4.0
ナイスな続編
映画の世界では、続編は原則的に失敗する。
多くの映画ファンが認める「成功した続編」なんて、「ゴッドファーザー・パート2」くらいのものではないかと思う。
漫画の世界ではどうなのか、よく知らない。
が、本作は続編としては間違いなく「成功」の部類に入るかと思う。
前作も好きな作品だったが、前作のレビューで私は、「ヒル」という存在の設定は面白いが、「ヒル」がゴロゴロいたり、仲間を形成していたりする、という設定には、ちょっと冷めた、と書いた。
続編の本作において、私の感じたその瑕疵が改善されていたわけではなかった。
むしろ逆で、物語はさらに「あり得ない」方向へと進み、「ヒル」のリアリティーはますます薄まった。
しかし、正直に言えば、「これはこれでアリ」だな、とも思った。
欠点をカバーするのではなく、むしろ助長することで作品が別の方向にジャンプする、ということも、原理的にはあり得ると思うし、本作などはその典型かと思われる。
作品のカラーは変わったが、このスリリングでサスペンスフルな手ざわりは、なかなか悪くない。
前作について、私は、「普通に生きる」ことの難しさというのが、現代のひとつのテーマなのかもしれない、と書いた。
それは、本作でも色濃く打ち出されている。
「ヒル」の彼女が言うじゃんか。
「色んな人の家に入って生活覗いてきたけどそんな『フツー』何処にもなかったよ」
ただ、前作が「普通に生きることの難しさ」に針を振っていたとすれば、本作はいくぶん、「普通に生きることの素晴らしさ」に振っている、という印象を受けた。
それは、斜に構えて見ればいささか陳腐に映るし、特に終盤はちょっと説教臭い感じも引っかかる。
しかし、陳腐だろうが何だろうが、普通に生きることが素晴らしいというその確固たるメッセージは、どれほど伝え飽きても伝え続ける価値があるものだと私は思うから、本作のいささか大きすぎる声も、嫌いではなかった。
- 4