rokaさんの投稿一覧

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301 - 310件目/全512件
  1. 評価:4.000 4.0

    文学へのリスペクト

    江戸川乱歩や夢野久作はともかく、太宰治や谷崎潤一郎がミステリを書いていたのを私は知らなかったので、そういう意味では新鮮に読めた。
    「あなたの知らない文豪の一面」を紹介する、というコンセプトは、きちんと成立していたと思う。

    漫画の表現も、原作の空気を壊さない中でコンパクトにまとまっていて、好感を持った。

    そして、この作者は、原作の文芸作品に対して、また、作家に対して、確かな愛着とリスペクトを持っているとも感じた。
    それがなぜ、「文豪ストレイドッグス」で「ああいう方向」に行ってしまったのか、それを考えると、ちょっと残念である。

    • 3
  2. 評価:4.000 4.0

    優しすぎる寓話

    絵柄はヒトを選ぶだろうし、わたしは決して好みではないのだけれど、童話のような物語の雰囲気と世界観にはマッチしている。
    上手い・下手はともかく、絵柄が漫画に「合う・合わない」はとても大切なことだと思うので、そういう意味では、いいと思った。

    絵も、筋立ても、シンプルだけれど、描かれているものはなかなか奥深い。
    それは、ちょっと雑に言うと、善人も悪人も、懸命に生きているんだ、ということなのではないかと思った。

    本作は、寓話的な印象の漫画だ。
    しかし、実のところ、大体の寓話よりも遥かに優しい。
    昔話だって何だって、多くの場合、問答無用の「悪者」が出てくる。
    それは、略奪を繰り返す鬼ヶ島の鬼だったり、カニを騙した猿だったり、雀の舌を切る老婆だったり、豚を狙う狼だったり、シンデレラを苛む継母だったりするのだが、彼らはあくまで「悪者」であって、物語の中で、ある意味都合よく、やっつけられたり、不幸になったりする。
    私たちは、それを「当然」として読む。
    でも、本当にそうだろうか、と。
    鬼には鬼の、狼には狼の人生があって、彼らもまた、必死に生きようとしているのではないか、と。
    そんな、漫画だと思った。

    それは、作品として甘すぎる、という見方もあるだろうし、私みたいに汚れた人間には、やはり、「綺麗すぎる」と映った。
    しかし、誰一人として単純な「悪者」にはしないぞ、ただ悪いだけの悪者なんか、この世にいやしないんだ、というこの漫画の志みたいなものは、とても美しいと思った。

    • 289
  3. 評価:2.000 2.0

    紹介は芸じゃない

    申し訳ないが、私はこの芸人を面白いと思ったことは一度もない。
    裁判の傍聴は興味深いかもしれないが、この芸人がやっていることは結局のところ「紹介」に過ぎず、「紹介」は「芸」ではない、と思うからだ。

    漫画も全く同じで、もともと芸になっていないものをそのまま焼き直しているに過ぎず、それこそ、芸がない、としか言いようがない。

    • 4
  4. 評価:2.000 2.0

    語りの醜さ

    職場や恋愛なんかでよくある「ムカッと」を「スカッと」撃退する、という話であるはずなのだが、あまりスカッと出来なかった。
    どちらかというと、モヤッとした。

    その理由は明確で、この漫画の構成にある。
    簡単に言うと、主人公たちが人の悪口を言い合って盛り上がるのを眺める、という漫画だ。
    単なる愚痴、というよりは、他人の醜さを楽しんでいる、といった調子で。
    私は、これがどうにも気持ち悪かった。
    いや、あなたたちもだいぶ嫌な奴じゃないですか、としか思えなかった。
    普通にエピソードが綴られるだけの展開だったら、印象は違っていただろうと思う。

    自分たちはある種の正しさの中に身を置きながら、嬉々として人の醜さを語る人々もまた、醜い。
    そんな皮肉を狙って描いた作品であるならば、なかなか大したものだが、まあ、違うだろうしなあ。

