rokaさんの投稿一覧

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81 - 90件目/全150件
  1. 評価:4.000 4.0

    覚悟のグロテスク

    昔は結構、夢中で読んだ。
    今となっては、なぜそんなに夢中になれたかピンとこないのが残念だが、多分、当時は、漫画の表現として、それだけ新鮮だったのだろう。
    思えば、漫画としてこういう方向性のグロテスク表現を、ポップでスタイリッシュなレベルまで押し上げたのは、この作品が最初だったのではないかと思う。

    そして、そのグロテスクには、確かな覚悟があった。
    単なるショッキングな「客寄せ」としてグロを描くのではなく、「徹底してグロを描かなければ、表現したい世界を構築できない。そのためには、どんな非難も受けて立つ」という、覚悟である。
    この一点は、素晴らしい。
    それは、本作以降、雨後の筍のごとく乱立された、信念なきグロとは、根本的に違っていた。
    単行本の一巻を読めば、それはわかる。
    だからこそ、この漫画のグロテスクには、比類なき美しさがあった。

    しかし、残念ながら、作品トータルで見ると、面白かったのは序盤だけだった気がする。
    後半はもう、大風呂敷を広げすぎて、何がしたいのかさっぱりわからなくなってしまった。
    おそらく、それは作者サイドも同じだったのではなかろうか。

    • 9
  2. 評価:4.000 4.0

    それはきっと、取り戻せない

    夫婦生活の有無がクローズアップされているけれど、それは、この漫画が提示している問題の一部でしかない気がする。
    これは結局、「ある時期」を過ぎた大人が、どう生きていこうか、あるいは、夫婦として、どう暮らしていこうか、という話だと思った。

    「幸せかもしれないけれど、何か満たされない」という微妙な渇き。
    ないものねだりのようでもあり、でも、笑い飛ばすこともできない、「こんなのじゃないんだ」という違和感。
    そんな、大人の感情の機微みたいなものが、なかなか巧みに表現されていた。
    まあ、わかる。
    私だけではなくて、多分、多くの大人の読者が、まあ、わかる、と感じたのではなかろうか。
    「自分の人生は本当にこれでいいのだろうか」というような不穏で切ない大人の感傷みたいなものは、ある程度の年月を生きてきた大人であれば、程度の差こそあれ、持つものだと思う。

    ただ、主人公の女性に対して決定的に賛成できないのは、「あの頃」あったものを「取り戻したい」という願望である。

    それはきっと、取り戻せない。

    というか、取り戻せないからこそ、価値のあるものだったのだし、全ての価値あるものは、本来、そういうことなのではなかろうか。

    どんなに悲しくても惨めでも、取り戻したりは出来ないから、だからまた、二人で、新しい何かを作ろうね、と。
    あの頃と同じ遊び方はもう出来ないけれど、あの頃は出来なかったような遊び方を、いつまでも一緒に探そうね、と。
    私は、夫婦って、そういうものだと思うのだけれど。

    • 10
  3. 評価:4.000 4.0

    キャラクターの宝庫

    同時期の連載に「ドラゴンボール」があって「スラムダンク」があって「幽★遊★白書」があって「ジョジョ」まであったんだから、この頃のジャンプは、やはりとんでもなかった。
    リアルタイムで毎週この時期のジャンプを読めて、幸福な少年時代だったと思う。

    今さら語る必要もない超一級のバトル漫画だけれど、とにかく、キャラクターの魅力が凄かった。
    人気の面では主役をあっさり食ってしまった飛影や蔵馬はもちろんのこと、悪役の側も出色の出来で、求道者のような悲しみを背負った戸愚呂弟(決して兄ではない)の造形や、おそらくその唯一の理解者だった幻海、少年誌で描けるギリギリのレベルの闇を抱えた仙水と、歪んだとも言える奇妙な絆で結ばれた樹、ゲスなイケメン死々若丸、完全なネタである美しい魔闘家鈴木などなど、今でも鮮明に思い出せる。

