rokaさんの投稿一覧

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401 - 410件目/全511件
  1. 評価:4.000 4.0

    色々なブルー

    それぞれの短編で舞台は全く違うが、どれも「ブルー」なのだろうと思う。

    ブルーというのは不思議な色で、空と海の色、爽やかで雄大で、若さを表したりもするけれど、憂鬱な気分の象徴だったりもする。
    晴れ晴れとしたブルー、切ないブルー、淡くて微妙なブルー、そんな様々なブルーを、どれも心温まるタッチで描いた作品集。

    私は、表題作の「ブルー・サムシング」が一番好きだった。

    • 7
  2. 評価:5.000 5.0

    揺さぶられる

    浅野いにおという作者は、若者の漠然とした不安感みたいなものを描くのがとても上手い。
    その不安感が、時代を反映したものなのか、若者に普遍的なものなのか、個人の問題なのかは、わからない。
    でも、彼らの気持ちは、すごくわかる。

    たとえば、ゆるい幸せがだらっと続くこと、それで満ち足りている気がするんだけど、これでいいんだ、って気もするんだけど、心のどこかでは「本当にこれでいいのかな」って迷いが、「自由」とかいう不確かな魔物の囁きが消えなくて、何かになれる気もして、何にもなれない気もして、何にもなりたくない気もして、だいたい、このゆるい幸せだって、いつ消えるともしれなくて、いつか不意にソラニンみたいな悪い芽が出て、さよならが来るかもしれないじゃん。

    そういう不安感は、彼らのものでもあり、私のものでもあった。
    かつては、という話だ。
    私はいつの頃からか、自然にその場所を抜け出し、ゆるい幸せを守るために生きることを迷わなくなった。
    けれど、かつての思いの名残りみたいなものは、今でも私の中で、ライブハウスの残響のように微かに鳴っていて、それをこの漫画にどうしようもないくらいに揺さぶられた。

    読んだときも、ちょっと泣いた。
    が、翌日、仕事に向かう車の中で、アジアンカンフージェネレーションの「ソラニン」を聴きながらこの漫画のことを思い出して、涙が止まらなかった。
    そんな漫画って、ちょっと凄いな、と思った。

    • 11
  3. 評価:3.000 3.0

    設定の微妙さ

    基本的に一話完結で、サクッと読める。
    その手軽さはよし。

    主人公の食通ぶりも、それなりのアイデンティティーにはなっている。
    読んでいると何か食べたくなる漫画である。

    ただ、美食家の探偵、という設定自体は、推理小説の世界では特別に斬新なものでもなく、その設定と主人公のキャラと絵柄の都合上、緊張感には欠ける。
    それは推理ものにとってはほとんど致命傷であって、その負をカバーするほどの魅力が「喰いタン」という設定にあるかというと、それには正直、疑問符がつく。

    • 3
  4. 評価:5.000 5.0

    理想的な短編

    短いストーリーの中に、多彩な魅力が詰まっている。
    短編のお手本のような、見事な作品だと思う。

    手軽なミステリであり、切ない友情の物語であり、ちょっとしたファンタジーでもある。
    その、ともすれば違和感を与えかねないファンタジーの味つけが、不思議と自然に作品にマッチして、爽やかで優しい色合いを見せている。

    ラストの松田君の表情が素晴らしい。

    • 11
  5. 評価:4.000 4.0

    ダークサイドも爽やかに

    「うしおととら」の作者による短編集。

    躍動感のある描写は流石で、深みのある台詞も健在。
    ただ、正直、短編集の中で当たり外れはあると思う。
    個人的な趣向を含めて。
    私は「夜に散歩しないかね」を推す。
    どの話から読むか迷った方は、是非。

    この人の作品は、化け物とか復讐とか殺_人とか、ダークなモチーフを描きながらも、不思議といつも少年漫画らしい爽やかさがあって、とてもバランスがいいと思う。

    • 9
  6. 評価:3.000 3.0

    子どもの世界のサスペンス

    閉鎖空間を舞台にした、いわゆるソリッド・シチュエーション・スリラーだが、「子ども」の目線の描き方が巧みである。
    子ども時代に特有の、大人に対するある種の不信感みたいなものが、作品のカラーに上手く乗っている。
    結果、単なるサスペンスではない、ちょっと感傷と郷愁を誘うような、独特の雰囲気を醸し出している。

    ただ、道中なかなか引き込まれただけに、オチの弱さはやや残念ではあった。

    • 5
  7. 評価:4.000 4.0

    比べると

    「今際の国のアリス」の作者が原作で、作画は別の人。
    個人的な好みは別れるだろうが、この作画もよかった。

    登場人物たちのバックグラウンドに何があったのか、という謎には吸引力があり、テンポのよさも相まって、ぐいぐい読ませる。
    「今際の国」もそうだったが、異世界の描き込みは非常に丹念で、没入感は高かった。
    「今際の国」が匿名の「架空の世界」であったのに対して、本作のそれは現実の日本各地を舞台にしており、その点もまた違った見所があった。

    ただ、「今際の国」が凝ったゲームの完成度で魅せた漫画であったのに比べると、わりにシンプルなサバイバルであり、「今際の国」のファンとしては、一抹の物足りなさも感じた。
    本家同様、個々のキャラの立て方は流石、と思ったけれど。

    • 8
  8. 評価:4.000 4.0

    多彩な怖さ

    今の時代に読むと古風な絵柄だが、迫力があり、引き込まれた。

    自殺を試みた少女の前に突如現れたヒーローとの逃避行、という「いかにも少女漫画」的な設定ではあるが、微妙なところでラブロマンスに走らなかった点に好感を持った。
    そのおかげもあり、甘すぎず、それでいて希望を与え得る話にもなっていて、特に少年少女を対象とした漫画ということを考慮すると、私は好きであった。

    ……というレビューを表題作のみ読んで書いたのだが、「黒い天使」を読んで全く印象が変わった。
    代理ミュンヒハウゼン症候群については一応知っていたので、「ふんふん」と読んでいたが、完全にやられた。
    めちゃくちゃ怖い。
    初めての方は、是非「黒い天使」を読んでほしい。

    • 12
  9. 評価:3.000 3.0

    時代を感じる

    稲川淳二は好きである。
    が、まさか漫画化されていたとは、何とも時代を感じる。

    彼の怪談の中身を漫画にしただけではなく、稲川淳二本人も、語り手としてちゃんと出てくる。

    それにしても、第1話が「そして俺は死んだ」…タイトルからネタバレしているのもどうかと思う。

    • 5
  10. 評価:4.000 4.0

    崩れゆく私たち

    原作の利なのだろうが、現実的な枠をきちんと守った中でのサスペンスフルな語り口には安定感があり、ハラハラしながら読み進めた。
    交錯する時系列の演出も、上手く決まっていたと思う。

    夢や憧れといったポジティブな地点から始まったはずの日常が、いつの間にかほつれ、ほころび、崩れてゆく。
    その様には、ゾクゾクした。
    何が怖いって、本質的には、誰が「悪い」というわけでもない、ということだ。
    登場人物の誰もが少しずつ悪を抱えているが、それは結局、私たちの誰もが大抵は内包しているレベルのものだ。
    それでも、日々は転がり落ちてゆく。
    高級住宅街の坂道を自転車で下ってゆくように。
    私たちの日常が崩れゆくときというのは、そんなものなのかもしれない。
    あー怖い。

    ただ、ラストだけは、ちょっとパンチが弱い気もした。
    しかし、日常の破綻、という本作の色合いを考えると、これでちょうどいいのかもしれない。

    • 5

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