    • 16
  5. 評価:5.000 5.0

    発明としてのパロディ、完璧なカオス

    芥川、漱石、鴎外、太宰など(トルストイやカフカといった海外の作品もある)の著名な文学作品を、ごく短い漫画にまとめた形式の作品。

    もちろん、長編小説(あるいは短編でも)を10ページ程度の漫画に収めることにそもそも無理があるので、一種のパロディとして読むしかないのだが、その目のつけどころというか、漫画としての新しさには感心した。
    これはもう、ひとつの発明だと思う。

    読んだことのある作品については、「確かにこんな話だったな」と懐かしく思い出したり、「そうまとめてきたか」とちょっとした驚きがあったり。
    また、未読の作品については、何となくわかった気になる(本当はわかるわけないんだけど)という、妙な楽しさがあった。

    そして、何が凄いって、絵柄である。
    要するに水木しげるの高レベルな模写なのだが、登場人物だけではなく、背景や描き文字(ジョジョでいうと「ゴゴゴゴ…」みたいなアレ)まで寄せてくる徹底ぶりには度肝を抜かれた。
    私は水木しげるの大ファンなので、もう永遠に読めなくなってしまった彼の新作を読んでいるようで、何やら得をした気分になった次第である。

    クラシックな文学作品の要約されたパロディを、よりによって水木しげるの絵柄で読むというのは、一瞬、自分の居場所がわからなくなるような、ほとんど完璧なカオス体験であり、私は大満足であった。

    • 12
  6. 評価:5.000 5.0

    叙情のミステリ、物語の物語

    文学少女、というか文学オタクの少女と、ある事件をきっかけに筆を折った小説家の探偵を主人公にしたミステリ。

    コナン君や金田一少年のような「謎解き」に主眼を置いた漫画ではなく、そういう意味では「本格」ミステリでは決してない。
    むしろ、事件がなぜ起きたのか、その背景には人々のどのような情念や執着があったのか、という部分が焦点であり、ミステリと呼ぶには、随分と叙情的な作品である。
    これは決して非難ではなく、こういうミステリ漫画もあり、というか、こういうミステリ漫画がもっとあってほしい、と感じた。
    ミステリのトリック的な部分にはあまり感心しなかったが、事件に秘められた人々の想いには、何度もハッとさせられた。

    もうひとつ、本作は、「本(というか、フィクション)を読むとはどういうことなのか」を紐解いてゆく物語でもある。
    フィクションというのはもちろん、「嘘」の話だ。
    人は、嘘を嘘と知りながら、なぜフィクションなんてものを必要とするのか。
    私の好きな小説の中に、こんな文句がある。
    「ある種の真実は、嘘によってしか語れないのだ」。
    この漫画は、そんなふうに答えを明示しているわけではないけれど、「物語とは」というテーマは、文学少女と小説家を主人公とする本作のストーリーと密接にリンクしており、なかなか興味深かった。

    この漫画の登場人物たちは皆、ある意味で、物語によって傷つけられ、損なわれ、そしてまた、物語によって救われてゆく。
    それは、自らの物語を生きる私たちの姿そのもののようで、感動的であった。

    この漫画が何の物語なのかと問われれば、やはりそれは「物語の物語」ということになると思うし、漫画として「物語を生きること」というテーマに果敢に挑んだその勇気は、称賛に値すると私は思う。

    • 10
  7. 評価:5.000 5.0

    因習と、運命と、愛と

    「りんごの村」に婿入りした主人公が村の禁忌を知らずに破ってしまったことで、妻が生け贄(的な何か)にされることになり…というストーリー。

    閉鎖的な村の伝承と因習を紐解いてゆく展開はちょっと横溝正史的というか、ある種のミステリーであり、民俗学をバックグラウンドに据えた舞台装置は、なかなか魅力的であった。

