rokaさんの投稿一覧

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91 - 100件目/全513件
  1. 評価:4.000 4.0

    ひっくり返すテンプレート

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    いわゆる「モラハラ夫」を扱った漫画が昨今、ちょっと辟易するほど多い。
    そういう作品を読んでいて、往々にして感じるのは、何か薄っぺらいなあ、ということだ。
    「またこのテンプレだよ」としょっちゅう思う。
    夫なり妻なりを漫画の悪役にしてつるし上げるのは好きにしたらいいけど、夫婦ってそんなに単純なものなのだろうか、と。

    本作はそういうテンプレートを綺麗にひっくり返した良作である。

    展開として、サプライズはあり得るけれど、それは「モラハラ夫と見せかけて、実は…」というサスペンス的な文脈での「どんでん返し」ではない。
    この漫画の描いたひとつの本質というのは多分、「家族の本当の姿なんて、そんなに単純じゃないのよ」ということなのではなかろうか。
    少なくとも、はたから傍観しているだけの他人が、その是非や幸・不幸を判断できるようなものじゃないのよ、と。
    その家族観みたいなものは、実に好感を持てるものだった。

    もうひとつは、「毒親」問題である。
    これも最近、本当に漫画で描かれることが多い。
    で、主人公が親をやり込める(ないしもっと苛烈な復讐をする)までがテンプレである。
    この点も、本作は、違う。
    主人公は、「何となく」母親を許す。
    このあたり、賛否あるのはわかる。
    特に、個人的な経験として親との軋轢がある読者は、「そんなに簡単にいくか」と感じるのも理解できる。
    何を何となく許してんねん、と。
    でも、私はこの「何となく」が好きだった。
    人が人を許すのに、ましてや子が親を許すのに、それほど確固たる根拠が必要なのだろうか。
    親を許せない人がいてもよい。
    親を切り捨てる人がいてもよい。
    親に縛られて人生を送る必要などない。
    私は心の底からそう思う。
    しかし、許せなかったつもりでも、何となく、どさくさのうちに許し合ってしまうようなことが出来るも、また、人間の美徳ではなかろうか。

    そういうわけで、現代漫画の二つのテンプレートを極めて自然にひっくり返した、なかなか見事な作品だと思う。

    • 335
  2. 評価:4.000 4.0

    良質な「大人のための」ホラーアンソロジー

    「極上」とまで言えるかは微妙だが、良質な「大人のための」ホラーアンソロジーである。

    いい意味で、子どもにはわからない、人生の酸いも甘いもというか、ある程度の経験を重ねてきた大人にこそ刺さるタイプの話ばかりである。
    ゾッとする、というよりは、切なさが身に染みる、という話が多いのも、大人向けかな、と思う。

    各話、粒揃いだが、私は田村由美による話が一番気に入った。

    余談になるけれど、「大人のための」とは書いたものの、こういう作品を子どもが読むことを「子どもにはわからないよね」と切って捨てるのも、違うな、と思う。
    昔、確かウルトラマンの制作者サイドの誰かが言っていたと思うのだが、子ども向けだといって、「子どもにもわかる」ことだけで作るのは、違うのだ、と。
    確かに子どものときには「わからない」のだけれど、それが一種の「引っかかり」として心に残り、大人になったときに、「あれはこういうことだったのか」と花開く、子ども向けの作品には、そういう側面があるべきだ、と。
    私はそれに全面的に賛同するし、子どもの頃に読んだホラー漫画の中に、そんな作品が確かにあったよな、とも思う。
    そういう意味で、子どもにも読む価値はあるんじゃないかな、と思う次第である。

    • 29
  3. 評価:3.000 3.0

    いるわけねえ彼ら

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    殺_人者として育て上げられた主人公が、死後の世界で、自分を殺した殺_人の師匠みたいな人間と親子関係になり、新たな「人生」を歩み始めるのだが、という話。

    この死後の世界、という設定が独特で、簡単に言うと、生前に「こうありたい」と望んでいた人生が叶えられているパラレルワールド、みたいな感じで、かつ、生前の記憶を保持している人間もいる、というもの。
    この設定自体は、なかなか面白いと思った。

