独占有名人インタビュー:鈴木拡樹:性格は超優しいイエスマン?漫画キャラを演じるコツは「深くを知る良き理解者になること」
更新日:2017/11/29 10:00
漫画やアニメ、ゲームを原作とした舞台やドラマに数多く出演し、“2.5次元俳優”として絶大な人気を誇る鈴木拡樹さん。既にビジュアルがあり、ファンの多い漫画の登場人物になりきるために、鈴木さんが取っているアプローチ方法とは?
鈴木拡樹
演技指導で“ジョジョ立ち”
――“2.5次元俳優”として名高い鈴木さんですが、普段から漫画は読みますか?
人からオススメされたものや週刊誌を買って、パラパラと読むことが多いですね。いろんな雑誌を読んでますけど、特に「週刊少年ジャンプ」(集英社)は毎週買ってます。人によって、疲れた時は“ビールと枝豆”っていう人もいるじゃないですか。僕の場合は“ジャンプとコーラ”がお決まりのセットなんです。
鈴木拡樹
あとは、アニメを観てから好きになる漫画も多いかも。特に衝撃的だったのは「MAJOR」 (満田拓也/小学館) の小学生編で、主人公の茂野吾郎(しげの ごろう)が、ケガで利き腕を変える決断をするシーン。こんな過酷な展開、小学生に乗り越えられるの!? って、読んでて辛かったですね。
- 少年漫画 MAJOR
- 4.4 (727件)
――周りの人から勧められて読むこともあるんですね。
そうですね。バスケットボールをやっていた頃は、バスケ仲間に「SLAM DUNK」(井上雄彦/集英社)を教えてもらいました。僕らの世代でかなり流行っていたので、みんなで登場キャラクターの技を真似してましたね。その後、同じ井上雄彦先生繋がりで車いすバスケを描いた「リアル」(井上雄彦/集英社)も読みました。事故の被害者はもちろんですけど、加害者にも苦しさがある。読んでいて考えさせられる作品です。
最近よくオススメされるのは「キングダム」 (原泰久/集英社) なんですけど、長編でまだ手が出せてません。2.5次元舞台のメンバーでも、読んでる人多いみたいですね。
――役者仲間と漫画の話をすることは多いですか?
漫画そのものの話をすることもあるけど、「この漫画作品が実写化するなら、誰がどの役にハマるか」って、勝手にキャスティングすることもありますね。その中でも話題に上がるのは「SLAM DUNK」(井上雄彦/集英社)や「幽☆遊☆白書」(冨樫義博 1990-1994年)が多いかな。大体みんな、僕の役のはめどころがわからなくて、適当に余ったところに充てられがちです(笑)。
鈴木拡樹
「ジョジョの奇妙な冒険シリーズ」(荒木飛呂彦/集英社)は、以前出演した舞台の演出家さんの影響で読み始めました。立ち方の指示をする時に、「そこでジョジョ立ち!」と言われるので、読まないとわからなくて。初めてジョジョを読んだ時、すぐにピンときました。こうやって、思わぬ角度から漫画を知ることもありますね。
イギリス貴族ジョースター家の一人息子・ジョナサン。紳士となることを目指し不自由ない暮らしを送っ...
2次元キャラを現実に当てはめる
――お仕事自体、漫画にも関わることが多いですもんね。
僕のデビュー作のテレビドラマ「風魔の小次郎」(車田正美/集英社)も、アニメでよく見ていた「聖闘士星矢」(車田正美/集英社)の車田正美先生の作品ですからね。出演が決まった時は、なんだか感動しちゃいました。
その後も2.5次元の作品に出演することが多くて、原作が漫画の時は、自分が演じるキャラクターをより深く知るために、かなり読み込むようにしています。
鈴木拡樹
――原作の読み込み方にこだわりはありますか?
