rokaさんの投稿一覧

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311 - 320件目/全512件
  1. 評価:5.000 5.0

    「楳図かずお」というジャンル

    超能力みたいなものを持つ主人公の少女「おろち」は、狂言回し的な役割(アウターゾーンのミザリーとか、ウシジマくんとかのポジション)で、彼女が関わる様々な人々の物語を描いたオムニバス。

    独特の表現力と、キレのあるストーリーで、一話一話の完成度が非常に高い。
    怪しく美しい絵柄もさることながら、オカルトの要素を用いつつ、人間の醜さ、あさましさ、嫉妬や憎悪や執念の恐ろしさ、そして哀しさを炙り出すような手腕には舌を巻く。

    「恐怖漫画」というジャンルを確立した楳図かずおの功績は、今さら語るまでもないけれど、登場人物がただ叫んだり笑ったりするだけの表現が、他のどこにもないホラーになり得てしまうというその圧倒的なオリジナリティーは、もう、「楳図かずお」というひとつのジャンルであると言ってもいいくらい、凄いと思う。

    • 17
  2. 評価:5.000 5.0

    静かで、グロテスクで、ロマンチック

    この漫画のことはだいぶ前から知っていたのだが、読む気になれなかった。
    というか、避けていた。
    理由は単純で、私がオリジナルの「寄生獣」をあまりに好きだからだ。
    大好きな作品について、アニメ化とか映画化とかスピンオフとかでがっかりさせられるのはよくある話で、「寄生獣」というのは、私にとって非常に特別な漫画であり、また「完成品」であって、何がスピンオフだ、と思っていたのだ。
    ましてや、別の作者で。

    しかし、読んでみてよかった。

    主人公はあの広川の息子である。
    最初は、主人公の造形が明らかにオリジナルの絵柄ではなく、違和感があった。
    だが、オリジナルのキャラクターたちの描写は、素人目に見ると、ほぼ完ぺきな「模写」であった。
    そのため、印象としては、「新しいキャラクターが、寄生獣の世界に紛れ込んでいる」という感じに近い。
    その違和感すらも一種の味として感じられたのは、スリリングでサスペンスフルで、それでいて「静か」である、というオリジナルの雰囲気に上手く近づけてあることが大きい。
    構成も非常に巧みで、テンポがいい。

    そして、何といっても、忠実に再現されたオリジナルのキャラクターたちが動いていることに、胸が躍る。
    広川、刑事の平間、田宮良子といった主要キャラクターはもちろん、「こんな奴まで」という名もなきマイナーなところまで、彼らの新しい物語をもう一度見られるなんて、何だか夢のような話だ。

    それはきっと、作者の、夢だったのだろう。
    「寄生獣」が私なんかよりずっと大好きで、「こんな漫画が描けたら」と思いながら漫画家になって、本当に「寄生獣」を描くチャンスを掴んだのだろう。
    それは、「あり得ない」はずのことだった。
    最初に書いたとおり、「寄生獣」は「完成品」だからだ。
    でも、あり得ないようなことだから、夢なのだ。

    静かで、冷たくて、グロテスクでありながら、存在自体があまりにロマンチックな、特別な意味を持つ傑作。

    • 25
  3. 評価:5.000 5.0

    頼むから

    問答無用で一気読みさせる力がある。
    この吸引力は、もう、超一級である。

    基本はいわゆるタイムリープもので、主人公は、無差別の大量殺_人犯として死_刑判決を受けた元警察官の父親の無罪を信じて調査を開始するが、事件が起こる前の時代にタイムスリップして…というストーリー。

    細かく見ていけば、タイム・パラドックス問題みたいな瑕疵は見つかるのかもしれないが、そんなもの、あったとしても、クソくらえである。
    あまりにもスリリングで、サスペンスフルで、リズミカルで、エモーショナルな展開力に、私は無条件降伏するしかなかった。
    参りました。
    すみませんでした。
    と、何も悪いことをしていないのに謝りたくなるくらい、凄かった。

