rokaさんの投稿一覧

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評価1 5% 35
1 - 10件目/全150件
  1. 評価:4.000 4.0

    駄目人間の可愛さ

    続編。
    といっても、ストーリー上に直接の繋がりはなく、本作を単独で読んでも全く問題はない。

    何度も何度でも言うがこの作者はマジで天才で、その才覚のひとつに、「現実世界で出会ったら離れたくなるような人間をとても可愛く魅力的に描く」というものがある。
    前作に比べて、本作はその技量が顕著に発揮されていると感じた。
    「技量」と書いたが、それは、単なる技術的な問題ではなく、人間に対するある種の優しさが根本にないと成立しない。
    素晴らしい。

    星をひとつ引いたのは、前作があまりに完璧に過ぎたためであり、不満はまるでない。

    • 3
  2. 評価:4.000 4.0

    もしもヒーローがいるなら

    壮絶ないじめ、からの苛烈な復讐。
    それは今や、いじめを扱う漫画の完全なテンプレである。
    その全てを否定するつもりもないが、そのようにして作品化され消費されるいじめという題材は、何だかもうただのアイテムに過ぎないような気がする。
    それを嘆くわけではない。
    ただ、何だかなあ、という思いだけがあった。

    本作は、そのような作品とは全く違う。

    「いじめ探偵」の設定は、表面的なリアリティーという意味では破綻している。
    しかし、彼の台詞に私はハッとした。
    「ボクは、いじめを終わらせるために仕事をしたんだ。彼らに"罰"を与えるために仕事したんじゃない」
    「キミが毎日、友達と楽しく過ごす―それが"最大の復讐"になる」
    本作は、作品としての根本のリアリティーを犠牲にしながら、いじめとどう向き合って生きるか、という部分のリアリティーでは、有象無象の作品群を圧倒している。
    「目には目を」の安直なカタルシスに流れるのではなく、あくまで健全な精神で、いじめと、それに立ち向かう子どもと大人を描こうとしている。
    悪に立ち向かうが、俺は悪には落ちない。
    そんな当たり前の立ち位置を保持できる漫画がこの手のジャンルには少なすぎる中、本作の心意気はとても真っ当で、強いと思った。

    いじめを解決するために無償で仕事をする。
    そんな探偵はいない。
    いじめという問題に、たぶんヒーローはいない。
    しかし、もしもフィクションの力を借りてそれを描くなら、これ以上の描き方はないような気がした。

    • 6
  3. 評価:4.000 4.0

    40秒で支度しな!

    先に言っておくが、このレビューの中で「こういう人間」という言い方を何度か使うし、その説明を私はしない。
    人格に病名みたいなものをつけて安易にカテゴリ化するのが私は嫌いだし、かといって、「こういう人間」を的確に説明するのは難しすぎる。
    その難しすぎることを、この漫画はとても誠実に精密にやっている。
    しかも、きちんと楽しめる漫画作品としてのフォーマットに落とし込んだ上で、だ。
    それが、とにかく凄い。
    そういうわけで、どんな人間なのかは作品を読んでみてほしい。
    一読の価値はある。

    私は「こういう人間」がほとんど誰よりも嫌いだ。
    「ほとんど」と書いたのは、もっと嫌いな人間がいるからだ。
    それは、「こういう人間」に盲目的に追従する人間たちである。
    本作に即して言えば、ルミン本人よりも、その信奉者たちの方がよりタチが悪いし、気味が悪いし、言いようのない嫌悪感を私は覚える。
    邪悪な神は恐ろしいが、もっと恐ろしいのは、その狂信者たちである。

    狂信者たちは、たとえこの漫画を読んだところで、「あれ?私が信じているのはもしかして…」とすら疑わない。
    それが狂信者というものなのだ。
    私たちが講じることの出来る唯一の策は、「こういう人間」およびその狂信者たちと関わらずに生きてゆくことだけである。
    可及的速やかに逃げるがいい。
    そういうわけで、40秒で支度しな!

    • 15
  4. 評価:4.000 4.0

    テンプレに染まらない

    ネタバレ レビューを表示する

    作品として、とてもよくまとまっていると思った。
    不倫モノだが、昨今よくある有象無象のドロドロめちゃくちゃ何でもあり復讐劇みたいな漫画とは全く違う。

    まず、夫(および不倫相手)を極端な「悪者」として描いていない点がポイント高い。
    よくある不倫モノの漫画は、大体、夫(とその不倫相手)が常軌を逸した悪い奴、嫌な奴、としてこれでもかと躍動する。
    それは、作中の復讐が正当に見えるようにという演出でもあるのだが、正直、「そんな奴いる?」とか、「何でそんなのと結婚したん?」とか、「いや、そんな人間を選んだのはお前だろ」とか、冷めてしまうことも多い。
    その点、本作はとてもバランスがよかったと思う。
    不倫は褒められた行為ではない。
    だが、それをやっているのは血も涙もないモンスターではなく、感情を持って社会生活を営んでいる人間だ。
    しかも多くの場合、あなたと(かつて)愛し合った人間なのだ。
    そのことを忘れていない作品としてのスタンスに、私は好感を持った。