    だが、そのミステリーの「着地点」は、犯人がどうとかトリックがどうとか、そういうことにはなり得ない。
    何しろ相手は超自然であって、神様みたいなものだから、「解決」なんてあるはずがない。
    どうしたってミステリーがファンタジーの文脈へと回収されてゆくわけで、そのあたりの落としどころをどう定めるかという部分には結構、注目していたのだけれど、これはもう、見事という他なかった。

    そして、忘れちゃいけない、本作はラブストーリーなのだった。
    ミステリアスで、ファンタジックで、でも何より、ラブストーリーなのだった。
    共同体の中で揉み消され、「なかったこと」として忘れ去られていった愛は、逆らいようのない運命に踏み潰され、吹き散らされていった愛は、昔も今も(それこそ決して「物語」にはならない次元で)掃いて捨てるほどあったのだろう。
    しかし、因習にも運命にも命をかけて抗って、文字通り全てを失う覚悟で守ろうとした、優しくて穏やかだけれど、苛烈で壮絶なその愛の発露に、私は泣いた。

    • 4
  8. 評価:5.000 5.0

    怪談の節度

    「山」にまつわる怪談の短編集。

    この作者はホラー描写にとても安定感があり、変な言い方になるが(ホラーなのに)、安心して読める。

    怪談として、非常にセンスがいいと思った。
    全ての話において、「わけのわからない部分」を、慎重に残している。
    そうなのだ。
    いくら話として、あるいは画として、怖くても、正体とか因果関係がスマートに説明されてしまったら、ホラーは、弱くなる。
    わけがわからないことほど恐ろしいからだ。
    かといって、あまりにわけがわからなすぎても、読者はついてこない。
    そのあたりがバランスだし、センスなのだと思う。

    「わかるのは、ここまで」。
    本作はその抑制されたバランス感覚が素晴らしく、読む人に、何とも嫌なひっかかりを残す。
    その「嫌なひっかかり」こそがホラーの余韻であるし、怪談としての愛すべき節度であると私は思う。

    • 9
  9. 評価:3.000 3.0

    入り込めず

    警察の扱わない事例を調査する、民間の科捜研の調査員を主人公にしたミステリ漫画。
    例えば痴_漢の冤罪とか、父親の死の真相とか、ストーカー被害とか、調査対象は多岐に渡る。

    民間の科捜研、という設定は新鮮だったし、ちょっとふざけたハードボイルド、という感じで面白そうだったのだが、イマイチ入り込めなかったのはなぜだろう。
    個々の事件の過程にも顛末にも、あまり感情を動かされることがなかった。
    合う、合わない、という言い方を安直にするのも気が引けるが、私は、どうにも駄目だった。

    • 4
  10. 評価:4.000 4.0

    二度の打ち切り

    少年ジャンプ史上、二度の打ち切り、というか、そもそも一度打ち切られて再開した漫画というのは、本作だけらしい。

    一人一人のキャラクターがよく立っていて、学生時代、大好きだった。
    「動」のガウェインと「静」のランスロット、激情の東堂院と執念の黒峰のカップル、謎の王煉、カッコよすぎる無敵のトリスタンなど、今でも鮮明に思い出す。

    後半はもう、小学生がドライバーで450ヤードかっ飛ばすとか、中学生が70ヤードをワンパットとか、120ヤード以内ならほぼ確実にチップインとか、バトル漫画のインフレに陥ってしまったが、「本格ゴルフ漫画」ではなく「ゴルフバトル漫画」としては、抜群に面白かった。

    多くの登場人物たちの背景にドラマがあり、作者が、一人一人のキャラクターに愛情を持って描いているのが伝わる漫画だった。
    彼らのバックグラウンドの描き方は、切なくて、でも重すぎない、少年漫画としては理想的なバランスだったと思う。
    特に、トリスタンの過去の物語は出色であり、大会後、ガウェインの飛行機を見送るトリスタンの表情には、心の底から感動した。

    星をひとつ引いたのは、やはり、二度の打ち切り、特に二度目の打ち切りによって放り出された多数の「描かれなかった」部分が、あまりに残念だったためである。

    • 6

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