rokaさんの投稿一覧

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291 - 300件目/全512件
  1. 評価:4.000 4.0

    いるはずのない彼ら

    この作者の「幽霊塔」という漫画は、それはもう、夢中で読んだのだが、本作にはどうにも入り込めなかった。

    安定してクオリティは高いし、サイコキラーとの心理戦は実にスリリングで、漫画としての見せ方も抜群に上手いと思う。

    しかし、申し訳ないが、根本の設定に、どうしても冷めてしまった自分がいる。
    「連続殺_人犯から情報を聞き出すために獄中結婚する児童相談所の職員」。
    そんな奴、いるわけねえのである。

    そしてそのサイコキラーは、女性だ。
    ちなみに「殺_人ピエロ」と呼ばれた連続殺_人犯は、アメリカに実在した。
    ジョン・ウェイン・ゲイシーは、普段はパーティーなんかでピエロの格好をして子どもを楽しませていた地元の名士だったが、三十人以上の少年たちを殺めたサイコ野郎だった。
    もちろん、男性である。
    ピエロに扮して次々と男を葬る女性のサイコキラー。
    これまた、いるわけねえのである。

    これがファンタジーの世界ならいい。
    不気味で可愛らしい女性のサイコキラーがいても、魅力的で破天荒な主人公がそのサイコキラーと結婚しても、構わない。
    しかし、本作はあくまで「現実枠」内の物語である。
    そういう種類の漫画において、「いるわけねえ」主人公(しかも二人)というのは、私にとっては致命的であり、そこにどっぷり浸かって夢中になれるほど、私に読者としてのキャパはなかった。

    • 13
  2. 評価:5.000 5.0

    優しく楽しい嘘のミステリ

    人の嘘が「聞こえて」しまう能力を持つ少女が、探偵の助手として活躍するストーリー。

    設定だけ聞くと、「嘘を見抜けるなら事件は秒殺で解決だろ」という反則レベルの特殊能力なのだが、そのあたりはなかなか巧妙に練られていて、変則ミステリとして非常に面白い。

    また、嘘がテーマの作品だけあって、作中で描かれる嘘は実に多様で、単に「暴かれるべき悪」としての嘘ばかりでなく、いくつもの優しい嘘、楽しい嘘が、全編を彩る。

    私は絵に関しては門外漢だが、それでも、本作の細やかな美しさと可愛らしさには感心させられた。

    ミステリとしては「甘め」で、本格推理モノ、というわけでは決してないのだけれど、作品の雰囲気にはマッチしていて、ちょうどいい塩梅である。

    いやはや、実に楽しい、嘘の話であった。

    • 71
  3. 評価:4.000 4.0

    奇妙な中毒性

    昭和の映画や漫画のパロディの寄せ集めで成り立っているような作品。
    だいたい絵柄からして、水木しげるのパロディ、というかハイレベルな「模写」なので、もう、パロディというか、何なのだ、という作品。

    こんな漫画を今どき描いても、元ネタに「わかる!」となる読者は少なそうだし、そういう読者層がターゲットとも思えない。
    しかし、「細かすぎて伝わらないモノマネ」的というか、「別にわかってもらえなくてもいい」というスタンスで描いている気がする。
    そういう意味では、結構とがった漫画である。

    正直、明確に「面白い!」と言える作品ではなかった。
    だが、妙な中毒性があるのも事実で、「大して面白いとも思えないのに気がついたら全て読んでしまった」、そういう意味では、節分の豆のような漫画である。

    私は水木しげるの信奉者なので、この絵柄が現代に存在しているだけで嬉しくなってしまう。
    そんなわけで、私の評価は甘いかもしれない。

    • 4
  4. 評価:4.000 4.0

    筋の通ったギャグ漫画

    ほとんど出オチのような設定勝負の漫画であり、「やったもん勝ち」的なところはあるけれど、その設定を実に巧みに活かしきっている。
    このあたりはもう、センスと言う他にない。

    滅茶苦茶な設定でありながら、そこから紡がれる話は決して滅茶苦茶ではなく、まるで極道そのもののように、一本筋が通っている。
    そういう意味では、パリッとした、実に清々しいギャグ漫画である。

    • 5
  5. 評価:5.000 5.0

    反則か、発明か

    ごく短いエピソードの寄せ集め的な漫画、と書くと短編集かと思われるかもしれないが、違う。
    こんなものは「短編」とすら呼べない。
    ストーリーはないに等しく、誤解を恐れずに言えば、ほとんど漫画の体をなしていない。
    反則ギリギリの作品であり、これを受け入れられない読者はたくさんいると思う。

    だが、怖い。

    この作品は、「瞬間」を捉えることに特化している。
    それによって、ホラー漫画として稀有なリアリティーを獲得することに成功している。

    世の中には色んなホラー漫画がある。
    街にゾンビが溢れたり、心霊スポットで貞子ちゃんみたいなのが出てきたり、排他的な村でレザーフェイスみたいなのに襲われたり、何でもいいのだが、いくら作品が魅力的で、それに没入できたとしても、ふと我に返ると、いい大人であれば、誰もが思ってしまう。
    「でもまあ、こんなこと、現実にあるわけないねんけどな」と。

