5.0
諸星大二郎先生ファンには、ツボだと思う!
普段はBLばかり読む自分ですが、本作は昔話と事件捜査が融合するミステリーでありまして。
2021年7月現在、39話まで配信中でまだ続きますが、各章ごとに事件が解決し、切りよく読みやすいかと。(「てっぺんぐらりん」とは昔話の結句だとか。)
子どもの頃、伝説、お伽噺、わらべ歌…が異界と結び付く、諸星大二郎先生(オススメは『諸怪志異』『妖怪ハンター』)にどっぷり嵌まった身としては、堪らない作品でした!
同様な諸星先生愛読者の方には、当にツボではないでしょうか。
しかし、ギャグ漫画でも影を感じる諸星先生の作品(それが特色で魅力の一部でしたが)と大きく違うのは、美形揃いの登場人物たちと、陰惨な事件を扱いながらも基底に流れるユーモラスな明るさで。
強面堅物な警察官・桃生(表紙右)、金田一みたいな和服の変人大学准教授・太郎(表紙左)がイケメンなだけでなく、何気に仲間の犬井は可愛い童顔ワンコ、猿渡は美人姐御、雉沼はイケオジで…と、それぞれ美形な上に個性的で、会話のやり取りもめっちゃ面白く。
それもそのはず、作者のキリエ先生は『4分間のマリーゴールド』『江戸モアゼル』も手掛けた、幅の広い画力と描写力をお持ちの方でした。
(ただし、少しグロテスクな描写もあるので、苦手な方はご注意を。)
しかし、事件が起こって桃生たちが捜査を開始すると、それ以降は無駄に人が亡くなることはなく、作者さんの優しさや命への思い遣りを感じ、安心して読めると思います。
試し読みにもあるように、主人公の桃生は少年の時に父親の殺害現場で、犯人が鬼(人ならざる者)であるのを目撃し。
警察官になり、残虐な事件が鬼の仕業では…と思う桃生は、昔話から鬼種の存在を研究する学者の太郎とタッグを組んで、犯人の鬼種たちを追い詰めていく。
捜査のヒントや解明に、昔話が生きてくるのが面白く。また、桃生や仲間たちの造形が確りしているので、キャラが生き生きとしていて、思わず引き込まれました。
桃生の一族は、人に紛れた鬼を見抜く力があり(非常時のみ)、鬼たちが「あの方」と呼ぶ者が父親を弑させた主犯であり、桃生のことも狙っているらしく。
また、太郎にも鬼を追う理由があるらしく、謎はまだまだ続きます。
諸星先生の作品の重厚さと比べると、本作はややライトに感じますが、そこが読みやすい良さでもあると思います。
続きが楽しみです!
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