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作品レビュー
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321 - 330件目/全498件

  1. 評価:4.000 4.0

    悲しい欲望

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    世の中にはそれはもう、ありとあらゆる種類の性的嗜好がある。
    私自身は性的には多分ノーマルで、面白くも何ともない人間だが、達成するのが極めて困難な性的嗜好を持って生まれなくて、本当によかったと思いながら生きている。
    だって、例えばだが、相手が未成年じゃないと興奮しないとか、相手を殺さないと満足できないとか、そんな運命のもとに生まれてしまったら、いくら何でも人生がハードモードすぎる。
    あーよかった。

    さて、この漫画の主人公は、自分が殺_されることに対して性的興奮を覚える「オートアサシノフィリア」という嗜好を持っている。
    これはもう、性的嗜好としては最大級に悲劇的なそれであり、ある意味、究極でもある。
    何しろ、その欲求が真に満たされるチャンスは、ただの一度しかないからだ。
    我々は、死んだら終わりですから。

    主人公は、それを達成すべく、私のような一般ピーポーの理解を遥かに超えて、あり得ないレベルの労力を費やし、努力を重ねる。
    それは、単純なものさしではかってしまえば、「異常」の一言で切って捨てられる種類の執着だ。
    だが私は、主人公を軽蔑することも、嫌悪することも、上手く出来なかった。

    誇張抜きで、私は性的嗜好を「運命」だと思っている。
    それは、生活や性格を変えることよりもずっと難しい、というか、ほとんど修正不可能なものだと思う。
    現代の社会生活と相容れない種類の性的欲求は、逃れることも抗うこともかなわない、残酷な足枷だ。
    私は「たまたま」そのような足枷を持たずに生まれ育ったに過ぎない。

    私が主人公に対して感じたのは、違和感や不快感ではなく、自らの欲望に殉じようという潔さと、そんなふうにしか生きられない悲しみだった。

    それだけに、終盤の展開はちょっと残念だった。
    はたから見たらどんなに異様でも不毛でも、主人公を死なせてやりたかった。
    また、女子高生の多重人格という設定は、ちょっとぶっ飛びすぎていて、いささか冷めてしまった。

    • 7
  2. 評価:5.000 5.0

    彼が好きな彼女は、彼女が嫌いな彼女

    私は「ありのままでいい」というメッセージが基本的に嫌いである。
    そんな単純に事が済んでたまるか、と思いながら生きている。
    Mr.Childrenの歌にそんなのがあったけど、コンプレックスだってモチベーションだ。
    けれど、この漫画は、刺さった。

    今のところ(現在12話)、自分のありのままを受け入れられない女の子と、彼女にありのままでいてほしい男の子の、すれ違いの物語として私は読んだ。
    これは、難しい。
    私は、主人公の整形も、故郷からの「脱出」も、理解できるし、支持したい。
    たとえ形式上は逃避に見えたとしても、それは、コンプレックスに押し潰されることなく、人生を切り開くための必死の冒険だったと思うからだ。
    しかし一方で、男の子の気持ちも、痛いくらいにわかってしまった。
    けれど、彼が好きな彼女は、彼女自身が消し去りたい彼女なのだ。
    そんな残酷なことってあるか。
    私にはもう、どうしたらいいのか、さっぱりわからない。
    いったいどうしたら、二人が幸せになれるのか。
    あるいは、そんな道は存在しないのかもしれない。
    いずれにしても、この二人の行く末を、見届けたい。

    また、漫画としては、主人公が夢中になっているプレイボーイの先輩も、どう考えても病んでいる先輩の元恋人も、二人の間に挟まっている印象の悪い醜男も、意外とステレオタイプではなく、みんな何かしらの地獄を抱えていそうというか、なかなか奥行きがありそうで、脇役たちからも目が離せない。

    • 4
  3. 評価:2.000 2.0

    条件とパートナー

    サラッと読めてスカッと出来る、と言いたいところなのだが、イマイチ気分が晴れないのはなぜだろう。

    個人的な趣味の問題だが、私は「条件」でパートナーを「検索」して、「ヒット」した相手を獲得する、というような発想が、どうしても好きになれない。
    きっと、私は古いタイプの人間なのだろう。
    異論・反論、受け入れるが、「条件で相手を選ぶつもりなら、条件に騙される覚悟は持っておきなさいよ」と思っている。
    だから、この漫画の主人公に心から共感も同情も出来なかった。
    別に「ざまあ見ろ」とまでは思わないけれど、主人公の復讐に両手を挙げて喜ぶことも難しく、まあ、一種の「化かし合い」に興じる中で、「お互い様」だろう、というくらいの気持ちにしかならなかった。

