えても一緒にいたくない人間さえ、何となく許せたり、可愛らしく見えたりしてしまうところに、フィクションとしての力量を感じた。

    「本音と建前」を描いた漫画なのだという。
    そういう側面は確かにあるが、個人的には、読者に対してとても挑戦的な、悪く言えば、意地の悪い作品だと思った。
    だって、考えざるを得ない。
    元受刑者たちが来るのが、自分の町だったら、と。
    「嫌だよ、勘弁してくれよ」という自己保身のエゴと、「生き方によっては許されるべき過ちもあるのではないか、必死で真っ当に生きようとする人間すら拒絶するのか」という倫理の間で、揺れる。
    登場人物が、ではない。
    読者が、だ。
    登場人物は、そんなにマジで葛藤していない。
    だってこれはギャグ漫画なのだ。
    よりにもよってギャグ漫画が、読者の良心や倫理観を試そうとする。
    そんなのありか。

    そして、ギャグ漫画でありながら、「何かとんでもないことが起きるんじゃないか」という不穏な空気が、ずっとある。
    暴力や破綻への嫌な予感が、静かな不安感が、絶えずある。
    繰り返し、よりにもよって、ギャグ漫画の中で。
    私は笑いながら、怯えていた。

    いやほんと、何なんだ、これは。

    • 14
  10. 評価:4.000 4.0

    感情のリアリティー

    個人的には、絵は全く気にならなかった。
    そもそも絵の上手い・下手を論じられる立場に私はいないが、その漫画に「合う絵・合わない絵」は感じることがある。
    この作品の場合、少なくとも「合わない絵」ではない気がした。

    私があまり読まない種類の漫画だが、結構強烈に引き込まれた。
    ストーリーのリアリティーは別にして、主人公の抱える不安や自己嫌悪や、「ここではない世界」に対する漠然とした切望や、木島に対する微妙な感情や、それを「打算」と言い切る潔さや悲しさは、とてもリアルに感じた。

    岡崎京子の漫画でワニを飼う話があったと思うけど、カメに餌をやる本作の主人公が「岡崎」なのは、オマージュなのかな。

    あと、タイトルが素晴らしい。

    • 11

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