出世する人の特徴と必要な能力を漫画で読み解く
更新日:2016/09/09 10:00
学校や会社をはじめ、苦手だという人も多いけれど、世の中を渡っていく上で避けては通れないのが組織です。どうせ回避できないのであれば、なるべく楽しく、上手にやっていきたいものですね。
今回は一流企業で管理職としてバリバリ仕事をこなすビジネスマンとしての成功例に限定することなく、いろいろな組織でうまくやっている人、出世している人、認められている人の特徴を漫画のなかに探し、自分たちの生き方にも応用できる要素を探していきたいと思います。
出世する人の共通点。しない人とはどう違う?
必ずしも出世する(高い地位につく)ことだけが成功ではありませんが、現在の日本に限ってみると、組織とは関係なく助っ人的な働き方をして高給を稼ぐという例は少ないかと思います。やはり必要とされる人は、自ずと出世するようにできているのかもしれませんね。
それではまず、どういう人が組織の上部に食い込めるのか。またその要領とはなにか、をみていきましょう。
熱意を持って仕事にあたる
どうも「仕事が生きがい」というと、生活を顧みないダメな人というマイナスイメージがついて回る気もします。
けれど本当にそうなのかな?…と考えさせてくれるのが「働きマン」 (安野モヨコ/講談社) の主人公、松方弘子です。
作中では「男スイッチ入ります」と表現されていますが、彼女はいったん集中しだすと、とことん仕事に没頭するタイプなのです。
また編集者ということも手伝って、私生活は犠牲になりがちです。しかし周囲も驚くような熱意で仕事に取り組む彼女は、編集部という組織において大切な戦力であり、デスクからは大切に育てられ、編集長からも認められているようです。
寝食を忘れて仕事をするほどの集中力というのは、それだけで周囲に存在を認めさせる要素になり得るのではないでしょうか。
人間関係のハブになる
ここでいうハブとは、ハブ空港のハブです。
ターミナルと言い換えてもよいのですが、組織内の人と人を結びつけるような立ち位置にいると、その人は組織に欠かせない人物になるという理屈です。
たとえば「究極超人あ~る」 (ゆうきまさみ/小学館) の鳥坂先輩などがよい例になるかと思いますが、彼がいなかったらR・田中一郎は光画部には加わらなかったでしょうし、のみならず撮影会などもやらない、ただ漫然と部室で過ごすだけの部活になってしまう可能性が高いと思います。
作中では、卒業後も頻繁に、というよりほとんど毎日部室に顔を出す彼をギャグとして描いていますが、おそらく鳥坂先輩なしには光画部は回っていかないほどのキーマンなのだろうと推察できます。
鳥坂先輩は物語スタート時から部長ですが、まさに部長に選ばれるべくして選ばれたといってよいでしょう。
覚悟を決めている
趣味を大事にする生き方も素敵ですが、出世する、稼ぐ人は覚悟が違うように思えます。
「新ナニワ金融道」 (青木雄二プロダクション) の灰原達之もそんな覚悟の人です。
新ナニワ金融道
©青木雄二プロダクション
勤め先がつぶれたことから金融の世界へと入ってきた灰原ですが、他の登場人物と比べて涼しい顔をしているものの、取り立てのためならなんでもするのです。
「新ナニワ金融道」 (青木雄二プロダクション)冒頭の、刑期を終えて出所してくるシーンが全てを物語っているようにも思えます。
ごくたまに、心が揺れていると思われるシーンもありますが、灰原が温情のこもった行動をすることはまずありません。金融の世界でやってやる、という強い覚悟が彼を活躍させているのだと思います。
人からの評価を気にしない
つぎに、警察という完全序列組織を舞台にした「機動警察パトレイバー」 (ゆうきまさみ/小学館) から、一見したところ出世とは縁遠い特車二課第二小隊隊長、後藤喜一をみてみましょう。
外見は冴えない中年男性だし、作中でも出世街道からは外れた存在と認定されている後藤隊長ですが、見方を変えると特車二課がある埋め立て地は彼の王国です。
あの島で、後藤隊長と対等なのは第一小隊隊長の南雲しのぶだけなのです(整備班長の榊清太郎は別格ですが)。
勤務中でも釣り糸を垂れ、職場の冷蔵庫にビールが入っていても平気。さらに付け加えるならば、後藤隊長の階級は警部補。推定ですが年収も500万円には届いていると思われます。
警察組織内部の評価さえ気にしなければ、これを勝利と呼ばずなんといえるでしょうか。後藤隊長は人からの評価を気にしないことで、埋め立て地にとどまり君臨しているわけです。
まさに鶏口となるも牛後となるなかれ、ですね。
あえて二番手に身を置く美学
「働きマン」 (安野モヨコ/講談社) の松方が働く「週刊JIDAI」編集部には、成田君男というデスクがいるのですが、彼は作中で「生き方上手」と呼ばれています。
趣味のアウトドアを楽しむ姿などが描かれているので、公私ともに充実している、というのが理由なのかもしれません。ですが、ここではさらに踏み込んで考えてみたいと思います。
どうして激務続きである雑誌編集の仕事をしつつ、プライベートまで充実できるのか?それは編集長の存在が大きいと思われます。作中で、編集長だけがスーツです。
また編集者である松方とデスクの成田が記事の責任について議論をしているときも、最終的に責任を取るのは編集長なんだ、と成田はいいます。
ヒラではなく、出世はするが二番手につけることで余裕が生まれ、さらにその先もうかがえるというのは合理的な戦略だと思いませんか?
