4.0
不条理
「欲を出した人間が地獄に落ちる」的な漫画なのかと思っていたが、全く違った。
何の非もない一般ピーポーが、喪黒の悪意によって次々に地獄に落ちる話だった。
何だそりゃ、と思う反面、不条理を描くとはこういうことなんだな、とも思った。
私たちが慣れ親しんだ「昔話」的な勧善懲悪に対する辛辣なアンチテーゼであり、この時代にそれを平気でやっていたことが恐ろしい。
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8
11位 ?
「欲を出した人間が地獄に落ちる」的な漫画なのかと思っていたが、全く違った。
何の非もない一般ピーポーが、喪黒の悪意によって次々に地獄に落ちる話だった。
何だそりゃ、と思う反面、不条理を描くとはこういうことなんだな、とも思った。
私たちが慣れ親しんだ「昔話」的な勧善懲悪に対する辛辣なアンチテーゼであり、この時代にそれを平気でやっていたことが恐ろしい。
悪く言うと「同じこと」の繰り返し。
だが、それでも退屈させないのは、よくあるサバイバル系のホラーを基軸にしながら、上手に推理モノの要素を取り入れているからだと思う。
ただ、話の性質上、「生き残れるか」という本来最大の焦点になるはずの部分に緊迫感が欠けるのは、ちょっと気になった。
何しろ、基本は何度でも「繰り返す」わけで。
ただ、「助かるとわかっていても怖い」描写には成功しているとは思う。
ドラゴンボールも、「生き返れる」ようになってから、急に緊張感がなくなった。
まあ、関係ないけど。
前作のレビューにも書いたが、主人公に何の哲学も感じない。
「表の社会では冴えなかった主人公が、裏社会では…」みたいな話だが、違う。
主人公は何も変わっていない。
ただ、表の社会で振り回されていたのが、裏の社会で振り回されるようになっただけだ。
それを意図した皮肉なリアリティー作品ならば見事だが、明らかにそうではない。
振り回されているだけの人間の物語など、私は読みたいとは思えない。
申し訳ないが、「クラスみんなで復讐」という設定で、もう冷めてしまった。
「復讐モノ」はわりに好きである。
しかし、復讐心というのは、当たり前かもしれないが、本来、極めて個人的な感情である。
だからこそ、残酷にも苛烈にもなれるのだと思う。
みんなで痛みや傷を共有することは、復讐心を抑える方向に作用するだろう。
「いいんだよ、フィクションなんだから」。
それはそうなのだけれど、人間の感情の核の部分には、フィクションの都合を持ち込んではいけない領域もあると私は思う。
今のところ、だが。
幽霊も吸血鬼も出てこない。
狂った、というほど異常な人間も見当たらない。
何より、まだ、何も起きていない。
なのに、怖い。
平坦にすら見える日常が、怖い。
そこに、どうにも破綻の予感がして仕方がない。
何かとんでもなく不幸なことが、いずれ起こるに違いない、という予感的な怖さ。
不穏、という言葉が一番近いのか。
でも、それでも足りない。
これは、漫画でしか描けない種類の怖さである気がする。
この作者は、「漂流ネットカフェ」や「ハピネス」のような、現実の枠を超えたストーリーよりも、日常を舞台にする方が、本領発揮となるのではないかと感じた。
余談だが、群馬県出身の私にとっては、登場人物たちの群馬弁はすっと入ってくるし、郷愁を誘われるものであった。
ちょっと得をした気分である。
だが、その郷愁すら、うすら寒い恐怖を連れてくる。
何てことだ。
この怖さは、素晴らしい。
これからきっと、何かが起こるのだろう。
そうなったときにも、どうか素晴らしい漫画であってほしい。
「祭りは準備をしているときが一番楽しい」などというが、それを超える祭りがこの先にあることを願ってやまない。
昨今流行りの有象無象のサバイバル漫画とは、一線を画すレベルの高さを感じる。
「ルール」はあるものの、よくある「ゲーム」的なタッチではないところに、新鮮さがある。
村に「地獄」が出現する、という設定の大胆さ、「ゾンビ」などではない、和風の異形のもののおぞましさ。
「蜜の島」でも感じたが、この作者は世界観を整えるための描き込みがとても丁寧で好感が持てる。
今後に期待の良質スリラー。
「ギャンブル」を描いた漫画、と言われると違和感がある。
ギャンブル狂の造形が、いわば孫悟空の「オラ、ワクワクしてくっぞ!」的なノリであり、それは、ギャンブルにおける本当の狂気の表現とはかけ離れていると思う。
また、基本的には「勧善懲悪」的な展開になるのも考えもので、悪に勝たせろとは言わないが、善も悪も「ない」というのが、ギャンブルの核心なのではなかろうか。
まあ、ギャンブルを題材にした少年漫画、という位置ならば、これくらいでいいのかもしれない。
ただしギャンブルは本質的に、「少年」のためのものではない。
「胸が熱くなる」とは、こういう漫画のためにある言葉ではないか。
たったひとつ残念なのは、少年時代に読まなかったことだ。
それでも、熱くなれる。
「HUNTER×HUNTER」と双璧をなす、理想的な少年漫画だと思う。
ネット配信を利用した愉快犯による劇場型の犯行、という極めて現代的な舞台装置だが、核のところにあったのは、時代性などとは無縁の、人間の普遍的な強さや美しさみたいなものだった。
時代に乗っかって始まり、時代に左右されない核心にたどり着く。
その返し技があまりに綺麗に決まりすぎていて、ちょっとムカつくほど感心した。
「この世」と「あの世」の間に設けられたモラトリアムのような世界を舞台に綴られる、様々な人間たちの死に様と生き様。
まず、ひとつひとつのエピソードの完成度が非常に高く、読み手に喚起する感情も実に多様だ。
温かさ、哀しさ、怖さ、悔しさ、切なさ、やりきれなさ。
死の物語でありながら、そこにあるのは、私たちが生きてゆくことにまつわる全てであるように思う。
いかに死んだかということと、いかに生きたかということは、ある意味では、きっと、等価なのだろう。
また、基本的には短く完結する短編集的な作品でありながら、死役所の職員たちの背景を少しずつ描いていくことで、読者の関心を持続させているのもポイントが高い。
特に、シ村の生前に何があったのか、という謎の吸引力は素晴らしく、これほど続きが気になるオムニバスもあまりないだろうと思う。
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笑ゥせぇるすまん