    だが、この作品は、違う。
    ストーリーを放棄しているがゆえに、「何かわけのわからないものが見えた」という「瞬間」だけを描いているがゆえに、「こんなことなら、あるかも」という実に気味の悪いリアリティーを生んでいる。

    ずるいだろ、そんなの。
    一方では、そう思う。
    「反則」と書いたのはそういう意味だ。

    しかし考えてみれば、タイトルからもう、作者はそれを表明している。
    これは「物語」などではなく、あくまで「種」なのだ、と。

    その種は、漫画の中ではなく、私たちの現実の中で芽を出し、日常のふとした瞬間を侵食する。
    私たちは、夕闇の帰り道に、深夜のベランダに、カーテンの隙間に、この漫画で見た、幽霊かどうかも不確かな、何かわけのわからないものの影を見るだろう。

    その仕掛けはほとんど発明と言って然るべきで、ムカつくほど感心した。

    • 10
  6. 評価:3.000 3.0

    尖ったものが

    いじめられている主人公の高校にミステリアスな転校生がやって来て、主人公を救い出してくれるのだが、どうやらその転校生が尋常ではなくヤバい人だ、という話。

    「サエイズム」という漫画からコメディ要素を排除したような感じで、決してつまらなくはなかったのだけれど、終始「どこかで見た感じ」がつきまとってしまうのはなぜだろう。

    ストーリー展開にも、登場人物の造形にも、一度もハッとするような部分がなかった。
    手堅いと言えばそうなのかもしれないが、何もかもがあまりに類型の域を出ないと、読んでいてがっくりきてしまう。

    読者のワガママだが、何かひとつくらいは、尖ったものが欲しかった。

    • 3
  7. 評価:3.000 3.0

    首を捻った

    以前、この作者の別の漫画を読んだときは、とんでもない力量の持ち主だと感じた。
    人物の造形が異様なほどリアルで、そして、怖かった。

    それは、上手く言えないが、「怖い人間を描く」というようなことではなく、人間がどれほど恐ろしくなり得るかを、冷徹に見つめる、ということであるように感じた。

    私はどこか「そういうもの」を期待して読んでしまったせいで、本作には正直、首を捻った。

    • 2
  8. 評価:5.000 5.0

    見事なホラー/記念

    独特で、異色で、それでいて本格的、という見事なホラーだと思った。

    表題作はパリッと筋の通ったサスペンスホラー、「ゴンベさん」はどこか温かみのあるホラー。
    しかし、私は、何といっても「47C6」が怖かった。

    核の部分で、わけがわからなかったからだ。
    「47C6」は、物語になっているようで、なっていない。
    主人公はある種の「納得」を手にするが、読み手にその納得は届かない。

    ホラーって普通は逆だろう、と思う。
    主人公はわけのわからないものに翻弄され、恐怖する。
    だが、読者である我々は、ホラーを俯瞰の視点で見て、ある部分、納得する。
    主人公にはわからないが、読者にはわかる。
    普通は、だ。
    しかし、「47C6」は、全く逆だ。
    主人公だけが、何かを悟り、そこには達観すら見てとれる。
    読者だけが、わからない。
    だからもう、私はただ、恐怖するしかなかった。
    その、作品から拒絶されたかのような読後感は、絶妙に嫌な引っかかりを残し、そして、不思議と魅力的だった。

    わけがわからないということは、本当に恐ろしい。


    さて、個人的なことで恐縮だが、本日、初めてレビュワーランキングで1位になった。
    とても嬉しかったので、このレビューは、その記念を兼ねる。
    この漫画のレビューは誰も読んでいないかもしれないが、票を入れてくれた方々に感謝する。

    別に、何を成し遂げたわけでもないけれど、今日もそこに素晴らしい漫画があって、嗚呼、何ていい日だろう。

    • 12
  9. 評価:3.000 3.0

    麻雀とスタンド

    「スタンド使いが麻雀で対決する漫画」と言えば伝わりやすいかと思う。
    危険牌がわかる、ドラが集まってくる、役満を容易に完成させる、などの特殊能力者たちによる麻雀バトル漫画。

    麻雀漫画としては異色であり、また、完全に破綻しているが、「これはこれで面白い」と感じさせるのは、漫画としての力量だと思う。

    ただ、ピークは「山城麻雀編」までで、それ以降の失速というか、バトル漫画の典型であるインフレパターンに入ってしまってからは、正直、ついていけなかった。

    • 2
  10. 評価:2.000 2.0

    現実をなぞるだけ

    あの北九州の事件をモチーフにした漫画。

    怖いし、残酷だ。
    しかし、その怖さも残酷さも、全ては現実世界で起きた実際の事件によるものだ。
    そこを出発点にして、この漫画が何かを「作り上げた」のかとなると、正直、疑問符がつく。

    「現実に負けている」。
    それが、私がこの漫画に対して抱いた率直な感想だった。

    もちろん、別に漫画は、現実と「勝負」するものではない。
    しかし、現実の悲劇をフィクションがただ「なぞるだけ」に終始するならば、それはフィクションの力を放棄することにしかならないのではないか、と私は思う。

    • 2

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