    ただ、どうにも引っかかるのは、「殺_人者として育てられた少年少女」も、「少年少女を殺_人者として育て上げる男」も、とにかく「普通すぎる」ということだ。
    そんな人間たちが「普通」のはずはないだろう。
    じゃあどんなふうに描けばいいのか、私にはわからない。
    なぜなら、そんな奴らいるわけねえからである。
    ただ、この「いるわけねえ」人間にリアリティーを感じさせるのが、フィクションの本分というものではなかろうか。

    • 4
  4. 評価:2.000 2.0

    浅はかな生と死

    自殺を禁止する法律、通称「抑死法」が成立した社会で、自殺志願者(死願者)を止める「抑死者」の活躍を描く話。

    申し訳ないが、全てが薄っぺらい。
    軽々に論じられるはずのないテーマを、あまりに軽率に描いてしまっている、というのが率直な感想である。

    だいたい、「自殺を禁止する法律」という設定からして緩すぎる。
    「禁止」って、それを破ったときにどういう罰則があるのか、例えば死んだ人間の財産が没収されるとか、遺族にペナルティーが科せられるとか、そういう描写は一切ない。
    単に「自殺はいけませんよ」というだけなら、それは単なるスローガン(まあスローガンですらないが)であって、法律ではない。
    そういうことを含めて、何かと浅はかさが露呈されており、まるで入り込めなかった。

    • 4
  5. 評価:4.000 4.0

    豊富なオマージュ

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    ざっくり言うと、ホラー映画の巨匠を志す主人公が、有名ホラー映画のキャラクターたちとバトルする漫画。

    私はまあまあのホラー映画ファンなのだが、ちょっとホラー映画に詳しい読者なら、元ネタはまず間違いなく知っているレベルのラインナップである。
    著作権の都合上、作中でタイトルなどは変えてあるが、取り上げられているホラー映画は、「IT」「キャンディマン」「エルム街の悪夢」「チャイルドプレイ」などなど。
    漫画の随所に元ネタへのオマージュがあり、ホラー映画ファンとしては、普通に読んでいるだけでも楽しい。

    当然、作者自身も相当なホラー映画マニアであることが推測されるが、作品の方向性としてはそこまでマニアックに走ることはなく、このあたりは、よくも悪くもある程度、一般読者にも通用し得る内容になっている。

    主人公は少年漫画の典型的なヒーローでは全くなく、いわゆる芸術家気質というか、「地獄変」的というか、善も悪もなく、あくまで映画を撮ることが最優先、というぶれない信念のもとに行動し続けるズレた男なのだが、「俺のカメラにガキの死ぬシーンはいらねえ」と子どもを命がけで守るなど、ちゃんとヒーローをやっていて、なかなか巧みに作られているとも思った。

    ただ、バトル漫画という側面で見ると、バトルそのものの工夫やインパクトはちょっと乏しいような気がして、そういう部分の物足りなさは感じた。

    • 3
  6. 評価:3.000 3.0

    寄生獣の影響

    母星を追われた異星人が、地球人に化けて「同化」を目論む、という話。

    良くも悪くも、思いっきり「寄生獣」の影響を受けている。
    ストーリー然り、絵柄も然り。

    ベースは完全に「寄生獣」なのだが、序盤から異星人が人間の子どもに愛着を感じるヒューマン系のアプローチと、ちょっとコメディー的な路線を含むのが、まあ一応、アイデンティティーではあるだろうか。
    実際、読んでいるときの感じとしては、「パクリ」という悪印象はそれほど受けなかった。

    ただし、どういったって「寄生獣」と比較するなというのは無理な話だし、そうすると、修行不足かな、という感は否めない。

    • 3
  7. 評価:4.000 4.0

    コーエン兄弟を彷彿とさせる

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    現状、読めるのが一巻分だけで、評価は保留のところもあるのだが、なかなか面白かった。

    「レンタル親友」というビジネスに従事している役者志望の主人公は、常連客が計画した誘_拐事件の片棒を担がされることになるのだが、そこからの主人公の立ち回りが結構よく練られていて、良質なサスペンス映画のような趣がある。

