3.0
首を捻った
以前、この作者の別の漫画を読んだときは、とんでもない力量の持ち主だと感じた。
人物の造形が異様なほどリアルで、そして、怖かった。
それは、上手く言えないが、「怖い人間を描く」というようなことではなく、人間がどれほど恐ろしくなり得るかを、冷徹に見つめる、ということであるように感じた。
私はどこか「そういうもの」を期待して読んでしまったせいで、本作には正直、首を捻った。
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2位 ?
以前、この作者の別の漫画を読んだときは、とんでもない力量の持ち主だと感じた。
人物の造形が異様なほどリアルで、そして、怖かった。
それは、上手く言えないが、「怖い人間を描く」というようなことではなく、人間がどれほど恐ろしくなり得るかを、冷徹に見つめる、ということであるように感じた。
私はどこか「そういうもの」を期待して読んでしまったせいで、本作には正直、首を捻った。
独特で、異色で、それでいて本格的、という見事なホラーだと思った。
表題作はパリッと筋の通ったサスペンスホラー、「ゴンベさん」はどこか温かみのあるホラー。
しかし、私は、何といっても「47C6」が怖かった。
核の部分で、わけがわからなかったからだ。
「47C6」は、物語になっているようで、なっていない。
主人公はある種の「納得」を手にするが、読み手にその納得は届かない。
ホラーって普通は逆だろう、と思う。
主人公はわけのわからないものに翻弄され、恐怖する。
だが、読者である我々は、ホラーを俯瞰の視点で見て、ある部分、納得する。
主人公にはわからないが、読者にはわかる。
普通は、だ。
しかし、「47C6」は、全く逆だ。
主人公だけが、何かを悟り、そこには達観すら見てとれる。
読者だけが、わからない。
だからもう、私はただ、恐怖するしかなかった。
その、作品から拒絶されたかのような読後感は、絶妙に嫌な引っかかりを残し、そして、不思議と魅力的だった。
わけがわからないということは、本当に恐ろしい。
さて、個人的なことで恐縮だが、本日、初めてレビュワーランキングで1位になった。
とても嬉しかったので、このレビューは、その記念を兼ねる。
この漫画のレビューは誰も読んでいないかもしれないが、票を入れてくれた方々に感謝する。
別に、何を成し遂げたわけでもないけれど、今日もそこに素晴らしい漫画があって、嗚呼、何ていい日だろう。
「スタンド使いが麻雀で対決する漫画」と言えば伝わりやすいかと思う。
危険牌がわかる、ドラが集まってくる、役満を容易に完成させる、などの特殊能力者たちによる麻雀バトル漫画。
麻雀漫画としては異色であり、また、完全に破綻しているが、「これはこれで面白い」と感じさせるのは、漫画としての力量だと思う。
ただ、ピークは「山城麻雀編」までで、それ以降の失速というか、バトル漫画の典型であるインフレパターンに入ってしまってからは、正直、ついていけなかった。
あの北九州の事件をモチーフにした漫画。
怖いし、残酷だ。
しかし、その怖さも残酷さも、全ては現実世界で起きた実際の事件によるものだ。
そこを出発点にして、この漫画が何かを「作り上げた」のかとなると、正直、疑問符がつく。
「現実に負けている」。
それが、私がこの漫画に対して抱いた率直な感想だった。
もちろん、別に漫画は、現実と「勝負」するものではない。
しかし、現実の悲劇をフィクションがただ「なぞるだけ」に終始するならば、それはフィクションの力を放棄することにしかならないのではないか、と私は思う。
江戸川乱歩や夢野久作はともかく、太宰治や谷崎潤一郎がミステリを書いていたのを私は知らなかったので、そういう意味では新鮮に読めた。
「あなたの知らない文豪の一面」を紹介する、というコンセプトは、きちんと成立していたと思う。
漫画の表現も、原作の空気を壊さない中でコンパクトにまとまっていて、好感を持った。
そして、この作者は、原作の文芸作品に対して、また、作家に対して、確かな愛着とリスペクトを持っているとも感じた。
それがなぜ、「文豪ストレイドッグス」で「ああいう方向」に行ってしまったのか、それを考えると、ちょっと残念である。
絵柄はヒトを選ぶだろうし、わたしは決して好みではないのだけれど、童話のような物語の雰囲気と世界観にはマッチしている。
上手い・下手はともかく、絵柄が漫画に「合う・合わない」はとても大切なことだと思うので、そういう意味では、いいと思った。
絵も、筋立ても、シンプルだけれど、描かれているものはなかなか奥深い。
それは、ちょっと雑に言うと、善人も悪人も、懸命に生きているんだ、ということなのではないかと思った。
本作は、寓話的な印象の漫画だ。
しかし、実のところ、大体の寓話よりも遥かに優しい。
昔話だって何だって、多くの場合、問答無用の「悪者」が出てくる。
それは、略奪を繰り返す鬼ヶ島の鬼だったり、カニを騙した猿だったり、雀の舌を切る老婆だったり、豚を狙う狼だったり、シンデレラを苛む継母だったりするのだが、彼らはあくまで「悪者」であって、物語の中で、ある意味都合よく、やっつけられたり、不幸になったりする。