    また、妻&夫の不倫相手のSNS上でのやり取りと、宅配の荷物の取り違え事件、この二つの要素が本作にパリッとしたオリジナリティーを与え、またサスペンス的なスリルも生んでいて、上手いな、と思った。
    ただ、宅配の件に関しては、結局何だったのかわからないままで終わるので、サスペンス的な文脈で言うと、ストレスが残る。
    しかし、考えてみれば、こういう種類の「ちょっと奇妙なこと」が日常で起きたとき、その真相というのは、「結局わかんなかったよね」で終わるのが普通ではなかろうか。
    そういう意味では、リアル志向の本作として相応しい終幕だったとも見える。

    掃いて捨てるほどある不倫モノ漫画のテンプレから綺麗にはみ出した、なかなかの良作。

    • 2
  5. 評価:4.000 4.0

    感情を殺しにきてやがる

    ネタバレ レビューを表示する

    先に断っておくが、「ネタバレあり」でレビューを書いているけれど、それでも、内容的なネタバレは避ける。
    まだ読んでいない人には絶対にどういう話なのか伏せておきたいし、既に読んだ人はストーリーに触れずとも私の言いたいことは伝わるだろうと思うからである。

    殺し屋として育てられた少女「ねずみ」の話。
    ひねくれたことを言って申し訳ないが、私はこの「少女の殺し屋」という設定がそもそも苦手で、「いや、そんなもんおらんやろ」とスタートから一歩引いてしまう人間である。
    そういう意味では、設定段階でハンデ戦(私のせいで)なのだが、それにしても、この漫画は結構凄いな、と思った。

    殺し屋の漫画だが、間違いなくこの作者は、読者の感情を殺しにきている。
    我ながら、これ、結構うまく本作の核心を言い得ていると思うので、私としては珍しく、短めのレビューで終える。

    繰り返す。
    この漫画は、読者の感情を殺しにきてやがる。
    覚悟して読むがいい。

    • 37
  6. 評価:4.000 4.0

    不穏すぎるホームドラマ

    見る影もなく老いた父親、歩けなくなった母、そして、どう見ても異様な引きこもりの兄。
    そんな家族のもとに帰省した次男が主人公。

    じめじめした粘着質なトーンで、終始「きっといつかとんでもなく酷いことが起きる」という不穏さが途絶えない。
    マジで嫌な作品だが、このねばねばとした緊迫感は大したものだと思う。

    最初は引きこもりの兄のインパクトが強いが、家族は皆、それぞれに何かを抱えていて、読み進めるうちに、誰がまともなのかわからなくなってくる。
    このあたりは、正常と異常の境界線に揺さぶりをかける、あるいは、ステレオタイプの家族像という幻想を破壊する、そんな意図を感じる。
    その意味で本作は、穏やかで温かなホームドラマに対するアンチテーゼであり、悪意あるパロディでもある。
    その核心には、「普通」なんてねえんだよ、という一種の絶望感や諦念みたいなものを感じて、気が滅入る。
    普通に生きることの難しさ、というのは、現代のひとつのテーマであると思う。
    全く別の作品だが、「ヒル」という漫画でも同じことを感じた。

    あと、タイトルが凄い。
    「住みにごり」って、いかにもそれらしい言い回しだし、内容的にもズバッと決まっている感じだけど、いや、そんな日本語ねえから。
    凄いなこれ。

    • 17
  7. 評価:4.000 4.0

    悪意がない故に

    読んでいて、どうにもならない苛立ちともどかしさに頭が痛くなった。
    そういう感情を喚起させるための作品だと思うから、成功している、と言ってよいと思う。

    いわゆる「毒親」問題を扱った作品だが、子どもに害悪を及ぼす親にも、色々ある(だから、「毒親」と一括りにカテゴリ化するのが私はあまり好きではない)。
    例えば、大きな方向性だけ見たって、明確な悪意を持って子どもを傷つけようとする親と、「子どものためを思って」結果的に悪をなす親、両者を同一に「毒親」問題として語ることは、問題の本質を見誤らせる気がする。

    本作で描かれているのは後者の方、「子どものためを思って」という親だが、考え方によっては、こっちの方がタチが悪いとも言える。
    過剰な暴力とか食事を与えないとか、そういった事象であれば法でもって抑止することは一応、出来る(それが難しいことは重々承知しているが)。
    しかし、「子どものためを思って」型の親が精神的に子どもを追いつめる行為に関しては、外部から抑制する術が多分、皆無に近い。

    しかも、
    「この子のためなのよ」
    「私が一番この子のことをわかってるのよ」
    「私が何とかしてあげなくちゃ」
    という強固な思い込みに裏づけられているぶん、周りからの声は極めて届きにくい。

    「悪いことをしてやろう」として悪をなす人間ばかりではない。
    残念ながら、善をなさんとして悪をなすのが人間だし、そのような人間の営みは、しばしば甚大な悲劇を引き起こす。
    ヒトラーだって自分では善のつもりだったんだろうし。

    難しい。
    解決法があるのか、私にはまるでわからない。
    ただ、子を持つ立場の人間は、読む意味のある漫画だと思った。
    それだけでもう、この種の作品の価値としては、十分かもしれない。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    消えた風景を

    爆笑するような種類の面白さではなく、懐かしさに心暖まる、という感じのエッセイ漫画。
    若い読者が読んでもいいが、描かれている時代(昭和)からすると、本来の対象年齢はかなり高い(ドンピシャなのは四十代後半くらいか)。
    イメージとしては「ちびまる子ちゃん」に通じるものがあるが、男性読者は、本作の方が共感ポイントは多いかもしれない。

    すごいな、と思うのは、風景の再現度だ。
    これには、二重の意味がある。

    ひとつは、昭和という時代の風景の再現。
    当たり前だが、昭和の風景というのは、今はもう、消えたものだ。
    家屋や町並みや生活用品という意味合いでの風景もそうだし、人間の姿という意味でもそうだ。
    それを、漫画作品のフォーマットの中に的確な精度で落とし込むのは、なかなか出来ることではない。

    もうひとつは、「あの頃の僕ら」という風景の再現度である。
    誰にでも子ども時代はあるし、誰にでも思い出はあるが、特別なイベントではなく、「あの頃」の普通の日々について語ることで、それを作品として成立させるなんてね、無理よ。
    それを可能にするには、普通の日々を普通ではない角度から見つめられる目がなければならない。
    それが遠い過去のものとなれば、単なる記憶力とは別の、子ども時代の記憶を自ら再構築する才覚がなければならない。

    長閑でノスタルジックなエッセイ漫画として、失われた風景を描出することに成功した良作だと思う。

    • 3
  9. 評価:4.000 4.0

    どうかと思うけど

    ネタバレ レビューを表示する

    「闇金ウシジマくん」本編ではウシジマくんの宿敵と言うべきポジションにいた、滑皮を主人公に据えたスピンオフ作品。
    ラーメンが題材にはなっているけれど、本格的なグルメ漫画というわけではなく、あくまで滑皮のキャラを逆手にとった裏社会コメディみたいなのが基本線で、ラーメンはそれこそ軽い「味つけ」という位置づけ。
    まあ、それはいいのだが。

    ちょっとどうかと思うのは、本作において付与された滑皮というキャラのイメージである。
    というのも、私は「ウシジマくん」本編で、滑皮という人間が嫌いだった。
    理由は単純で、ウシジマくんにひどいことをするからである。
    あの漫画は、主人公のウシジマくん自身が決して「善人」ではないわけで、どこに「悪役」をもってくるのか、というのは難しい問題だったはずだが、それをいとも容易くクリアして見せた滑皮という男は、まさに出色の悪役であった。
    それが、どうだろう。
    このスピンオフで、ちょっと好感度が上がってしまうような気がする。
    感じ方に個人差はあるにせよ、滑皮という男のキャラの変貌ぶりは、いかがなものか、と。

    ただ、そのような難点はあるものの、スピンオフとして原作ファンに嬉しいサービスもあった。
    それは、本編で登場した(往々にして悲惨な末路を辿った)キャラたちの「その後」が描かれている点である。
    暴走族の愛沢、情報商材詐欺師の天生、オサレエンペラーのG10(お前生きてたんかい!)など、原作ファンがニヤリとする出演の数々、こういうのがスピンオフの醍醐味だろう。
    特に風俗嬢の瑞樹の登場は、本編では「ちょっと気の毒すぎないか」と思っていただけに、何だかほっとした。
    天生ハイパーメソッドで一山当ててラーメン屋で成功した愛沢が、店に来た滑皮にラーメンのアピールとか、もう面白すぎる。

    というわけで、根本のところでは難点もありつつ、脇の部分ではなかなか楽しいスピンオフであった。

    • 3
  10. 評価:4.000 4.0

    練られ過ぎた気もするが

    いわゆる「世にも奇妙な物語」系の短編漫画で、なかなか面白かった。
    理由は明確で、個々のエピソードがよく練られていることに尽きる(これはまあ、原作の利であって、漫画ならではの魅力ということではないが、とりあえず、その話は置く)。
    「これ系」の作品は往々にして「ありがちな話」の域を出ず、「話としてしょーもない」ものになりがちなのに対して、本作はひとつひとつの話がパリッと立っており、オリジナリティーがある。
    漫画としての演出は控えめなのだが、原作の利を活かすという意味では、このくらいでちょうどいいのかもしれない。

    ただ、読者としてワガママな言い分になってしまうが、欲を言えばちょっと「作り過ぎ」である。
    話としてよく出来ている、とは思うのだけれど、あまりにきちんと練られ過ぎていて、そんなにパズルのピースがピタピタはまるみたいに現実は成立していないよな、と(性格の悪い感想だが)感じてしまった。
    ちょっともっともらしいことを言わせてもらうと、人間が出来事を起こして物語になる、のではなく、出来事を成立させる駒として人間がいる、というような印象を持ってしまった。
    好みの問題だが、私は前者が好きなので。

    もちろん、その「よく出来た話」を十分に楽しんだのだから、あまり文句をつけるつもりもないのだけれど。

    • 9

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