個人的な意見ですけど、既に存在している漫画の中のキャラクターと、同一の存在になることは難しいと思うんです。違う人間なので、まったく同じ人間にはなれない。だからこそ、演じるキャラクターの一番深い所を知っている、よき理解者であろうと思っています。
例えば、机の角に足の指を思い切りぶつけた時にどんな反応をするのかな、と考えてみたりします。カッコつけて何もないフリをするかもしれませんし、大きいリアクションで涙を流すかもしれません。現実に彼が生きているとしたら、どんな行動をするのかを考えて、自分の中に落とし込むんです。
鈴木拡樹
作者さんも、作品のどこかしらでその人物の素顔を描いているはずなんですよ。それを最大限受け取って演じれば、キャラクターも生きてくるんです。見てくれるキャラのファンの方とも、「このキャラのここがいいよね」って共有できると嬉しいですね。
――2次元という非日常から、3次元の日常に落とし込むわけですね。
2次元の世界観って、非日常だと思われがちです。でも、キャラクターが生きているその世界の中ではそれが当たり前で、漫画に描かれているのはその中の1シーンでしかない。魔法が使える世界を、舞台の上では本物にしなきゃいけないんですよね。
最近よく、殺陣のある舞台に出ているんです。3次元的には相手にケガをさせないようにしなきゃいけないけど、2次元的には本気で殺し合わなきゃいけない。首の皮だけをピュっと切るのと、鎖骨からメリッと骨を割りつつ落とすのは、刀の入れ方や体の動きで違うんですよ。それを表現するのは、難しいですけど演じがいがあります。
鈴木拡樹
――様々なキャラクターを演じていますが、どんな役が一番演じていて楽しいですか?
印象に残っているのは、以前舞台で出演した「弱虫ペダル」 (渡辺航/秋田書店) で熱血漢の荒北靖友(あらきた やすとも)を演じたこと。素の自分と全く違うタイプの人間だったので、やっていて楽しかったです。
- 少年漫画 弱虫ペダル
- 4.4 (1217件)
ママチャリで激坂を登り、秋葉原通い、往復90km!! アニメにゲーム、ガシャポンフィギュアを愛...
悪の方に存在している正義を突き詰めていくのも面白いですね。ニュースで犯罪者について報道されていたとしても、その人を肯定しようとは思えないじゃないですか。演じるとなったら、その人になり切ってその行動を起こすために、「こういう理由だったからこの犯罪を犯したんだよ」と、自分の中で納得しなきゃいけないんですよ。
――「いぬやしき」 (奥浩哉/講談社) の獅子神皓(ししがみ ひろ)は悪役だけど自分の中に正義を持っていて、鈴木さんにハマりそうですね。
獅子神くんも、自分の中に芯があるからこそ、魅力的な悪役なんですよね。
「いぬやしき」 (奥浩哉/講談社) は、何よりセリフのない描写に引き付けられました。例えば、冴えないサラリーマンである主人公の犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)が、息子に暴言を吐かれた後に、キャビアを食べるシーンとか。その後のなんとも言えない表情がいいですよね。
- 青年漫画 いぬやしき
- 4.1 (954件)
その男には誰にも言えない秘密がある! 58歳サラリーマン2児の父。希望もなければ人望もない冴え...
サンジみたいな男になりたい
――プライベートはどのように過ごしているんですか?
オフの時は、休めるだけ休むようにしてます。できるだけ睡眠を取って、好きな時に起きるんです。ネットで良さそうなご飯屋さんを検索して、電車でフラっと行っちゃうこともありますね。
――役者仲間や友だちと?
1人で行くことも多いですけど、友だちとも飲みに行ったりしますよ。あまりお酒が飲めないので、撮影がある前とかは断るんですけど、基本的にイエスマンなので、断る僕の方が傷付いてます(笑)。
鈴木拡樹
――断るのにも勇気がいりますからね(笑)。周りの人からは、どんな性格と言われることが多いですか?
いい意味でも悪い意味でも、「優しい」と言われることが多いですね。優しい人間になろうと考えてそうやって動いていたら、最近は度を超してるみたいです。
お互いの妥協点を探る時、相手に引かせるよりも、自分は譲れないのか?と考えるようにしていたのが原点だと思います。誰でも、「ここまでなら譲れる」っていう線引きってあると思うんですけど、そのラインが年々緩くなっていて……。過度な優しさが相手のためにならないってことはわかってるんですけどね。
鈴木拡樹
――例えば漫画の中でいうと、どんなキャラクターに憧れているんですか?