    何と言っても、主人公の人間らしさがいい。
    こういう普通の人間のリアリティーというのは、漫画ではなかなか出せない。
    強い信念も深い欲望も特にないけれど、何となく面倒臭いことに巻き込まれたくないとか、何となく人質が気の毒だとか、そういう主人公の内心というのは直接的に描かれているわけではないものの(そこがいい)、その「何となく」のリアリティー、人間は実際こんなもんだろう、というリアリティーに説得力があり、しかも、きちんとサスペンスの返し技も決まっている。

    主人公の立ち回りに、私は、大好きなコーエン兄弟の映画を思い出した。
    ちなみに誘_拐モノというのも、コーエン兄弟が好んで用いた題材である。
    作者、コーエン兄弟が好きなんじゃないかな。
    これ、当たっていたら嬉しい。

    • 6
  8. 評価:2.000 2.0

    見世物の域を出ない

    コンビニでよく売っているような、有象無象の「見世物」的な犯罪実録漫画のひとつ。
    こういう漫画は大体においてそうなのだが、圧倒的にリサーチが足りない。
    ネットで5分で拾えるレベルの情報しか得ようとしていない。
    私はそういう姿勢が嫌いであるし、申し訳ないが、わざわざ読むようなものでもなかった。

    話のラストで不意な注意喚起、「あなたのすぐ傍に犯罪者が…」みたいな空気を出しているが、とってつけたもいいところで、何の迫力もない。

    ただまあ、これより少し前に読んだ別の犯罪実録漫画があまりに酷かったせいで、読んでいてある種の安心感すら覚えた。
    全ては相対性の中に存在しており、ときどきアワやヒエを食べることで白米のありがたさを思い出すようにして、私は生きている。

    • 4
  9. 評価:3.000 3.0

    実話に基づくはずなのに

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    永山則夫の事件がモデルなのだろう、というか絶対にそうなのだが、なぜそれを明言しないのだろう。
    犯人の出自から家庭環境から事件に至る経緯からその後の執筆活動まで、明白に事実に基づいて描いているのに、なぜ永山則夫の名前を変えるのだろう。
    本質的なことではないのかもしれないが、どうにもそこは引っかかった。
    ここまで描くなら、実名でやるべきだと私は思った。

    多くの犯罪実録漫画に見られるような、安っぽい「見世物」的な方向性ではなく、犯行に至るまでの道筋を丁寧に追いかけようとしている点は好感が持てる。
    ただ、始めから着地点は「母親の愛情不足」というところに定められてしまっている感があり、確かにまあ、それが事実なのかもしれないけれど、特にラストは、描き方としてちょっと安直すぎる気はした。

    • 3
  10. 評価:1.000 1.0

    知りたくなかった!貴様の存在をな!!

    誤解を恐れずに言えば、私は猟奇事件が大好きである。
    とにかく異常なほどに興味を惹かれる。
    (これは多分、生まれて初めて本当に好きになった映画が「セブン」だったことが影響していると思う。)
    私のような読者ほど、本作を読んで、怒りが込み上げてくると思う。
    インターネットで適当に拾った事件の概要にふざけた絵をくっつけて、それが作品であるかのような顔をする、ふざけるなと言いたい。
    やるなら、真面目にやれ。

    信じられないのは、この低レベルな事件紹介を、終始「茶化して」やっていることだ。
    今まで色んな実録事件モノの漫画を読んできて、安っぽい野次馬根性や興味本位を煽るような作品に何度も苛立ちを覚えてきたが、そのような作品群ですら、本作に比べれば数段マシである。

    私は道徳心とか倫理観といったものが、通常の人間に比べて大幅に欠落している自覚があるが、その私ですら、この漫画のあまりの無神経さには吐き気を催した。

    「知りたくなかった」とタイトルにある。
    が、私には知りたくない事件などない。
    そのくらいの覚悟は持って生きている。
    しかし、この漫画の存在自体は、心の底から知りたくなかった。

    • 15

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