    最新話までノンストップで一息に読んで、完結していないことに絶望した。
    頼むから早く続きを読ませてくれ。

    • 88
  4. 評価:2.000 2.0

    奇異なバランスは錯覚

    典型的な少女漫画、といった風情の可愛らしい絵柄で、血みどろのホラーをやる。
    最初は、その奇異なバランスが独特であるような気もした。

    しかし、そんなのは錯覚であって、ホラー漫画全盛期の頃には、こういう漫画は、それこそ腐るほどあったのだ。

    単純に、ホラー漫画として、私は非常につまらなかった。

    • 2
  5. 評価:5.000 5.0

    マサルの純真、ジャガーの悪意

    「マサルさん」と「ジャガー」の違いは、と考えると、それは「悪意」の所在なのではないかと思う。

    花中島マサルは、いわば「天然」系の主人公だった。
    というか、「マサルさん」の登場人物は、誰も彼も天然みたいなものだった。
    あれは、誰にも悪意のない、誰も傷つかない、実に優しいギャグ漫画だった。
    そういう意味でも、他人を貶して笑いに変えることがまかり通るこの世の中で、「マサルさん」は偉大な作品だったと思う。

    しかし、ジャガーさんは全く違う。
    彼は、悪意に満ちている。
    ジャガーさんどころか、ハマーにも、ロボットのハミィにすら、悪意がある。
    「ジャガー」は、「マサルさん」に比べて、かなりの毒を含む漫画であると思う。

    しかし、その悪意や毒を、読者に全く「毒」とは感じさせない。
    ジャガーさんがどれほど悪意に満ちた悪行をはたらこうとも、あくまでそれは、漫画の中では、優しく、マニアックでありながら妙にポップで、爽やかですらあるギャグへと昇華されている。
    このあたりが、うすた京介の稀有な才能なのではないかと思う。

    • 6
  6. 評価:5.000 5.0

    それは、革命だった

    当時、中学生で少年ジャンプを読んでいた私たちにとって、この漫画が与えた楽しさと衝撃は、尋常ではなかった。
    ジャンプの発売日の翌日、私たちは登校すると、真っ先に今週号の「マサルさん」について話した。
    同時期の連載に「スラムダンク」も「ダイの大冒険」も「るろうに剣心」もあったのに、何よりも「マサルさん」について話した。

    シュール・ギャグ、ナンセンス・ギャグ、呼び方は色々あるのだろうが、「マサルさん」の破壊力はあまりに斬新で、それは、私たちの世界にあった「笑い」のあり方を、すっかり変えてしまったのだった。
    それはほとんど、革命だった、と言ってよい。
    そんな漫画を、他に思いつけない。

    私は、あるいは私たちはもう、十年以上、「マサルさん」を読んでいない。
    しかし、今でもときどき、妻が私に、この漫画の言い回しを真似て語りかけてくることがある。
    革命、というのは、そういうことである。

    • 8
  7. 評価:2.000 2.0

    自分を捨てるほどには

    半端なレベルの整形ではなく、顔に「さようなら」レベルの変化というのは、文字どおり「自分を捨てる」ことに他ならないと思う。
    それを別に肯定も否定もしない。
    ただ、そういう人生の選択もあってよい、とは思う。

    しかしもちろん、そんなこと、生半可な意志や覚悟で出来るものではない。
    ましてやその目的が復讐となれば、魂のかなりの部分を悪魔に売り渡さない限り、無理である。

    そういう暗く激しい力みたいなものは、この漫画の主人公からは全く感じられず、私はさっぱり入り込めなかった。

    • 10
  8. 評価:5.000 5.0

    少年漫画としてのホラー

    嗚呼、もう、懐かしさで心が震える。
    ジャンプの「ホラー枠」といえば、これだった。

    基本的には「世にも奇妙な物語」系のオムニバス・ホラーで、今となっては珍しくも何ともないけれど、当時の少年誌の読者にとっては、漫画としてとても新鮮に感じられた。
    ホラー好きな少年漫画読者としては、もう、たまらなかった。