    • 1
  4. 評価:5.000 5.0

    ものすごく楽しくて、あり得ないほど美しい

    大人になってからこれほど漫画で笑ったことはなかったし、これほど新刊を待ち望んで日々を過ごしたこともなかった。
    本当に、素晴らしい作品だった。

    まず、「これ」を漫画にした才覚に脱帽する。
    基本的には二人の高校生が河原でだべっているだけという、「こんなの漫画になるのかよ」という題材だが、圧倒的な会話のセンスと、卓越した「間」の表現が、見事に作品を成立させている。
    読んでいるうちに、「こんな漫画ありかよ」という最初の感想は、「これは漫画だから出来たことなのかもしれない」という思いに変わった。
    そういう意味では、およそ漫画らしくない場所から始まって、実に漫画らしい地点に到達した、稀有な作品だと思う。

    私は、毎回げらげら笑いながら、この漫画が終わってしまうことを、どこかで恐れていた。
    青春時代を謳歌する若者が、心のどこかでは、いつかそれが終わることを恐れるみたいに。
    彼らが、「いつまでもこれが続くといいのにな」と思いながら、そして、本当はそれがあり得ないと知りながら、日々を生きるみたいに。

    私は、セトのことが、ウツミのことが、ただただ大好きで、彼らに会えなくなってしまうのが、たまらなく寂しかった。

    けれど、やはり、終わった。
    青春というひとつの時代にも、いつか終わりが来るように。
    ただ、その終わり方というのは、私のあらゆる想像を超えて、それまでこの漫画が積み上げてきたものをある意味で壮大に裏切りながら、これ以外ではきっと駄目だったんだ、と感じさせるような、ものすごく斬新で、あり得ないほど鮮烈なものだった。
    私は、これほど美しい漫画の終わらせ方を、ほとんど知らない。

    私の青春は遥か昔に終わり、この漫画もやはり終わり、けれど、ふと懐かしくなってページをめくれば、漫画の中で、セトとウツミは、いつまでも青春なのだった。
    だから、漫画というのは素晴らしくて、でも、そんなの、ちょっと、ずるいと思った。

    • 30
  5. 評価:5.000 5.0

    ホラー漫画への愛情

    1990年代に、空前のホラー漫画ブームがあった。
    その象徴とも言うべき存在が犬木加奈子だった。
    当時発刊されていたホラー雑誌10誌の全ての表紙を犬木加奈子が担当することさえあった、と言えば、その凄さが伝わるだろうか。
    私は、そんな時代に、従姉の家でホラー漫画雑誌を読んで育った、犬木加奈子チルドレンであった。
    しかし、時は流れ、全てのブームと同じようにホラー漫画ブームも終わり、ついに、ホラー漫画雑誌そのものが日本に存在しなくなった。
    私が、あるいは私たちが、あれほど夢中になって震えたホラー漫画の時代は、終わったのだ。

    今の時代に、「こういう漫画」というのは、もう読めないのではないかと思っていた。
    だから、初めて読んだときは、初めてなのに、あまりの懐かしさに心が震えた。

    暗すぎる絵、終始陰鬱なトーン、不意な残酷描写、他の何の漫画でもなく、これはホラー漫画なのですよ、というベタで優しい雰囲気、そして、見方によっては、半分ギャグ。
    何もかもが、「あの頃」のホラー漫画だと思った。
    どこまでもノスタルジックで、徹底的に時代遅れをやりながら、しかも、古臭さを感じさせない。

    失礼な言い方かもしれないが、この作者は、現代における犬木加奈子の後継者ではないか、と思った。
    決して誇張ではなく、現代のホラー漫画界において、希望であるとすら思った。

    この作者には、ホラー漫画への本物の愛情があると、思ったからだ。

    私はもう、恐怖を求めてホラー漫画を読んでなんかいない。
    そういう時代は、ホラー漫画ブームの終焉と同じくらいのタイミングで、終わったのだ。
    二度とは帰れない。
    私がホラー漫画に感じているのは、単なるノスタルジックな感傷に過ぎない。
    純粋に怖がれる心を失ってしまった大人として、かつて私を震え上がらせてくれたものへの淡い憧憬を、惰性で追いかけているに過ぎない。
    でも、いくぶん肯定的に言わせてもらえば、私はずっと、ホラー漫画に対する愛着を、あるいは愛情を、捨てきれずにいるのだと思う。

    だから私は、この漫画を永遠に支持する。

    • 17
  6. 評価:4.000 4.0

    続・原作への愛情

    「鉄鼠の檻」のレビューにも書いたが、この漫画家の、京極堂シリーズに対する思い入れの強さと、作品に対する理解と、そして愛情は、半端でない。
    そこは、本当に凄いと思う。

