rokaさんの投稿一覧

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361 - 370件目/全512件
  1. 評価:4.000 4.0

    リアリティーと霊感と

    最初は、主人公の「霊感持ち」という設定はどうなんだろう、と思った。
    こういうエッセイ系の漫画は、かなりの部分、リアリティーが勝負なわけで、真偽はともかく、読者が「ホンマかいな」と感じる可能性がある設定は、ちょっと不利なんじゃないか、と。
    しかし、特殊清掃の仕事のリアリティーを描くのと同じタッチで、心霊現象についても淡々と描かれており、不思議と違和感はなかった。

    霊感が本当にあるのかもしれないし、穿った見方をすれば、主人公が抱える妄想か、この仕事に伴う精神疾患の可能性だってある。
    それはわからないが、主人公にとっては「霊」が「現実」なのであって、それを含めて、特殊清掃という仕事のリアリティーとして提示する、という描き方は、これはこれでありかな、と思った。

    • 72
  2. 評価:4.000 4.0

    生きてゆく者たちのホラー

    正直、今どき「ホラー漫画」のネタなんて、あらかた出尽くしているんじゃないかと思う。
    そもそもホラーなんて、幽霊が怖がらせるか、化け物が怖がらせるか、異常な人間が怖がらせるか、ざっくり言えばその三択で、時代がこれだけ進んでしまえば、その中のバリエーションだって新鮮なものは減ってゆく。
    これはもう、仕方がない。
    私はホラーが大好きだから、このジャンルには頑張ってほしいのだけれど、難しいよな、とも思う。

    それでも作品として何とか刺激を生もうとするから、ホラーの表現は、どんどん過激になってゆく。
    これももう、仕方がない。
    しかし、「過激であること」で勝負しようとするホラーの多さに、ちょっと食傷気味ではないだろうか。
    ホラーファンは、特にだ。

    そんな時代の中にあって、本作は、とても爽やかで、優しいホラー漫画だと感じた。
    「いかに怖い死者を描くか」ではなくて、「死者に向き合う生者をどう描くか」という漫画だと思った。
    それは、誤解を恐れずに言えば、少年漫画の立ち位置として、とても正しいと思う。

    冷たく聞こえるかもしれないが、死者は、死んで、終わりだ。
    けれど生きている人間は、死を乗り越えていかなくてはならない。
    どんなに辛くても悲しくても、いつか死者たちに手を引かれる日が来るまでは、今日を、明日を、行進していかなくてはならない。

    オカルトホラーでありながら、これはあくまで生きてゆく者たちの物語なのだと、タイトルからそれを堂々と表明したこの漫画が提示した、ホラー漫画らしからぬ温かさや優しさが、私はわりに好きであった。

    • 531
  3. 評価:2.000 2.0

    タイトルが…

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    内容はもう、「因・果・応・報!起・承・転・結!」と呪文でも唱えればそれで終わり、というような代物で、特筆すべき点もないが、大きな破綻もない。
    ただ、それをダラダラ引っ張らず、2話完結でサクッと読めるのは評価点。

    しかしまあ、タイトルはもう少し何とかならなかったのか。
    確かに本編に大したサプライズはないけれど、それにしたって、タイトルの段階で完全にネタバレしているのもどうかと思う。
    最後まで読んで、「ああ、やっぱりね」と感じるのと、「いや、知ってたし」と思うのでは、やはり、だいぶ違う気がする。

    • 8
  4. 評価:3.000 3.0

    現代版「まんが日本昔ばなし」

    ネタバレ レビューを表示する

    SNSを題材にした「転落モノ」の漫画は最近よくあるが、わりに楽しく読めた。

    寒々しいのは、この漫画に出てくる全員が醜い、ということだ。
    インスタで幸せをアピールする妻、ツイッターで愚痴る夫、そして、その両者を見世物として嘲笑う妻の友人たち。
    全員醜悪。
    北野武の「アウトレイジ」という映画は「全員悪人」がキャッチコピーだったが、全員悪人の方が、まだマシである。

    ①幸福を他人の尺度を借りてはかろうとすると、ろくなことはない。
    ②お互いをコントロールしようとするような夫婦は、幸せにはなれない。
    というわかりやすい教訓談であり、変な言い方だが、現代版「まんが日本昔ばなし」みたいな話だと思った。