    当時、より大きな漫画のマーケットで見れば、ホラー漫画自体が流行っていたけれど、いわゆるホラー漫画雑誌に載っていたホラー漫画とは、明確に違った。
    それは、本作が、あくまで「少年漫画」の文脈を守っていたことだ。

    ホラーは、怖がらせたり不安にさせたりするのが本分だから、当然、善人が決まってみんなハッピーになってはいけない。
    何の罪もないキャラクターが、不条理に酷い目に遭うのがホラーなのだ。
    だが、「アウターゾーン」は違う。
    善良な生き方をしていれば、必ず報われる。
    そういう漫画だった。
    それは本来、ホラーとしては失格なのだ。
    しかし、本作は、ホラー漫画である以前に、少年漫画であることを選んだのだと思う。

    本作のアプローチは、ホラー漫画としては甘すぎても、少年漫画としては正しいと思うし、そういう甘ったるいホラーの温かさが、私は好きであった。

    • 15
  9. 評価:4.000 4.0

    覚悟のグロテスク

    昔は結構、夢中で読んだ。
    今となっては、なぜそんなに夢中になれたかピンとこないのが残念だが、多分、当時は、漫画の表現として、それだけ新鮮だったのだろう。
    思えば、漫画としてこういう方向性のグロテスク表現を、ポップでスタイリッシュなレベルまで押し上げたのは、この作品が最初だったのではないかと思う。

    そして、そのグロテスクには、確かな覚悟があった。
    単なるショッキングな「客寄せ」としてグロを描くのではなく、「徹底してグロを描かなければ、表現したい世界を構築できない。そのためには、どんな非難も受けて立つ」という、覚悟である。
    この一点は、素晴らしい。
    それは、本作以降、雨後の筍のごとく乱立された、信念なきグロとは、根本的に違っていた。
    単行本の一巻を読めば、それはわかる。
    だからこそ、この漫画のグロテスクには、比類なき美しさがあった。

    しかし、残念ながら、作品トータルで見ると、面白かったのは序盤だけだった気がする。
    後半はもう、大風呂敷を広げすぎて、何がしたいのかさっぱりわからなくなってしまった。
    おそらく、それは作者サイドも同じだったのではなかろうか。

    • 9
  10. 評価:4.000 4.0

    それはきっと、取り戻せない

    夫婦生活の有無がクローズアップされているけれど、それは、この漫画が提示している問題の一部でしかない気がする。
    これは結局、「ある時期」を過ぎた大人が、どう生きていこうか、あるいは、夫婦として、どう暮らしていこうか、という話だと思った。

    「幸せかもしれないけれど、何か満たされない」という微妙な渇き。
    ないものねだりのようでもあり、でも、笑い飛ばすこともできない、「こんなのじゃないんだ」という違和感。
    そんな、大人の感情の機微みたいなものが、なかなか巧みに表現されていた。
    まあ、わかる。
    私だけではなくて、多分、多くの大人の読者が、まあ、わかる、と感じたのではなかろうか。
    「自分の人生は本当にこれでいいのだろうか」というような不穏で切ない大人の感傷みたいなものは、ある程度の年月を生きてきた大人であれば、程度の差こそあれ、持つものだと思う。

    ただ、主人公の女性に対して決定的に賛成できないのは、「あの頃」あったものを「取り戻したい」という願望である。

    それはきっと、取り戻せない。

    というか、取り戻せないからこそ、価値のあるものだったのだし、全ての価値あるものは、本来、そういうことなのではなかろうか。

    どんなに悲しくても惨めでも、取り戻したりは出来ないから、だからまた、二人で、新しい何かを作ろうね、と。
    あの頃と同じ遊び方はもう出来ないけれど、あの頃は出来なかったような遊び方を、いつまでも一緒に探そうね、と。
    私は、夫婦って、そういうものだと思うのだけれど。

    • 10

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