4.0
ホラー漫画らしさ
一応のストーリーはあり、どこでどう繋がるのかという面白さもあるのだが、それは本質ではなく、この漫画には、もっと瞬間的に、感覚的に、ゾッとさせるものがある。
ストーリーで怖がらせるのではなく、わけがわからないままに、何か、怖い、と感じさせること。
それこそが、ホラー漫画らしさ、というものではないかと思う。
嗚呼、タイトルが素晴らしい。
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6
24位 ?
一応のストーリーはあり、どこでどう繋がるのかという面白さもあるのだが、それは本質ではなく、この漫画には、もっと瞬間的に、感覚的に、ゾッとさせるものがある。
ストーリーで怖がらせるのではなく、わけがわからないままに、何か、怖い、と感じさせること。
それこそが、ホラー漫画らしさ、というものではないかと思う。
嗚呼、タイトルが素晴らしい。
それぞれの短編で舞台は全く違うが、どれも「ブルー」なのだろうと思う。
ブルーというのは不思議な色で、空と海の色、爽やかで雄大で、若さを表したりもするけれど、憂鬱な気分の象徴だったりもする。
晴れ晴れとしたブルー、切ないブルー、淡くて微妙なブルー、そんな様々なブルーを、どれも心温まるタッチで描いた作品集。
私は、表題作の「ブルー・サムシング」が一番好きだった。
浅野いにおという作者は、若者の漠然とした不安感みたいなものを描くのがとても上手い。
その不安感が、時代を反映したものなのか、若者に普遍的なものなのか、個人の問題なのかは、わからない。
でも、彼らの気持ちは、すごくわかる。
たとえば、ゆるい幸せがだらっと続くこと、それで満ち足りている気がするんだけど、これでいいんだ、って気もするんだけど、心のどこかでは「本当にこれでいいのかな」って迷いが、「自由」とかいう不確かな魔物の囁きが消えなくて、何かになれる気もして、何にもなれない気もして、何にもなりたくない気もして、だいたい、このゆるい幸せだって、いつ消えるともしれなくて、いつか不意にソラニンみたいな悪い芽が出て、さよならが来るかもしれないじゃん。
そういう不安感は、彼らのものでもあり、私のものでもあった。
かつては、という話だ。
私はいつの頃からか、自然にその場所を抜け出し、ゆるい幸せを守るために生きることを迷わなくなった。
けれど、かつての思いの名残りみたいなものは、今でも私の中で、ライブハウスの残響のように微かに鳴っていて、それをこの漫画にどうしようもないくらいに揺さぶられた。
読んだときも、ちょっと泣いた。
が、翌日、仕事に向かう車の中で、アジアンカンフージェネレーションの「ソラニン」を聴きながらこの漫画のことを思い出して、涙が止まらなかった。
そんな漫画って、ちょっと凄いな、と思った。
基本的に一話完結で、サクッと読める。
その手軽さはよし。
主人公の食通ぶりも、それなりのアイデンティティーにはなっている。
読んでいると何か食べたくなる漫画である。
ただ、美食家の探偵、という設定自体は、推理小説の世界では特別に斬新なものでもなく、その設定と主人公のキャラと絵柄の都合上、緊張感には欠ける。
それは推理ものにとってはほとんど致命傷であって、その負をカバーするほどの魅力が「喰いタン」という設定にあるかというと、それには正直、疑問符がつく。
短いストーリーの中に、多彩な魅力が詰まっている。
短編のお手本のような、見事な作品だと思う。
手軽なミステリであり、切ない友情の物語であり、ちょっとしたファンタジーでもある。
その、ともすれば違和感を与えかねないファンタジーの味つけが、不思議と自然に作品にマッチして、爽やかで優しい色合いを見せている。
ラストの松田君の表情が素晴らしい。
「うしおととら」の作者による短編集。
躍動感のある描写は流石で、深みのある台詞も健在。
ただ、正直、短編集の中で当たり外れはあると思う。
個人的な趣向を含めて。
私は「夜に散歩しないかね」を推す。
どの話から読むか迷った方は、是非。
この人の作品は、化け物とか復讐とか殺_人とか、ダークなモチーフを描きながらも、不思議といつも少年漫画らしい爽やかさがあって、とてもバランスがいいと思う。
閉鎖空間を舞台にした、いわゆるソリッド・シチュエーション・スリラーだが、「子ども」の目線の描き方が巧みである。
子ども時代に特有の、大人に対するある種の不信感みたいなものが、作品のカラーに上手く乗っている。
結果、単なるサスペンスではない、ちょっと感傷と郷愁を誘うような、独特の雰囲気を醸し出している。
ただ、道中なかなか引き込まれただけに、オチの弱さはやや残念ではあった。
「今際の国のアリス」の作者が原作で、作画は別の人。
個人的な好みは別れるだろうが、この作画もよかった。
登場人物たちのバックグラウンドに何があったのか、という謎には吸引力があり、テンポのよさも相まって、ぐいぐい読ませる。
「今際の国」もそうだったが、異世界の描き込みは非常に丹念で、没入感は高かった。
「今際の国」が匿名の「架空の世界」であったのに対して、本作のそれは現実の日本各地を舞台にしており、その点もまた違った見所があった。
ただ、「今際の国」が凝ったゲームの完成度で魅せた漫画であったのに比べると、わりにシンプルなサバイバルであり、「今際の国」のファンとしては、一抹の物足りなさも感じた。
本家同様、個々のキャラの立て方は流石、と思ったけれど。
今の時代に読むと古風な絵柄だが、迫力があり、引き込まれた。
自殺を試みた少女の前に突如現れたヒーローとの逃避行、という「いかにも少女漫画」的な設定ではあるが、微妙なところでラブロマンスに走らなかった点に好感を持った。
そのおかげもあり、甘すぎず、それでいて希望を与え得る話にもなっていて、特に少年少女を対象とした漫画ということを考慮すると、私は好きであった。
……というレビューを表題作のみ読んで書いたのだが、「黒い天使」を読んで全く印象が変わった。
代理ミュンヒハウゼン症候群については一応知っていたので、「ふんふん」と読んでいたが、完全にやられた。
めちゃくちゃ怖い。
初めての方は、是非「黒い天使」を読んでほしい。
稲川淳二は好きである。
が、まさか漫画化されていたとは、何とも時代を感じる。
彼の怪談の中身を漫画にしただけではなく、稲川淳二本人も、語り手としてちゃんと出てくる。
それにしても、第1話が「そして俺は死んだ」…タイトルからネタバレしているのもどうかと思う。
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