    ただ、本作、「鉄鼠」に比べると、ちょっと漫画的な誇張というか、胡散臭さみたいなものを感じてしまった。
    星をひとつ引いたのは、それゆえである。

    ただまあ、その欠点は正直、京極夏彦の原作段階での失態なのかもしれないが。

    • 4
  7. 評価:2.000 2.0

    ホラーに向かない

    非常勤の教師が、周りから疎まれている女子生徒の相談に乗ったら、その子がとんでもない地雷だった、という話。

    主人公の教師は、本気で生徒を救おうとしたわけではなく、彼女の問題を解決できれば本採用の可能性がある、という打算から行動しており、そのあたりのリアリティーは買えた。
    また、主人公が理想に燃える教育者ではないゆえに、彼が酷い目に遭わされても、読者としてはあまり心が痛まない。
    その点も、気軽に読める、という意味ではよかった。

    ただ、こういう言い方は本当に申し訳ないのだが、ホラーとしては、絵が致命的ではないかと思う。
    ホラー小説、ホラー映画、ホラー漫画、もちろん、それぞれによさがあるが、ホラー漫画の強みというのは、やはり「絵」がもたらす一撃の破壊力ではなかろうか。
    (その点、押切蓮介なんかは、基本は軽い印象の絵なのに、本当に凄いと思う。)
    この漫画には、ホラーとしての強さを感じさせる絵が、全くない。
    というか、この絵柄で、それはちょっと無理だと思う。
    この作者は、「恨まれ屋」という別の漫画でも、絵柄が「恨み」というドロドロしたテーマに合っていない、と感じたが、今回もまた然りだった。

    絵の上手い、下手、以前の問題として、合っていない、というのは、私はどうしても受け入れられない。
    ホラー漫画は、特に、である。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    現代版・乱歩

    江戸川乱歩という作家は、確かに少年少女向けの探偵小説を書いたし、私も子どもの頃、それで乱歩を知った。
    だが、本質的には、非常に倒錯的で妖艶で淫靡な、「少年少女お断り」的な作品こそが、乱歩の真骨頂だったのだろうと思う。
    そういう乱歩の作品の空気感を、最も強烈に具現化したのは、別の漫画だが、「パノラマ島綺譚」ではないかと思う。

    「パノラマ島綺譚」が、乱歩の作品をそのまま漫画に「再現」したものだとすれば、この「孤島の鬼」は、乱歩の作品を現代的な漫画の文脈の中で「再構築」したものだ、という印象を受けた。

    そのどちらが優れているのかは私にはわからないし、そこに優劣はないのかもしれない。
    ただ、個人的な好みの問題としては、「パノラマ島綺譚」に軍配を上げたくなった。

    • 10
  9. 評価:4.000 4.0

    可愛くて不穏

    少女漫画をほとんど読まない、心の汚れた私は、少女漫画のキャラクターに対しては「いや、そんな奴おらんがな」という無粋な感想を抱きがちで、この漫画の主人公の女の子に対しても、それは同様だったのだけれど、漫画のキャラクターとしては非常に丁寧に描き込まれている気がして、比較的すっと受け入れることが出来た。

    作品としては結構異色で、微笑ましい可愛さの中に、不意に、ミステリ的というか、サスペンス的というか、何とも不穏な空気が漂い始める。
    この奇妙なアンバランスがなかなか魅力的で、不穏が大好きな心の汚れた私は、この先その不穏がどう炸裂するのか、楽しみである。

    • 3
  10. 評価:4.000 4.0

    死者を抱えて

    子どもの頃、従姉の家に大量にあった、今はなきホラー漫画雑誌で読んだ。
    当時、私は何となく、この漫画が苦手だった。
    この漫画の持つ、何となくもの悲しい空気が、ホラーとは別の意味合いで、怖かったのだと思う。

    大人になって読み返してみて、この漫画で描かれている悲しみというのは、死者を抱えて生きることの悲しみではないか、と思った。
    そして、その悲しみは、この漫画の主人公のように、霊を見ることの出来る人間だけが背負う悲しみではない。
    私たちの誰しもが、いずれは、死者を抱えて生きるしかないからだ。
    そういう意味では、特殊な能力を持つ人間を主人公にしながら、とても普遍的なことを描いた漫画である、と言えるかもしれない。

    幼い私には、いつかは自分も死者を抱えて生きてゆかなくてはならないのだ、という真実は、いささか重すぎたのかもしれない。

    • 6
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