学生の頃から読み続けている「ONE PIECE」 (尾田栄一郎/集英社) のサンジですね。ああいうカッコイイ男になりたい。
女性にモテそうなのにモテてないのがすごく良いんです。幸せにはなってほしいけど、ポジション的に違いますよね。今ぐらいの感じが、サンジにはちょうどいいんです。
- 少年漫画 ONE PIECE
- 4.4 (6897件)
時は大海賊時代。いまや伝説の海賊王G・ロジャーの遺した『ひとつなぎの大秘宝』を巡って、幾人もの...
これから先も、表現者であるために
――デビュー10周年を迎えた鈴木さんですが、この先の目標はありますか?
役者を始めた時は、こうやって10年後も俳優を続けているビジョンが持てませんでした。右も左もわからないまま、ガッタガタに動いてきて、今になってようやく“今からの10年後”を意識しようと考えられるようになったんです。
今、僕が深く関わらせてもらっている“2.5次元”は、僕がデビューした当初はまだ名前もない状態でした。それが1ジャンルとして確立して、今やブームと言われる程です。時代によって流行は変わりますし、もしかしたらそのうち、演劇が必要ない世界になっていくかもしれません。10年後、これから先この仕事を続けていくために、職業としての役者の部分を磨いていかなきゃいけないですね。
――10年後も役者であり続けるということですね。
自分が表現者として残りたいのは、舞台を見てくださった方々の「面白かったです」「明日からも仕事頑張れます」っていう言葉に支えられているから。そういう方がいてくれるからこそ、表現者でいさせてもらえているんだなって思います。
この“2.5次元”というジャンルをもう一段階、みんなで盛り上げていきたいですね。
鈴木拡樹
年齢の壁を超え、今も2.5次元の主役を張っている鈴木さん。プライベートを語る柔らかな雰囲気と、お芝居に関するお話をする時の凛々しい表情とのギャップに思わずキュンときちゃいました! 今後も2.5次元の世界を盛り上げていってください!
写真:原恵美子
プロフィール
鈴木拡樹(すずき ひろき)
1985年6月4日生まれ、大阪府出身。2007年に車田正美原作の漫画作品『風魔の小次郎』の実写テレビドラマで俳優デビューし、翌2008年には『最遊記歌劇伝 -Go to the West- 』で主役・玄奘三蔵役を演じる。以降も舞台『弱虫ペダル』(2012年)やミュージカル『薄桜鬼 沖田総司編』(2013年)、舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺(2016年)など、漫画やアニメ、ゲームを原作にした舞台やドラマに数多く出演しており、“2.5次元俳優”として人気を博している。
◆劇団☆新感線『髑髏城の七人』 season月 公式サイト
http://www.tbs.co.jp/stagearound/tsukidokuro/
◆鈴木拡樹 公式Twitter
https://twitter.com/hiroki_0604
◆鈴木拡樹 公式ファンサイト
※上記リンクは外部サイトに接続します
この記事をSNSで共有する
作者
都築みやこ
少女漫画から青年漫画まで、多ジャンルを好む雑食系。休日は家に引きこもり、誰かのオススメ漫画を読み漁っています。好きな作品は「女王の花」「この音とまれ!」「賭ケグルイ」など。
記事タグ
この記事で紹介された作品
copyright(C)2016-2024 アムタス > 利用規約
サイト内の文章、画像などの著作物は株式会社アムタスあるいは原著作権者に属します。文章・画像などの複製、無断転載を禁止します。
- めちゃコミック
- おすすめ無料漫画コーナー
- めちゃマガ
- 独占有名人インタビュー:鈴木拡樹:性格は超優しいイエスマン?漫画キャラを演じるコツは「深くを知る良き理解者になること」
- めちゃコミック
- 少年漫画
- 週刊少年チャンピオン
- 弱虫ペダル
- 独占有名人インタビュー:鈴木拡樹:性格は超優しいイエスマン?漫画キャラを演じるコツは「深くを知る良き理解者になること」
プロ野球選手の父を持つ元気一杯の野球少年・吾郎が、プロ野球選手という大きな夢に向かって突き進む...