rokaさんの投稿一覧

投稿
755
いいね獲得
23,219
評価5 20% 150
評価4 28% 214
評価3 30% 230
評価2 17% 126
評価1 5% 35
391 - 400件目/全511件
  1. 評価:5.000 5.0

    気づいた

    「口裂け女」というあまりにベタで古典的な題材を使いながら、決して埋もれることのない、ハサミのように切れ味鋭いホラーに仕上げている。
    流石と言う他にない。
    この漫画の口裂け女の「正体」そのものが、ある意味で、怪談話や都市伝説の核心を射抜いていると思う。

    小さい頃、従姉妹の家に行くと、今はなきホラー漫画の雑誌が大量に置かれていた。
    そのどれもこれも、表紙を飾っていたのは犬木加奈子の絵だった気がする。
    当時の私にとって、犬木加奈子の絵は、たまらなく魅力的な怪しい世界への入り口に立つ道標のような、象徴的な存在だったのだと思う。
    間違いなくひとつの時代を築いた作者であり、私のような子どもは、きっと日本中にたくさんいたことだろう。

    二十年ぶりくらいに彼女の漫画を読み直して、やっと気づいた。
    私は、犬木加奈子という人の絵が、好きなのだ、と。
    というか、ずっと好きだったのだ、と。
    それこそ漫画で、「君のことがずっと好きだったんだって、やっと気づいたよ」とかほざく阿呆な男がいるでしょう。
    私はそのレベルである。
    しかし、おかげで、これからこの人のホラーを読む度に、温かい気持ちになれることだろう。
    そんな漫画は、私にはあまりない。
    そして、そんなホラー漫画は、ひとつもない。

    • 6
  2. 評価:5.000 5.0

    「お約束」の拒否

    読み始めると、止まらなかった。
    何ポイント献上したかわからん。
    私がオムニバスを好きなこともあるが、それにしても、毎回、見事な安定感、そしてテンポのよさ。

    何が凄いって、作品として、一貫して冷徹にルールを守っているところだ。
    主人公は依頼人の寿命と引き換えに呪殺を請け負う死神みたいな存在だが、あくまで漫画の主人公だ。
    だから普通は、もうちょっと融通が利く。
    つまり、ルールを破る。
    漫画の展開として、都合のいいことをやる。
    具体的に言えば、「いくら何でもこの人が死ぬのは可哀想だろ」という人は、殺さない、とか。
    言い方は悪いが、「死んでもいい」と読者が感じるようなキャラを、被害者に設定する、とか。
    一度は請けた依頼でも、それが依頼人にとってあまりに悲劇的な結末(例えば勘違いによる呪殺など)をもたらす場合には、それを教えてやってキャンセルさせてやる、とか。
    そういう展開は、基本的に、ない。
    そういう甘さが、この漫画にはない。

    物語としてサクッと感動を演出できるはずの「お約束」よりも、冷徹にルールを守ることを選んでいる。
    そのぶれない姿勢は、作品として、とても美しいと思った。

    • 36
  3. 評価:5.000 5.0

    それは愛か

    「永遠の恋人」を探す不気田くん。
    しかし、彼の不遇な運命により、彼の見初めた女性たちは次々に命を落とす。
    主に不気田くんのせいで。
    ところが、その度に新たな永遠の恋人がソッコーで見つかる。
    この変わり身のはやさ。
    そんで、その女性もやはり死ぬ。
    不気田くんのせいで。
    もう笑うしかない。
    わたしはそんな不気田くんが大好きである。

    愛は、難しい。
    不気田くんのやっていることは最悪のストーカー行為だが、もし彼の想いが実ったならば、それは、美しい愛になり得てしまうわけであって。
    いや、実ろうが実るまいが、愛は、愛なんじゃないの、と。
    容姿が不気味だったりアプローチがちょっと変わっている(ちょっとどころじゃないけどね、実際)と、愛じゃなくなっちゃうのか、と。
    どうなんでしょうか、と。
    そういう意味で、この作品は、非常にインパクトのあるホラーであり、一方では完全にギャグであり、そして、愛とは何なのかを問いかける、異色のラブストーリーでもある。

    ラストの「ある愛の詩」には、うっかり感動してしまった。
    不気田くんは、自分の愛の敗北を認めたのだと思う。
    しかし私は、不気田くんの愛もやはり、愛だったのだと認めてあげたい。
    懸命な愛し方では、なかったかもしれない。
    それでも、愛は、愛だったのではないかと。
    だからこそ、敗北を認めた不気田君が、醜い彼が見せた全ての姿の中で、唯一、美しかったのではないかと。

    • 6
  4. 評価:5.000 5.0

    一話の中に、人生が

    様々な人々の運命と人間模様を、静かに、ドラマチックに描いた作品。

    シリアスで、悲惨だが、どこか滑稽で、優しくて、私の大好きなコーエン兄弟の映画を思わせるような漫画であった。

    基本的に一話完結(サイトだと二話)で、手軽に読める。
    しかし、一話の密度は非常に濃い。
    短い尺の制約の中で、毎回ここまでしっかり「人間」を描けるものなのか、と驚いた。
    そこにあったのは、まぎれもなく、誰かの「人生」であった。

    古い作品ではあるし、色々な描写に時代を感じる。
    けれど、それらが違和感なくすっと入ってくるのは、描かれている人間の姿が、それだけ普遍的で、核心を突いているということなのだろう。
    今も昔も、人間は等しく愚かで、哀しく、そして、素晴らしい。
    そんな、皮肉と温かみをともに感じた。