    星をひとつ引いたのは、どんな大人の事情があったにせよ、連載終盤のグダグダ具合に、子ども心を傷つけられたためである。
    仙水編で終わっていてくれたらなあ。

    • 5
  4. 評価:4.000 4.0

    漫画の表現の可能性

    全く好きにはなれなかったし、正直、面白いとも思わなかった。
    しかし、漫画の表現としては、新しさを感じた。

    ただ絵が下手なだけではなく、例えばピカソのような(褒めすぎだけど)「敢えてやっている感」があり、また、その下手さゆえに、奇妙な勢いに溢れていて、繰り返し、好きにはなれないが、無視できないパワーがあった。

    適切な例えかわからないけれど、昔、漫☆画太郎を初めて読んだときに似た衝撃があった。
    (ちなみに漫☆画太郎は好きです。)

    これだけ色々な漫画があり、表現の方法なんて出尽くしたように感じることもある現代だけれど、きっとまだまだ、漫画の表現には可能性があるのだろうと、私はそんなことを考えていた。

    • 4
  5. 評価:4.000 4.0

    現代の寓話

    この作者は、今、自分が最も注目している漫画家の一人である。
    極めて現代的な観点から、しかも普遍的な角度で、老いや死を描くことの出来る、稀有な作家だと感じる。

    昔話の中では、桃が流れてきて元気な子が生まれるとか、おむすびが穴に落ちて財宝が手に入るとか、老人に唐突なラッキーが訪れて、何だかんだで誠実な老人はハッピーになり、意地悪な人間にはバチが当たる。
    が、現代は(多分、本当は昔もだろうけど)誠実な老人にとっても過酷である。
    夫には先立たれ、子どもには見捨てられ、近隣からは孤立し、家はゴミ屋敷となる。
    そんな老婆に訪れた「不意なラッキー」を描いた作品であり、私は、現代社会におけるひとつの寓話として読んだ。

    また、この作者の漫画には、罪と、罪に対する許し、というテーマが繰り返し出てくる。
    寓話的でありながら、単に「善人は結局めでたしめでたし」というだけの話ではなく、そこには罪という影があり、それが作品に奥行きを与えている。
    清廉潔白ではなく、自らの罪を自覚しているがゆえに、他人の罪に対しても寛容であれる、という本作の主人公の姿は、ひとつの本質かもしれない。

    星をひとつ引いたのは、「よろこびのうた」があまりに圧倒的すぎて、つい比較してしまったせいである。
    そういう意味では、私の評価は、あまりフェアではない。

    • 5
  6. 評価:4.000 4.0

    悲しい欲望

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    世の中にはそれはもう、ありとあらゆる種類の性的嗜好がある。
    私自身は性的には多分ノーマルで、面白くも何ともない人間だが、達成するのが極めて困難な性的嗜好を持って生まれなくて、本当によかったと思いながら生きている。
    だって、例えばだが、相手が未成年じゃないと興奮しないとか、相手を殺さないと満足できないとか、そんな運命のもとに生まれてしまったら、いくら何でも人生がハードモードすぎる。
    あーよかった。

    さて、この漫画の主人公は、自分が殺_されることに対して性的興奮を覚える「オートアサシノフィリア」という嗜好を持っている。
    これはもう、性的嗜好としては最大級に悲劇的なそれであり、ある意味、究極でもある。
    何しろ、その欲求が真に満たされるチャンスは、ただの一度しかないからだ。
    我々は、死んだら終わりですから。

    主人公は、それを達成すべく、私のような一般ピーポーの理解を遥かに超えて、あり得ないレベルの労力を費やし、努力を重ねる。
    それは、単純なものさしではかってしまえば、「異常」の一言で切って捨てられる種類の執着だ。
    だが私は、主人公を軽蔑することも、嫌悪することも、上手く出来なかった。

    誇張抜きで、私は性的嗜好を「運命」だと思っている。
    それは、生活や性格を変えることよりもずっと難しい、というか、ほとんど修正不可能なものだと思う。
    現代の社会生活と相容れない種類の性的欲求は、逃れることも抗うこともかなわない、残酷な足枷だ。
    私は「たまたま」そのような足枷を持たずに生まれ育ったに過ぎない。

    私が主人公に対して感じたのは、違和感や不快感ではなく、自らの欲望に殉じようという潔さと、そんなふうにしか生きられない悲しみだった。

    それだけに、終盤の展開はちょっと残念だった。
    はたから見たらどんなに異様でも不毛でも、主人公を死なせてやりたかった。
    また、女子高生の多重人格という設定は、ちょっとぶっ飛びすぎていて、いささか冷めてしまった。

    • 7
  7. 評価:4.000 4.0

    続・原作への愛情

    「鉄鼠の檻」のレビューにも書いたが、この漫画家の、京極堂シリーズに対する思い入れの強さと、作品に対する理解と、そして愛情は、半端でない。
    そこは、本当に凄いと思う。

    ただ、本作、「鉄鼠」に比べると、ちょっと漫画的な誇張というか、胡散臭さみたいなものを感じてしまった。
    星をひとつ引いたのは、それゆえである。

    ただまあ、その欠点は正直、京極夏彦の原作段階での失態なのかもしれないが。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    現代版・乱歩

    江戸川乱歩という作家は、確かに少年少女向けの探偵小説を書いたし、私も子どもの頃、それで乱歩を知った。
    だが、本質的には、非常に倒錯的で妖艶で淫靡な、「少年少女お断り」的な作品こそが、乱歩の真骨頂だったのだろうと思う。
    そういう乱歩の作品の空気感を、最も強烈に具現化したのは、別の漫画だが、「パノラマ島綺譚」ではないかと思う。

    「パノラマ島綺譚」が、乱歩の作品をそのまま漫画に「再現」したものだとすれば、この「孤島の鬼」は、乱歩の作品を現代的な漫画の文脈の中で「再構築」したものだ、という印象を受けた。

    そのどちらが優れているのかは私にはわからないし、そこに優劣はないのかもしれない。
    ただ、個人的な好みの問題としては、「パノラマ島綺譚」に軍配を上げたくなった。

    • 10
  9. 評価:4.000 4.0

    可愛くて不穏

    少女漫画をほとんど読まない、心の汚れた私は、少女漫画のキャラクターに対しては「いや、そんな奴おらんがな」という無粋な感想を抱きがちで、この漫画の主人公の女の子に対しても、それは同様だったのだけれど、漫画のキャラクターとしては非常に丁寧に描き込まれている気がして、比較的すっと受け入れることが出来た。

    作品としては結構異色で、微笑ましい可愛さの中に、不意に、ミステリ的というか、サスペンス的というか、何とも不穏な空気が漂い始める。
    この奇妙なアンバランスがなかなか魅力的で、不穏が大好きな心の汚れた私は、この先その不穏がどう炸裂するのか、楽しみである。

    • 3
  10. 評価:4.000 4.0

    死者を抱えて

    子どもの頃、従姉の家に大量にあった、今はなきホラー漫画雑誌で読んだ。
    当時、私は何となく、この漫画が苦手だった。
    この漫画の持つ、何となくもの悲しい空気が、ホラーとは別の意味合いで、怖かったのだと思う。

    大人になって読み返してみて、この漫画で描かれている悲しみというのは、死者を抱えて生きることの悲しみではないか、と思った。
    そして、その悲しみは、この漫画の主人公のように、霊を見ることの出来る人間だけが背負う悲しみではない。
    私たちの誰しもが、いずれは、死者を抱えて生きるしかないからだ。
    そういう意味では、特殊な能力を持つ人間を主人公にしながら、とても普遍的なことを描いた漫画である、と言えるかもしれない。

    幼い私には、いつかは自分も死者を抱えて生きてゆかなくてはならないのだ、という真実は、いささか重すぎたのかもしれない。

    • 6

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