加隈亜衣:「無職転生」インタビュー 第3期で“狂犬”エリス再び 「ルーデウスはすごいんだから!」に込めた思い
配信日:2026/06/28 8:01
小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた人気ライトノベルが原作のテレビアニメ「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」の第3期「無職転生III ~異世界行ったら本気だす~」がTOKYO MXで7月4日午後8時から放送される。第3期は「エリス修行編」から始まり、第2期では未登場だった“狂犬”エリスが帰ってくる。エリス役の加隈亜衣さんに、久々となった「無職転生」の収録に懸ける思いを聞いた。
◇感情が爆発して泣くしかできなかった
「無職転生」は、理不尽な孫の手さんのライトノベルで、2012年に「小説家になろう」で連載を開始した。34歳無職の男性が死んでしまうが、剣と魔法の異世界で生まれ変わり、前世での知能と後悔を生かし、新たな人生が動き始める……というストーリー。“なろう系”ラノベのパイオニアとされる人気作だ。テレビアニメ第1期の第1クールが2021年1~3月、第2クールが同10~12月、第2期の第1クールが2023年7月~9月、第2クールが2024年4~6月に放送された。第3期は、7月4日にTOKYO MX、ABEMA、dアニメストアで先行して放送、配信され、7月5日からBS11ほかで放送。7月12日以降はTOKYO MXほかで毎週日曜深夜0時に放送される。
エリスは、フィットア領の領主ボレアス家の凶暴な令嬢で、剣の道へと進む赤髪美少女。第1期は、転移事件でルーデウスと共に魔大陸へと飛ばされ、冒険の末、消し飛んでしまった故郷に戻り、ルーデウスと結ばれるが、ルーデウスにふさわしい強さを手に入れるためにその元を離れ、剣神流の総本山・剣の聖地に向かった。エリスは第2期には登場しなかったが、加隈さんは第2期を見ていた。
「2期を見るまでの葛藤がすごくて。エリスとして過ごした時間が長かったから、苦しそうなルーデウスやほかの女性とイチャイチャするのは見られないな……とも思っていたのですが、(2024年2月に)イベントに出させていただくことになって、2期の話もありますし、見ていないのも何か違うと思い、見てみたら、すごく楽しくて(笑)。止まらない!と見ていました。苦しいところもありましたが、結果として楽しくて、視聴者目線で冷静に見られたところもありました」
加隈さんがアニメでエリスを演じるのは、第1期の放送後、2022年に発表された番外編「エリスのゴブリン討伐」以来で、約4年ぶりだった。
「ドキドキしました。2期に出ていないので、一度冷静になったところもありますし、こんな大変なエピソードを乗り越えてきたキャストの人たちと一緒になると思うと、緊張感がありました。夕実ちゃんのルーデウスへの向き合い方、葛藤、悩みも聞いていましたし、それを乗り越えてきた中に入っていくことへのプレッシャーが大きかったんです」
第1期で子供だったルーデウスを演じた内山夕実さんが、第2期でも青年に成長したルーデウスを演じた。第2期に向けて青年になったルーデウス役のオーディションを実施した結果、制作陣の満場一致で内山さんの続投が決まった。加隈さんは「ほかに誰ができるの!? 『うちの座長はすごいんだから!』という気持ちでした」と思いを明かす。
「第3期の第1話の収録は、夕実ちゃんもいたのですが『いや、自分は寝ているだけなんで』と言っていて(笑)。私は余裕がないですし、夕実ちゃんのすごさを改めて感じました。1話の収録が終わって、夕実ちゃんとご飯に行って『夕実ちゃんは本当にすごいよ』と伝えていたら、泣いちゃって(笑)。これまで大変な収録を重ね、それを乗り越え、もっとよくするにはとずっと悩み続けている姿を知っていたけど、自分がその立場に近くなったとき、何もできないんです。感情が爆発して泣くしかできなかった。その気持ちがエリスとリンクするようなところもありましたが、エリスと違って泣いている自分が余計情けなくて。夕実ちゃんのルーデウスに懸ける思いを見てきているので、私もエリスとして隣に立てるようになりたい。エリスの努力に寄り添いたいですし、その強い気持ちは取りこぼさないようにしています。エリスのように腹筋を割るわけじゃないですよ(笑)」
◇ずっと飢えているエリス
第1期で、エリスとルーデウスは龍神オルステッドと遭遇し、圧倒的な力の差を見せつけられる。エリスは、自身の無力さを痛感し、修行の旅に出る。