私たちは、それを「当然」として読む。
でも、本当にそうだろうか、と。
鬼には鬼の、狼には狼の人生があって、彼らもまた、必死に生きようとしているのではないか、と。
そんな、漫画だと思った。
それは、作品として甘すぎる、という見方もあるだろうし、私みたいに汚れた人間には、やはり、「綺麗すぎる」と映った。
しかし、誰一人として単純な「悪者」にはしないぞ、ただ悪いだけの悪者なんか、この世にいやしないんだ、というこの漫画の志みたいなものは、とても美しいと思った。
申し訳ないが、私はこの芸人を面白いと思ったことは一度もない。
裁判の傍聴は興味深いかもしれないが、この芸人がやっていることは結局のところ「紹介」に過ぎず、「紹介」は「芸」ではない、と思うからだ。
漫画も全く同じで、もともと芸になっていないものをそのまま焼き直しているに過ぎず、それこそ、芸がない、としか言いようがない。
職場や恋愛なんかでよくある「ムカッと」を「スカッと」撃退する、という話であるはずなのだが、あまりスカッと出来なかった。
どちらかというと、モヤッとした。
その理由は明確で、この漫画の構成にある。
簡単に言うと、主人公たちが人の悪口を言い合って盛り上がるのを眺める、という漫画だ。
単なる愚痴、というよりは、他人の醜さを楽しんでいる、といった調子で。
私は、これがどうにも気持ち悪かった。
いや、あなたたちもだいぶ嫌な奴じゃないですか、としか思えなかった。
普通にエピソードが綴られるだけの展開だったら、印象は違っていただろうと思う。
自分たちはある種の正しさの中に身を置きながら、嬉々として人の醜さを語る人々もまた、醜い。
そんな皮肉を狙って描いた作品であるならば、なかなか大したものだが、まあ、違うだろうしなあ。
芥川、漱石、鴎外、太宰など(トルストイやカフカといった海外の作品もある)の著名な文学作品を、ごく短い漫画にまとめた形式の作品。
もちろん、長編小説(あるいは短編でも)を10ページ程度の漫画に収めることにそもそも無理があるので、一種のパロディとして読むしかないのだが、その目のつけどころというか、漫画としての新しさには感心した。
これはもう、ひとつの発明だと思う。
読んだことのある作品については、「確かにこんな話だったな」と懐かしく思い出したり、「そうまとめてきたか」とちょっとした驚きがあったり。
また、未読の作品については、何となくわかった気になる(本当はわかるわけないんだけど)という、妙な楽しさがあった。
そして、何が凄いって、絵柄である。
要するに水木しげるの高レベルな模写なのだが、登場人物だけではなく、背景や描き文字(ジョジョでいうと「ゴゴゴゴ…」みたいなアレ)まで寄せてくる徹底ぶりには度肝を抜かれた。
私は水木しげるの大ファンなので、もう永遠に読めなくなってしまった彼の新作を読んでいるようで、何やら得をした気分になった次第である。
クラシックな文学作品の要約されたパロディを、よりによって水木しげるの絵柄で読むというのは、一瞬、自分の居場所がわからなくなるような、ほとんど完璧なカオス体験であり、私は大満足であった。
文学少女、というか文学オタクの少女と、ある事件をきっかけに筆を折った小説家の探偵を主人公にしたミステリ。
コナン君や金田一少年のような「謎解き」に主眼を置いた漫画ではなく、そういう意味では「本格」ミステリでは決してない。
むしろ、事件がなぜ起きたのか、その背景には人々のどのような情念や執着があったのか、という部分が焦点であり、ミステリと呼ぶには、随分と叙情的な作品である。
これは決して非難ではなく、こういうミステリ漫画もあり、というか、こういうミステリ漫画がもっとあってほしい、と感じた。
ミステリのトリック的な部分にはあまり感心しなかったが、事件に秘められた人々の想いには、何度もハッとさせられた。
もうひとつ、本作は、「本(というか、フィクション)を読むとはどういうことなのか」を紐解いてゆく物語でもある。
フィクションというのはもちろん、「嘘」の話だ。
人は、嘘を嘘と知りながら、なぜフィクションなんてものを必要とするのか。
私の好きな小説の中に、こんな文句がある。
「ある種の真実は、嘘によってしか語れないのだ」。
この漫画は、そんなふうに答えを明示しているわけではないけれど、「物語とは」というテーマは、文学少女と小説家を主人公とする本作のストーリーと密接にリンクしており、なかなか興味深かった。
この漫画の登場人物たちは皆、ある意味で、物語によって傷つけられ、損なわれ、そしてまた、物語によって救われてゆく。
それは、自らの物語を生きる私たちの姿そのもののようで、感動的であった。
この漫画が何の物語なのかと問われれば、やはりそれは「物語の物語」ということになると思うし、漫画として「物語を生きること」というテーマに果敢に挑んだその勇気は、称賛に値すると私は思う。
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