大河ロマンだ!おすすめ歴史漫画で気分は史上の人物に
更新日:2017/10/06 10:00
ひとくちに歴史マンガといっても、その切り口はたくさんあります。また分類の方法も、いろいろと考えられますが、今回は舞台になっている土地を頼りに分けてみました。
一番なじみ深く、聖地巡礼も可能な日本。そしてファンの多い中国史。また最後には大胆にファンタジーを組み入れた作品や、歴史ではなく古典文学をモチーフにした作品もご紹介します。
日本が舞台の漫画を時代別に紹介!
常になんらかの歴史ドラマがテレビでも放映されていますし、自国のことでもありますし、やはり舞台は日本というのが一番なじみ深いですよね。そんな日本を舞台にした歴史漫画を年代順にご紹介します。
■戦国時代-「信長協奏曲」/石井あゆみ
「信長協奏曲」 (石井あゆみ/小学館) は、戦国時代へとタイムスリップした現代の高校生、サブローが本物の信長と入れ替わり天下人を目指していくという物語です。
現代人のタイムスリップものですと、持っている知識や道具が大活躍というパターンも多いのですが、サブローくんは勉強嫌いが災いして、信長の最期も知らないという有様でした。
「信長協奏曲」で描かれる信長は、病弱で繊細なキャラクターです。だからこそ、見た目が瓜二つでありながら現代人で、しかも破天荒な性格のサブローの存在がスッとそこにはまるのでしょう。
物語のスタートで、一気に心を掴んできます。
サブローくんはこうして信長へとなるわけですが、現代に戻るためにあれこれするということはなく、ここからは信長として力強く駆けていきます。
もともとは現代人であることや、歴史を駆け抜ける史上の人物としての魅力が合わさり、次のページが待ち遠しく感じます。
■安土桃山時代-「へうげもの」/山田芳裕
戦国時代から安土桃山時代。「へうげもの」 (山田芳裕/講談社) は、信長、秀吉の活躍していた時代を生きた武将・古田織部を主人公に、茶器や甲冑、建造物にいたるまでを、数奇者(好き者)である古田織部の視点で堪能できる物欲作品です。
オーバーな表情、歴史漫画なのに謎の擬音と盛りだくさんで、笑っているうちにいつの間にか感情移入して、物欲と武功の間で揺れてしまいます。
大名を前に、武将勢ぞろいでの会議シーンは、歴史ドラマなどでもよく見かけますね。そんな戦略を練る大事な場面でも、「へうげもの」の古田織部は他の武将の脳内ファッションチェックを始めてしまいます。
現代の会議でも、こういうことを考えている人は多いかもしれませんね。古田織部に親近感がわく場面です。
■江戸時代-「JIN―仁―」/村上もとか
「JIN―仁―」 (村上もとか/集英社) は、江戸末期にタイムスリップした脳外科医、南方仁の物語です。
もとが脳外科医というスペシャリストですので、その知識や技術を活かして医者として大活躍していきます。人々を次々に助けるかっこよさと、周囲の人からの信頼が心地よい作品です。
南方先生がペニシリンの製造を始めるこのシーンでは、時代に重要な跡を残すことになります。
製造法を思い出すため、そしてタイムパラドックスを考えて苦悶し、決断する様子は一緒に熱くなること請け合いです。
■明治時代-「ゴールデンカムイ」/野田サトル
「ゴールデンカムイ」 (野田サトル/集英社) の時代は日露戦争後。陸軍で不死身とうたわれていた主人公の杉元は、親友の妻である梅子の治療費を得るため、北海道で隠された金塊を探すことになります。
隠し場所のヒントは脱獄囚たちに彫られている入れ墨。アイヌの少女、アシㇼパの協力を得ながら、同じく金塊を狙う陸軍と時には戦い、またアイヌの狩猟の技で食料を得つつ冒険をしていきます。
一見したところ、元陸軍兵士である杉元が、囚人たちが握っている金塊の秘密を追っていく冒険譚に思えますが、その裏側を支えるのがアシㇼパから教わる狩猟の技術であり、アイヌ文化の紹介です。
このアイヌ式罠がうまくいったシーンも、見事ですね!
