4.0
良質な「大人のための」ホラーアンソロジー
「極上」とまで言えるかは微妙だが、良質な「大人のための」ホラーアンソロジーである。
いい意味で、子どもにはわからない、人生の酸いも甘いもというか、ある程度の経験を重ねてきた大人にこそ刺さるタイプの話ばかりである。
ゾッとする、というよりは、切なさが身に染みる、という話が多いのも、大人向けかな、と思う。
各話、粒揃いだが、私は田村由美による話が一番気に入った。
余談になるけれど、「大人のための」とは書いたものの、こういう作品を子どもが読むことを「子どもにはわからないよね」と切って捨てるのも、違うな、と思う。
昔、確かウルトラマンの制作者サイドの誰かが言っていたと思うのだが、子ども向けだといって、「子どもにもわかる」ことだけで作るのは、違うのだ、と。
確かに子どものときには「わからない」のだけれど、それが一種の「引っかかり」として心に残り、大人になったときに、「あれはこういうことだったのか」と花開く、子ども向けの作品には、そういう側面があるべきだ、と。
私はそれに全面的に賛同するし、子どもの頃に読んだホラー漫画の中に、そんな作品が確かにあったよな、とも思う。
そういう意味で、子どもにも読む価値はあるんじゃないかな、と思う次第である。
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こわいはなし 大人のための極上ホラー