rokaさんの投稿一覧

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301 - 310件目/全506件
  1. 評価:5.000 5.0

    因習と、運命と、愛と

    「りんごの村」に婿入りした主人公が村の禁忌を知らずに破ってしまったことで、妻が生け贄(的な何か)にされることになり…というストーリー。

    閉鎖的な村の伝承と因習を紐解いてゆく展開はちょっと横溝正史的というか、ある種のミステリーであり、民俗学をバックグラウンドに据えた舞台装置は、なかなか魅力的であった。

    だが、そのミステリーの「着地点」は、犯人がどうとかトリックがどうとか、そういうことにはなり得ない。
    何しろ相手は超自然であって、神様みたいなものだから、「解決」なんてあるはずがない。
    どうしたってミステリーがファンタジーの文脈へと回収されてゆくわけで、そのあたりの落としどころをどう定めるかという部分には結構、注目していたのだけれど、これはもう、見事という他なかった。

    そして、忘れちゃいけない、本作はラブストーリーなのだった。
    ミステリアスで、ファンタジックで、でも何より、ラブストーリーなのだった。
    共同体の中で揉み消され、「なかったこと」として忘れ去られていった愛は、逆らいようのない運命に踏み潰され、吹き散らされていった愛は、昔も今も(それこそ決して「物語」にはならない次元で)掃いて捨てるほどあったのだろう。
    しかし、因習にも運命にも命をかけて抗って、文字通り全てを失う覚悟で守ろうとした、優しくて穏やかだけれど、苛烈で壮絶なその愛の発露に、私は泣いた。

    • 4
  2. 評価:5.000 5.0

    怪談の節度

    「山」にまつわる怪談の短編集。

    この作者はホラー描写にとても安定感があり、変な言い方になるが(ホラーなのに)、安心して読める。

    怪談として、非常にセンスがいいと思った。
    全ての話において、「わけのわからない部分」を、慎重に残している。
    そうなのだ。
    いくら話として、あるいは画として、怖くても、正体とか因果関係がスマートに説明されてしまったら、ホラーは、弱くなる。
    わけがわからないことほど恐ろしいからだ。
    かといって、あまりにわけがわからなすぎても、読者はついてこない。
    そのあたりがバランスだし、センスなのだと思う。

    「わかるのは、ここまで」。
    本作はその抑制されたバランス感覚が素晴らしく、読む人に、何とも嫌なひっかかりを残す。
    その「嫌なひっかかり」こそがホラーの余韻であるし、怪談としての愛すべき節度であると私は思う。

    • 9
  3. 評価:3.000 3.0

    入り込めず

    警察の扱わない事例を調査する、民間の科捜研の調査員を主人公にしたミステリ漫画。
    例えば痴_漢の冤罪とか、父親の死の真相とか、ストーカー被害とか、調査対象は多岐に渡る。

    民間の科捜研、という設定は新鮮だったし、ちょっとふざけたハードボイルド、という感じで面白そうだったのだが、イマイチ入り込めなかったのはなぜだろう。
    個々の事件の過程にも顛末にも、あまり感情を動かされることがなかった。
    合う、合わない、という言い方を安直にするのも気が引けるが、私は、どうにも駄目だった。

    • 4
  4. 評価:4.000 4.0

    二度の打ち切り

    少年ジャンプ史上、二度の打ち切り、というか、そもそも一度打ち切られて再開した漫画というのは、本作だけらしい。

    一人一人のキャラクターがよく立っていて、学生時代、大好きだった。
    「動」のガウェインと「静」のランスロット、激情の東堂院と執念の黒峰のカップル、謎の王煉、カッコよすぎる無敵のトリスタンなど、今でも鮮明に思い出す。

    後半はもう、小学生がドライバーで450ヤードかっ飛ばすとか、中学生が70ヤードをワンパットとか、120ヤード以内ならほぼ確実にチップインとか、バトル漫画のインフレに陥ってしまったが、「本格ゴルフ漫画」ではなく「ゴルフバトル漫画」としては、抜群に面白かった。

    多くの登場人物たちの背景にドラマがあり、作者が、一人一人のキャラクターに愛情を持って描いているのが伝わる漫画だった。
    彼らのバックグラウンドの描き方は、切なくて、でも重すぎない、少年漫画としては理想的なバランスだったと思う。
    特に、トリスタンの過去の物語は出色であり、大会後、ガウェインの飛行機を見送るトリスタンの表情には、心の底から感動した。

    星をひとつ引いたのは、やはり、二度の打ち切り、特に二度目の打ち切りによって放り出された多数の「描かれなかった」部分が、あまりに残念だったためである。

    • 6
  5. 評価:5.000 5.0

    「楳図かずお」というジャンル

    超能力みたいなものを持つ主人公の少女「おろち」は、狂言回し的な役割(アウターゾーンのミザリーとか、ウシジマくんとかのポジション)で、彼女が関わる様々な人々の物語を描いたオムニバス。

    独特の表現力と、キレのあるストーリーで、一話一話の完成度が非常に高い。
    怪しく美しい絵柄もさることながら、オカルトの要素を用いつつ、人間の醜さ、あさましさ、嫉妬や憎悪や執念の恐ろしさ、そして哀しさを炙り出すような手腕には舌を巻く。

    「恐怖漫画」というジャンルを確立した楳図かずおの功績は、今さら語るまでもないけれど、登場人物がただ叫んだり笑ったりするだけの表現が、他のどこにもないホラーになり得てしまうというその圧倒的なオリジナリティーは、もう、「楳図かずお」というひとつのジャンルであると言ってもいいくらい、凄いと思う。