昭和時代-「海賊とよばれた男」/須本壮一・百田尚樹
「海賊とよばれた男」 (須本壮一・百田尚樹/講談社) は、出光興産創業者をモデルにした作品で、2016年12月に映画化もされたヒット小説のコミカライズです。
戦後の厳しい時代、主人公・国岡鐡造を中心にいかに商売をしていったかの物語です。
「課長 島耕作」 (弘兼憲史/講談社) シリーズのような、サラリーマン快進撃が好きな方にはたまらない作りではないでしょうか。
ビジネス漫画ですから、経営哲学のようなセリフが多数あります。こちらの「鶏口となるも牛後となるなかれ」に通じるセリフもそのひとつで、共感できる言葉でした。
中国が舞台の作品
歴史シミュレーションゲームのおかげか、勉強が苦手でもなぜか詳しい人が多い中国史。中でも三国志の人気は飛び抜けていますよね。
ここでは、始皇帝へとつづく物語「キングダム」 (原泰久/集英社) と、三国志では憎まれ役、曹操を中心に据えた物語「蒼天航路」 (王欣太・李學仁/講談社) をご紹介します。
■「キングダム」/原泰久
この物語は紀元前245年の中国で始まります。年表でいうと、紀元前403年から始まる戦国時代がまだ続いています。
主人公の信は戦争孤児で、下僕として奴隷同様の扱いを受ける日々の中、剣で身を立てようと同じ下僕の漂と剣技を磨いていました。
しかし漂が秦の大臣である昌文君に見いだされて士官し、内乱に巻き込まれて瀕死の重傷で信の元へと戻ってきたことで運命が大きく動き出します。
1巻冒頭から5巻は、大きな流れでいうと王弟の反乱を扱っているのですが、その締めくくり部分のシーンです。ここまででもすでに大冒険なのですが、ここにきてやっと信は標との約束である、大将軍への道を一歩進めることになります。
■「蒼天航路」/王欣太・李學仁
「蒼天航路」 (王欣太・李學仁/講談社) 作画の王欣太さんは日本人ですが、この作品に合わせてペンネームを変更されたといわれています。作品への熱い思いが伝わりますね!
三国志ですから、魏の曹操、蜀の劉備、呉の孫権らの物語となるわけですが、本作では珍しく曹操が主人公です。
一般に語られることが多い黄巾の乱や董卓のエピソードより前、曹操がまだひとりの青年だったところから物語は始まります。盗賊との戦いや、女性との出会いや別れを通して、曹操の人となりから丁寧に三国志の世界へと入っていきます。
派手な戦いのシーンも魅力ではありますが、個人的に好きなのが舌戦です。歴史シミュレーションゲームでもありますが、言い負かすことで相手陣営の士気を下げるやり方ですね。これは突撃にも劣らぬ魅力があると思います。
世界が舞台の作品
物語として触れる歴史は、どうしても日本史、中国史のものが多いように感じますが、広い世界に目を向ければ、そこにはまだまだ魅力的な題材が残っています。
ずっと昔、遠い場所で暮らしていた人々の物語も楽しんでください。
■ヒストリエ」/岩明均
「ヒストリエ」 (岩明均/講談社) は、紀元前4世紀、古代ギリシアの物語です。アレクサンダー大王としてよく知られる、アレクサンドロス3世のお話ではなく、その大王に仕えた書記官エウメネスのことが描かれています。
幼年期の回想だけでも物語の量は厚く、じっくりと読みたくなります。
感情的になることはほぼ皆無。大人のようなというより、実際の大人以上に冷静沈着なエウメネスですが、このシーンでは激高します。
周囲の理不尽な裏切りに対して、暴れるわけでもなく、逃げ出すわけでもなく、ただ非難するのです。そうであるがゆえに、すごく重たい言葉になっています。
■「ヴィンランド・サガ」/幸村誠
「ヴィンランド・サガ」 (幸村誠/講談社) は、11世紀の北ヨーロッパを舞台に活躍していたヴァイキングの物語です。時折コミカルな表情やコマもあるものの、丁寧に描き込まれている画面からは、北の冷たい海の様子がまざまざと浮かんできます。
アイスランド出身のトルフィンが父の敵討ちを目指して腕を磨いていくのですが、これを主軸に当時の周辺勢力のエピソードが盛られていて、密度の濃い作品になっています。
主人公の父、トールズの回想より。戦いに明け暮れるトールズに向けられた妻からの鋭い視線が魅力の一コマです。
「プラネテス」 (幸村誠/講談社) でもそうでしたが、幸村先生の描く女性の目力はとても強く魅力的。まっすぐにこちらに向けられた視線は、たとえ画面越しでも背筋が伸びます。
■「テルマエ・ロマエ」/ヤマザキマリ
実写映画も大人気。「テルマエ・ロマエ」 (ヤマザキマリ/エンターブレイン) もまた、タイムスリップなどを扱いつつも、主軸は時間移動そのものではなくて、ローマと現代日本の入浴文化を比較するところにあります。
幕間の、作者によるローマ文化紹介も読み応えがあって作品に奥行きを出しています。
こちら、ローマの市民権を得た元ゲルマニアの補助兵が、野蛮な風呂の入り方をするので客足が遠のいてしまって……。というエピソードからの一コマです。
途中、日本の銭湯に場を移しての対決もあり、そしてそこで重要なヒントを得たルシウスが事態を解決します。
この解決方法、解決した状態というのが、撃退ではなく、和解であるというのがこの作品の雰囲気、湯に浸かってリラックスするという題材とも非常に合っていて心地よいのです。
ファンタジーと歴史の融合を見よ!
ファンタジーにさらに歴史を絡めていく、という欲張りな作品をご紹介します。
■「ドリフターズ」/平野耕太
「ドリフターズ」 (平野耕太/少年画報社) は、導入部分こそ関ヶ原の戦いですが、主人公の島津豊久が異世界へと導かれ織田信長、那須与一とともに、異世界の戦いに身を投じていく作品です。
しかしそこにある動機は、人助けというようなわかりやすいものではなく、国盗りなのです。
その潔さ、美学。これもまた生き生きした線と相まって作品の魅力となっています。
古典がアレンジされた作品
歴史もの、の中でも少し変わっているのがこちらの古典を扱っているタイプの作品です。歴史そのものではなくて、歴史上存在した創作物のアレンジです。
古典というと、「現代文はともかく、古文はちょっと……」という方も多そうですが、そこはマンガですから大丈夫。学生の方なら、これがきっかけで古文の理解が増すかもしれませんね。
■「とりかえ・ばや」/さいとうちほ
「とりかえ・ばや」 (さいとうちほ/小学館) は、男女入れ替わりの元祖で有名な、平安時代後期の物語「とりかへばや物語」(作者不詳)を題材にした作品です。
著者のさいとうちほさんが仰っているように、原作の古典にもすでに男装、女装はもちろん、BL要素などがあり、そういうのって日本人のお家芸だったのですね、とただただ感心するばかりです。
本来の性別がばれそうになるシーンなども、すでに平安時代には成立していたようで…。そんな物語を、少女マンガらしいタッチで妖艶に描いている名作です。
歴史マンガ年表
歴史マンガは裏側で、脈々と続く私たちの年表とリンクしています。同じ人物が別の作品にも描かれていたり、同じ時代の別々の場所の作品があったりと、知れば知るほど楽しみの幅が広がります。
ぜひ今回ご紹介した作品や、そのほかにもたくさんある名作に触れて、何重にも楽しめる歴史マンガの世界をご堪能くださいね。
◆人気歴史コミックをもっと読みたい人はこちら↓
https://sp.comics.mecha.cc/feature/i_history