    小さな一話の中に、毎回確かな人生が詰まっている。
    そんな漫画を、私はあまり知らない。

    • 22
  5. 評価:4.000 4.0

    客観的に見ると、なかなか残酷な話ではある。
    が、作品としては、とても救われている印象がある。
    その理由は、単純だが、子どもの可能性、というものを、静かに、きちんと描いているからではないかと思う。

    これほどの悲しみと、これほどの希望に満ちた「また会おうね」を、私は他に知らない。

    • 8
  6. 評価:4.000 4.0

    ループする孤独

    コンパクトな尺の中に、ループすることの絶望感や孤独感が、上手く収められていると思った。

    特に孤独感の表現は出色で、「自分だけが今日という日を知ってしまっている」というある種の特権が、実のところひどい重荷である、という描写には説得力があった。

    そして、二つの孤独が出会うことで生まれ、育まれる感情。
    そこから安直なラブストーリーに流れなかった点も買えるし、ラストの切ない切り返しも切れ味が鋭い。

    本当の絆というのは、互いに孤独を知る者の間に生まれるのかもしれない、と、私はそんなことを考えていた。

    • 6
  7. 評価:4.000 4.0

    希望

    最初に白状するが、私は、現代の日本の多くの宗教に対しては、かなりの嫌悪感を抱いている。
    それは、多分に偏見に基づく。
    だから、ちょっと申し訳ないとも思う。
    けれどこの嫌悪感は、いくつかの決定的な経験と、それにまつわる私の強い怒りから、長い年月に渡って形成されたものであり、今ではほとんど生理的なレベルに達していて、もう一生変えられないと思う。

    以前、妻がこんなことを言っていた。
    「もし、宗教を強く信じる親のもとに自分が生まれていたら、と考えると、それがこの世で一番怖いことかもしれない」と。

    妻は、二つの意味で言ったのだと思う。
    ひとつは、自分の人生が、宗教によって制約・束縛される恐怖。
    これは、要するに「やりたいことがやれない」というレベルの話だ。
    もうひとつは、自分の人生の自由が、宗教によって制約されている異常(だと私は思う)さにすら気づけないかもしれない、という恐怖。
    こっちの方が、より、怖い。

    私は、妻に言った。
    もし、そういう家庭に生まれても、あなたはきっと、気づけたと思うよ、逃げ出せたと思うよ、と。
    俺もその自信あるよ、と。

    嘘ではなかった。
    でも、本当に、そうだろうか?

    この漫画の作者のような家庭に育った人間が宗教から抜け出すには、文字どおり、かなりの年月に渡る自分の人生を「無駄にする」覚悟がなければ、無理だ。
    どうであれ、それまでの人生が「間違っていた」のだ、と認めることは、決して易しくない。
    人間は誰だって、積み上げたものを否定したくない。

    だから、この漫画の作者の決断には、本当に胸が熱くなった。
    こういう種類の人生から抜け出した人の証言に、初めて出会った。
    そして、希望を抱いた。
    この世には、自分が望んだわけでもない宗教の囲いの中に生まれ、そこから抜け出せずに一生を終える人が、いくらでもいる(それが不幸であるかは難しいけれど…)。
    でも、自由の風を感じて、それに憧れて、信じて、勇気を持って踏み出す人も、きっと、いるのだ、と。
    そのことについて、作者に、ありがとう、と言いたい。
    その勇気を、意志を、そして、何よりも彼女がつかんだ自由を、私は、心の底から祝福したい。

    • 33
  8. 評価:3.000 3.0

    物足りなさの理由

    主人公は十分すぎるくらい同情に値するし、ストーリーもシンプルで端正で、読む側としては「やっちまいな!」という復讐モードには入りやすい。

    しかし、私はどうにも入り込めなかった。
    なぜだろう、と考えて、多分、主人公が普通すぎる、というか、まともすぎるからではないかと思った。

    当たり前のことだが、本当の復讐には多大な労力がかかる。
    相手が手強ければ尚更だ。
    時間とコスト、だけではなく、自分の人格や人生そのものをある程度は犠牲にしなければ、復讐に生きるなんて、無理だ。
    私はそう思う。
    「いたってまともな」女の子が、復讐なんて出来るわけがない。
    一見まともに見えたとしても、少なくとも一定量は、悪魔に魂を売り渡さなければ。
    そういう影も闇も、この漫画からは感じられなかった。

    • 35
  9. 評価:3.000 3.0

    設定に乗れない

    話としては楽しめた部分もあった。
    しかし、根本的な問題として、「高校生」という設定に、どうしても乗っかれなかった。

    金か友情か、というのがテーマとして成立しないとは言わないが、高校生にその葛藤、あるか?
    「カイジ」の世界ならわかる。
    他人の生命を踏みにじって自分をひどく汚して尊厳も見栄もかなぐり捨ててまで金を追求する人間がいくらでもいることは、別に理解できる。
    けれど、そういう人間としての烙印みたいなものって、高校生に押しつける必要があるものなのか?
    大人が子どもに負ける部分は色々あるが、そのひとつは、金の束縛から自由である、ということではないのだろうか?

    倫理的な話をしたいわけではなく、私はただ単に、その設定の違和感に馴染めなかった。
    まあ、現役の高校生が楽しく読んでいるなら、別にいいんだけど。

    • 9
  10. 評価:4.000 4.0

    ホラー漫画らしさ

    一応のストーリーはあり、どこでどう繋がるのかという面白さもあるのだが、それは本質ではなく、この漫画には、もっと瞬間的に、感覚的に、ゾッとさせるものがある。
    ストーリーで怖がらせるのではなく、わけがわからないままに、何か、怖い、と感じさせること。
    それこそが、ホラー漫画らしさ、というものではないかと思う。

    嗚呼、タイトルが素晴らしい。

    • 6

設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています