rokaさんの投稿一覧

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321 - 330件目/全509件
  1. 評価:5.000 5.0

    眩しすぎたせい

    最初は、物語がどこに向かおうとしているのかがまるで見えなくて、漫画の登場人物たちと同様、私自身、民子に振り回されるばかりで、とっちらかったような印象を受けた。
    こりゃ、最後まで読むことはないかな、と。
    しかし、読み進めるうちに、強引なくらいのパワーに引き込まれて、抜け出せなくなった。
    終盤はもう、涙が止まらなかった。
    でも、どういう涙なのか、よくわからなかった。

    私は、どんな人間も、何かしらの地獄を抱えて生きているのではないかと思っている。
    はたから見たら、恵まれたイージーモードの人生を送っているように見える人でも、誰もが敬う人格者でも、はたして同じ人類なのかと疑いたくなるくらい嫌な奴でも、それは変わらないのではないかと思っている。

    民子は、人々が抱えた地獄の一番深いところの闇を、照らすような人物だった。
    刹那に、強烈に。
    そこには善とか悪とかいう観念はなくて、多分、民子自身の意志とか感情とかもあまり問題ではなくて、ただ、自分の命を燃やして何かを照らすような生き方しか出来ない。
    そうすることでしか、自分自身の地獄を照らせない。
    私は、民子にそういう印象を持った。
    そんな人物に、いかなる漫画の中であれ、出会ったことがなかった。

    閃光は、一瞬だ。
    それは、悲しむべきことかもしれない。
    けれど、例えば花火が一時間光りっぱなしなら、あるいは、蛍が十年生きるなら、あれほど私たちの胸を打つだろうか。

    私が流した涙は、あるいは、民子が刹那に放った光が、あまりに眩しすぎたせいなのかもしれなかった。

    • 16
  2. 評価:4.000 4.0

    キャラクターの宝庫

    同時期の連載に「ドラゴンボール」があって「スラムダンク」があって「幽★遊★白書」があって「ジョジョ」まであったんだから、この頃のジャンプは、やはりとんでもなかった。
    リアルタイムで毎週この時期のジャンプを読めて、幸福な少年時代だったと思う。

    今さら語る必要もない超一級のバトル漫画だけれど、とにかく、キャラクターの魅力が凄かった。
    人気の面では主役をあっさり食ってしまった飛影や蔵馬はもちろんのこと、悪役の側も出色の出来で、求道者のような悲しみを背負った戸愚呂弟(決して兄ではない)の造形や、おそらくその唯一の理解者だった幻海、少年誌で描けるギリギリのレベルの闇を抱えた仙水と、歪んだとも言える奇妙な絆で結ばれた樹、ゲスなイケメン死々若丸、完全なネタである美しい魔闘家鈴木などなど、今でも鮮明に思い出せる。

    星をひとつ引いたのは、どんな大人の事情があったにせよ、連載終盤のグダグダ具合に、子ども心を傷つけられたためである。
    仙水編で終わっていてくれたらなあ。

    • 5
  3. 評価:2.000 2.0

    いくらB級ホラーでも

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    オカルトホラーと人間ホラーのミックス版。
    最後まで読んだが、実に虚しい気分になった。

    私は、オカルトホラーならば、通常の意味でのリアリティーはまあ、そんなに要らないと思っている。
    そりゃそうだ、オバケのいる世界なら、ある意味、何でもありだ。
    しかし、オバケと対峙する人間の側の行動原理には、「それなりの」リアリティーはないと、冷めてしまう。
    「何でそこでそんなことするねん」という突っ込みどころは、ある程度まではホラーの「お約束」として看過できるけれど、この漫画のそれはいくら何でも度が過ぎていて、ほとんど苛立ちを感じるレベルである。

    さらに言えば、「通常の意味でのリアリティーは要らない」と前述したが、それは、オカルトならば、の話だ。
    恐怖の正体が人間となれば、話は別だ。
    住人が、大家を含めて、子どもから警官まで軒並み快楽殺_人者のアパート。
    そんなのあるわけねえのである。

    私は、人間の狂気に非常に魅力を感じるし、ある意味リスペクトしているとさえ思うが、こういう種類の、人間の狂気をナメているとしか思えない描写は、いくらB級ホラーといえど、はっきり言ってムカつく。

    • 4
  4. 評価:4.000 4.0

    漫画の表現の可能性

    全く好きにはなれなかったし、正直、面白いとも思わなかった。
    しかし、漫画の表現としては、新しさを感じた。

    ただ絵が下手なだけではなく、例えばピカソのような(褒めすぎだけど)「敢えてやっている感」があり、また、その下手さゆえに、奇妙な勢いに溢れていて、繰り返し、好きにはなれないが、無視できないパワーがあった。

    適切な例えかわからないけれど、昔、漫☆画太郎を初めて読んだときに似た衝撃があった。
    (ちなみに漫☆画太郎は好きです。)

    これだけ色々な漫画があり、表現の方法なんて出尽くしたように感じることもある現代だけれど、きっとまだまだ、漫画の表現には可能性があるのだろうと、私はそんなことを考えていた。

    • 4
  5. 評価:3.000 3.0

    狂気の説得力、性急な展開

    ネタバレ レビューを表示する

    養護施設から裕福な家庭に引き取られた二人の少女をめぐるストーリー。

    ホラー映画のパターン的には、こういう話はだいたい「家にやって来る側」が恐怖の存在であることが多い。
    この漫画で言えば、少女が狂っているとか呪われているとかで、引き取った家の人々を恐怖に陥れる、と。
    しかし、この漫画は逆で、少女たちを引き取った夫婦の側がいかれている。
    その点は新鮮に感じられたが、どうにも気になることが、二つ。

    まず、夫婦の狂気にリアリティーを感じない。
    この夫婦の狂気は、簡単に言うと、養護施設から子どもを引き取り、幸福を味わわせた後で、「商売に失敗してやっぱり育てられない」と突っ放すときの、相手の絶望感がたまらないぜ、というものだ。
    私は、これに冷めてしまった。
    そんな狂気、あるかいな、と思ってしまったからだ。
    もちろん、狂気だから、私のような一般ピーポーの理解を超えているのは当然なのだが、作品の中で狂気を描く場合、「理解できないし、意味不明だし、あり得ないけど、あるかも」と思わせるような、一種のバランス感覚が大切であるように思う。
    本作の狂気は、その「あるかも」からあまりに逸脱しているように感じた。

    もうひとつは、展開がはやすぎること。
    二人の少女が裕福で親切そうな夫婦に引き取られ、二人が互いに仲良くなり、閉ざしていた心を開き、家族としてもいい感じになるが、夫婦が「仕事が破綻したから二人のうちどちらかは施設に戻さないと」と話しているのを聞いてしまい(これは二人の仲を裂くための夫婦の芝居で、実際には二人とも施設に送り返す気でいる)、二人は自分の方が残りたいという思いから仲違いするものの、今度は夫婦の真の目的を知り、再び団結して、何と夫婦を殺そうと決意する。
    ここまで、わずか「6話」である。

    はやくない?

    やたら引っ張れとは言わないが、もう少しじっくり丁寧にやってくれよ、という思いは拭えなかった。

    • 10
  6. 評価:5.000 5.0

    ゲゲゲの鬼太郎と私

    「あのとき、あの漫画に出会わなければ、別の人生になっていたはずだ」というような漫画が、人によっては、あると思う。
    私にとってはそれが「ゲゲゲの鬼太郎」である。
    だから、この漫画については、もう好きだとかファンだとか、そういうレベルではない。

    生まれて初めて本気で好きになったものが「妖怪」だった。
    私は幼少期を「妖怪のいる世界」に生き、大学では民俗学を学び、大人になった今でも、どこかに妖怪の影を探しながら暮らしている。
    そういった全てが、「ゲゲゲの鬼太郎」に端を発している。

    世界を作ったから神が崇められるのであれば、私が崇めるべきは水木しげるである。
    彼が、私の世界のかなりの部分を作ったのだ。
    いくら感謝しても足りない。
    しかし、私からは一度も感謝の言葉を伝えられないまま、水木しげるは逝ってしまった。
    それは少しだけ残念だ。
    しかし、水木しげるのことである。
    きっとあの世で妖怪やら霊魂やらと、楽しくやっているに違いない。
    「ゲゲゲの鬼太郎」を読めば、それを信じることが出来るだろう。

    • 11
  7. 評価:5.000 5.0

    受け継がれる精神

    個人的には、ジョジョは4部が一番好きで、3、5、6部が同点で2位、という感じである。
    正直、この(実質)7部は、単行本を買い続けている間は「どうなんだろう」と思っていた。
    しかし、完結してからあらためて一気読みして、印象が変わった。

    「たとえ命は途絶えても、受け継がれる精神がある」というのは、ジョジョ全編を通じての大きなテーマのひとつだと思う。
    実のところ、それが最も色濃く打ち出されているのは、この7部ではないか、と感じたのだった。
    その意味で、やはり本作も、どこまでもジョジョである。

    もちろん、熱いスタンドバトル、豊富すぎるくらいの魅力的なキャラクターたち(敵味方を問わず)も健在で、このあたりはもう、流石と言う他にない。

    • 6
  8. 評価:5.000 5.0

    アイドルとしての岸辺露伴

    私のアイドル、岸辺露伴を主人公に据えたスピンオフ。

    ジョジョの第4部は、ジャンルとしては「サスペンスホラー」に分類されるそうだが、この短編集は、本編以上にサスペンスホラーのテイストを強く感じさせる。
    荒木飛呂彦の、ホラーに対する思い入れ、そして、岸辺露伴に対する思い入れがシャープに炸裂しており、同時に、シリアスだけどコミカル、というジョジョ(特に4部)のトーンが懐かしくもある。

    ジョジョファン、第4部ファン、岸辺露伴ファン、には必読と言って然るべき良作である。
    その全てに該当する私は、大変楽しく読めた。
    何しろもう、岸辺露伴がそこにいるというだけで、大満足であった。

    • 16
  9. 評価:3.000 3.0

    ホラー描写のインパクト

    2話完結でサクッと読める。

    昔、「不幸の手紙」という文化(?)があった。
    「リング」の貞子ちゃんは「呪いのビデオ」で広がっていった。
    時代は変わり、「呪いのチェーンメール」だの何だのあって、最近はSNSである。
    その時代の主流のメディアに乗っかって恐怖が拡散されてゆく、というタイプのホラーは、これからも手を変え品を変え量産され続けるのだろう。
    別にそれに反対するわけでもないけれど、個人的には、ちょっと食傷気味である。

    ただ、本作、ホラー描写のインパクトはなかなかで、ホラー漫画としての「画」の強みを感じる部分はあった。

    • 2
  10. 評価:5.000 5.0

    自然に、自由に

    まさに心が震える傑作短編集。
    切なく微かな震えから、ぐらんぐらんに揺さぶる激しい震えまで、バリエーションも実に豊かである。

    漫画の、あるいは、物語の、定型。
    どうもがいても、どんなに工夫を凝らしても、いつの間にかそこに収まってしまう、というような、定型。
    私たちはどれほどオリジナルであろうとしても、結局、何かに似てしまう。
    別にそれが悪いことでもない。
    しかし、この漫画は、そういう定型から、あまりに自然に自由だと思った。
    定型を拒否するでも斜に構えるでも奇をてらうでもなく、ただ、自然に、私の知るあらゆる定型から逸脱していた。
    きっとこういうのを本物の才能と呼ぶのだろう。
    素晴らしい作品だった。

    • 15

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