    他人を極端にコントロールしたがる人間が私は怖いし、出来るだけ関わりたくない。
    だが、そういう種類の人間は一定の割合で必ず存在するし、出会ってしまったら、速やかに逃げるしかない。
    恐ろしいのは、この漫画の夫婦は離婚「しない」だろう、ということだ(少なくとも、しばらくは)。
    妻は、子犬を手のひらで転がしていたつもりが、いつの間にか、悪魔の手のひらの上で踊っていたのだ。
    そして、踊り続けるのだ。
    まあ、結婚する相手をコントロールしようなどとすると、バチがあたるぞ、ということで。

    • 527
  5. 評価:3.000 3.0

    「都市伝説」ってのは

    イメージ的には「笑ゥせぇるすまん」とか「Y氏の隣人」とか「アウターゾーン」の現代版、という感じ。
    一話完結でサクッと読める。
    よくも悪くもライトなホラーで、この手軽さを魅力と感じるか、物足りないと感じるかは、読み手によると思う。

    そもそもだが、「都市伝説」というのは「現代発祥の、根拠不明の噂話」だから、厳密にはこの漫画の話は「都市伝説」でも何でもない。
    そういう意味では、タイトルに違和感がある。
    しかし、皆が知っている「既存の」都市伝説をモチーフにした漫画はたくさんある中で、新規のストーリーを「都市伝説」として語るその姿勢には、要らん深読みをすれば、「ここから新しい伝説を作ってやるわよ」という意気が感じられないこともない。

    もしかしたら、数十年後、この漫画の中の話が「都市伝説」として語り継がれているのかもしれません……信じるか信じないかは、あなた次第です。

    なんてね。

    • 4
  6. 評価:5.000 5.0

    「あるがまま」の、その先に

    「サイドA」と「サイドB」があるが、要するに「1巻」「2巻」なので、ご注意を。

    自分らしく、とか、飾らずに、とか、あるがままで、とか、ありのままに、とか、何でもいいのだけれど、全部同じで、本当に苦しみ抜いている人間には、そんな言葉、何の役にも立たないと私は思う。
    そして、自分として生きるということは、そんな二束三文のキャッチ・フレーズで何とかなるほど単純なものではないとも思う。

    でも、そういうメッセージはとにかくキャッチーでリーズナブルだから、いとも容易く社会に溢れかえる。
    そんな時代に、だ。
    この漫画が放ったメッセージは、真逆だ、と私は思った。
    さんざん「自分らしさ」を追い求めながら、この作品が辿り着いた境地というのは、「自分らしく生きるばかりが能じゃないぜ」という地点だったのではないか、と私は受け取った。

    そして、誰かのために微笑みながら自分らしさを捨てられるような場所に行き着いたとき、逆説的ではあるけれど、そこに、また別の「自分らしさ」みたいなものが紡がれるのではないか、と思った。

    そういう全て、この漫画を読まなければ、考えなかったことかもしれない。
    出会えて、本当によかった。

    • 12
  7. 評価:5.000 5.0

    生きづらさ、そして、カートのこと

    別サイトで読んだ、同じ作者の「センコウガール」が素晴らしくて、この漫画に飛んできた。

    女装癖とか同性愛とか、そういうことは多分、作品の本質ではなくて、核心にあるのは一種の生きづらさ、なのではないかと思う。
    なりたい自分、なれない自分、求めていたはずの「自分らしさ」すら、見出だしたはずの「本当の自分」すら、いつの間にやら見誤っていた気がする自分、ぐちゃぐちゃに絡まったまま、それでも生きてゆくしかない自分。
    そんな若い魂の痛みが、ひりひりするくらいに伝わってきて、胸が痛んだ。

    タイトルは明らかにニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をもじっているけれど、カート・コバーンという人もまた、強烈な生きづらさを抱えていた。
    瞬く間にロック・スターに成り上がってしまったという現実と、「こんなものになりたかったわけじゃないのに」という無い物ねだりの相克の中で、カートは生き、死んでいった。
    そんなカートの姿が、この漫画の登場人物たちにだぶって見えた。

    もう少し、書きたいことはあるのだけれど、続きは、「サイドB」で。

    • 8
  8. 評価:5.000 5.0

    ミステリと呼ばないで

    今まで読んだどんな漫画とも明確に違う。
    面白すぎてびびった。

    基本路線はミステリでありながら、話はどんどん脱線していく。
    主人公の整(ととのう)君が、関係ないことをしゃべりまくるせいである。
    事件の取り調べを受けている最中だろうが、バスジャックの人質になろうが、唯我独尊で脱線しまくる。
    何だこいつは。

