4.0
誰もが地獄を抱えて
最初は、社内の様々なハラスメントや陰険な人間関係を、ヒーロー的な初瀬女史が軽快に成敗してゆく、という類いの昨今よくある現代版勧善懲悪モノかと思った。
違った。
本作が志した方向性というのはむしろ、完璧な善人というのも、完璧な悪人というのも、そして完璧なスーパーヒーローのような人間もいないのだ、というスタンスではなかったか。
通りいっぺんの勧善懲悪には絶対にしないぞ、という、その心意気やよし。
主人公は決して単なるお人好しではなく、素晴らしいところもあるが、そりゃお前が悪いわ、という部分もある。
主人公の同僚や上司も、いったんは「悪役」として作品を賑やかすものの、それぞれに悩みや迷いを抱えて生きている。
どうでもいいけど「フラッシュモブのプロポーズ」のくだりは悪い意味で必見で、これまで見たり読んだりしたあらゆるプロポーズのシーンの中で最も胸が痛んだ。
繰り返し、悪い意味で。
まあ、それはいい。
それはいいとして、何より初瀬自身が、自身のあり方について葛藤を抱えたり、ろくでもない過去を背負ったりして生きている。
いい奴にも賛同できないところはあるし、嫌な奴にも同情すべき点がある。
当たり前と言えば当たり前だが、それが人間というものではなかろうか。
どんなふうに生きたところで、人生はイージーモードにはなり得ない。
天才は天才の、ろくでなしはろくでなしの、それぞれ背負った地獄がある。
私はそう思うから、本作の立脚点がとても真摯に見えて、なかなか好きであった。
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各位、私のことはお構いなく