出世する人の共通点まとめ
組織内でうまくやっているキャラクターの特徴をみてきましたが、大きく分けて“熱量の高い仕事をする”という要素と、“他人に惑わされない合理的戦略”という要素が見えてきます。
多くの仕事はチームプレーですが、目の前にある作業に集中すると同時に、役割については冷静な判断をしていくことが出世につながるようですね。
ただ、徹夜続きのようなハードワークも、冷徹な判断も、どちらも体力気力がないとできません。
どうしてもめんどくささに負けてしまいそうなときは、下記記事なども参考に頑張りましょう!
管理職に必要なこと
最近では部下なし管理職などという言葉も見かけますが、ここでは会社組織で上司となり、部下の育成など、マネジメント業務をしていく立場について考えていきたいと思います。
部下の能力、スキル、残業状況など、把握しなければならないことは多いでしょう。
では、上手にチームをまとめて、集団を率いることができるのはどのような人なのか。成功例や反面教師としての失敗例などをみていきたいと思います。
自分の意見をはっきり伝える
策を弄するキャラクターも多い中で、徹底的にシンプルな指示を出すのが「沈黙の艦隊」 (かわぐちかいじ/講談社) の主人公、海江田四郎です。
海江田は物語の真ん中で淡々と己の目的へと突き進み、感情を剥き出しにして振り回されるのは周囲の人物たち。
彼の言動は飾りがなく、また潜水艦同士の戦いでは互いに読み合うような展開もありますが、乗組員に対しては心理状態を読んでなにか仕掛けてやろうというような話し方は一切しません。
組織内につまらない駆け引きの要素を持ち込まない、本当にいいたいことだけをシンプルに伝えるというのは、上司に必要なスキルかもしれませんね。
動じない心をもつ
少し前に、理想の上司にブッダのお名前があがっているのを見かけました。管理職に必要なことを考える上で、理想とまでいわれるブッダを外すわけにはいきません。
今一番読みやすく、原点の要素も大切にしている「聖☆おにいさん」 (中村光/講談社) で、コメディになっても消えない要素。ブッダをブッダたらしめている要素を考えましょう。
作中では、一緒に下界ライフを満喫しているイエスが騒ぎを起こしやすいのに対して、ブッダはとにかく冷静であり続けようと努力する姿が描かれています。
たしかにブッダの言葉を現代に伝える、というような系統の本では、「無駄な反応を心にさせない」という教えが書いてあります。
ブッダと同じレベルはとうてい無理でも、方向性として動じない心を身につけるのは管理職にとってよいことでしょう。
判断を人にゆだねない
自分の裁量でやってよい範囲のことに限っては、誰かに頼るようなことがあってはいけないのかもしれません。
ここでひとつの反面教師を「まんが極道」 (唐沢なをき/KADOKAWA/エンターブレイン) でみてみましょう。本作は緩やかに繋がっている世界で展開するのですが、基本的には1話完結です。その6話「信じれば……」から。
売れっ子漫画家の迷中マリは、仕事場でもきびきびとアシスタントたちに指示を出し、毎回話題となる作品を制作していきます。
ときには編集者と意見が対立しても方針を変えることなく突き進む姿は頼もしいのですが、彼女はカルトにはまっていて教団の指示を自分の判断だと思い込んでいるのです。オチについては触れませんが、一緒に仕事をしているアシスタントや編集者が多大な迷惑を被ってしまう方向へと話は転がります。
チームを束ねるということは、部下たちの生活についても一部責任を負うということですから、自分の頭でしっかり考えたいものですね。
部下を引き立てる
「機動警察パトレイバー」 (ゆうきまさみ/小学館) では敵役として登場することになる、シャフト・エンタープライズの企画7課を率いるのが内海課長です。
この内海課長と企画7課には、裏の顔など様々な設定があるのですが、彼が管理職として優れていると思わせる箇所が、レイバーの基幹技術として、その特殊性から主導権を握れなかったシステムに目を付けたという点です。
市場原理に負けた技術者に、思いっきり活躍できる場所を用意した。このようなマネジメント能力こそ、チームを躍進させる要素ではないでしょうか。
責任を取る
最後は「働きマン」 (安野モヨコ/講談社) から、週刊「JIDAI」の編集長、梅宮龍彦です。
編集部で飲みに行っても、最近はなにかとセクハラ、パワハラといわれるなどとぼやいていて、一見したところ若い編集者とは距離があるように感じられますが、ある程度離れたところから組織や人をみていて、ちゃんと誌面に責任を持つという態度が素晴らしいですね。
さらには迷っている松方の背中を押し、満足いく記事を書け。と叱咤激励するところなどは、毎週のように修羅場を迎えているであろう編集部の舵取り役には必須のスキルなのかもしれません。
ここまで、様々な組織で上に立っているキャラクターの人物像をみてきました。どのキャラクターも多少の差はありますが、すでに出世している、あるいはこれから出世するのは間違いない、という状態ですね。
ただし、その結果欲しいものは、居心地よく快適な人生であって、出世はその過程やゴールの副産物くらいのイメージでここまで書いて参りました。
よいモチベーションに恵まれれば、熱のこもった仕事ができて、組織には欠かせない人物となる。そんな中心人物が、人間関係においては冷静に周囲をマネジメントできたら、今度はチームとして素晴らしい仕事をやってのけることでしょう。
そのような歯車を回すときの参考に、少しでもなれば幸いです。
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作者
松浦迅徹
小学校のクラブ活動になぜか漫研があり、小学四年生にして漫研デビューをしたライターです。また中学から高校までは、これまたなぜか学校のクラブにアニ研があった関係で――、という具合にこれまでマンガ・アニメ・ゲームを堪能して参りました。現在はゲームのシナリオライターなどもしております。どうぞよろしくお付き合いください。記事タグ
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