「エリスは、自分の命と言ってもいい存在のルーデウスの元を離れ、覚悟を決めて剣の道に進みます。でも、全然強くなれない。自分はなぜすぐに強くなれないのかという焦りがあり、それまでのエリスだったら『分かんない!』となるところを剣の道だけには真っすぐ向き合います。ルイジェルドさんの教えで強くはなったけど、それに満足せずに、自分はまだまだ足りない。オルステッドのことを考えて、ずっとヒリヒリしているんです。一つ成し遂げたいことがあると、人との会話もままならなくなってしまう。それしか見えなくなっちゃうんです。これまでルーデウスを通して誰かと会話することが多かったですし、初めての場所で初めて会う人とうまくコミュニケーションできません。バランスが悪いところがエリスっぽさなのですが、牙が生えまくっているエリスなんですよね。狂犬だった頃の小さい歯ではなくて、太い歯が何本も出ているようなイメージがありました」
かつて“狂犬”と呼ばれたエリスは、ルーデウスと出会い、成長する。狂犬の牙は潜めたようにも見えたが、第3期で苦しい修行を重ねる中で、再び牙を見せる。
「エリスがずっと素振りをして、1日でも早く強くなるために頑張っている姿が苦しくて、これまでのエリスにはなかった落ち着かなさを感じていました。1期は分散収録だったのですが、3期はキャストが集まっての収録で、初参加のキャストが多く、どこかで引っ張っていかないといけないという気持ちもあり、自分も余裕がなくて、エリスのように焦ってしまうところがありました。もっとどっしりとできたらよかったのですが。エリスは、同年代の女の子との会話経験があまりなくそこも難しくて、頭で考えようとすると、エリスにならなくて、エリスの感情に引っ張られていくような感覚がありました。ずっと飢えている感じが苦しかったんです」
◇「ルーデウスはすごいんだから!」に込めた思い
3月に公開された第3期のPV第2弾では、エリスが強くなるために奮闘する姿が描かれていた。エリスの第1期でもおなじみのセリフ「ルーデウスはすごいんだから!」も聞けるが、第1期とは様子が違う。
「第1期は、自分の大切な人のすごさを伝える『ルーデウスはすごいんだから!』でしたが、第3期は、自分の中に閉じ込めているルーデウスのすごさを自分に投げかけている。ルーデウスと肩を並べられるくらいにならなければという思いで鼓舞していて、ルーデウスのすごさが自分の中でもどんどん膨れ上がっているんだろうなと感じています。まだ足りない!とやればやるほど足りなさを感じ、ルーデウスの背中がどんどん大きくなっている。全力をぶつけないと、立ち塞がっている壁は崩せないという気持ちでぶつかっています。語彙力が成長するわけではないところが、エリスっぽいんですよね。『分かったわ』もエリスを象徴するセリフの一つで、本当は分かっていない『分かったわ』もありましたが、第3期は、言われたことを分かっているけど、気持ちは違うところにいってしまっている。すごく分かりやすい子ではあるけど、何を考えているか分からないことも増えてきます。言葉が少なくなり、行動に一本の筋が通っていますし、格好よさはあるのですが。結局、分かりにくくても、筋は全然ブレないので、気持ちいいなと思うところもあります」
6月4日に公開された第3期の本PVでは、ルーデウスが、シルフィエットとロキシーという2人の妻や母ゼニスら愛する家族たちと過ごす穏やかな様子が描かれた。ヒリヒリしたPV第2弾とは対照的にも見えた。
「『へぇー』『幸せそうで何よりです』と見ていました(笑)。でも、ルーデウスが幸せを手にするまでの葛藤や苦労も知っていますし、『良かったね』『幸せになってね』という気持ちもありつつ、『でも、それで足りているの?』『まだ幸せは先にもあるよ』と見ていました」
いばらの道を進み、高みを目指すエリスを演じる加隈さんは「強くなれば強くなるほど、攻撃するときの『ふんっ!』というアドリブを入れない方が強く見えますが、エリスの場合はできるだけ入れています。バトルシーンは奥深いなと思っています。エリスが強くなって、考えながら戦い始めると、どうなるんだろう? そこも考えないといけませんね」と語る。
加隈さんは、エリスに並々ならぬ熱い思いをぶつけ、約4年ぶりの収録に臨んだ。再び“狂犬”としての牙を剥くエリスが、劇中でどのような咆哮をとどろかせるのか。その圧倒的な演技から目が離せない。(阿仁間満/MANTANWEB)
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