    • 15
  6. 評価:5.000 5.0

    静かで、グロテスクで、ロマンチック

    この漫画のことはだいぶ前から知っていたのだが、読む気になれなかった。
    というか、避けていた。
    理由は単純で、私がオリジナルの「寄生獣」をあまりに好きだからだ。
    大好きな作品について、アニメ化とか映画化とかスピンオフとかでがっかりさせられるのはよくある話で、「寄生獣」というのは、私にとって非常に特別な漫画であり、また「完成品」であって、何がスピンオフだ、と思っていたのだ。
    ましてや、別の作者で。

    しかし、読んでみてよかった。

    主人公はあの広川の息子である。
    最初は、主人公の造形が明らかにオリジナルの絵柄ではなく、違和感があった。
    だが、オリジナルのキャラクターたちの描写は、素人目に見ると、ほぼ完ぺきな「模写」であった。
    そのため、印象としては、「新しいキャラクターが、寄生獣の世界に紛れ込んでいる」という感じに近い。
    その違和感すらも一種の味として感じられたのは、スリリングでサスペンスフルで、それでいて「静か」である、というオリジナルの雰囲気に上手く近づけてあることが大きい。
    構成も非常に巧みで、テンポがいい。

    そして、何といっても、忠実に再現されたオリジナルのキャラクターたちが動いていることに、胸が躍る。
    広川、刑事の平間、田宮良子といった主要キャラクターはもちろん、「こんな奴まで」という名もなきマイナーなところまで、彼らの新しい物語をもう一度見られるなんて、何だか夢のような話だ。

    それはきっと、作者の、夢だったのだろう。
    「寄生獣」が私なんかよりずっと大好きで、「こんな漫画が描けたら」と思いながら漫画家になって、本当に「寄生獣」を描くチャンスを掴んだのだろう。
    それは、「あり得ない」はずのことだった。
    最初に書いたとおり、「寄生獣」は「完成品」だからだ。
    でも、あり得ないようなことだから、夢なのだ。

    静かで、冷たくて、グロテスクでありながら、存在自体があまりにロマンチックな、特別な意味を持つ傑作。

    • 25
  7. 評価:5.000 5.0

    頼むから

    問答無用で一気読みさせる力がある。
    この吸引力は、もう、超一級である。

    基本はいわゆるタイムリープもので、主人公は、無差別の大量殺_人犯として死_刑判決を受けた元警察官の父親の無罪を信じて調査を開始するが、事件が起こる前の時代にタイムスリップして…というストーリー。

    細かく見ていけば、タイム・パラドックス問題みたいな瑕疵は見つかるのかもしれないが、そんなもの、あったとしても、クソくらえである。
    あまりにもスリリングで、サスペンスフルで、リズミカルで、エモーショナルな展開力に、私は無条件降伏するしかなかった。
    参りました。
    すみませんでした。
    と、何も悪いことをしていないのに謝りたくなるくらい、凄かった。

    最新話までノンストップで一息に読んで、完結していないことに絶望した。
    頼むから早く続きを読ませてくれ。

    • 86
  8. 評価:2.000 2.0

    奇異なバランスは錯覚

    典型的な少女漫画、といった風情の可愛らしい絵柄で、血みどろのホラーをやる。
    最初は、その奇異なバランスが独特であるような気もした。

    しかし、そんなのは錯覚であって、ホラー漫画全盛期の頃には、こういう漫画は、それこそ腐るほどあったのだ。

    単純に、ホラー漫画として、私は非常につまらなかった。

    • 2
  9. 評価:5.000 5.0

    マサルの純真、ジャガーの悪意

    「マサルさん」と「ジャガー」の違いは、と考えると、それは「悪意」の所在なのではないかと思う。

    花中島マサルは、いわば「天然」系の主人公だった。
    というか、「マサルさん」の登場人物は、誰も彼も天然みたいなものだった。
    あれは、誰にも悪意のない、誰も傷つかない、実に優しいギャグ漫画だった。
    そういう意味でも、他人を貶して笑いに変えることがまかり通るこの世の中で、「マサルさん」は偉大な作品だったと思う。

    しかし、ジャガーさんは全く違う。
    彼は、悪意に満ちている。
    ジャガーさんどころか、ハマーにも、ロボットのハミィにすら、悪意がある。
    「ジャガー」は、「マサルさん」に比べて、かなりの毒を含む漫画であると思う。

    しかし、その悪意や毒を、読者に全く「毒」とは感じさせない。
    ジャガーさんがどれほど悪意に満ちた悪行をはたらこうとも、あくまでそれは、漫画の中では、優しく、マニアックでありながら妙にポップで、爽やかですらあるギャグへと昇華されている。
    このあたりが、うすた京介の稀有な才能なのではないかと思う。

    • 6
  10. 評価:5.000 5.0

    それは、革命だった

    当時、中学生で少年ジャンプを読んでいた私たちにとって、この漫画が与えた楽しさと衝撃は、尋常ではなかった。
    ジャンプの発売日の翌日、私たちは登校すると、真っ先に今週号の「マサルさん」について話した。
    同時期の連載に「スラムダンク」も「ダイの大冒険」も「るろうに剣心」もあったのに、何よりも「マサルさん」について話した。

    シュール・ギャグ、ナンセンス・ギャグ、呼び方は色々あるのだろうが、「マサルさん」の破壊力はあまりに斬新で、それは、私たちの世界にあった「笑い」のあり方を、すっかり変えてしまったのだった。
    それはほとんど、革命だった、と言ってよい。
    そんな漫画を、他に思いつけない。

    私は、あるいは私たちはもう、十年以上、「マサルさん」を読んでいない。
    しかし、今でもときどき、妻が私に、この漫画の言い回しを真似て語りかけてくることがある。
    革命、というのは、そういうことである。

    • 7

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