    しかし、この脱線が、たまらなく魅力的である。
    本線から遥かに逸脱した会話が楽しい、という意味では、タランティーノの映画のような漫画である。
    とにかく整君の呑気なしゃべりが、いちいち鋭く、深い。
    人間や社会に対して、独自の視点でもって、目からウロコの核心を提示するその洞察の見事さは、私の文章ではとても説明できない。
    これはもう、読んでもらうしかない。

    それでいて、「本線」のミステリ部分も、「脱線」を邪魔しない程度にサラッとしていながら、パリッと筋が通っている。
    このバランス感覚の素晴らしさ。

    ミステリのようで、ミステリではない。
    ミステリではないようで、ちゃんとミステリでもある。
    ミステリ、と呼ぶのは何かピンとこない、ミステリじゃない、と切り捨てるのも何かもったいない。
    ミステリが好きな人にも、苦手な人にも薦められる快作。
    誰にでも迷わず薦められる漫画なんて、私にはほとんどない。

    • 641
  9. 評価:4.000 4.0

    正常と異常の間で

    昔、「カッコーの巣の上で」という映画を観た。
    雑に言えば、正常と異常の境界を問いかけるような映画だった。
    それを、思い出した。

    作者自身の経験から、精神科のリアルな日常が語られる。
    この「リアル」がよかった。
    本作の「リアル」は、「取材」ではなく、「経験」した人間にしか語れない種類のものだ。
    つまり、「出来事」が正確である、というだけのリアリティーではなく、現実に対峙した人間(作者)が何をどう受け止め、考え、感じたか、というリアリティーである。

    素晴らしいのは作者の位置づけで、彼女はただの「ナース」でもなければ「観察者」でもない。
    彼女はおそらく、「ちょっと何かが違えば、私もここにいたかもしれない」という意識で、絶えず患者に接している。
    だから、彼女の分析は、客観的でありながら、決して冷たくはない。
    「正常」サイドから「異常」を描く、というスタンスではない。
    彼女自身が、はじめから正常と異常の間に立っている。
    だから、精神科の患者たちを、あまりに普通に「同じ人間」としてフラットに見ることが出来ている。
    そういう印象を受けた。

    正常と異常の間に、自分は、立っていた。
    その境界をまたいだ経験をした。
    それこそが、彼女が「精神科ナースになったわけ」なのだろうし、ことによると、彼女にとってこの仕事は、天職と呼べるかもしれない、と思った。

    その、少し危うい、でも正直で真っ当で、自分を偽らない立ち位置が、私は好きであった。

    • 15
  10. 評価:5.000 5.0

    コーヒー・ライフ・ゴーズ・オン

    缶コーヒーを中心アイテムに据えた短編集。

    素晴らしいと思った。
    読み終えてしまうのがただただ惜しくて、最後の二話をしばらくとっておいた。
    漫画で、どんな短編集が読みたいか、と言われたら、私は、こんなの、と答えるだろう。

    私たちの日常を、人生の一場面を、まさしく「切り取った」漫画だと思った。
    全然「泣かせにきている」タイプの漫画ではないのだけれど、その切り取り方があまりに正確で、また誠実で、そのことに多分、ちょっと涙ぐんだりした。

    どのエピソードにも、明確な「オチ」と呼べるようなものがない。
    この漫画は、勇気を持って、オチらしいオチを拒絶しているように思った。
    全てのエピソードが、「終わり」ではなく、「続き」を感じさせる。
    そこにあるのは、漫画として綺麗に片づけられた「おしまい」の様式ではなく、これからも続いてゆくしかない、誰かの、そして私たちの、人生の形なのだと思う。

    ハッピーエンドもバッドエンドもなく、私たちの人生は続く。
    多分明日も、同じ缶コーヒーを飲んだりしながら。

    「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張れよ」
    そんな「メッセージ」を、この漫画は一言も発していない。
    そういう意味では、とても控えめで、寡黙な作品だ。
    それなのに、読者の側には、その感情が残るのだ。
    「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張るか」と。
    まあ、私は、コーヒーが飲めないんだけれども。

    • 17

設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています